ベムのコラム: 2009年5月アーカイブ

 第二回目は、広告マーケティングの新潮流と今後の広告ビジネスに関わるデジタルインパクトについて解説を試みた。

 まず、今起きていることを整理。
・メディア環境の変化
・消費者のコミュニケーション行動の変化
・消費者の構造的購買意欲の減退
・市場のシュリンク
・不況

そしてもうひとつ付け加えるのなら、デジタルネイティブの登場。

いずれにしても、単なる循環的景気後退期ではなく、広告マーケティングに関わる大転換が起こっている。

 その根本は、ひとことで言うと、コミュニケーションの主導権が送り手から受け手に移ったことにある。
 情報量が爆発的に増え、消費される情報も96年からの10年で13倍にもなった。またネットを中心にスタンバイされている情報量は何と410倍である。このことは情報に対する生活者の取得態度を大きく変えたといえる。
 つまり情報に関しては常にアンテナを張って耳を欹てている状態にはなく、興味関心が顕在化したときに初めて情報にアクセスするようになった。
 したがって、関心のスイッチが入ったときとそうでないときの差があからさまになったと想定できる。従来の一方的に送りつけるコミュニケーションスタイルでは、そのコンテンツが受け手の琴線に触れるかどうかによって大きく違い、情報投下量だけでは効果を期待できなくなったといえる。

 このような環境が、広告マーケティングにおけるいくつかの大転換を迫っている。
・ 「広告クリエイティブ」から「ブランデッドコンテンツ」へ
・ 「売る理由」から「買う理由」へ
・ 「どこに掲載するか」から「誰に配信するか」へ
・ 「ブラックボックス」から「ROI測定可能」へ
・ 「意見を聞くマーケティング」から「行動を把握するマーケティング」へ

この5つの転換要素について、解説した。
特に、Webによるコミュニケーションは、従来のマスメディアによる(送り手主導による)コミュニケーション構造と180°違う。
Webはありがたいことに、見込み客が向こうから「買う理由」を見つけようと、いろんな文脈でアクセスしてくれるコミュニケーションツールである。その認識に立って、マス広告のコミュニケーション開発のアプローチとは全く違うアプローチで対応しなければならない。
またアドテクノロジーは、従来では発想すらできなかった広告のターゲティング配信を可能にした。
ただ、行動ターゲティングなどの手法は、メディアプランニングを、セリングサイドの情報をベースにした従来型から、バイイングサイドの情報にベースにしたものに転換を余儀なくされる。
「どこに掲載するか」はメディア側の掲載面情報で成立するが、「誰に配信するか」は、誰を選ぶ際に、対象ブランドのユーザープロフィールやコミュニケーションコンセプトに精通していなければできない作業となる。アドテクノジーは、メディアプランニング作業を大いにバイイングサイドのものになる。

また広告のROI測定管理は、長年広告に関して「半分は無駄だと分かっているが、どっちの半分が分からないので・・・」と言わしめてきた「ブラックボックス環境」を打破することになる。
広告投資に対するリターンの把握は、広告主にとって非常に重要なテーマになった。現在、e-コマース利用のネットでのROI分析はかなりのところまで及んでいるが、これをマス広告など効果の評価、またリアルな世界でのビジネスのゴールにどれだけ至ったかを把握する仕組みなどが、検討されている。ネットに閉じたROI測定管理ではなく、統合的なマーケティングROIの測定に企業の関心は移行しているのだ。

いずれにしても、こうした広告マーケティングの大転換期であることを十分に認識した上で、次世代広告マンとしてのスキル獲得の意味をしっかり認識することから始めなければならない。
ここが言ってみれば「虎の穴」参加資格である

 先週、ブートキャンプ「虎の穴」の第一回目を実施。最初なので、これからインプットすることを俯瞰できるように説明したつもりだが、どうだったろうか。

 まず、世の中のITイノベーションなるものの中に、インターネットによる広告コミュニケーションがある訳だが、広告業界にいて、広告の世界しか見えてないと全く本質が見えないので、できるだけ全体像を説明したつもりだ。

 インターネットは、世の中のコミュニケーションの本質を変えたが、もちろん企業のビジネスプロセスを変えた。そしてビジネスプロセスの一部であるマーケティング活動を変え、またその一部である広告コミュニケーションを変えている。

 ネットのマーケティング活用は、

 ・広告メディア、ブランディング活用
 ・リード(見込み客)獲得
 ・Eコマース
 ・カスタマーサポート

 に活用できる状況にあり、セールスフォースのようなツールもたくさんでてきている。

 多くの企業ではまだ、Webサイトのゴールがそのままビジネスのゴールという訳にはいかないだろうが、そこがシンクロする仕掛けと指標を設定できるようにすることでマーケティングROIを測定管理できるようにしていくだろう。
 広告マーケティング活動は、広告マーケティング投資であって、基本的に測定管理できないものは実施されなくなる。

