ベム: 2014年11月アーカイブ

 データというのは、いわば米の状態のものだ。そのままでは食べられない。米を炊いて、おにぎりにしたり、はたまた高級イタリアン店のリゾットにしてこそ価値がでる。そのためにも価値をつくる人を育てなければならない。ただ、そういう価値をつくる人や仕事への敬意をもつ企業文化が大事になる。

 最近ベムのところには、「データ分析に、分析官を何十人も配置したが、なかなかシナリオ設計ができるところまで分析の価値をあげられない。そういうスキル開発にご協力いただけませんか?」というオファーがよく来る。

 そりゃ、そうだろう。シナリオ設計とは、何らかの施策に結びつけるためのものであって、施策のプランニングや実行の経験のない人にはイメージがつかないのは当然だ。
「データサイエンティスト」というスキルセットについては、まだまだこれから定義されていくだろうが、マーケティングのシナリオ設計という領域は、そうそう簡単に出来るものではない。長い間広告マーケティングの世界に身を置いている側から言うと、そう簡単にデータサイエンティストにシナリオ設計が出来てもらっても困るという思いもない訳ではないが、そういうスキルを開発しないといけないのが私の立場だ。

 ビッグデータなるものは、データの大海原なので、どうやって文脈を発見するかということでは、基本仮説立てをして、捨てていいデータを決めることになる。データは多すぎるので、「データリダクション」をしないと道筋が見えてこないのだ。
 この際、捨てるデータを決めるための仮説設定には、意外とアナログな手法も有効と言える。というかむしろビッグデータと向き合うには、デプスインタビューのような生の消費者と向き合って、インサイトを探るスキルが重要なのだと言える。
 そうしたスキルは伝統的な総合代理店のマーケやストプラと言われる人材が長けているはずなのだが、ちょっと違うのは「ひとつ」に修練させる従来のやり方ではないところだ。

 マスを前提にした表現開発は、いったん発想を出来るだけ拡張する(コピーを100案出してみろみたいな100本、1000本ノックがあって)が、そのあとは、ひとつの表現コンセプトに修練させるのが従来のやり方だ。これはマスクリエイティブが出来るだけ多くの消費者が少しでも反応するようにつくるという「最大公約数型」になるからだ。しかし、今やるべきコミュニケーション開発とは、データからいくつかのターゲットと対のいくつかの文脈を見つける作業となるだろう。ひとつの表現で「出来るだけ多くの人が少しでも反応する」のではなくて、特定の人が「強く反応する」文脈をいくつも抽出するという作業である。

 前述のデータ分析からシナリオ設計するという作業は、従来の広告代理店のストプラ作業とは似て非なるわけだ。
 
 いずれにしても我々が必要なスキルは、今誰も持っていないものと言える。これから開発しなければならないスキルだ。
この時、センスのある分析をする人というのは大事に扱わないといけない。いい仕事とそのスキルをリスペクトしないと目指すべきスキルは育成されないだろう。
 
 コメ農家は、付加価値を最大限に引き上げる料理人の知恵と技術に敬意をもって接して協業しなければならない。

 今回もDIニューヨークからのレポートからブログを更新。

今年の1月アドエイジ誌に、「衛星放送の競合同士であったディレクTVとディッシュTVが共同で合計2000万世帯へのリーチを売りにアドレサブルTV広告を選挙キャンペーン用に販売開始した」と報じられた。
 下記はその記事だ。

http://adage.com/article/media/dish-directv-team-addressable-ad-efforts/291303/

 アドレサブルTV広告とは、近年テレビモニターに必ず添えるセットトップボックスに向けて広告配信する技術のことで、ケーブルテレビや衛星放送を中心にセットトップボックスを契約する世帯別データを、第三者機関のデータと組み合わせて広告配信するサービスである。

Addressableつまり「アドレス出来る広告」ってことね。

CATV網が張り巡らされた米国では従来もTVへのターゲティング配信は行われてきたが、番組ごとの視聴者デモグラ情報をもとに枠を選んだり、州ごとのエリア配信くらいだった。ところが、オンラインビデオ広告のターゲティング配信に圧されたのか、衛星放送の競合会社同士でさえ共同で広告サービスを開発した。
 
 米国では今年2月、NBCを有する米CATV最大手のコムキャストが、第2位タイム・ワーナーケーブル通信会社を4.5兆円(450億ドル)で買収した。さらに続いて米通信市場最大手のAT&Tが衛星テレビ最大手のディレクTVを4.9兆円(485億ドル)で買収するに至った。
 日本でいえば、NTT、ドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの通信側と、日テレ、フジ、テレ朝、TBSなどの放送側がチームを組んで、グーグル、フェイスブックらと視聴者層争奪戦を始めるようなものである。

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 図1:米国におけるビデオ視聴者数ランキング
ケーブル、衛星、通信各社の合併でもネットフリックス1社に及んでいない。(データ元:ncta.com/industry-data)

 しかしながら、この日本円で4兆円だの5兆円だのというとてつもない巨額のM&Aで獲得される視聴者数もネットフリックスにさえ及んでいない。ましてやフェースブックは北米での月間アクティブユーザーが2億人を超えている。

 またターゲティング精度が上がれば、上がるほど効率と効果の絶対量を両立することは難しくなる。それゆえ圧倒的なリーチの絶対量が必要なのである。結果競合の衛星放送会社でも手を組むわけだ。

 日本でもCATV網は1社のシェアが高いわけで、全社を囲い込んでの「Addressable」にチャレンジしてみたらどうだろう。それにBS放送なんて「衛星」から一発で全国同じ内容でしかやってないから、かえって前時代的な状態だ。地上波のTVスポット広告は本数でいうと、ナショナルクライアント半数、ローカルクライアント半分、しかもナショナルクライアントも全国一斉発売商品はその半分くらいだ。ということは、BSは地上波の4分の1(通販など基本全国に放送されてよい広告)しか受けられないということになっている。BSの経営が非常に保守的なのは残念だ。
 技術的な問題より、事業者のマインドの問題の方が大きいように思う。各社共同開発でのチャレンジをすべき時期になっている。