ベムのコラム: 2012年9月アーカイブ

 ネット広告業界の人なら、昨今、やたらとリタゲ流行りなのを認識している人は多いだろう。リスティング広告の隆盛は、広告を消費者の興味関心行動にカウンターで出すことが初めて出来て、そこに大きな価値を生んだからである。そして、この市場はまだまだ拡大基調にあるものの、一部の広告主では、何百万というキーワードを設定し、しかも上位掲載を確保しながらも、予算消化に至らないケースも増えている。
 そこで、リターゲティング広告とあいなる訳だが、ユーザーから見ると、あまりにも自分のWebブラウジングがリターゲティング広告ばかりになると、広告によって新しい情報に出会うチャンスを失っているという見方もできる。
 従来、AIDMAの入り口の認知は、広く多くのリーチをもってするものだった。ということはノンターゲティング的な広告が新規に認知を獲得するものという感覚があったと思う。

 しかし、2つのことで従来と異なる状況がある。ひとつは、「認知」は必ずしもペイドメディアである広告が独占的に担うものでもなくなっているということ。そして、新規の顧客獲得のための第一段階の「認知」訴求でもターゲティングされるべきものになっているということだ。
 
 リターゲティング広告とリタゲ拡張広告に、同等の効率(しかも即時効果)を求めてしまう広告主も多いだろうが、なにしろリタゲ拡張の配信対象はサイト訪問履歴のないユーザーだ。即、関心が顕在化して訪問者同様の行動を期待するのは無理がある。是非リタゲ拡張ターゲットの間接効果や時間を置いたコンバージョンパスを確認してみてもらいたい。

 というのも、直近の履歴ばかり追いかけることで、サイト訪問まではいかないレベルの多くの「興味」にインプレッション効果を発揮するチャンスを奪うと、ネット広告の効果は中長期で落ちていく気がする。そして、広告の大事な役目である新たな情報との出会いをつくることの機会拡大につながらなくなる。


 ネット広告のターゲティングはこれからが見せ場だ。精度の高いリタゲ拡張や3drパーティンデータによるオーディエンスターゲティングの活用は、ユーザーにとっては新たなブランド、新たな情報との出会いでありながら、それは極めて精度の高いターゲティングがされているということになるだろう。

 ベムは日本で最初にリタゲ拡張配信実験をした経験があるが、こうした仕組みは単にロジックとかアルゴリズムが良いだけでは結果は出せない。何度もチューニングしていくことが重要で、多くの事例、案件で学習したものが勝つ。

 広告主企業も自社サイト訪問者(サイト訪問者をすべて同じ評価としたり、セッションベースでだけ測るのではなく、履歴内容やパス解析で評価仕分ける)の分析から、どんなユーザーなら、まだ認知しなかったり、まだ興味関心をもっていなくても反応が期待できるユーザーなのかと見極めることについて、そのターゲティング手法とチューニングによって精度を磨くということに取り掛からないといけない。

 関心を顕在化したユーザー(購買行動を起こしたユーザー)を分析し、期待値の高い新規顧客(未認知者、未関心者)をターゲットする技術を早く手に入れることで、ユーザーに新たな情報との出会いの機会を奪わない、そういうネット広告に早くならなければいけない。

 「枠」から「人」へ という広告にとって大きなパラダイムシフトについては書籍ほかでアピールしてきたが、この構造変換を実現するDSP/RTBに関しては、日本ではまだまだリタゲのためのツールにとどまっているきらいがある。

コンバージョンの直前流入だけ測定してみると、まだまだリスティングが最も効率的という企業は多いだろう。次にリタゲ、あるいはリコメンドリタゲのような少し拡張型とリターゲティング拡張・・・。米国のようなオーディエンスデータを活用しているところはまだまだ少ない。
 実はベムは日本で初めてリターゲティング拡張による配信実験を行った経験がある。拡張ロジックはあるリコメンドエンジンを使ったものだった。その経験からすると、リタケ拡張を効果のあるものにするには、拡張ロジックもさることながら、実際に配信しながらのチューニングが欠かせない。ひとつのアルゴリズムがすべてを解決するという訳にはいかない。その意味では実配信を多く経験し、チューニングで精度を上げる学習が必要である。(これは拡張以前のリタゲでも言える。)
 
