ベムのコラム: 2013年12月アーカイブ

昨日のエントリーの続き

レポートには、あるグローバルマーケターの「ノン・ワーキング・メディア」削減の話が入るが、この件はまた別途機会を設けて解説を加えたい。ここではWPPの戦略視点は「グローバルマーケター」の「グローバル指標」にある」ということ・・・。

で、続きは

「透明性」より「アービトラージ」

WPPは24/7ネットワークを自社に持ち、フェイスブック(FBX)やツイッターとグローバルパートナーシップを結ぶ事から始まり、

http://wpp.com/wpp/press/2013/jun/06/twitter-and-wpp-announce-global-strategic-partnership/

24/7の買収合戦の敵対相手だったマイクロソフトのアドネットワークとエクスクルーシブの提携を行うなど、(プレミアム)パブリッシャー側の取り込みは北米で250社に及び、世界で1000社12カ国のリーチを持つ(2013年12月時点) 。

ホールディング会社WPPの戦略会社としてのXaxisは、(プレミアム)パブリッシャーとダイレクトにつながっている事、をエッジ(売り)としている。SSPと呼ばれようが、アドエクスチェンジと呼ばれようが、グローバル(対応)スケールとプレミアムの高さを誇り、他のエクスチェンジやDSPでは買付け出来ないプレミアム枠(オーディエンス)を強調する。「プログラマティックにTier1プレミアムを買い付けるビジネス」であり、「RTBエクスチェンジで有象無象を販売する」のとは違う。自社ではトレーディングデスク、と呼ぶ事も避け、世界最大のDMP、オーディエンスプラットフォームと呼ぶ。24/7のConnectというシステムでパブリッシャーとの接続拡大を2012年から準備を行っていた(つまり合併作業は今に始まった事ではない)。アービトラージの買付けリスクを背負いながらのパブリッシャーとの交渉(advance inventory deals)は、小さな資本のDSP社、SSP社、アドエクスチェンジ社では到底できない「ワンストップ」の構造を作った。今後も買収をするならグローバルのSSP側の技術の強化が考えられよう。

Xaxis/WPPが目指すは、いわば、世界最大の「憧れの」DMPだ。グローバルマーケターのためのプラットフォームだ。誤解を恐れず言えば、ユニリーバ、フォード、キンバリークラーク級をターゲットにしている。Lesser氏は「仮に、世界最大のグローバル広告主の立場に立って考えてみた場合、オークションベース(RTB)で競合他社と枠取りを競ったり、無数の小さなプレーヤーと競ったり、そんなチマチマした世界を望むはずがない。資本とデータを最大駆使して、最も高品質のあつらえのインベントリーを買いたいはずだ。実際、パブリッシャー側は喜んでプレミアムを欲しがるグローバルプレーヤーにインベントリーを提供したいし、しかも先買いのコミットメントがあるとなると、なおさらだ。我々は高品質プレミアム枠を自社独自のデータと共に、限られた顧客にダイレクトに提供するのが役目だ」 

http://www.adexchanger.com/agencies/wpp-groups-xaxis-imbibes-247-media-gaining-a-sell-side-edge/


WPP内部のコンサルタントと、ディレクション

今回、満を持しての24/7とXaxisの統合の発表であったが、下記のWPP内のLLC会社Media Innovation Group(MIG)は閉じることになる、とLesser氏はコメントしている。冒頭で紹介したMIGだ。Lesser氏が24/7買収後にWPP内に設置した会社で、全テクノロジーを見渡してWPP内で横断的にテクノロジーコンサルテーションをする会社だった。WPP内では「ワンストップ」に見せる事に効果がある今回の発表だったが、WPP内部的にはXaxisはメディアの「グループM」の傘下で、24/7はグループMの外部と、別れていた。コンサルタントとしてMIGが間を繋いでいた形だった。ホールディング会社の中には、数ある機能とテクノロジーを結ぶ中立コンサル会社が必要で、この役目こそがCEO兼コンサルタントであるLesser氏だった。
Media Innovation Group
: Strategic consulting services, custom implementation of technology-driven marketing solution

http://www.wpp.com/wpp/companies/the-media-innovation-group-mig/

今回の発表は、地理的リーチをグループMスタッフの協力を得ながらXaxisに塗り替え、一方で旧仲間の24/7 Real Media側の調整をつけて、新生Xaxisブランドに統一できた、Lesser氏の大仕事が一区切りついた、という所が内情だろう。統合するための部署横断、地理的横断の努力、最新の技術の知識、リーダーシップを取ったLesser氏の勲章の記事、というのが私見だ。
いつもながら、「そうさせる」ディレクションをするマーチンソレル氏の迫力にも恐れ入る。

