ベム: 2010年11月アーカイブ

 この電子書籍のことは業界内では結構話題を呼んでいる。ベムも本来なら誰かのツイートで知るような情報だったが、社内の人間が電通さんの友人に教えてもらったそうで、メールが跳んできて知るに至る。

 さて、全般的に広告業界に対しては、そもそも、あまりいい感情をお持ちでない方のようで、しかもそれは最近そう考えたのではなく、ずいぶん長い期間そうだったように思える。基本は業界外の方が非常に良くお調べになって書かれている。ただそのほとんどのご指摘はほぼ「そのとおりだ」と云える。
ほとんどの業界がビジネスモデル改革を余儀なくされてきた中で、護送船団民放ビジネスにぶら下がった、未だに構造改革しないガラパゴスモデルとしていて、まさにおっしゃるとおりだ・・・。

 何人かで書かれているようだという話も聞いたが、私はそうでもないような気もする。後半のDSPなどの件は、必要以上に詳細に書かれているが、ネット広告の業界内にいるベムからすると、やはり表面的になぞっているだけで、こうしたビジネスの実務とは遠いところにいることが分かる。
 こうしたテクノロジーベースのことが理解されている点で、IT系コンサルの方ではないかという気がする。

 とはいえ、業界の直面していることを、実に良く勉強されている。某社が早期に上場を果たしながら、市場から調達した資金を積極投資していないことを断じているが、それはその通りである。「経営に投資対象を見つけ出す能力がない。」という指摘と解釈できる。

 しかし、この本は全体を通じて、メディアバイイングビジネスを全く付加価値のないビジネスのような書き方をしている。HDYの統合も、「メディアバイイングだけにフォーカスした愚かな統合」としている。
 「メディアバイイングのマージンをとるために、周辺サービスを収斂させて、個々の提供サービスで金を取れなくてもメディア扱いですべてを回収する。」というビジネスモデルが破綻することは間違いのないところで、既に破綻していると言っていい。メディアの扱いだけで高収益をあげることは難しいし、むしろソリューションを真ん中において、しっかりしたサービスを提供して、特化した個々のサービスでそれぞれ稼ぐ必要がある。
 ただメディアレップ型ビジネスが、全くの価値を生まないかというとまるっきりそうでもない。メディアが多様化し、拡散し、従来より「売り手市場」でなくなるのは事実だが、だからと言って、すべてがアドマーケットプレイスで、「買われる」状況となるわけではない。メディア自身のセルサイドに立って考えてみよう。セルサイドには「セルフサービスで買ってもらう」方がいい部分と「自ら売りたい」部分がある。すべてをプルに任せていて、広告販売の最適化は叶わない。メディアを「売る」行為の意味は今後もそれほど変わらないというかむしろ重要になる。メディアが分散化すればするほど、メディアには自ら「売る」ことの意味が大きくもなる。よってそれをレップする価値はある。(ただどの程度あるかだ。)
 そして、もうひとつは、メディアプランニングの価値である。従来のメディアプランニングは掲載する媒体情報が詳細に分かっていれば良かった。媒体とブランドのマッチングがすなわちメディアプランニングだったからだ。しかし今後は、広告主は掲載面を買うのではなく、配信対象を買うモデルにどんどん移行する。この時、メディアプランニングとは、誰を配信対象として選択するかというプランニングである。だから、ここには掲載面の情報は基本的に必要ではなく、ブランド側の情報つまりユーザープロフィールやターゲットプロフィール、コミュニケーションコンセプトの理解が前提となるわけだ。
 こうしたプランニングは、オーディエンスデータを駆使して、DSP上でプランニングされるわけだが、ここにこそ新たな付加価値があり、バイイングオペレーションフィー以上のサービス提供価値を創造する余地はある。

 もちろんこうした新しい価値の創造がなければ、広告代理店は崩壊する。だからそれを理解している当事者は危機感と使命感を抱えて対応しようと努力している。

 博報堂さんも何もメディアバイイングにだけにフォーカスして統合したわけではない。むしろ機能分社することで、ブランディング会社の機能はより脱メディアビジネス、つまりソリューションにフォーカスされる方向に行くんだと思う。

