ベム: 2012年12月アーカイブ

デジタルマーケティングの2012年をちょっと振り返ると・・・

 今年2012年、DSPはかなり普及したが、まだまだ「DSP=リタゲ」というレベルに留まっているということと、リタゲの精度がまだ低いことで課題を残した感がある。

 RTBの本当の効用を得るのはこれからだ。

 また、「アトリビューション」はバズワードとしてはかなり浸透したが、実践にもまだほど遠い。第三者配信サーバーでコンバージョンパスデータを取得するのはいいが、そもそもリ・アロケーションするために必須の入札コストデータなどを捕捉しておかないと意味がない。こうした整備がされ始めるのはやはり来年2013年からだろう。

 当然、マス広告を含めた「トータル・アトリビューション」も今年認識はされ始めたが、実行に着手できるのは来年からとなりそうだ。デジタルのマーケティング装置を使って、ネットだけでなく、マーケティング施策全体の最適化を目指す流れは始まりつつあると言っていい。

 そういう意味では、もろもろ本格的な動きは2013年に持ち越した。

米国IABでも、今年e-GRPの基準策定が検討されていたが、しっかりした合意形成に至らなかったようだ。動画が、DSP展開とスマホへの拡大で、来年大きく動く可能性が高い。クリックで評価する意味があまりないこうした動画配信については、新たな指標を要する。

 さて、恒例の年初の業界予測を書く準備に入ろうと思う。

 私がADK-i社長の時に毎週水曜日の昼に1時間実施していた座学講座「横山塾」は、デジタル広告の最前線だけに、とかくデジタルメディア戦術だけに嵌りがちなメンバーのために、川上で何が行われているかを知る講座だった。もちろんデジタル領域も知るべきことが次から次に出てくるので、その道のエキスパートの方に講師になってもらってインプットしていた。全部で80週分のコンテンツになっている。
 川上で何が行われているかというのは、ブランドの表現戦略とメディア戦略が、どういうブランド課題や目標設定のもとに設計されていくのかを知るということだ。クリエイティブは何を訴求し、どんな課題を解決しようとしているかTVCMとしてアウトプットになる手前を理解することが、メディア戦略の一部となっているネット広告を担う人間にも大事だ。

 もちろん、ネットのスペシャリストももっとマス広告の実際を知るべきだ。私がDACの新人研修の講師をするときは、最後に必ずテレビスポットの作案演習をやらせる。おそらくTVの仕事はすることはないだろうが、マス広告がどんな取引形態で、そんなプランニングが行われているか「知っている」方がいいのは当然だ。

 「横山塾」の講座内容は、このマトリックスにプロットしていた。網羅しているかと、最新情報を得ると、以前の話はどこがどう変わるか(これを私は「上書き保存能力」と呼んでいた。)がすぐ理解できないといけない。

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 さて、最近、ネット広告代理店がやっている「クリエイティブ」って、私が昔やっていたマス広告の「クリエイティブ」と概念や解釈がちがうよね・・・という話をする機会があった。ひとりはアサツーで同僚だった佐藤達郎氏(多摩美術大学教授)、もうひとりはDSP/RTBオーディエンスターゲティング入門」の共著者の菅原健一氏だ。

 ネット広領域では、広告の「クリエイティブ」と言っても、例えばリスティングの広告文作成やバナーでも出来合いの素材を使ってレイアウトする程度(といったら怒られるかな)ではある。リスティングの広告文もメソッドみたいなものがあって創られるようだ。
時折、こういうメソッドを破って、マス広告のコピーライターに書いてもらってものを使うと中にはえらいCTRを叩き出すものが出てくるらしい。
 
 菅原氏と話していて、野球に例えると、ネットのクリエイティブはバントヒットを狙って3つか4つを試して、どの辺に転がると出塁率がどのくらい上がるかという野球だが、マスのクリエイティブは1000回バットを振り回して、打席に立ってホームランを狙う野球だという話になった。ただしマスはどうしてホームランが出たか、またどうして凡打に終わったかは検証しない。とにかく1000種類くらいバットの振り方を考えて、その1打席にかけるのである。

 この話は佐藤氏と話したことと、まったくリンクする。マスのクリエーターは、とにかく1000本ノックをするので、発想を一度大きく拡散させる。でっかいホワイトボードにカードにコンセプトワードやコピー案をたくさん書いて貼りまくる。(この手書きがいいんだと思うが)
 そして、一回拡散させた案を収斂させるプロセスに入る。こうした拡散と収斂というプロセスはネット系にはない。
 私が思うに、パソコンで文字打ってつくるとPC画面をはみ出す発想に拡張できないんではないかと思う。

 とはいえ、マス系クリエイティブも基本マス広告のフォーマット(15秒のCMとか15段広告とか)を前提にしか発想できない「CM職人」化が問題かと思う。

 そこで、ネット系の広告マンに、伝統的なマス広告のクリエーターがどういう開発プロセスで発想するのかを演習したり、マス広告のメディア戦略設計やマス広告のプランニングの実務を研修する講座をやってみようという話になった。
 もともとPDCAを廻すことに身についている人たちに、もっと豊かなクリエイティブ発想の実践を応用することにチャレンジされたい。
 
 詳細はTATEITO社からセミナー実施要領が発表されるかと思う。

私は、刈取りの部分で顧客化のプロセスをよく見ているネット広告系アドマンに、刈取りから上流に上がってアウェアネスを設計するチャレンジをもっとしてほしいと思う。
 特にサーチは「顧客インサイト」そのものである。サーチに対応しているスキルを1000本ノック(文脈)でコピーを考えられるようになって欲しいのだ。

 こうしたハイブリッド人材の育成が、きっと日本のマーケティングに貢献できるものと思っている。