 リタゲが多すぎると、せっかく関心をもってくれたユーザーにしつこく配信し過ぎて、ブランドを毀損するという議論もある。確かに杜撰な設計のリタゲ配信には、そういう恐れがある。しかし広告主の多くは、そうはいっても「それなりに獲得効率が良い」リタゲに効果が見込めるので、(しつこいと感じる人はそもそもコンバージョンしてくれないユーザーでは?)と考えると、刈り取れるところに手を打つのは当然かもしれない。検索による効果が頭打ちになっている広告主も多く。ディスプレイ広告に残されている効果の余地を探っている感じだ。
 しかし、おそらくサイト訪問履歴のあるクッキーという配信対象だけでは早晩その効果は枯渇することは目に見えている。マスも使ってサイトに大量誘導をかけられる企業(関心顕在化層へのリピート訪問、リテンションの余地がまだまだあるブランド)はいいが、枯渇が想定される企業は、自社ブランドにとってのリタゲ拡張の有効なロジックの学習と、もうひとつ来るべきサードパーティのオーディエンスデータ活用に向けて、勉強を始めた方がいい。
 というのも、サードパーティの出来あいのデータを使って、すぐ効果が出ると甘く考えない方がいいからだ。逆に言うと、自社のファーストパーティデータとサードパーティデータをぶつけてみて有効なオーディエンスデータを構築できる企業とそうでない企業の差は大きく開く。
 このあたりの個別ブランドにとって有効なオーディエンスデータ構築にはそれなりの難しさがある。そこは我々コンサルの腕の見せ所ではある。
 オーディエンスターゲティングの実力発揮は、ファーストパーティクッキーの最適化を経て、訪問履歴やコンバージョンユーザーの文脈や、近似性をどうチューニングして、すでに行動を起こしたユーザーのデータから、未来の顧客(新規顧客獲得)をターゲティングするかというテーマ領域に入っている。

 ベムが「トリプルメディアマーケティング」を出版したのが、2010年6月。POEメディアという概念に最初に触れたのが、2009年春で、「3つのメディア」という概念をWeb研のセミナーで講演したのが、2009年夏でした。
 そして最近ではこの3つのメディアは、4つだとか、5つとかに再定義されている。
例えば、5つに再定義するモデルは、Paid、Owned、Earned、Promoted、Sharedだそうで、Promoted Mediaとは、「インストリーム広告やソーシャル課金プロモーション」(これはPaid じゃないのかな?)だったり、Shared Mediaは「顧客とブランドの共創やコラボレーションのためのオープンプラットフォームやコミュニティ」だそうだ。(これは何か分かるような・・・)
 しかし、どうもアメリカってデジタルメディア市場だけでもやたらデカいので、デジタルマーケティング領域の人は、トラディシャナルなマス広告やブランドコミュニケーションには精通していないケースが結構あって、捉え方が意外に狭く感じることがある。この5つのメディアでも、Paid Mediaを「デジタル広告、バナー、アドワーズ、オーバーレイ」とか定義していて、「ネットだけかい!」と突っ込みたくもなる。

 だから、そうなのかとも考えるが、そもそもアーンドメディアをソーシャルメディアだけに注目していることが多い。(5つのメディアの定義でも「Earned Media」は、「ブランドに関する会話、ユーザー生成コンテンツ)としていてマスメディアは念頭にない。)
 アーンドというワードはそもそもPRの世界では使われていた。媒体費を払わずに媒体費に相当する露出を確保するということで、当然、「パブリシティ」として取り上げてもらう新聞、雑誌、テレビ、ラジオでのことであった。

 しかるに、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌は、正確に言うと、純粋なペイドメディアではなく、ペイド&アーンドメディアである。(3つのメディアは企業にとってのマーケティングメディアとして3つに整理するのでこれでいいが、メディア側からすると自分はペイドメディアだけではないってなことになる。)
 
 こうした既存メディアで取り上げてもらうPR戦略上、記事というPRコンテンツをどうマネージメントするかは企業広報のお仕事であったが、今後はこうした一連のPRコンテンツとWebサイト内コンテンツの連携を進めないといけない。

 私は、広告以上にこうしたアーンドメディア施策が効果を発揮する場面はたくさんあると踏んでいる。その際に、一次情報を既存マスメディアにいかに発信してもらい、かつネットでの伝播をしやすくするか。またそうした記事コンテンツを踏んだユーザーがいかに一定のコンバージョンポイントまで達しているかをしっかり測定するマーケティングに期待している。戦略的PRによって「情報クリエイティブ」化を図り、純粋な記事として、または記事タイアップとして、そして企業Webサイトコンテンツとして、文脈の通った連携ができることが望ましい。
 ネット上のソーシャルメディアに注目するのはもちろんだが、UGCとともに既存メディアに発信してもらうコンテンツの仕掛けと、それをソーシャルで波及させるコツをつかむことが大事だろう。

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