ベムのコラム: 2011年12月アーカイブ

リタゲは同じ広告に追っかけ回されて嫌だという話(以前にも書きましたが・・・)から話はDSP/RTBの運用ノウハウの活かし方まで・・・書いてみます。

 
 みなさん結構経験あるでしょうな。行動ターゲティングの話をすると大概「同じ広告ばかりになってうんざりする。」という話になって、こういう技術はどんなもんですかね?という懐疑的なご意見を賜ることはずいぶん前からある。
 確かにそのとおりです。
ただ、これはこういう技術を使いこなすということでは過渡期にあるため、まだちょっと稚拙な状況にあるためなんですね。
 
 まずひとつは、広告主が気づかなければならないことがあるということです。それは最終流入経路としての広告のCPA効率にだけはまって、クリックしてくる以外の多くの人に嫌がられていて、ブランドの好意度を損ねているかもしれないということ。しかも一度は関心をもってサイト訪問をしてくれた大切な見込み客にしつこくして嫌われたみたいなことになっとる訳です。
 クリックベースでCPA効率ばかり追いかけていると、「縮小均衡」にはまります。どんどん対象者を狭めて、狭めて、効率と効果の絶対量の両立ができないと嘆いても、それは当たり前。そもそもブランド力をメディア側にギャランティさせてきた「付け」みたいなものです。刈り取りばかりして、ペンペン草も生えない状況にしてから、「どうしよう、種蒔いて育てるのはやはり効率悪いしな」と言ってるわけです。
 
 もうひとつ、技術の過渡期だから、フリークエンシー過多になっているということです。自動最適化のプログラムがしっかり稼動すると、頻度過多で嫌がられているなら、広告を配信しているクッキーの内の反応するクッキーの率が下がるので、こうした配信が最適ではないと判断します。またフリークエンシーだけでなく、配信と配信の間隔までも最適化するという学習プログラムが起動します。3回目までは続けて配信するが、3回目と4回目の間を1週間あけた方がいい結果が得られると最適化プログラムが判断すれば、間隔を開けて結果「うんざりさせない」ということになります、もちろんうんざりしているどうかを判断しているのではなく、反応が落ちるから頻度過多を制御する結果になるということです。また最適化のために接触頻度ごとにクリエイティブ内容を変えていくことも考えられます。同じクリエイティブばかり見せられるというのも「うんざり」の原因でもあります。
 そもそもフリークエンシーというのはテレビの考え方で、同じ広告クリエイティブを何度見せるかということが前提です。
 ひとりひとりを特定しているネット広告では、最適化の精度はもっと画期的に上がるわけです。ひとりひとりを特定できないTVのフリークエンシーは全体平均です。例えば平均フリークエンシー7.5回という算出があったとして、あくまで平均なので、実際には7.5回という接触をした人はひとりもいないわけです。(7回の人と8回の人はいるわけですが・・・)ひとりひとりを最適化するマーケティングでは、全体の平均値はあまり意味をもたないと思います。

 さて、欧米人の好きな自動最適化と、結構日本人がこだわるであろう「理屈」を見つけて施策を立てる、が今後並存していきます。自動最適でも後追いでもいいので解明したがるのが日本のマーケターでしょう。
 オーディエンスターゲティングは従前の情報をもって施策を打つタイプで(そこは日本的かもしれないですが)、それでも広告反応をもって最適化に向かうのでベクトルは全く同じです。ただどちらも誰が反応したかを検証できると、ネット広告の最適化に留まらす、マスメディアを含むマーケティング施策全体の最適化材料になると思います。

 ここが重要です。SEMもそういうものなのですが(まだまだマスマーケターはサーチの文脈を活用していないですね)、関心の顕在化したプルの文脈だけでなく、広告クリエイティブをプッシュするかたちになるDSP/RTBでのディスプレイ広告では、潜在層への刺激で反応する要素分析もできるので、よりマーケティング施策全体の改善に役立つデータを得られるに違いありません。
 私はその意味で、ビッディングという仕組みが同じだからと言って、従来のリスティング運営者をそのままDSP/RTBの運営に据えるのはちょっと荷が重いかなと思います、特に運用から得た情報を、マスメディアを含めたマーケティング活動全体にフィードバックすることをオペレーターに求めるならです。

 DSP/RTBやオーディエンスターゲティングでは運用(トレーディングデスク)にノウハウが集まります。本来広告主企業内でもやってみて、この作業を全くのブラックボックスにしない方がいいでしょう。もちろん理解して運用指示書が書けるようになったらアウトソースすべきでしょうが・・・。

 ある意味「広告しながら全数調査しているようなもの」というのが私の感覚。
 
DSP研究会を主宰して、広告主さんに参加いただいて昨日までに3回勉強会を実施した。

ネット広告を96年からやってきた間で最も大きな変化を感じているのは、「枠」から「人」へのパラダイムシフトもあるが、ネット広告で行われていることが、マスメディアを含むマーケティング活動全体の改善材料を得ることができるということもある。

広告に反応した人がどういう人かを逆引きして掴むことも可能で、そうすると「こういう人たちがターゲット」と想定しているが、「反応している人たちとはズレている」ということが必ず起こる。

このギャップをどうするか・・・。 「こういう情報を得てどうするか」がマーケティングの大きなテーマになりそう。

顧客は誰か、将来の顧客になるのは誰か、従来はこれが分かっていない。とくにメーカーは、流通の先にいる最終顧客情報を今までほとんど持てないのは普通だった。そのためにECを行うケースもある。

「顧客インサイト」を探れ!というテーマが掲げられることは多いが、インサイトの前に「顧客は誰」が分かっていないことが多い。広告に反応する人は「見込み客」であり、将来の顧客であるはず。