金額はすべて、1ドル=100円換算

このブログでもWPPは24/7の買収あたりから変わってきたといえると書いた。僕が90年代に会ったダブルクリックのオコーナー氏と24/7ムーア氏は非常に対照的な人柄だった。ムーア氏は意外とよくいる「ノープロブレムおじさん」で、ケビン・オコーナーは物静かで自分の会社がすごいすごいとアピールする人ではなかった。しかし、24/7のナンバー2だったブライアン・レッサー氏は非常にキレ者だったように思う。

24/7がWPPに買収されていから、彼がWPP内でのデジタル戦略を担うことになり、WPPの方向も変わったと推察する。

今回は、Xaxisと24/7の合併(これは予定どおりでむしろずいぶん遅れた)に関して、DINY榮枝からのレポートを掲載する。少し長いので、2~3回に分けてエントリーする。


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2013年12月3日にWPP傘下のXaxisと24/7を統合させるアナウンスがあった。

http://www.wpp.com/wpp/press/2013/dec/03/xaxis-and-247-media-to-merge/

日本でもWEB記事になって解説されているが

http://www.exchangewire.jp/2013/12/20/opinion-wpp/

少し違う目線で筆者なりの読み方を紹介したい。筆者(私)の視点は「マーケター側のグローバル・ダイレクトリーチの要求」「透明性の追求よりもプログラマティック・プレミアムの提供」そして、「WPPの戦略と内部事情」に注目した。

・Xaxis(ザクシス):WPP内のトレーディングデスクと(外部からは)位置づけされる、広告枠やオーディエンスデータを「買う」側=広告主側に提供する技術・サービス部門。
・24/7 Media:WPPが2007年に買収した、広告枠やオーディエンスデータを「売る」側=パブリッシャー側と多数繋がり、彼らの収益最適化を提供する技術プラットフォームを提供する会社。

そもそも、「24/7がXaxisと合併」と聞けば「え、まだ統合してなかったのだっけ?」が業界内の人の反応だったのではないか。2007年にマイクロソフトと競い合ってWPPが買収した24/7は、Xaxis設立前からのWPP・CEOマーチン・ソレル氏の基幹戦略であり、24/7買収後に設置したXaxisとの統合はニュースではなく、内部事情を「かっこ良く」アナウンスしたに過ぎない。戦略戦術的にも2007年から変化は無く、ホールディング会社レベルでの統合アナウンスは「体裁よく」なったという次元だ。

XaxisCEOのBrian Lesser氏は24/7出身で、WPPの24/7買収を機にWPP内でMIG(Media Information Group)を立ち上げ、その後Xaxisを立ち上げている。そのXaxisのニューヨーク本社オフィスは24/7のニューヨーク本社オフィスと同じ住所に位置する。卵か鶏かの議論で、649億円の24/7の大型買収時点で「Xaxis的な」構想があったからこその買収だ。今後同様のセルサイドとバイサイドを統合する、というアナウンスはPOG(ピュブリシス・オムニコム・グループ)でも発表されるのは時間の問題で、その時点で「セル&バイ両方持つことはどうよ」と考えてみても、少し間が悪いのであらかじめ。

地理的スケールリーチ獲得を優先

XaxisのLesser氏が2013年は世界中を飛び回っていた事を噂で聞いている。地理的な広がりを確保する事が今年の必須至急であった事は間違いない。


Xaxis01.gif


上記添付は6月4日のWPPデジタルの発表ファイル。下記はその半年後の24/7との合併記事だ。比べると、拠点数、扱い高とも急激に大きくなり、地理的に急拡大「させた」事がわかるだろう。