 さて、この本には、直接ベムのことが出てくる。いわく、

「飛躍の鍵か?単なる見せ筋?ADKインタラクティブ」

 以下引用
 ------- そんななかで業界内で注目を浴びる存在がDACと折半の出資(これは間違い。折半ではなく、ADK 8 : DAC 2)で別途設立したADKインタラクティブである。同社の出版によるトリプルマーケティング(←これも間違い。書籍名は「トリプルメディアマーケティング」で、会社で出版したわけではない。)はことごとくごもっともな内容満載でご興味のある方は直接お買い求めいただきたいが、同社社長横山氏はネット上で、広告会社のスキルがデジタルに対応していくには、いったんデジタル領域をど真ん中において再構成していく必要があると指摘している。
 中心をデジタルとして、周辺に従来のスキルと接点にそれぞれ融合することでできる新しい価値づくりに挑戦すべきであると唄っている。筆者もその意見を拝見してまさにその通りであるとうなづく部分が多々ある。しかし、ADKインタラクティブなる会社が提唱するデジタルエージェンシーコンセプトはアサツーディーケイのなかでどのように役に立っているのかについては大きな疑問が残る。
 横山氏がそこまで広告代理店がデジタル領域でどうすべきか理解していて、なぜアサツーディーケイ自身がそれを活かして構造改革に踏み切らず、もっとも旧態依然たる組織運営と売上構造にとどまり続けるのかがとても不思議である。櫂より始めよという言葉があるが、同社もデジタル広告については事業拡大を唄っているわけで、既存メディアの扱い減少から営業収益に喘ぎ、赤字転落の損益分岐点で右往左往するのであればますは自社のBPRから手をつけていただきたいものである。
 アサツーディーケイの経営実態を見る限りなんら先進的なチェンジマネジメントが動いているようには見えず、上場系3社のなかでもっとも特長のない、かつ収益力の低い企業へとなってしまっており、今のところADKインタラクティブがレバレッジとなって業務拡大しているようにも全く見られない。
 ADKインタラクティブは平成の松下村塾であって大手代理店ビジネス崩壊後に逸材が排出されるのだろうか?(←「輩出」でしょうね。)あるいは短なる(「単なる」でしょうね。)見せ筋企業として形骸化した論文をまとめる張子の虎でしかないのか?後者であるとすれば失望感は極めて大きい。

引用終わり
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平成の松下村塾とは、すいぶん持ち上げてくれた感もあるが、(これだと私は処刑されちゃうらしい。)ただ、もしこの筆者が、「真ん中がデジタル」という意味を本当に理解しているなら、「アサツーディーケイに役に立っているか」などとは書かないだろう。

またもし松下村塾であって代理店ビジネス崩壊後に、逸材を輩出(排出とは誤字にしても失礼)することができれば、それはそれで結構な話だ。つまりこの筆者からすればどっちみちアサツーディーケイは崩壊するわけで、逸材が輩出できるか、見せ筋企業で終わるかはオルタナティブになっていない。な~んていうくだらない文句をつけるのは置いといて・・・・、ただ、親会社の経営実態に先進性が感じられないという厳しい指摘は、甘んじて受けねばなるまい。

 ベムとしては「見せ筋企業」だ「張子の虎」だのと言われようと、着実に目指すことをやっていくだけである。むしろ関心をもっていただいていることにびっくりしたくらいで、注目を集めているのであれば、もっと頑張らなきゃいけない。

