ベム: 2010年1月アーカイブ

 そもそも広告屋はその時々で売れるものを売るということをやってきたせいか、リスクを背負って、腰を落ち着け、粘り強く、ひとつのメディアを作り上げるという仕事が苦手なのかもしれない。ただ、広告主に直接インターフェイスするのだから、どんなソリューションが売れるかは良く認識しているはずである。その理解をもとにメディア(ソリューション)開発するということは出来るのではないかと思う。リクルートのように、市場があって広告が集まるテーマをメディアマーケティングするという考え方は出来るはずではないかと、期待したい。が、もちろんこうしたビジネスを考えている人たちはたくさんいて、しかも広告会社よりはるかに真剣に自分の本業として取り組んでいる訳だ。そうなると、文化とかスキルとかではなくで、情熱の問題、熱意の問題なのかもしれない。器用貧乏な広告マンが付加価値の高い新しいビジネスを開拓するには、強い熱意と不器用なまでの執拗さが前提となるのだろう。また投資のチャンスは多いが、成功の確率は低いメディアコンテンツ事業には、成功するまでやり続ける経営の強い意志と投資余力が必要だ。ひとつの成功事例を獲得するには10も20もトライしなければならない。そうして初めて得られる知見がある。
 それにはまず、現在のビジネスモデルでも、景気さえ良くなれば何とかなると考えていたら絶対駄目だ。背水の陣で望み、必死で新たな事業を開拓する能力と精神力のある本当の精鋭を、勇気を持って本業から外すことができるか経営者が試されている。

 ソーシャルメディアに関する文献のようなものを探そうとすると、ほとんどがアルファブロガーが書いているデータに行き当たる。
 欧米のブログは、有名人やその道のエキスパートが書くものをみんなが閲覧するという傾向が強い。一方日本のブログはブロガーとブロガーが体験や意見を共有したり、論戦してみたりと影響し合うなかで閲覧者も増える構造にある。この話は別途するとして、米国のソーシャルメディアを機能分類している資料があった。

http://www.smartmobs.com/2010/01/13/a-look-at-the-sheer-volume-of-social-media/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+SmartMobs+(Smart+Mobs)&utm_content=Bloglines

 ソーシャルメディアツールは、Express、Network、Game、Sharingの4つの機能に分けられるようだ。さらにソーシャルプラットホームと定義されるツール(facebookなど)がある。
 Express機能には、Publication(ブログ、マイクロブログ、Wiki、ライブキャストなど)、Discussion(フォーラム、IM、コメント、3Dなど)、Aggregation(SocialThingなど)に分類できる。ツイッターはマイクロブログのひとつだ。
 Networkには、B to B系のLinkedinなどのほか、サーチ系、ニッチ系、モバイル用、ツール系がある。
 Sharingは、コンテンツ、プロダクト、プレイスに分類され、コンテンツのなかにはビデオのYoutube、写真のフリッカー、音楽のLOSTFM、など。プロダクトには、リコメンド系、サジェスチョン系、シェア系と分類されている。プレイスにはアドレス系、イベント系、旅系。
 Gameのなかの分類はGameに詳しくないので良く分からないくらい細かくある。

いずれにしても、米国には非常に多くのソーシャルメディアツールが登場し、競い合っている。

 時間があれば、日本のソーシャルメディアも、分類して機能を整理してみたい。

2011年7月にアナログTV波が停波したあとの帯域は、「携帯端末向けマルチメディア放送」に宛がわれる予定になっている。
 現在VHF帯の周波数は地上TV放送で、90MHz~108MHzが1~3chに、170MHz~222MHzが4~12chになっているが、これをVHFローバンド(地方ブロック向け放送)とVHFハイバンド(全国向け放送)に区分して宛がわれる予定だ。
 VHFローバンドは、FM局など積極的に事業展開を模索している。ここではハード会社とソフト会社が分離して事業するようになるかもしれない。
 一方、VHFハイバンドは、NTTドコモとフジテレビなどの「マルチメディア放送企画LLC」、「モバイルメディア企画」(ソフトバンク)のISDB-Tmm方式の2社と、「メディアFLOジャパン企画」(KDDI、クアルコムジャパン)のクアルコム方式の計3社が参入意向を示している。