12月3日のWPPリリースより。
Xaxis currently runs over 450 billion impressions(半年前は300 billion) a year in 31 offices within 28markets across(同22) North America, Europe, Asia Pacific and Latin America. With over 500 employees(同300), 24/7 Media operates in 18 offices across these same regions. Combined the two companies will manage 2 trillion impressions annually across the world.


wpp01.gif

WPPのバイサイドのリーチ確保は24/7買収時点から

フレネミー(フレンド+敵エネミー)のグーグル頼みでは中抜きの波に巻き込まれると確信したからこそ、WPPは独自技術にすべく24/7を買収した。上記自社発表の図では、「POGはグーグルに中抜きにされて、ペプシやP&Gにリーチされてしまいますよ」、と牽制している。

「透明性、は首を絞める」

よく出てくる表層的な議論に「セルサイドとバイサイドとを両方持つには、透明性をクリアにする必要がある」と、言い出す場合があるが、これは「分かってない」か、「嫉妬」のいずれかと思える。日本では古来から電博を筆頭とし、新聞・ラジオという「トラディショナルメディア」の時代から「媒体側と、クライアント側の両方の顔」を持つ事はお馴染みの構造だ。CCI、DACも既に「両方向」にサービスを提供している。むしろ日本の方が欧米でのアレルギーより「考え方が進んでいる」と言っても良いだろう。先仕入れの在庫リスクを負いつつ、媒体社と合意の価格で売る流れにおいて「透明性」という単語を簡単に使うのは適切ではない。世界最大のデジタルメディアを扱うグーグルは「両面」統合サービスの代表選手として成功している。

WPPは、アービトラージ(先仕入れによる、売却価格差を儲けとする取引)について、特に問題視しないとしている。Lesser氏は「何か課題があるとすると、それはパブリッシャー価値を傷つけるような価格で売却した場合か、あるいはマーケターが何を買ったのかわからない場合、のみ」と言い切り、「むしろ1本のプラットフォームでパブリッシャーとマーケターが直接繋がる(余分なミドルマンの排除)事で、得る物の方が多い」とする。実際、ホールディング会社4社比較でXaxisがダントツのスケールと売上高を誇り、他社の(Publicis、Omnicom、IPG)トレーディングデスクは透明性を強調するあまり、ぱっとしないのが実情ではないか。

透明性について補足すると、マーケター視点から見て、「自分が何を買っているのかが分かっている事」は重要だ。つまり、買ったインベントリーやオーディエンスに対し、その「原価」を知る事が重要なのではなく、自社基軸の価値(価格)をつけて管理する必要性は求められる。

その延長でマーケターが自社(管理)プラットフォームを作るトレンドが欧米では進んでいる。ベスト・イン・クラスのベンダー選びと、(データ)スケールの効く買付けシステムが組むためにはどうするのか。さらにアドテクベンダー側も投資家の売上高成長要求から、エージェンシーを飛ばしてマーケターへの直接侵攻も進んでいる。テクノロジーが可能性を広げたばかりに、マーケター側が「技術(スタック)をどう繋げれば良いか」に投資、時間が取られてしまうようになる。このギャップを突いたのがホールディング会社レベルでの「オールインワン(両つなぎ)」戦略だ。その横で、透明性を謳って、リスクの小さいビジネスをするエージェンシートレーディングデスクも存在する。。。。

これらは全てビジネスモデルの違いであり、各マーケターの事情、戦略により、それぞれフィットするパターンがある。このパターンの分析・見極めと、それぞれの長所を知る事がマーケター目線では必要だ。ほんの一例モデルが今回のXaxis/WPPであり、巨大グローバルクライアントを対象としたケースという点だ。雲の上の世界は、地上の価値観では議論ができない、そんな所だろう。ただし、上をみて成長するなら、部分的にも学べるトレンドが行間に隠れている。


後半につづく

どんな業種でも「営業」という機能については、見直しが行われている。

大概は、「セールス型から顧客の課題解決型へ」みたいな話なのだが、存在価値そのものが問われている面もある。その意味で、広告会社の営業というのはどうなんだろうか。
証券会社の営業マンは96年~2010年までの15年間でほぼ半減してしまった。あれだけオンライン取引が活発になれば必然であろう。そう言った意味では、「手売り」しかなかった広告に、オンラインでの入札型広告市場が大きく広がってきた昨今、状況は証券業界と似ている。

