ベム: 2011年1月アーカイブ

 母校清水東高校の同級生で、大学受験に一緒に東京に出てきた私の友人、栗田宣義氏をテレビで見かけたのは、昨年の夏だったでしょうか。さんまの「ほんまでっかTV」のスペシャル版に、これまたキャラの立った識者としてゲスト出演していました。最初は、同姓同名の人がいるんだな・・・と思って、よくよく顔を見たら、何と私の旧友栗田宣義氏その人ではあーりませんか。
 現在、栗田氏は武蔵大学の教授であり、社会学部長という重職にあります。「ネコタロウ」のニックネームでその世界では有名な教授で、「ファッションとメイクの社会学」など、たいへん面白い切り口の社会学で、授業を受けたい先生のランキング上位にあります。

 そのネコタロウ先生にほぼ30年ぶりに再会を果たし、旧交を温めたわけです。
彼は社会学でも計量社会学をやってきているので、調査系に強い人です。その方面のコンピュータソフトに明るいので、PCやネットへの関わりにも強いようでした。インターネット関連の資料を探していたら、私の著作「インターネット広告革命」を見つけたようです。有難いお話で・・・。

 トリプルメディアマーケティングを直接差し上げましたが、「もし学生さんたちにこんな分野の話でよければ、いつでも江古田に行きますよ」とお約束しました。

 昨日、マーケティング協会のセミナーで、電通さとなおさんと博報堂須田さんと講演してきましたが、ソーシャルメディアのコミュニケーションとマーケティングにどんな変化をもたらすかが除々に見えてきた感があります。
 
 ソーシャルメディアの影響ということを考えると、マーコムの世界も社会学的なアプローチがもっと必要に思います。ネコタロウ先生の社会学も勉強して、彼の知見も取り入れてみたい。
勉強させてもらおうっと・・・。

バナー広告と云うと、どうもチープな広告クリエイティブという印象がいまだについて廻るので、「ディスプレイ広告」ということにして、今いちどそのクリエイティブについて考えてみよう。

 私が、ディスプレイ広告のクリエイティブに強い印象をもったのは、もう10年以上前になるが、オーストラリアのIBMがJAVAバナーで作った「クリアソリューション」というコピーのものだった。水面がゆらゆらと動いているところにマウスをよぎらせると、水面に波紋が出るインタラクションで、(水面に波紋をつくるインタラクションは、そのパソコンのCPUの計算速度に依頼するので、古いパソコンだと、水面というよりどろっとした油面を触ったようになってしまう。)訴求したいコンセプトの本質をシンプルに表現していた。
 もうひとつは自分たちで試作した、ある輸入車(高級スポーツカー)のフローティングで、クルマはアイドリング状態なのだが、エンブレムにマウスで触れると、エンジンをふかした状態を振動と音で表現するだけのもの。空冷のエンジンらしい音が何ともいい感じのクリエイティブだった。

 もちろん広告で訴求したいことが、常にこんなシンプルなことで済むわけではない。しかしアイフォンアプリの初期にジッポーのライターが評判になったように、(ジッポーは、アイブラスターの初期にもクリエイティブ賞をとっている。)シンプルだがそのエッセンスを強く印象づける力が、「インタラクション」というクリエイティブ要素を駆使すると、他のマスメディアなどでは出来ないことを実現させるのは事実だ。インタラクションによるブランドエンゲージメントを実現できる可能性があるなら、従来は使っていないブランドがディスプレイ広告を使うようになるかもしれない。
 
「訴求したい商品やサービスのエッセンスをインタラクションで印象づける作業」これがネット広告のひとつの方向性だと思う。インタラクションがネットユーザーによって、そのブランドに対する関与の第一段階となる。そういうクリエイティブがネット広告らしい、「ならでは」の表現となるはずである。

 クリックを促したいのは、それはそれで良いのだが、広告によるエンゲージメントというかリレーションシップというか、ユーザー行動を把握できるブランドへの自己関与の第一ステップとして捉えられるクリエイティブをもっと創っていきたい。
 もちろんこうした作業で、ビュースルーも増える可能性も高い。最終的なトラフィック効果、コンバージョン効果という次の「行動」への期待値も上げるのではないかと思う。

