ベム: 2013年6月アーカイブ

 Webの世界では、ログというかたちで行動データが記録される。そのため行動データによるマーケティングが可能となった。とはいえ、意識の変容を掴むには意識調査(アンケート調査)が必要である。
 ブランドサミットでもプレゼンしたように、ネット広告の効果は、クリックやビュースルーで目的のサイトにユーザー(見込み客)を誘導するトラフィック効果(またはレスポンス効果)と、広告を認知することで得られるブランディング効果がある。これらを前者は3PASをしっかり使って、後者も広告配信ユーザーへのWeb調査によって測定できる。

 私は、ネット広告の効果を従来のマスと次元の違うものとして、トラフィック効果とブランディング効果を混在させた中間的な指標をつくろうとするのではなく、トラフィック効果とブランディング効果を両方しっかり測って、それぞれを評価し、効果全体としては双方を足しあげるのが正解と考える。
 何故かと言うと、ブランドによって、(または販売チャネルによって)、トラフィック効果の価値と、ブランディング効果の価値が違うので、双方をそれぞれしっかり測ることで貢献の度合いを各ブランドが評価すべきだからだ。

 ただ、ネットのブランディング効果を測定する際に、従来のTVなどの広告認知率調査の概念とは違う考え方が必要になってくる。またデジタルが故に把握できるデータを上手に使いこなすには、従来の調査の考え方から意識的に脱却することを奨める。

 ベムがいろんなところで再三話しているように、ネット広告はある意味「広告しながら全数調査」しているようなものである。そして、ユーザーのURL閲覧や検索行動、ソーシャルメディアへの書き込み行動なども含め、ほぼリアルタイムに近いかたちで時系列変化を追えるデータ取得が可能であり、アンケート調査もネットではそうした性格をうまく利用する手がある。


・「全数調査」になる
・ほぼリアルタイム測定が可能


ビッグデータ時代って、全数で把握できちゃうので、サンプル調査して、拡大推量をかけるという従来の統計学の概念はすでにそぐわないのではないかと思える。

この考え方を、アルベルト社の山川会長を話す機会があって、確信に至った。

山川さんの主張も、「ビッグデータ時代は全数で把握できるので、ある意味統計学はいらなくなる。」というものだった。
そして「より定性調査の重要性が増す。デプスインタビューなどのしっかりした定性調査でモデル(仮説)をつくり、全数(ビッグデータ)で立証するプロセスが重要」と言う。

私も、DMPを活用することを考えると、大量のデータがないとクロス集計に耐えられないので、サンプル調査系データだけで立証するのは限界を感じる。(当たり前か)


 ネット広告では、配信したクッキーでユーザーを把握できるため、広告接触者か非接触者かどうか、また接触フリークエンシ―を認識できる。そのためフリークエンシ―別の認知率もしっかり採れる。
従来のマス広告の調査では、被験者を集団として捉えるので、例えば平均フリークエンシ―7.4とでる。しかし7.4回という半端な回数接触した人はひとりもいない。
ネットではフリークエンシ―7回の人の認知率と8回の人の認知率をそれぞれ出せる。

つまり、ネットでの調査は、ログデータとアンケート調査データがマージできる点でたいへん優れている。
 集団でなく、個別に評価できる「意識データ×行動データ」になることが従来と違う、そうしたデータを採れることを念頭に活用しないと「もったいない」のが、次世代調査となるだろう。

もうひとつの新しい概念は、調査する側のタイミングではなく、被験者である消費者のタイミングで調査できること。そして年1回や半年に1回でなく、ほとんどリアルタイムでソーシャルや検索行動やブランドサイト閲覧行動を分析するのと同様に、意識調査を走らせて時系列変化を追う手法も考えられる。

この時代、ブランドKPIを半年に1回出てくる調査データの中の指標にしても高速PDCAを廻すことは出来ない。

そして、繰り返すが、意識調査単独でデータを出すのではなく、ソーシャルアカウントごとの分析や、全ログデータ分析などと、調査を組み合わせるなど新しいデジタルマーケティング発想の調査が産まれるだろう。
従来の調査の概念に縛られず、様々なチャレンジをして、独自のブランドKPI(高速PDCAを廻せるKPI)を獲得できるマーケターは強い!と思う。

