ベムのコラム: 2018年3月アーカイブ

 マーケティング業界で少し感度の高い人なら、「Warby Parker」というブランド名を聴いたことがあるだろう。またBonobosという男性アパレルブランド名はどうだろうか。
D2C(ダイレクトtoコンシューマ)というキーワードで出てくるブランド名だが、もっとこれらのブランドの特徴を言い表したワードが、Bonobosの創業者であるAndy Dunnが作った造語「DNVB(Digital Native Vertical Brand)である。

 「デジタル・ネイティブを起点に生まれたバーティカル・カテゴリーに特化したブランド」で、別名「v-commerce brand」とも言われ、従来品がE-Commerce 上に乗っかるだけの形態と区別される。

この情報は、デジタルインテリジェンスNYの榮枝から今年になってレポートされたなかでも特筆すべきものである。
ベムは彼を早々に東京に招聘して、この動向の意味を、セミナーを実施しつつ、特に企業の経営企画が把握すべき情報として発信したいと考えている。

さて、DNVBを定義すると
① 「製造直販」をテクノロジーの力で可能にさせている。中間コストが少ない分粗利率が高い。
② 「ブランド体験」がオンライン起点で拡散される。自社ブランドが提供するメッセージだけでなく、インフルエンサーを筆頭としたソーシャル上のユーザー起点のコンテンツがブランドを支える。
③ 通常のEコマースやアマゾンのチャンネルと競合しない「第3の流通チャネル」
④ 顧客情報を直接保有している。(サブスクライバーとしてクレジットカードが登録)
⑤ スタートアップの起業マインドでコミュニティを成長させるパワーを持つ。大企業の自社開発で立ち上げるブランドとは趣が違う。

DNVB.png

さらに、DNVBに共通する特徴は
・CPGブランドでは、一見衰退していた「老舗の工場」や「リアルの製品や素材」をM&Aや提携で確保している。そして「テクノロジー・プラットフォーム」で再生させて、流通経路をユーザーまで直結させている。
・SNSを中心にオンライン上に「オーディエンス」を持つメディアであること。
・スタートアップとしてP/L、B/S全体の管理 →マーケティング費用はR&D費用の概念でオーディエンスを開拓する投資である。
・強烈なリーダーシップ→届けたいサービスに対する創業者の思い、バイブルが存在する。
・エグジットを前提としたビジネスモデルで、エグジットで得た資金をさらなる成長に再投資するマーケティング

ということになる。
レポートしてくれたDIニューヨーク榮枝は、このモデルを従来のマーケティングファネルに対して、筒状のモデルで表現する。

 ファンを数万人、数十万人を集められる強烈な個性と、独自のブランドテイストをもつブランドがいきなり顧客(サブスクライバー)を集めて始まり、ファンがメディアとなってその筒の直径が大きくなっていく。
 ここにはマス市場に向けてブランドの認知から始めるマーケティングファネルのモデルは全くそぐわないものとなっている。

 
 ウォルマートが約3000億円で買収したJet.comとそのカリスマリーダーであるマーク・ローリが、ウォルマートでやっているのがBonobosをはじめとするDNVBの立て続けの買収である。
これが対アマゾンのウォルマートの戦略のひとつであることが垣間見える。

デジタルインテリジェンス主催のDNVBに関するセミナー情報はまた追ってこのブログでもお知らせする。


 デジタル動画広告が市場を拡大してきた。バナーに比べれば訴求力のある広告フォーマットではあると思うが、そこはクリエイティブ次第。

 最近ではあまり流行らなくなったかもしれないが、いわゆるリッチメディアに改めて注目したいと思う。それは動画市場によって、ブランディング目的の広告がデジタル広告を使うようになったからで、キャンペーン型のメッセージ訴求というより、ブランドの本質を恒常的に伝えるタイプの出稿として(デジタルだけで完遂するブランディング広告として)もっと取り入れていい。

 その意味で、テレビCMとの統合効果を狙うキャンペーン展開型のデジタル動画と、こうした恒常的にデジタル出稿だけでのデジタル広告と、デジタルブランディングにはふたつの考え方があるかもしれない。

 ネットの世界は基本「ユーザー文脈でのコミュニケーション」である。一方、テレビはブランド文脈のコミュニケーション。
 だから、デジタルではユーザーの「自分事化」が必要であり、テレビは「社会事化」(みんなが知る認められたブランドであるパーセプションを得る)役割と言っていい。

 広告認知・ブランド認知といってもそれぞれアプローチが違い、その双方と接触することで「態度変容効果」を最大化するのが目的となるだろう。

 ベムは「テレビで認知させて、ネットで刈り取る」は、「デジタルで素地をつくって、テレビで刈り取る」になると思う。テレビは日本ではいまだ「強力なプッシュ力のある唯一の広告メディア」であり、野球で言えば「スラッガー」だ。
 スラッガーはやはり4番を打たせたほうがいい。
 そのために1,2,3番が出塁して、テレビでホームランを打てば、4点入る。
デジタルである1,2,3番が出塁しておくことが重要である。

 ベムは「テレビで認知させて、ネットで刈り取る」というようにいつまでもファネル構造で考える時代ではないと思う。
 先に、ターゲットセグメントごとに「より刺さる」コミュニケーションつまりそのターゲットセグメントが「自分事化」する広告メッセージを当てておくことで、テレビCMの効果が最大化できると思う。

 おそらくブランディング効果のデジタル動画の多くはこうしたテレビCMとの補完や相乗効果の醸成を狙うものになるだろう。

 
一方、デジタルではブランドの文脈でのコミュニケーションは出来ないのかというと、文頭で言及したようにリッチメディア型に再注目なんだと思う。

 ベムは、デジタル広告でのブランディングには、デジタルでしかできないこと、つまりインタラクションによるブランド体験をユーザーに提供するということがあると思う。

 その昔「アイブラスター」という、リッチメディア配信のシステムをDAC時代に売っていたことがある。F君と一緒にいろんな代理店に説明に行った。

 そのアイブラスターの第一回目のリッチメディアクリエイティブコンテストの最優秀クリエイティブは「ジッポ」のフルスクリーン広告で、いったん暗転した画面をジッポのライターがあかりを灯してもとに戻すだけの、ブランドの価値を「それ以上でも、それ以下でもない」かたちで表現してみせるものだった。
 ベム自身もDAC時代に試作に加わったインタラクティブバナーでは、ある空冷エンジンの外車が正面を向いていて、そのエンブレムにカーソルを持ってくると「ブーン」といういかにも空冷のエンジン音がするという、これも「それ以上でも、それ以下でもない」ブランドの意味や価値を広告接触者に体験させる表現だといえる。

 こうした表現は、今でも、今からだこそ通用するし、評価される気がする。
ベムは、従来のキャンペーン型の投下手法(テレビ投下が終わると急激に減衰するコミュニケーション効果で谷をつくる)から、恒常的な底上げにマーケティングコストをシフトする「山を盛るより谷を埋めよ」というフレーズで、ブランド価値訴求を通年でベースをつくっておく意味をクライアントに説明することがあるが、もしかすると、ブランドの価値をインタラクションで印象的に体験させることができるクリエイティブが出来たなら、通年型のデジタル出稿をブランディング目的で活用することも検討していいのではないかと思う。

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