 「リッチメディア」というワードは最近、あまり使われなくなってしまったが、その使い方と効果を再度確認してもらいたい。

 前回のエントリーに対して、ツイッターで、「GREEやモバゲーの出稿でテレビ広告が回復したと言っていいのだろうか。」というツイートがあったので、解説を加えてあげようと思う。
 GREEやモバゲーを広告主として取り込むからこそテレビ広告需要が維持(または回復)できると云った方がいい。「テレビ広告が回復する」ということが、従来のようにクルマや化粧品や飲料食品などで回復するなんてことは、はっきり言ってない。テレビは今までも消費者金融やパチンコ台や、その前も新たな業種・業態を広告主として開拓してきたことで成長を維持してきた。それはこれからもそうである。裏を返せば新しいビジネスを大きく成長させるのもテレビ広告の役割といってもいい。
 またテレビ広告の単価が、従来より下がっており、テレビを使える業種や広告主は増えていると考えられる。もちろん民放連の基準で、まだテレビ広告を受け入れられない業種も多い。しかし真っ当な商売なら、新しいビジネスがどんどん勃興して、それが市民権を得て、高い収益性を確保して、(だから競合プレヤーも出てきて)さらに広告出稿をしてビジネスを維持発展させるサイクルがあるからこそ、経済は回っている。
 「GREEやモバゲー」の今の内容のテレビ出稿量が永続的にありそうと思う人はあまりいないだろう。しかし、DeNAさんがつい何年か前、今のビジネスだったかといえばそうではなかった。モバゲーのビジネスは前のビジネスでは出来なかったテレビ広告を打てるだけの収益性があって、テレビ広告に新規会員獲得のダイレクトブランディング効果を見出して出稿し、さらにテレビ広告でビジネスを拡大している。
 広告とはそういうものです。

それにGREEやモバゲーでテレビ広告が回復して、これからも安泰だなんて一言も書いてないんだけどね・・・。(本当の回復にはなっていないと書いたんだから)

 昨年も書いたので、今年も業界予測を書いてみよう。
景況感でいうと、幾分持ち直し傾向が強くなってきた。ただずっと「前年割れ」で来たので、前年増に転じたといえ、前々年、そのまた前と比較してどうなのかというと、まだまだマイナスだったりする。まあそれでも減少傾向に歯止めがかからないよりはいい。
 さて、私なりに、今年の業界に起こりそうな象徴的な動きを予測してみようかと思う。
まずは何と云っても、完全デジタル化元年であるので、テレビ広告をテーマにしてみる。
 昨年末もこの年度末にかけても、スポットは好調で、3月ももうほとんど取れない。テレビスポットで溢れた出稿が、新聞やネットに流れている。ネット広告も大型枠からどんどん埋まっている。
 ただ、この好調傾向は、スポットと東阪名こそ顕著であるものの、タイムや地方にまで好調を完全に取り戻しているとまではいかないようだ。テレビ広告の好調を支えているネットやモバイル新興企業のスポット出稿がそういう出稿傾向にあるせいもあるだろう。タイムや地方局にもしっかり出稿が入らないと、テレビ局の経営にとっては本当の回復とまではいかないだろう。また単価が昔の景気のいい時代と比べると本当に安くなっているので、満稿でも昔ほどの収入がある訳ではない。
 とはいえ、テレビ広告の効果は再認識されたと思う。ネット企業がこれほどテレビを使っていること自体がそれを象徴している。ネットでの会員化を促す広告メディアとしてテレビが一番絶対量を獲得できるメディアであるからだ。新興ネット企業も、ダイレクトマーケターと同じ使い方をしている。テレビ広告に求めるブランディング効果は「ダイレクトブランディング」ともいうべきマーケティング目標が主流となったのかもしれない。これがいつまで続くかが問題だが、ネット企業の収益性からして、また競合環境の激化からして、簡単に低調にはならないだろう。
 ただ今のような番組制作が続くと、本当に可処分所得のある層の視聴率はどんどん取れなくなる。ターゲット視聴率ベースでみると、獲得したいGRPはますますとりにくくなる。またそろそろ15秒ベースでのリーチとフリークエンシー(GRPをいかに獲るか)の議論になる広告主と、そうでない広告主に2極化するように思う。個人的な感覚でいうと、頻度よりも長尺の印象に残るCMの方が「ネットインプレッション」(最終的に残る印象)は大きい。大量出稿ができない広告主には良質なTVCMクリエイティブが再認識される時代に入った。ソーシャルメディア上で議論されるような(レピュテーションを獲得する)CMをいかにつくるかがテーマになるのではないだろうか。前述のダイレクトブランディングを求める傾向とは別に大量出稿は出来ないだけに、クリエイティブ(TVだけでない統合シナリオをベースに出来たテレビのクリエイティブ)をよ~く考える広告主が是非たくさん出てきて欲しい。即効性ばかりを広告に求められると業界としては辛い。マーケティングの時間軸を比較的長く設定した(トリプルメディアではオウンドメディアやソーシャルメディアは長期間の継続性を前提にしているのだから)テレビの使い方を再検討すべきである。その意味でBS、CSを含めたタイムの活用がポイントになる。この場合、視聴を促すためのモバイル広告というのも出てくるだろう。「テレビからネットへの誘導」の時代から「モバイルからテレビへの誘導」が起こる。一度に何かを伝える力は既にモバイルにあったりする。