 93年にインターネットを始めたから、20年経った。この20年間の目まぐるしい進化と変容にはあらためて驚く。
 僕はパソコン通信じゃなくて、インターネットから始めた。しかもDOS/V機で・・・。ハードディスクがたった40MBというスペックで、ウィンドウズ3.1が動くと言われて買ったが、まあお世辞にも動くという感じじゃなかった。カメレオンというインターネットのスタートアップソフトでネット生活と洒落込んだものの、ブラウザもまだモザイクがあるかないかで(だいいち日本語のホームページがない)、ゴーファーとかニューズグループ、あとメールなんだが、メールする相手がまずいない。ニューズグループ内に、MIDIファイルがあって海賊版のレッド・ツェッペリンやデビッド・ボウイの何ビットか忘れたけどチープな音源があって、それを聴いてみるくらいが、最初のインターネット体験だった。

 JOIが社長をしてたPSIネットというプロバイダーに入ったけど、そのころの日本のネットユーザーはいったい何人いたんだろう。秋葉原のラオックスのコンピュータ館の4Fがたしか全フロア、パソコンソフト売り場だったが、ほとんどが98のソフトで、マックが棚4~5くらい、DOS/Vにいたっては、(IBM/AT 互換機用と言っていた)棚の半分くらいという悲惨なDOS/V&インターネットユーザーは、しないでもいい苦労をたくさんしてきた。先取りしたのはいいが、誰も教えてくれないから、障害だらけだった。
 
 96年にインフォシークを立ち上げて、広告セールスを始めた時も、最初は毎日30万PVになるとサーバーは落ちるは、それが何故かわからないは、サーバーが落ちると放送事故と同じだから3倍返ししろという代理店のおやじはいるは・・・。まだ「ピ~ひょろひょろ」のダイヤルアップ時代、夜11時がゴールデンタイムのインターネットは、まだ技術系の人のものであって、情報システム部門の人がターゲットの広告が多くを占めていた。
 なので、日本で最初のアドネットワーク=DACネットワークをつくって、OS別配信でUNIX配信をすると、サンマイクロシステムさんの情報システム部署向けのセミナー広告はクリック率が28%もあった。
 
 インターネット広告の価値を一挙に上げてくれたのは、やはり孫さんだ。街頭でモデムを配るという凄まじいプロモーション活動は、ADSLを普及させ、常時接続、定額、高速通信を実現させ、ネットユーザーの拡大と共にひとり当たりの接続時間も3倍以上にもなった。おかげで、ネット広告市場は一気に拡大し、DACも恩恵を受けた。
 
 93年にインターネットを始め、その翌年に世界で最初にバナー広告が始まったの受けて、その2年後にネット広告を売る会社を立ち上げ、そのまた2年後に日本で最初のアドネットワークをつくり、さらにその3年後に会社を上場させた。そのスピード感は決して遅いものではなかったと思う。それもインターネットがすごいスピードで進化するからこそで、それに乗っかって自分も常に変化していけた。いまだに退屈することはない。

 82年に新卒で入ってから既に広告業界に31年いる訳だが、その2/3はネットユーザーだったことになる。もちろん長けりゃいいってもんじゃないけど、この20年にネットと広告にまつわるエポックメイキングな意味のある出来事を、歴史的評価を含めて書き留めておいた方がいいかもしれない。


①たかがネット広告とバカにしている。(でも内心不安でいっぱい)

②今さら恥ずかしくてデジタルの勉強などできない。(確かにもう遅い)

③何とか逃げ切れるだろうと思っている。(その考えは甘い)


 大概、本当にハイエンドなブランディングコミュニケーション開発に携わったことのある一流広告マンであれば、少なからずデジタルマーケティングの重要性を認識し対応できているとは思う。もちろん優秀なSPプランナーもしっかりデジタル対応できているだろう。総合代理店と言ってもピンキリなので、受け止め方は様々だろうが。
 
 前回のエントリー(アドテクノロジーの人が「広告」を知らないということ)に多くの反応があったのだが、おそらくアナログ広告マンからは、いわく「こういう広告を知らない人たちに現場の主導権を奪われつつあるのが問題だ」とか、「結局なんにも知らないこういう人たちにひっくり返されるんだろうけど・・」というような実に情けないコメント。いかにも自分は広告コミュニケーションのプロのような口ぶりだが、一流のアドマンならこんなことは言わない。

 広告コミュニケーションの知見、経験がしっかり身についているのなら、ちゃんとデジタル勉強して対応すれば、彼らは怖くないはず。
 主導権を奪われているのは、しっかりデジタルに対応できてないからでしょ?