 今ごろまた「マルチメディア」と聞くと、死語のように思うが、携帯向けの放送によって、通信キャリアも考えようによっては、「放送局」にもなる。野村総研の市場予測データを見ると、モバイルキャリアの携帯電話事業収入は、2008年度の6兆8350億円から2013年には5兆6710億円にまで縮小すると予測されている。

http://www.nri.co.jp/news/2008/081217.html

 つまりモバイルキャリアもメディアコンテンツ事業に参入していかないと国内では成長戦略をとれないことになる。同じ野村総研の市場予測データでは、モバイルコンテンツ市場が2013年に4072億円に、モバイルソリューション市場が7671億円市場に(それぞれ2008年比111.4%、245.8%)と予測されている。オンライン決済市場もモバイルが牽引して2013年に2008円比で205.5%としている。

ラジオ局が起死回生を狙い、キャリアも放送事業収入を狙う携帯端末向けマルチメディア放送。そして拡大するモバイル市場。マーケティングに関わる分野でも「モバイル」が極めて中心的に存在になりつつある。
 だんだん正体を現し始めた「スマートフォン」への関心も手伝って、当分モバイル対応はマーケティングコミュニケーション業界の大きなテーマになるだろう。しかし、以前より端末の買い替えサイクルは確実に長くなった訳で、あまり焦らずに、実態を見極める時間的余裕もないわけではない。

米国レッドへリング誌が選ぶ世界の100社、未上場企業のなかから優れた技術と可能性を有する会社を100社選ぶものだ。日本からはEモバイルなど7社が選ばれている。USAが最も多い34社、中国は日本を上回る9社、インドは10社も入っている。
 
 http://www.redherring.com/Home/26281

日本の素晴らしい技術も、日本市場だけが対象では期待値は大きくならないし、国際競争力を欠く。日本人のメンタリティで出来た技術は、繊細で「もてなし」のホスピタリティを文化背景としてもっているものも多い。そうした技術の国際競争力は高いはずだ。あまりに進んでソフィストケートされた技術がただ「ガラパゴス」になるのではなく、世界に出て行くマーケティング力を身につけることを期待する。

ワイアードの記事「Dew Does The Crowd」に注目した。Dewとはペプシの炭酸飲料マウンテンデューのことで、このブランドがたいへん大掛かりなソーシャルメディア実験とも言える施策にチャレンジした。
 消費者に炭酸飲料の新商品を3つ選んでもらうらしいのだが、味の選択、ネーミング、パッケージデザイン、はたまた広告コミュニケーションを担当する広告代理店まで決めるというのだ。2009年7月に始まったこのキャンペーンでは、様々なソーシャルメディアプラットホームを駆使し、特定の新商品を支持する「Flavor Nation」を形成させた。この辺が上手だ。単なる参加性だけでなく、消費者巻き込んで強くコミットさせる訳だ。現在、「Distortion」、「White Out」、「Typhoon」という3つの味が選ばれてていて、色やデザインも決まっているとのこと。これらが店頭に並び、1年後の販売が継続される商品がひとつだけ決まるらしい。ツイッターのフォロワーによる投票で、ネーミングを決定したり、今のソーシャルメディアムーブメントにうまく乗っている感がある。