 その意味で、企業にマーケティング投資を促す側が測定管理に関する知見を持たないということはあり得ない。

 そこで、今後勉強していく領域を俯瞰する意味で、山本直人さんのマスネット×右脳左脳マトリックスを使わせてもらって、そこにプロットして説明した。

 当然、ネット×左脳領域にあるアドテクノロジー系スキルが今回の「虎の穴」では多くの比重を占める。

 主なものでも、

 ・アクセス解析ツール
 ・広告効果トラッキングツール
 ・SEM最適化ツール、自動入札ツール
 ・広告配信システム
  (リッチメディア・動画配信)
  (行動ターゲティング配信)
  (コンテキストターゲティング配信)
 ・Webサイト自動生成ツール
 ・サイトクローリングツール
 ・モバイルサイト自動生成システム
 ・ネットメディアプランニングシステム
 ・フラッシュ、エア・・・
 
 などがあり、測定モデルでは今の主流のタグによるSaaSモデルを研修する。
 しっかりタグが貼れるところまでやってもらう。

 先日、総合広告会社の営業フロントラインと話してて、タグに関する会話が「チンプンカンプン」だというので、あと3年くらいで今の会話が理解できない奴は、広告のプロとは言えなくなるだろうと明言してきた。

 ついでに何故WPPが24/7realmediaやオムニチュアに資本を入れるのかを解説しておいた。

 そして、テクノロジーとアイディアの融合の基点(出発点)となるであろうWebサイトプロデュースのノウハウ獲得の重要性を強調した。最終的に価値あるスキルはクリエイティブなアイディアである本質は変わらないだろうが、アドテクノロジーの知見がない者のアイディアには限界がでてきてしまうのも事実だろう。

 どんな世界でもそうだが、周りがあまり持っていない知見をいち早く獲得することで、その人間の価値が上がるのは当然である。

 まずは体系的に、これから研修することを全体像のなかにマッピングする作業をした一回目だった。

 
 

 こういう連休の時にしかテレビをじっくり観ることができないが、いったい自分が何を観ているかというと、29日の日本柔道選手権とヨーロッパチャンピオンズリーグと、NHKのドラマ「ハゲタカ」の再放送と、NHKBSのMLBと、NHKスペシャルと・・・。

 深夜のチャンピオンズリーグ以外は、ほとんどNHKである。広告を生業にしている者としては、何とも忸怩たるものがある。もちろん私のような者が観る番組だけに価値があるわけではない。私のような者はマーケティング対象ではないのかもしれない。しかし私は全くテレビを観ないわけではない。広告人として、普通の同世代男性よりは確実にテレビを観ている方だと思う。

 しかし今のテレビ番組は、広告主が求めている「視聴者の視聴態度」を獲得しているとは言いがたい。

 先日、新人研修の講師をしていて、新人たちにテレビスポットの作案作業をさせた。ある局のタイムテーブルと、視聴率表を渡して、逆Lで500GRPのスポット案をつくらせた。
 その視聴率表の各番組の世帯視聴率とその横に並ぶ、個人視聴率を見ると、欲しいターゲット視聴率を獲るのがかなり難しいことに気づく。

 私が、20年くらい前に実際にやっていたテレビスポット作業とは様相が違う。

 当時はGRPが二アリーイコール広告効果であったし、GRPとPOSデータによる販売実績はかなりの度合いリンクしていた。しかし今は違う。効果の変数は投下量だけでなく、メッセージそのものに大きく頼ることになった。

 私は、テレビ広告を否定しているのではない。テレビ広告に頼り過ぎた「広告メッセージの作り方」がもう時代にあっていないのだ。
 「テレビCMづくりがブランドのコミュニケーションコンテンツづくり」と考えていた発想と、そのコミュニケーションの開発装置が古くて、機能していないのである。

 GRP=広告効果ではなくなった。つまりコンテンツ次第だ。

今では常識化したが、テレビ広告を投下するなら、事前に検索結果としてネット上で話題となっている状況をつくっておかないとテレビの効果がもったいない。ブログ・SNSに仕掛ける。
またどうせテレビ広告を使うなら、ネットでブランドオリジナルのコンテンツが話題になる状況をつくり、ネットユーザーにジェネレートさせ、テレビ広告のコンテンツが事前に期待されるものにしておくべきでは?
動画サイト、動画投稿サイトを使った仕掛け、ARG・・・いろいろ試すべき仕組みがある。

テレビ番組がつまらない。であれば面白い広告を露出しなければ効果はない。面白い広告をつくるには15秒のテレビCMの開発プロセスから早く脱却することだ。

そして広告主にパワーがあるなら、自分でメディアマーケティング事業をもつべきだろう。プロ野球の球団もいいが、ネットやモバイルのメディアを持つの手だ。

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