そもそも、アナログ広告マンが、ネット広告仕事をしようとすると、まず経験したことのない「デジタルストレス」に晒される。ネット仕事は、まだまだ確立していないので、いろんなレギュレーションがあり、多くの例外的対応を余儀なくされる。地雷原ばかりなので、必ず事故も起きる。その上、ここで終わりという息の抜けるところがないので、従来のマス広告やプロモーションの仕事をしてきた広告マンには、デジタルストレスが立ちふさがる。
 今から対応するには、確かに大きな障壁がある。もちろん年齢の問題もあるが、それだけではない。

 確立している従来広告ビジネスに慣れてしまってから、デジタル業務に入ると、ストレスが大きい。問題は順番で、まずはデジタルストレスに慣れてから、マスを覚える方がうまくいく。その意味では新入社員はまずデジタル部門で研鑽させたほうがいい。3~5年鍛えたら、営業に出してビジネス全体をコーディネートさせるといい。
 デジタル知見がある人材がフロントに立つことが、総合代理店に一番求められている。フロントにデジタル知見がないから、そもそもデジタル仕事をゲットできない。いいデジタル仕事が獲れなければ、いくら優秀なスタッフがいても、そのスタッフもすぐスポイルされてしまう。それだけデジタル仕事は生ものであり、どんどん進化していく。半年先端に近い仕事ができなければ、スタッフは劣化する。そのためにもクライントと日々インターフェイスするところにデジタルスキルを配置しなければならない。
 
 総合代理店は何でもワンストップで営業が窓口となり、様々な専門スタッフを連れてくるのが流儀であったが、もうそうした手法は限界だ。
 このスピード感の求められる時代に、クライアントに行ってその場で解決できないのは、クライアントにストレスを与えるだけ。いちいち「スタッフに訊いてきます」では話にならない。そんな代理店に頼まなくなるのは当然だろう。

 経営層だけでなく、中間層もデジタルマーケティングへの認識と一定以上の知見のない代理店の20代の若者は、会社の看板など要らないように次世代アドマンとしての研鑽をすぐ開始しなさい。若いから大丈夫ではない。今やっていないことがリスクなのです。

残念なことだが、アドテクノロジーやネット広告サービスをビジネスとする人たちの多くが、「広告」を知らない。というか、広告コミュニケーション開発やマス広告のメディアプランニングや実施の実務経験がない(代理店や宣伝部経験がなければ、仕方ないけど・・・)のに適切な勉強をしていない。

そして、アドテクノロジーの人の多くが「広告を知らない」ということがどういうことかが分かっていないで、簡単に「広告コミュニケーション」を語る。
ベムはアドテクノロジーの人たちの多くと懇意だし、みな素直で頭のいい子たちばかりなのだが、理屈だけで「従来の広告はこうだから・・・」とやったことのないことを安直に語るんだな、これが・・・。(ああ、そんなこと言うとまた高広くんに突っ込まれるのになあ~と思いながら聞いてる。で、大概、思ったとおりになる。w)

その上、今年で18年目になる日本のネット広告やWebマーケティングの歴史で、何がどう積み上がってきたかもよく知らない。アドテクノロジーやってるんだから、せめてこの領域のことくらいは理解していて欲しいと思う・・・。

アドテクノロジーじゃなくて、マーケティングテクノロジーだろって話もあるけど、そうであってもテクノロジーは知っていてもマーケティングを知らない。「広告」もマーケティングの一部だしね。

こういうことを云うのは、私がテクノロジーベンダーの諸氏を応援しているからなのです。マーケターの課題を理解して、単にプロダクトアウト型の提案をするのではなく、ソリューションを提供するパワーをつけて欲しいのです。そのためにも「広告」や基本的な「マーケティング」を知る努力が求められる。