 下記を参考に
http://www.wired.com/epicenter/2010/01/dew-does-the-crowd/

 サーチエンジンによってユーザーと情報のマッチングが進んだのは周知のとおり。しかしそれでもスタンバイされている情報と消費されている情報の差は拡大するばかりだ。もちろん消費できる情報の限度もあるのだが、ネットユーザーとしては、常に能動的な情報取得行動をしなくても自分の欲しい情報に出会えるチャンスが増えるのはいいことだ。
 いわゆる「検索の限界」を解決してくれそうなのが、リコメンドエンジンだ。ほとんどのネットユーザーが楽天やアマゾンでリコメンドを受けているはずだ。しかし、今ひとつ「なるほど」と思えるような推奨があった覚えがない。スターウォーズのエピソード1を買うと、エピソード2から6までリコメンドしてくるのはもちろん間違ってはいないが、それだけでは人間技の範疇を超えない。膨大なデータから文脈や関連性のニューロンのようなものを読み取って、通常では思いがけないが、興味関心のネットワークにはある「つぼ」を心得た「推奨」をしてくると面白い。
 そうすると、おそらくロングテール部分の売上が活性化するのだと思う。本来出会う機会のないコンシューマとコンシューマをマッチングするというインターネットの本来持っている力が、まだまだ発揮される余地は残っている

 どこの企業もWebサイトにはプライバシーポリシーを掲げるようになった。個人情報保護の観点からも企業の社会的責任として必要欠くべからざるものとなったからだ。
 さて、米国では企業の75%が消費者向けSNSを使っているそうだ。日本でも企業がソーシャルメディアを利用する機会は増えているだろう。そうなると、ソーシャルメディアで従業員の個人の発言によって、企業に風評被害が及ぶといったことも十分考えられる。また企業も企業内にあるコンテンツを現場・現場から消費者に発信することでCRMなどのマーケティング活動となる可能性も大きい。そこで、トラブルを未然に防ぐことを主な目的として、従業員がソーシャルメディアを利用する際の、基本姿勢や留意事項などをドキュメント化し、周知徹底するガイドラインのようなものが必要になる。それが企業における「ソーシャルメディアポリシー」だ。
 欧米では、一流企業が次々にこうしたソーシャルメディアポリシーを策定し、内外に告知している。コカコーラ、IBM、コダック、HP、BBC、ウォルマートなどである。
 そうしたポリシーを社内に対して掲げ、従業員に対するソーシャルメディア対応のガイドラインを示す場合、ソーシャルメディア認証プログラムを受けて、認証されることを薦めるケースがある。
 やはりガイドラインだけでなく、こうした認証プログラムを社員にも受けてもらい、逆にしっかりした情報発信者になってもらうことが重要なのだろうと思う。

 コカコーラの「ソーシャルメディアポリシー」について検索してみると、下記から「Social Media Principles」をダウンロードできるようになっていた。読んでみると参考になる。このなかのソーシャルメディアポリシー10項目は以下のようなものだ。

http://www.damniwish.com/wp-content/uploads/2009/12/TCCC-Online-Social-Media-Principles-12-2009.pdf

1. Be Certified in the Social Media Certification Program.
ソーシャルメディア認証プログラムの公認を得ること。
2. Follow our Code of Business Conduct and all other Company policies
我々のビジネスにおける慣例と社の政策のすべてに従うこと。
3. Be mindful that you are representing the Company
会社を代表しているということを心に留めておくこと
4. Fully disclose your affiliation with the Company.
会社との関係を完全に明らかにすること
5. Keep records
記録をとっておくこと。
6. When in doubt, do not post
疑問があっても投稿しないこと。
7. Give credit where credit is due and don’t violate others’ rights
よい評判を保つようにし、他の権利を妨害しないこと。
8. Be responsible to your work
自分の仕事に責任を持つこと。
9. Remember that your local posts can have global significance.
あなたのローカルな投稿が世界中に広がる可能性があることを覚えておくこと。
10. Know that the Internet is permanent.
インターネットが永久的であることを知っておくこと


 従来の広告業の本丸部分がどんどんシュリンクしてなか、もともと広告マンには知見のない周辺領域に踏み出していかなければならないと、このブログでも何回か書いている。
 しかし、そうした領域には本来のスペシャリストたちがいる。踏み出していっても広告マンは太刀打ちできないのではと思える。