 「トリプルメディアマーケティング」は考え方を提示したに過ぎない。その中身はこれから創っていく。(一部は出来ているが・・・)我々は3つの円のベン図に提供できるソリューションをプロットしていき、最終的に3つの円の3つとも交わる部分の核心(=インサイトからくる統合シナリオ)を企画できる存在になりたい。ただそれには今まで広告屋が不得意だったテクノロジーについてかなりの知見をもつ必要があり、「テクノロジーの理解をベースにいかにコミュニケーションアイディアが出せるか」が課題である。
 私はビジネスとしての広告代理店業がどうなっていくかについては、はっきり云ってあまり興味がない。マーケティング活動に関するサービスをアウトソースすることは、今後もなくなりはしない。要は新しいスキルを開発、つまり人材育成できるかがすべてである。それは1社だけでできる話でも、業界内だけできる話でもない。広告主企業もメディア会社も含め、オープンな環境で育成されないと出来ない。
 
 ベム自身は、業界内で手を組む壮大な実験をやってみた本人である。しかし、広告業の真ん中はどんどんシュリンクしている。だから、もう業界内のパートナーには意味はない。(それは外資であってもそうだ。)周辺ビジネスのプレイヤーと手を組む時代である。まあ広告ビジネスが真ん中にあるような思い上がりは慎まないといけないが・・・。

私は80年代の広告のいい時代も過ごしてきた。しかし、またあんな時代が再来したらいいとも思わない。広告会社が立ち行かなくなったら、立ち行くように再編するだけだ。今まさにそれをやっているつもりだが、今のトライがすべてではない。全く違う挑戦も頭のなかにはある。そんなこれからが楽しみで仕方ない。

 3つのメディアに今後起こること3つの予言を整理する。

まず、ペイドメディアに起こること・・・。

◆「よりダイナミックなオーディエンスターゲティングへ」

この予言の「こころ」は『リアルタイム化が進む』ということである。

・米ではオンライン広告売買環境はリアルタイム化へ向かっている。広告主は必要なターゲットだけにリーチするインプレッションの購買へとシフトしている。
・ブランディングキャンペーンであっても、同様の動きがみられる。
・購買環境は大きくシフトし、DSP、SSP、データエクスチェンジを中心とした動きになってきている。
・同時にソーシャルサービス、ロケーションベースサービスがリアルタイム化の後押しをしている。
・企業はソーシャルCRM体制を作り、リアルタイム対応を行い始めている。

 ほかの2つのメディア(自社メディアとソーシャルメディア)が、従来より継続的な、マーケティングの時間軸が比較的長い活動になる。その一方で、ペイドの役割は、より短期的な認知の獲得に役割がフォーカスされる。そして、よりリアルタイムに、適切な配信対象へダイナミック(動的)に行なわれる。

*閲覧や検索といった行動履歴だけでなく、ソーシャルグラフから分かるユーザー同士のつながり、情報共有履歴か ら分かるインフルエンサー度などがターゲティングに利用できるようになる。

*しかも、リアルタイム入札(RTB)により、必要なオーディエンスの必要なインプレッションのみを買えるようになる。

◆自社メディアは『ソーシャルメディア内に拠点を構えて長期育成へ』

*キャンペーンごとにキャンペーンサイトを立ち上げては壊すという行為は、長期的には何も資産を残さないことが分かってきた。

*ブランドの拠点をソーシャルメディア内に開設して、継続的にコミュニケーションしようとする動きが広まる。短期施策向けに体制を敷いてきた企業は、構造改革が必要になる。

◆Earned Media は『PRとCRMの境界は薄れてソーシャルCRMへ』

 ソーシャルメディアマーケティングを介して、企業は自社顧客がポジティブな影響を、ソーシャルメディア内に与えることを理解した。よって。ソーシャルメディアを利用した顧客関係構築の施策が展開され始めている。

現顧客との関係を大切にすることが、ソーシャルメディアマーケティングを成功させることにつながる。

 企業はソーシャルメディア上での自社ブランドに関する傾聴戦略をすすめると、影響力分析、波及分析、タイムライン分析、対話分析などを経て、ソーシャルメディアインテリジェンスを確立するようになる。
 その後、企業と顧客の接点(コンタクトセンター)を統合的に行なうソリューションが芽吹いてくるだろう。

アドテックで講演した「トリプルメディアマーケティング概論」が、講演のUstとスライドのPDFがダウンロードできるようになっている。

https://www.adk-i.jp/resources/adtech2010.html