アドテクノロジーの人たちにも今からでも「広告コミュニケーション」を知ること、つまり、広告コミュニケーション開発の実際を知ること、または、そのために土台となるコミュニケーション開発のエッセンスや基本行動様式を理解する努力をしてほしい。マス広告はどうやって取引されていて、メディア戦略はどう組み立てられていて、上流から下流のビークルプランに落ちてくるのか、を知って欲しい。
リスティングの広告文の100本ノックじゃなくて、マス広告のコピーライティングの1000本ノックとか、事例研究、コンセプトワークのトレーニング、撮影現場を見るなどやれることはいっぱいある。
以前広告制作の現場にいた人が、ネット専業代理店に転じて、「撮影」がないことに驚いたと言っていた。パンフレットや雑誌広告の撮影、CMの撮影・・・、写真画像や映像という情報量の多いクリエイティブに携わるのと、テキスト広告文やバナー画像(素材は既に出来上がってる状態)だけと向き合うのと、それらの制作プロセスに関わるのとでは、ずいぶん幅が違う。もちろん撮影という画づくりが始まる前の表現コンセプトを揉むところが肝心なのだが。

テクノロジーはテクノロジーだけではほとんど価値を生まない。テクノロジーを使いこなす人の資質や知見として必要なものを、今のうちに再確認して、どうスキルとして確立するかを考えて、人材育成プログラムを発動していかないといけない。

「広告は変わる」けど、「広告」はなくならない。

広告コミュニケーションの経験者が、テクノロジーをおぼえるのか、テクノロジー側の人が広告コミュニケーションをおぼえるのか、双方に道があるようにしなければならない。ベムはテクノロジーの人にコミュニケーションの知見を与えるためのプロセスを考えて提供できるようにしたい。自分が広告のコミュニケーションの人であって、テクノロジーを学習してきたが、こちらも有力なプロセスだが、データサイエンティスト的人材育成には、いささか限界を感じないでもない。
データ(数字)をインテリジェンス(情報)にし、シナリオとしての仮説を頭の中に描ける人をMathmanのなかから育成したい。
 
広告会社は、数学、統計、計量経済学なんかやってきた学生をどんどん採用して、データサイエンティストとして活用しつつ、広告コミュニケーションが実践できる場において育成することを考えないとね。代理店にいるのに「広告」を知らないなんてことがないように・・・。
代理店のリソースは人材とクライアントの口座だけだからね・・・。

 広告主、アドバタイザー・・・、広告の発注者ってことですよね。これからも広告を出稿したり、制作したりすることには変わりないんだが、いわゆる「広告」を買うばかりがブランド側の施策ではない。ではないどころか、ブランドが自社でやることがグンと増えて、ペイドメディアの発注者であるところの「広告主」ってワードがブランド側の立場をぴったり表す言葉にはならなくなってくる。

 ブランドはオウンドメディアを中核に、またDMPなどによって顧客と未来の顧客をデータベース化して、都度ベストな方法でベストなタイミングでマッチングされたメッセージをプッシュできるようになる。
 そもそも配信先データベースはブランドが持っていて、買う側の論理(買いたい価格で買いたいタイミング)で掲載面だけ買うことになってくる。

 そもそも広告主というワードには、メディアの掲載基準をクリアした発注者かどうかと、最終責任者である立場を明確にする意味がある。SSP側の仕組みで、掲載面のサプライサイドとバイイングサイドとで都度マッチングが行われると、メディアやビークルごとに掲載基準でこの業種はだめだとか、いいとか。広告代理店の営業が中に入って、どうだこうだする必要もない。
 ペイドメディアの売り買いでさえそうなると、なお「広告主」って、これからのブランド側、マーケター側を示すワードではなくなるのではないでしょうか。


 広告主協会がアドバタイザーズ協会に名称変更して久しいが、業界ではやはり「広告主」って言う。滑舌の悪い代理店の経営者のせいで、「アドバタイザー」って普及しないわけではないだろうが、アドだけでもないマーケティング活動の主体を、ブランドというかマーケターというか、いずれも合意がないと通じないが、「広告主」の方どう思います?

 ベムは昔、ダイレクトマーケティング事業をクライアントと合弁会社をつくって行う案件の担当をしたことがある。最初は広報事業だったが、ビジネスとして拡大していく。その拡大とは、当初のメイン商材で顧客になってくれた会員に対するいわゆるリストマーケティングになったからだ。具体的にいうと、数万円以上する年1回の限定販売商品を頒布するメンバー会員を募り、この数万人の顧客に対するマーチャンダイジングをするモデルになった。限定された顧客リストに対して、モノやサービスを開発するのだ。これは実に面白い体験だった。
 この経験で認識したのは、マーチャンダイジングこそが最強のコミュニケーションだということだ。「あなたのためにつくったこの商品(サービス)です。」というメッセージは強い。もちろん売れないものもたくさんあった。半分メーカー、半分デパートの外商のような仕事は広告会社の人間としては実に新鮮だった。

