ベム: 2012年11月アーカイブ

出来れば記事コンテンツを読んだ人が、ブランドサイトの訪問を果たしたか、はたまた何らかのコンバージョンに至ったかを測定する試みをしたい」と以前から考えていた。

今回、弊社デジタルインテリジェンスとインテグレートさん、アタラさん、JBプレスさんの4社で取り込んでいる「パワー・コンテンツ連動型アトリビューションマネージメント」は、言ってみれば、パブリシティ活動の成果をオンライン上のアトリビューション分析で見ようというものだ。従来、中身のある編集タイアップページを頑張ってつくってWebに掲載したとしても、なかなか何百万PV閲覧されるなどということはない。数万とか場合によっては数千とかのPVでもじっくり読んでくれれば、価値のあるコンテンツであるが、では、これを閲覧した人にその後どれだけのアクションを誘発しているかとなると、タイアップからの直接クリックは知れたものだし、記事ともなればクリックのリンクどころかブランド名、社名も入れる訳にもいかない。

これの閲覧者をクッキーベースで捕捉できると、どういう効果を生んだかが分かるのではないかというのが最初の発想。そして、記事コンテンツを読んでくれた人に、今度はブランドをアピールする広告を配信できれば効果的ではないのか?という仮説にもとづいたチャレンジである。

今回は、「ネット上でのパブリシティは効いているのか」を詳らかにするとともに、記事で当該商品カテゴリーに関する社会事としての情報で学んだ人に「広告」を打つことでの効果検証でもある。

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図は縦がブランドに対する関与レベル、左右にその商品やサービスのカテゴリーに関する関心の顕在化の度合いというものだ。まだ関心を潜在化していない左下から右上に、広告だけに引き上げるのは、かなり無理がある。いったんカテゴリーへの温度を上げてからブランドを訴求した方が効果的なはずという仮説だ。


「トリプルメディアマーケティング」を書いてから、実践論を確立するためにも、広告だけ対応するのは無理と分かっていたので、「情報クリエイティブ」という戦略PRのアプローチが有効だと思っている。

下記の図は、ヴォーン博士のマトリックスである。これは旧アサツーがBBDOとの提携時代にBBDOから教わったPurchase Decision Model として、いくつかのマーケティングメソッドのうちのひとつであった。(余談だが、BBDOには心理学ほかの博士号をもったマーケティング部門の人たちがいっぱいいて、マーケティングコミュニケーションを科学し、メソッドを開発していた。日本とはレベルが違っていた。)

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マトリックスは上部が、自己関与が高い領域で、下が自己関与が低い。左は理性的購買つまりThink型で、右は情緒的購買、Feel型というものだ。自己関与(involvement)が高いかどうかということを測る質問項目があって、購買リスク、こだわりに関わる何問かの回答スコアで数値化されている。

私がこれを使ってプレゼンでマーケティング領域の理論武装をしていた20年ほど前には、クルマはもっと左で、ビールはもっと上(高関与/情緒型購買)にプロットされていた。また、ここでは商品カテゴリーを分析しているが、同じ商品カテゴリーのなかでのブランドをプロットすることもできる。同じ商品ブランドに関してどう感じているか被験者ごとにプロットもできるだろう。(つまりこの商品カテゴリーのプロットは平均値で、商品カテゴリーによって散らばり具合も違うだろう。)

このモデルを面白いと感じたのは、プロットして相互のポジションを確認して終わりではなく、象限ごとにどういうコミュニケーションプロセスとすべきかが明解に定義されているところである。そして、このプロセスは、AIDMAなどの旧ファネルモデルでは解釈しづらい「Buy」から始まるものや、広告(アド)だけでは難しい「Learn」の醸成を含むものであった。

そして、このマトリックスは、トリプルメディア時代になった今だからこそ私には非常にmake senseするモデルとなった。

まず、低関与をBuyからスタートするとなると、従来だと、「店頭施策」からになってしまうか、「買って良かったんだ」と納得するコミュニケーションを創るのかとか、広告だけの使命ではないのがよく分かる。ファネルを購買行動で終わるモデルではなく、そこからも始まるこの蝶ネクタイ型にすると、習慣的購買や衝動的購買のモデルのプロセスの理解ができるし、応用が効きそうだ。


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そして、特に今回の施策で言うと、左上のLearnから始まるプロセスは、単に広告だけで行うことが難しいと思われる。ここにアーンドメディアの活用のポイントがありそうだ。最初から自社ブランド名を声高に叫ぶだけでなく、第三者の立場で、正直に真実を語り、学んでもらうプロセスが大切だろうと思う。
現代の消費者はつくられた虚像のコミュニケーションに辟易としており、(ソーシャルメディアがこれを促進したと言える。どんな価値より「自分」に対する「真実性」が重要と考えている。消費者が信じる価値が「真実性」であれば、コミュニケーションも「真実性」を追求するものでなければならない。そこで、まずは消費者が真実を語るであろうと考える第三者(メディア)によって、本当のことを学び、理解を深めてもらうこと、そして、それが果たせた消費者に狙い撃ちの広告が配信できることが、次世代型のマーケティングである。

コミュニケーションの「Authenticity」を「Learn→Feel→Buy」のプロセスに生かすには、パブリシティの力と、メディアに書く意味と価値を作り出す「情報クリエイティブ」力が必要である。