 生活者のデジタルメディアへの接触時間は、メディア接触時間の21.6%を占めている。一方、広告費としては10%強しかないので、このギャップは埋まっていくべきものと考えられ
るが、テレビとネットの2強メディアをコミュニケーションメディアの中核にするのは当然で、テレビ広告の効果を最大化するためにネット活用が必然となる。

 さて、テレビ番組という強力なコンテンツは、今年いろんなデバイスに拡散すると思える。見逃し視聴やアーカイブをコンテンツ課金する手法は全く成長できないでいるが、広告モデルで新規コンテンツがPCやiPad、ネットTVなどに流れ、成功する事例が今年はでてくるだろう。テレビ局は基本コンテンツを持っているので、これまでテレビ放送以外の利用に消極的だったが、デバイスの拡散という時代の流れには抗しきれないから、かえってテレビ放送以外のコンテンツのマネタイズに積極的に転じる可能性がある。こうした際に一番影響を受けるのは、旧来型の放送の広告枠の売り方しか知らない代理店だろう。

 さて、ネット広告であるが、今年は3つの傾向が顕著になると思う。ひとつは、第三者配信の標準化の兆しである。これがないと、DSPだのRTBだの米国型の仕組みは成立しない。ノンプレミアムの広告枠からDSP型バイイングは始まるが、有力媒体でもすべてのPVがプレミアムという媒体はない。掲載面の品質に一定の保証があることを前提にしないと配信対象クッキーを選ぶ仕組みも、すべての広告主向けにはならない。そうしたことがいくつか解決されていく年になるだろう。

 ふたつ目は、ディスプレー広告とそのクリエイティブの再評価である。リスティングというプルモデルでの刈り取りの限界(効率は良くても絶対量を獲得できない)が露呈する。そろそろ種蒔きもしないといけない広告主は増えるだろう。「獲得のためのブランディング」のためにネット広告(特にディスプレー広告)のクリエイティブの進化が認められる年になる可能性がある。

 みっつ目は、やはりソーシャルメディアに対応する広告モデルがいくつか試されるだろうことである。ソーシャルグラフをマーケティングに活用する考え方は、いわゆる広告に止まらない。フェースブックが日本でクリティカルマスに達するユーザー数を獲得するかどうか別にして、フェースブックにはソーシャルメディア対応の機能がほとんどあるので、ファンページ構築とその運営を企業が社内に取り込むことは、今後のソーシャルメディア対応を考えると必須条件だと云える。
 フェースブックのファンページを立ち上げて運営することをひとつの社内横断プロジェクトとして、ブランドのマーケティング担当者と広報担当者、お客様窓口担当者の3者が社内で連携することが求められる。組織編成が時代に対応するにはまだまだ時間がかかる。しかし今対応し始めないと、遅れをとるのは間違いない。企業の担当者は、ソーシャルメディアの影響力の認識と向き合い方を社内で共有できる人たちと「握る」ことで、この過渡期を乗り切らないといけない。「組織編成が時代に対応していない」と経営陣を批判したところで、結局、責任を問われたり、自分たちの時代に困るのは現場で担当している者なのだから、社内横断的に、また企業の壁を超えて情報、知恵、人材を求めることが必要だ。


 もうひとつ最後に・・・、今年は「インタラクティブプランニングブティック」(クリエイティブブティックと少し概念が違う)が日本でも萌芽するかもしれない。デジタルマーケティング領域での、コンサル、プランニング、オペレーションが揃うと本格的に面白くなってくる。企業の経営状況が持ち直してきた今年、マーケティングのデジタルシフトに金を使うのは必然的である。
 ただそうした企業支出をしっかり取り込める広告マーケティング会社はそれほど多くはない。出来る人はまだ限られている。