ベム: 2013年4月アーカイブ

 広告主が広告代理店やクリエイティブファームに提案をさせる時、特に競合プレゼンテーションをさせる場合において、多くの広告主が決して上手なやり方をしていないケースが多い。それでも、CMなどのマス広告の提案の場合は、長年の経験値から広告主も代理店側も了解事項がかなり出来上がっているので、そうでもないが、問題はWebサイトやそのクリエイティブ、デジタル/ソーシャルのコンテンツ提案の場合だ。

 この領域の提案を求める時、特にコンペにする場合の広告主の提案のさせ方は、あまり上手ではなく、かえって本当に良いプランを得られていない場合が非常に多い。

 Webの制作費はピンキリで、ページあたり本当に安い単価でつくるところもある。(そもそもページ単価というのもどうなんだ?) ただただ安いのがいいのなら、それでいいのだが、クオリティの高いクリエイティブを買いたいのなら、それなりの知見が要る。

広告主側に経験値が少ないと、クオリティの認識(つくり手のどんなノウハウに価値があるか)とそのコスト感覚が出来ていない。求める期待値とコスト感覚が折り合っていないのだ。大手代理店に依頼するCMなどであれば、この辺が出来上がっている。しかし、Web/デジタル領域だと、どこに本当のクオリティの価値があって、どこをケチってはいけないかがまだ分からないというところだろう。「安物買いの金失い」にならないようにしないといけない。
意外にもWebクリエイティブのオリエンでは予算を明確にしないケースが多く、しかも期待値をうまくオリエンできていないので、提案する方もオーバースペックになったり、的外れなものになりがちだ。

しかも非常に短時間での提案要求が多い。コンペなので、競合させるところに平等な条件を与えるのはいいが、提案側にもベストなプランを出せるタイミングというものがある。比較的タイトなスケジュールでも一生懸命対応する姿勢があるかどうかを選抜の判断材料にしようという意図もあるかもしれないが、それはあまり的を射ていない。


本来ならアクセス解析ツールがあれば、アカウントを一時渡して分析させた上での処方箋を出させるべきだろう。その辺りは従来のマスクリエイティブ提案とは少し違うと認識した方がよい。全く同じ感覚でやると、本当に損をするのは実は広告主自身だということを認識しないといけないだろう。

やはり広告フォーマットがあるものはつくる側もそれを選ぶ側も基準があって、比較的楽に提案と採用が成立していたが、ノン広告フォーマットの企画提案にはまだまだ採用する側も提案する側も技術が確立していない。
これをうまくやらないと損をしているのは基本「買う」側である。

 DMPが火付け役になって、起こる戦争がある。名付けて「データ格納戦争」だ。

 まずは広告配信の世界だけでも、大手企業広告主、大手メディア会社、大手広告代理店が、データ取り込み戦争を行うだろう。既にアメリカで起きている状況でいうと、WPP、IPG、ピュブリシスなどのメガエージェンシーグル―プがDSPによるエージェンシートレーディングデスクを早くから立ち上げた。当初この動きに広告主側はオペレーションフィーを払うことを「マージンとの二重取りではないか」と騒いだが、本当の狙いはそんなことではない。DSP/RTBによる広告買い付けの扱いを受注すればするほど、配信結果データが集積できる。実はこのデータを取り込むことが狙いであった。それに最初に気が付いた大手広告主が代理店に「我々の金で買い付けた広告の配信結果データは我々のものだ」と主張したのだろう。大手広告主企業が外部のテクノロジーでプライベートDMPを構築したと同時にプライベートDSPを用意させるのは、データは自分たちだけのセキュアな環境をつくってデータによる学習効果を自社の広告配信に活用しようとしている。
 


 企業がプライベートDMPを用意した方がよい理由は、まずユーザーデータのセグメントはブランド側のマーケターの手によってしか出来ないということ。(他人のつくったデータが使えるということはない。)
 そして、せっかく自身の金で広告を買って配信しているのに、その配信結果データを活用して学習しないのでは意味がないこと。
 それから、DMPは広告配信ためだけのものではないので、DSP事業者のDMPだけ(広告のためだけに)使うのでは拡張性がないからだ。

この領域には、SIerさんたちが虎視眈々と参入を狙っているだろう。テクノロジーはマーケターのフロント側に出て行っている。業務システム系の「守り」側から、営業・マーケティングの「攻め」のフロントラインである。業務システム系にはしっかり食い込んでいるSIerさんたちは、フロントにも領域を広げたいだろう。
 広告配信データだけではなく、多くのマーケティング施策に活用できるDMPは、広告側からアプローチするプレイヤーと、基幹システム系でのデータを統合して,さらにマーケティング活用するDMPへのアプローチするプレイヤーでにぎやかになるだろう。

 DMPの導入は企業にとって、簡単ではない。しかし企業がデジタルマーケティングとかデータドリブンなマーケティングを実際に推進できるように、自らが変わるためには、DMP構築運用を組織横断プロジェクトは非常に有効な手段であろう。
 
 DMPについては、ATARA有園さんとの会談が、http://www.attribution.jp/000198.htmlに掲載された。こちらも是非ご一読あれ。

 RTBでのディスプレイ広告枠取引が拡大すると、リスティング広告と合わせていっそう運用型広告の重要性が高まる。
 この入札運用型広告だが、従来の枠もの広告の買い付けと効果検証の仕組みがまったく違う。