 従来はマーケティングメディアはいわゆるペイドメディアしかなく、広告を打つことがほぼマーケティング活動という時代もあった。今までは広告メディアの情報をもっている広告代理店の情報優位は揺るがないし、メディアの広告枠を販売することにおいてはプロフェッショナルな代理店営業マンという存在だった。(昔僕も営業でしたがメディアプランはほとんど自分で作っていたしね。)

 ところが、企業のマーケティングメディアはペイドだけではなくなった。オウンドは当然広告主自身が開発運営するものだし、アーンドの中核になったソーシャルメディア対応も(これもツィッターの公式アカウントやフェイスブックページはオウンドメディアと言えるのだが)実施的に知見は広告主企業側にある。

 しかもペイドメディアもDSPをプライベートDMPでユーザーごとの評価分析を加えてセグメントしてターゲティング配信するような作業は、本質的に企業がインハウスで行うべきものになっている。(評価するための3PASしかり、マーケティングの根幹になるプライベートDMPしかり、企業自身がすべきもので、代理店に任せる性格のものではない。)
つまり、ペイドでさえ、「どこに掲載するかから誰に配信するか」というパラダイムシフトにあって、配信先を規定するデータは広告主企業の所有するものであったりする。

 (またオーディエンスデータがマーケティングの通貨になるような時代において、代理店はどんなオーディエンスデータを所有できるのだろうか。大手広告主はメディアと直接データエクスチェンジしてしまわないか・・・。)


 そうなると、メディア側の情報を保有することで成り立っていた広告代理店の広告主に対する情報優位は、あまり意味を持たなくなってくる。メディアを売ることにおいて、情報優位とスペシャリティを発揮していた広告代理店、特にその営業マンという存在は、(もちろんプロモーションの企画実施を仕切る役割など、機能すべきことはたくさんあるのだが、業務範囲が幅広くなればなるほど、そのプロフェショナル性は希薄になり、)ただただ連絡要員化してしまう。


 そして、もっともその存在を危うくする現象は、広告主側担当者のプロ化である。

 広告主が素人である時は、代理店営業はワンストップ機能を発揮して、バックヤードにいる専門スタッフを連れていけばよかった。

 しかし、特にデジタル領域での広告主側のプロ化は、ネットに関してはアマチュアの営業マンにとって、その存在を徹底的に問われるものとなった。
日本におけるネット専業代理店の市場とは、総合代理店がネット広告市場を軽視し、従来営業マンによるワンストップ体制でこれに臨んだことで専業に持って行かれた市場である。

 欧米ではブランド側にスペシャリストがいる。日本でも、オウンドメディアを開発運用する方がたを中心にスペシャリストがどんどん育成された。
 彼らから見ると、代理店の営業マンは、その場で何も回答できない、逆に間に入っているからこそ業務が的確にかつスピーディに進行しない原因になってしまった。
 
 問題は、今後もこうした総合代理店の営業のワンストップ体制が機能するのかという点だ。僕は某代理店にいるころ、顧客とのインターフェイス機能の専門性による水平拡大を主張したことがある。

 「総合力と専門性」、この課題を現状の代理店の営業体制で機能させるのは既に無理がある。広告マーケティングサービスの領域拡大は今後も続くだろうし、むしろ違う人種を求めている。

 もうひとつの課題は、セールス力という考え方だ。
売るものが、セルサイドの論理で作られたものであり、これをプロダクトアウト的にプッシュセールスするのであれば、営業の機能はセールス力だし、売る人のマンパワーが要る。
しかし、セルサイドの売り物を売るのではなく、バイサイドの買い物を設計し、用意する場合、必要な機能はセールスなのか。
 既にセールス力は営業の最も重要な機能ではないのではないのか。


 今でも、「人が足りない。人が足りない。」と言っている代理店の営業がいっぱいいるだろう。しかし、これは「今、自分たちは機能していないので、機能する人が足りない」と自ら言っているに過ぎない。

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