 リアルタイムに、発生する1インプレッションづつに広告配信を最適化しようとする(人間技では絶対にできないこと)試みは従来のメディアプランニングの発想にはなかったことを実現する。リアルタイムの状況でリアルタイムに買い付けるという仕組みの可能性は大きい。

 オーディエンスターゲティングによって、ターゲティングの精度を上げることもあるが、オールターゲットの商品でも、ひとりひとりのベストタイミングを掴んで、トリガーになる行動に対してカウンターでベストタイミングでの広告配信が期待できるので興味深い。

 またリアルな行動データも取り込んでの広告配信は研究対象としても実に面白い。

どういう行動うする人がターゲットなのか、特定の行動とその商品の購買に相関関係があることを見つけ出してみるトライは興味深いものがある。とくに我々が連想できることだけでなく、データから相関を見つけると、人の頭ではどうにも思いつかないが、実際には相関があることも多くでてくるだろう。

 他業種同士のタイアップ、クッキー交換などの施策も考えられる。マーケティングコンサルとしてはわくわくする状況だ。来年に向けてますます面白くなりそうだ。

アドテックではもっと議論したいことがたくさんあったが、時間がなくて残念であった。会場からの質問に、デバイスが拡散するとクッキーもどんどん複数になり、特定できなくなるのでは?というものがあって、セッションの時は私自身の考えを披瀝できなかったので、ここで書きます。

少し昔はユニークユーザーと呼んでいたクッキー数も、今ではユニークブラウザというようになった。それは全部数えるときっと人口より多くなるだろうし・・・。

しかし、昔「究極のターゲティング」にも書いたが、クッキーが複数になったとしても、そこからひとりの個人を突き止める必要はほとんどない。むしろデバイス別にクッキー、PCでも用途別にクッキーが違うほうがいいのだ。個人情報をとってマーケティングするのはとにかくハードルが高い。コストがかかる。それよりもブラウザごとに違う行動様式をベースにターゲティングしたほうが良いのだ。

ひとりの人間にはいろんな側面がある。だから違うユーザーとして捉えることは間違いではない。

これを「ブラウザベースマーケティング」と呼んだが、全然流行らなかった(汗)・・・。

いずれにしても、4スクリーン時代、スマホがガラケーと違って、クッキーでIDをふれるようになったことで改めて、ブラウザベースにマーケティングするチャンスは増えた。

しかもスマホはフィーチャーフォンに比べて圧倒的に、プッシュ型メディアで遭遇した情報に対して、より深く調べる行動を誘発している。(今使っているユーザーがそうした行動をするとも言えるが、それだけではなかろう。)
プッシュからプルへの連携力の拡大と、オーディエンスターゲティングという考え方が現実的に実践可能になったことで、面白くなりつつある。


先日の第3回アドテック東京の公式セッション36の中で、私がモデレータをさせていただいたセッションが、参加者アンケートで人気&満足度NO.1になりました。スピーカーの皆さま、関係者のみなさま、セッションのご参加のみなさまのおかげです。有難うございました。

《人気&満足度ベスト5セッション》

第1位:
タイトル:「オーディエンス・ターゲティングとリアルタイム化が消費者と広告主に与えるモノは」

モデレーター:横山氏(デジタルインテリジェンス)
スピーカー: 清野氏(PlatformID)、岡本氏(リクルート)
    本田氏(フリークアウト)、近藤氏(Google Japan)、西谷氏(comScore Japan)

第2位:
タイトル:「デジタル・マーケティングが可能にするブランドエンゲージメントとは」

モデレーター:稲田氏(博報堂)
スピーカー: 猪子氏(チームラボ)、柳澤氏(カヤック)、
        朴氏(バスキュール)、喜馬氏(トヨタマーケティングジャパン)

第3位:
タイトル:「ダイレクトマーケティングが向かう場所~最も厳しい市場で戦うために~」

モデレーター:浮田氏(博報堂)
スピーカー: 鈴木氏(味の素)、田岡氏(JIMOS)、
        加藤氏(売れるネット広告)、岡本氏(サイバーエージェント)

第4位:
タイトル:「アドネットワークとアドエクスチェンジは本当にオンライン広告の価値を高めるか?」

モデレーター:徳久氏(プラットフォーム・ワン)
スピーカー: 佐々木氏(Google Japan)、佐藤氏(セプテーニ)、
       渡辺氏(マイクロアド)、島貫氏(オ-ネット)、味澤氏(日本マイクロソフト)

第5位:
タイトル:「デジタルテクノロジーxエンゲージメント(ARがもたらす新しいブランドビジネスとユーザーエンゲージメント)」

モデレーター:中村氏(PARTY)
スピーカー: 馬場氏(バスキュール)、小田氏(電通)、川田氏(AR三兄弟)

《キーノートスピーカーベスト3》

第1位: Erick Johnson (Facebook)
第2位: Clark Kokich (Razorfish)
第3位: Chris Murphy (adidas US)

《公式スピーカーベスト10》

第1位:柳澤大輔氏(カヤック)
第2位:加藤公一レオ氏(売れるネット広告社)
第3位:猪子寿之氏(チームラボ)
第4位:坂井康文氏(サントリー)
第5位:安田英久氏(インプレスビジネスメディア)
第6位:横山隆治氏(デジタルインテリジェンス)
第7位:徳力基彦氏(アジャイルメディア・ネットワーク)
第8位:徳久昭彦氏(プラットフォーム・ワン)
第9位:鈴木知行氏(ロゼッタストーン・ジャパン)
第10位:朴正義氏(バスキュール)

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