「Authenticity」については。また別途エントリーを書こうと思う。

 まだ20世紀だった99年、ヤフーが扱えなかったDACは、最初にダブルクリックに接触してアドネットワークを実現した後、ボストンでおそらく世界で最初の第三者配信サーバーをつくったアドナレッジ社と接触しました。
 ここの社長は元南アフリカの空軍のパイロットという異色の経歴で、元軍人らしく「できないことはできないと」いう真面目な人でした。(当時アメリカに行って、アドテクノロジーの会社の社長に会うと、大概「ノープロブレムおじさん」で、出来ないことも出来るというのにずいぶん騙されたものです。)


 ここの仕組みを日本に持って来ようと動き出してから、アドナレッジはエンゲージを経て結局ダブルクリックに買収されてしまうのですが、とにかくアドネットワークにはプレミアムな枠をリクルーティングしづらい中、個別の媒体社のプレミアム枠もクリックだけでなく、ポストインプレッションも計測して媒体価値をもっとアピールできたらいいなというこで、日本導入に走りました。
 

 ダブルクリックのDFA(ダート・フォー・アドバタイザーズ)は、ダブルクリックがアドナレッジを買収して、その技術を使ったのではなく、自社でも開発していたものでした。競合をつぶしておくための買収で、それだけアドナレッジはよく出来ていたとも言えました。

 さて、日本でもという当時、IBMさんは全世界でDFAを使っていて、DFA配信でないとそこの媒体社は使わないというくらいのスタンスだったので、最初はヤフーさんもタグを受け入れていたのを憶えています。
 その後、ヤフーさんが他社サーバーからの配信を受け入れない方針をとるのですが、第三者配信サーバーが日本で普及しなかったのは、それだけが原因ではありません。そもそもエージェンシーを含め、別途配信料を払ってまで、これを使うメリットを創出しきれなかったと言えます。


 ポストインプレッションやビュー・スルー・レートが分かったとして、いわゆるCPAの効率化にどう貢献できるのかの具体的な施策を提示できなかったわけです。また広告主さんのご担当も、クリックによる単純CPAの方が上司への説明もしやすいし、あえて話を複雑にするメリットも少なかったと言えます。
 こうして、日本のネット広告の単価は、どんどんバイイングサイドのCPAに見合ったCPMでの買い付けが進み(価格形成力がバイサイドになっていき)、インプレッション単価は米国の1/3ほどにまでなってしまいました。こうなると余計に、広告の購入代金に対しても配信料がリーズナブルな価格に感じなくなり、日本の第三者配信はずっと水面下に潜ったままでした。


 そんな折に、今回ヤフーさんと提携したメディアマインドの前進のアイブラスターがDACと提携し、これを代理店に販売すべく、よくF君と行脚したものです。
 

 アイブラスターは、リッチメディア広告フォーマットのシステムでした。もちろん配信サーバーではありましたが、その提供している価値は、フローティングアドなど媒体社の掲載面のなかで広告の画像の稼働範囲やアクション、インタラクションを、制作サイドとメディアサイドと広告主サイドがオンラインで確認しあうことができる画期的なものでした。今でも私は素晴らしいソリューションだったと思っています。


 いくつかの代理店、それも媒体セクションだけではなく、クリエイティブにも見せて紹介しましたが、これをどんどん使ってくれるところはほとんどありませんでした。まあ、広告クリエーターにとって、こういう画面上での作業がクリエーターの矜持にかかわるとかということもあったかもしれませんが、そもそもリテラシーに乏しいからではありました。そうこうするうちに、アイブラスターはリッチメディアフォーマットもいいけどレポーティングが実に良いという評価が先行していき、3PASとして、DFAの対抗にのし上がった感があります。


 しかし、今回のヤフーさんの発表で、宮坂さんがクリエイティブの提携先としてメディアマインドを上げたことは、良かったと思います。このソリューションの一方の本質がやはりそこにあるからです。

 まだ広告会社のクリエイティブには、ネット広告のクリエイティブを未だに見下しているところが少なからずあると思います。82年から15年、マス広告にどっぷり浸かって、十数本のCM制作とアウトプットまでの表現戦略やブランディングコミュニケーションのあり方のご提案をやってきて、かつ96年からネット広告をほとんどゼロから作ってきた自負のある私からすると、インタラクティブなクリエイティブ環境にワクワクしないクリエーターは信じられません。

私がクリエータだったら、新しいリッチメディア広告フォーマットを開発して、それに自分の名前をつけますね。(体操の技に固有名詞がついているように・・・)

 そういう新しいことへのチャレンジ精神をもっと発揮しないと、広告会社のクリエイティブは本当に領域が狭くなっていきます。
 

 3PASはアトリビューション分析とそれにもとづく「リ・アロケーション」によって、広告主企業に新しい価値を生むでしょうかが、分析によって最適化されるのは当然メディア配分だけではありません。そこにはメッセージの最適化(ターゲットとメッセージの最適化)と消費者のコンバージョン性向という文脈の発見によって、さらに最適なコミュニケーションの開発がなされることです。そこでは当然マス広告を含むマーケティングコミュニケーションすべてに関してです。


 エポックメイキングなアドテックを終えて、インターネット広告を自らのビジネスにして17年目の感慨ひとしおと言ったところでしょうか・・・。