通販マーケティングは基本的に、まずは不特定多数に告知して、商品の購買を促し、顧客化したあとのリテンションを促すものだが、特定の顧客リストに対するマーケティングをしようとすると、肝心なのはマーチャンダイジングだ。
新規顧客獲得、リピート、ロイヤルティ獲得というCRMの概念に、DMPによる商品開発でLTV最大化を組み込む時代が来ていると思う。
つまり、既存商品の販売量をKGIとして、コミュニケーションを問うことばかりするのではなく、ロイヤルユーザーと伴に商品開発をするということだ。
 メーカー思考だと、シーズが特定されていると思いがちだが、実は顧客をベースにマーケティングしているので、今の上顧客は何を欲しているかを探索して、あらゆる商品やサービスを提供するという意識に転換しないといけない。シーズは顧客の方なのである。

 特にマスブランドの企業がダイレクトマーケティングをするということは、むしろそういうことなのではないだろうか。メーカー思考ではなく、リテーラーになったつもりで、顧客視点で、ダイナミックなマーチャンタイジングを行う発想を取り込む必要がマスブランド企業にはある。
 この思考が、従来のマスマーケティング事業部と融合することが、B to C企業全体のマーケティングを変革することに繋がる。

 商品力を問わず、コミュニケーションだけ最適化するダイレクトマーケティングには限界があると同時に、マスマーケティング商材を抱える企業内でのシナジーが効かない。マス企業のダイレクトマーケティング部門の使命は、独立事業部として売上げ利益を上げるだけでなく、直接顧客を知っているからこそ出来る顧客視点のマーケティングを全事業の資産として生かすことだ。

 よって、企業がプライベートDMPを構築していくためには、CRM事業部門の参画が欠かせない。
 ダイレクトマーケティングしかしない通販事業者にも当然DMPがマーチャンダイジングに活用のチャンスはあるが、マスマーケティング企業こそ、せっかくダイレクト事業をもっているなら、これらを繋ぐことが求められる。

 つまり、経営トップがこれを理解し、経営判断することが求められるのだ。

少しばかり話題にするのが遅れたが、昨年のエージェンシーランキングをアドエイジ誌が発表している。
 トップ20位までを抽出すると、(見にくい表で申し訳ない。一番右の数字が前年比伸長率%なので、ここを見てください。)

AGENCY HEADQUARTER 2012 2011 %CHG
1 WPP London 16,459 16,053 2.5
2 Omnicom Group New York 14,219 13,875 2.5
3 Publicis Groupe Paris 8,494 8,086 5
4 Interpublic Group New York 6,956 7,015 -0.8
5 Dentsu inc, Tokyo 6,390 5,951 7.4
6 Havas Puteaux 2,287 2,291 -0.2
7 Hakuhodo DY Tokyo 2,184 1,934 12.9
8 Epsilon Irving,Texas 1,223 1,146 6.7
9 MDC New York 1,071 940 13.9
10 Experian MS New York 947 791 19.7
11 Acxiom Little Rock, Ark 823 819 0.6
12 Sapient Corp Boston 772 686 12.6
13 IBM Interactive Chicago 717 439 63.3
14 DJE Holdings Chicago 690 629 9.7
15 Cheil Worldwide Seoul 597 461 29.7
16 ADK Tokyo 580 580 -0.1
17 Aimia Montreal 486 574 -15.3
18 Media Consulta Berlin 481 460 4.6
19 Groupo ABC San Paulo 402 448 -10.3
20 inVentiv Health New York 388 363 6.9
出典:アドエイジ誌

 注目なのは前年比の伸長率だ。
前年比63.3%という驚愕の伸長を果たしているのが、IBM Interactiveだ。前のエントリーで「広告代理店対システムインテグレーター」と書いたが、融合モデルが次世代エージェンシーであり、テクノロジーエージェンシーというかたちが有望なことを物語っていると思う。同様にExperin Marketing Service も20%近い伸びだ。Experianのマーケティングサービス部門のこの会社がエージェンシーランキングに入っていることはある意味アドエイジの見識でもある。Experianは米国の一般人の理解では「個人のファイナンシャルスコアを算出する会社」=銀行や、ローンや、クレジットカードの利用状況を把握し、スコア化して、ローンの利率や査定に役立てるデータを出す3強の一つだ。こういう会社のマーケティング会社が遠慮なくどんどん伸びてる。ベムはデータ活用推進派だが、この手のデータがどこまで使われてるんだろうと脅威に感じないわけではない。