 まず、従来枠ものであれば、枠そのものがPDCAの対象だが、DSPでは運用そのものがPDCAの対象である。よく枠ものとDSPを並列にしてCPCやCPAを相対評価している代理店があるが、これはナンセンスだ、DSPでどんな運用をしたかの情報がなにもないのに(レベルの低いオペレーションだったかもしれないのに)結果だけ見ても意味がない。
 
 枠ものでは、基本、広告代理店の営業が紙のレポートを持ってきて、広告主担当者と向かい合って説明を聞く。しかしDSPを含めた入札運用型広告では、PCのレポート画面などの管理画面をオペレータと広告主担当者が横並びに座って、同じ画面を見ながら報告を受ける(報告を受けるというより、いろんなファインディングをいっしょに確認する)というイメージだ。枠ものよりはるかにリアルタイム感覚が必要となる。

 メディアの売り買いということで言うと、
 今までは、広告代理店の営業が持ってくる広告メニュー(プラン)から、メニューを選ぶということから始まる。広告というものはずっとこの形でやってきたので、何の疑問も持たずに広告主企業の方々も買ってきた。
 しかし、よくよく考えて欲しいのだが、広告枠(広告メニュー)というのは売る側(セルサイド)の論理で出来ている。枠が有限なテレビなどマス広告枠では分かるが、掲載面を買い切ることなど出来ないネット広告(今後もデバイスが拡がるデジタル広告)では、こうした売り手主導の取引きはいつまでも続かないのだ。
 
 広告の売買に関わる大きな流れは、明らかに「売り手主導」から「買い手主導」への移行にある。
 
 DSPとは、デマンドサイドつまりバイイングサイドのためのプラットフォームであり、
「バイサイドの論理で買う」ということがどういうことかを、まずは広告主本人がしっかり理解しないといけない。
 「バイサイドの論理」は「バイサイド」で主導権をとって確立しないといけないのだ。研究し、自分でトライすることなしには価値を得ることは出来ない。

その意味で、広告主はインハウス運用を一度は検討した方がよい。
少なくとも運用の「肝」をつかみ、運用方針をディレクションできるくらいのスキルを獲得すべきである。

 年初の2013年業界予測でも「DMPが立ち上がる年」と書いた。
DMPとはデータ・マネージメント・プラットフォームの略。DSP、RTBに続いてまたまたアルファベット3文字の登場だ。
 しかし概念としてのDMPは、大きくふたつに分けられる。ひとつは広告配信先のデータセラーとしてDMP、もうひとつは企業が自社でデータを格納するプライベートDMPだ。もうひとつの見方でいうと、広告だけのためのDMPと、広告配信も含むがもっと多くのマーケティング施策を最適化するためのDMPである。前者はDSPと一体にDSPを事業としているプレイヤーによってもつくられる。だが、プライベートDMPは広告主企業自身でないと出来ない。自社の顧客と将来の顧客データをどう意味づけてセグメントするかは企業自身でしか出来ないからだ。(これはアウトソースできる話ではない。)もちろん重要なのはこちらのDMPだ。


プライベートDMP図.gif


 「DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門」でも書いたが、「枠」から「人」への大きなパラダイムシフトが起きた。

 パラダイムシフトとは、

 「売り手の論理で出来た広告メニューを選んで買う」から「買う側の論理で1配信づつを自分で買値を決めて入札する。」ということだ。
 (DSPとはデマンドサイドつまりバイイングサイドの仕組みということ)

そして、
 「枠情報をもとにメディアプランニングする」から「ブランド側の情報でオーディエンスプランニングをする」に替わる。

 広告を配信すると当然広告反応がデータとして残る。クリックしたクッキー、ビュースルーしたクッキー情報、それらの反応が良い掲載面情報、悪い掲載面、配信タイミング、地域、配信環境・・・。これらを学習することで広告はさらに最適化される。企業が自分でデータ格納装置を持てば、必ず自身で管理したいと思うだろう。なにしろ自身のお金で買った広告の結果データだからだ。これを広告会社やDSP事業者側の学習機能のための差し出しているだけでは実にもったいない。
 自分でお金を出した買った広告配信の結果データは、自身のデータ格納装置に貯めて、分析、学習し、次の配信をより最適化するために使う。当然のことであろう。


 DSPでリタゲのクッキーを配信対象として買おうとする時、意外なほど安く入札できることに驚く広告主もいる。同じクッキーへの入札が競合しない限り、ターゲットされていながらも単価が上がるわけではない。従来売り手がメニュー化するとターゲティングされた広告は単価が高くなるのが必然だが、バイイングサイドの論理では、そもそも自社で獲得したクッキー(配信対象データ)なので、掲載面だけ買う広告がそんなに高くつく訳はない。


 単純なリタゲだけやっている時代はもう過ぎた。

自社サイトに来た見込み客がどんなユーザーかを外部データも使ってもっと精度を上げ、自身の分析とセグメントと、さらにそれらの広告反応データをマーケティング施策全体に活用する。これが出来る企業とそうでない企業の差は極めて大きい。(これをいつも言っていて恐縮だが、ホントです。)


*5月に「DMP(データマネージメントプラットフォーム)入門(仮題)」をインプレス
さんから出版します。