次に注目は、韓国のチェイルワールドワイド。サムスンのAEだからこの伸長率も納得。(サムスンは世界一の広告出稿社になったようだ。)
一昨年秋、ベムはソウルに招かれてチェイルのデジタルマーケテイングリーダーズカンファレンスで、基調講演をやってきた。2000名弱の社員の内800名以上が海外だと言っていたから、正真正銘ワールドワイドなエージェンシー。キム会長は日本語もペラペラ。全部日本語でお迎えいただいて恐縮した。
とにかく勢いがある。一気にADKが抜かれちゃったね。

また出身はカナダのMDCグループ。最も早く自社システムでエージェンシートレーディングデスクを立ち上げたグループである。経営にこうした先見性と機動力があることが奏功しているのだろう。

 さて、話を5大メガエージェンシーグループに移すと、一昔前に比べてるとインターパブリックの不振が目につく。WPP、オムニコム、インターパブリックの3大メガエージェンシーだったはずなのに、ピュブリシスに抜かれてんだね。
電通は単独では今も世界一だし、Aegisの買収で完全にグローバル・メガエージェンシーになった。実態はそうじゃないという意見もあるが、
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/fukabori/2012092000008.html
 ベムはそうは思わない。2位以下とは次元の違うグローバル化を果たしていると思う。電通アメリカの動きなど見ていると今までと全然違う。

 ところで国際会計基準だと、エージェンシーの売上げとは日本でいうところの売上げ総利益だ。Gross Incomeってやつだ。電通さんも国際会計基準にするという記事もでてましたな。日本でいう売上げつまり扱い高はBillingというのかな?WPPだとおそらく日本の広告費より多いんじゃないかな。ただ海外ではBilling(扱い高)はほとんど意味がない。
 日本で扱い高にこだわるのは、メディアの扱い高シェアが問題だからだ。営業部門からすれば本来は総利益がすべてだが、仕入れ部門からすると、仕入れ額がそのエージェンシーの仕入力の指標だから扱い高主義になる。だが、もうそういう時代じゃなくなるだろう。日本の広告代理店というところは、従来、経営陣でもBSどころかPLもろくに読めないのが多い。人件費が何にどれだけかかっているか管理できていないので、総利益まででしか評価できていないケースもまだある。まあ経営が前時代的なんですな。営業利益ベースで管理できないようでは経営などできない。逆に言うと、昔はよくあんなどんぶり勘定で経営できたもんだなと感心する。

 ところで、WPPって何の略か知ってますか?と先日のセミナーでも受講者に訊いてみた。まあ有名な話だから広告関係者はほとんど知ってるでしょうが、Wire Plastic Products なんですな。ワイヤーとプラスチックを扱って籠かなんか作ってた会社の法人株を買って、持ち株会社にしたわけです。ベムはアサツー出身なので、BBDOと提携した時とWPPと提携した時の違いを体験的に言うと、BBDOは広告会社なので、マーケティングのフィロソフィーやメソッドを教えてくれた会社だ。マーケティング部門に心理学博士がゴロゴロいるのでビックリしたのを憶えている。BBDOウエストのLAオフィスとCM制作した時はハリウッドクリエータを自在に駆使できるそのクリエイティブ開発力には脱帽だった。
 一方、WPPはホールディング会社なので、そういうクリエイティブやマーケティング手法での具体的な連携がそんなにあるわけではないように思う。グループのJWTやOMも競合会社だしね・・・。日本以外ならグループのリソースはもっとうまく使えるだろうが、そこは日本の特殊事情がいろいろあって・・。

 
 アドエイジ誌のランキングにどんな会社が入ってくるかは、その時代の趨勢を反映している。そもそもアドエイジがエージェンシーとしてどんな会社をランキングに入れるかからしてそうだ。IBM Interactive や、Experian Marketing Serviceがこのランキングに入っているところに意味がある。
 ベムは日本国内で競合する広告代理店同志で合弁会社をつくるということをやってみた。しかし、これからはシュリンクする広告業界内でシェイクハンドすることはもうあまり意味はないだろう。いかに業界の外のプレイヤーと組めるかという視点が大事だ。