しかし私ベムは、広告マンがやるから生きてくる領域があると考えている。例えば、Web解析の分野。Webサイトには顧客ないし見込み客が実際に行動を起こしたデータが残る。そこからカスタマーインサイトを読み出すことが可能になってきた。しかしデータの海の中からインサイトを発見するのは、簡単な話ではない。一定の仮説を立てて、必要のないデータを捨てることから始め、仮説シナリオを検証していくことだ。そうした仮説立てができるのは、広告コミュニケーションの世界にいた者のスキルであると思う。
 おそらく広告マンだからこそ出来る、より能力が発揮できる仕事というのが、今まで広告業の真ん中になかった領域にもたくさんあるのではないかと思う。
 マス広告、ブランディングコミュニケーションの知見があるからこそ、生きてくるスキルを周辺領域との間で融合させ、より価値の高いスキルにしていくことを我々は考えないといけない。

 「グランズウェル」のジョシュ・バーノフ氏が、2年半前に定義した「ソーシャル・テクノグラフィクス」という概念が、内容を更新されている。(フォレスター・リサーチから)
 「ソーシャルメディアに関わり方別のネットユーザー分類」というところだが、

◆ クリエーター(創造者)24%
自身のブログやWebページを編集し、自ら創った動画や音楽をアップロードするようなネットユーザー
◆カンバセーショナリスト(会話者)33%
SNSやツイッターでステイタスを更新するネットユーザー
◆クリティクス(批判者)37%
商品やサービスのレビューを書いたり、他の人のブログにコメントを書いたり、Wikiに手を入れるようなネットユーザー
◆コレクター(収集者)20%
RSSフィーダーを使い、Webページや写真にタグを貼るようなネットユーザー
◆ジョイナー(参加者)59%
SNSにプロフィールを維持し、SNSサイトを訪問するようなネットユーザー
◆スペクター(観察者)70%
ブログを読み、ポッドキャストを聴き、他者の投稿ビデオを観たり、オンラインフォーラムやツイッターを読むようなネットユーザー
◆インアクティブ(不参加者)17%
上記のような行動を起こさない人

各パーセンテージは、USの成人ネットユーザーにベースとした比率
とうことはソーシャルメディアに関わらないユーザーは17%しかいない。日本でも急速にツイッターが普及しているが、ソーシャルメディアに関わる人が増え、企業サイトやブログもPVは落ちているのではないだろうか。ブランドがソーシャルメディアに出現する機会をつくることも立派なマーケティング活動と言える。

 広告業のスケールメリットは、基本的にメディアのバイイングパワーにある。大量に仕入れることができることによって仕入先への大きな影響力を持ち、場合によっては原価率を下げられる。有限で価値の高い広告枠を仕入れる力がそのまま顧客であるクライアントへの影響力を生み、多くの顧客を獲得でき、インクライアントシェアも高められた。また広告マーケティング領域の様々なサービスをワンストップで供給できることには大きな価値がある。総合力ということの意味は非常に大きかった。
 しかし、今いわゆる総合広告会社はクライアントの求めるサービスをワンストップで供給出来てはいない。クライアントが求めるスキルに対して、(特に営業のフロントラインに)知見がない領域が多すぎる。もちろんデジタルがそうだが、デジタルだけではないのだ。世の中に自分が売っている商品をお客にちゃんと説明できない営業マンはいないと思うが、広告業界にはいっぱいいるのだ。
 デパート型の総合広告会社であることのメリットは非常に少なくなってきた。もちろんワンストップでサービス供給する価値は不変だから、スキルを再編できたらいいのだが、いきなり変身できるほど甘くない。
 営業のフロントラインを含め、特定領域に強い広告会社に機能分社する選択を、欧米の広告業界はすでにしている。デジタル特化、ダイレクトマーケティング特化、ブランディング特化、メディア特化、BTL特化・・・という具合だ。その必然性は、AE制という商習慣ゆえというばかりではない。
 
 ただ、日本の総合広告会社の変身は、多少欧米とは違うかもしれない。つまりこのまま広告ビジネスの中心を領域とするのなら、単に機能分社しての強化策も良いが、成長戦略を描くのであれば、それだけでは意味はない。広告ビジネスの真ん中はシュリンクするからだ。自らにスキルのない周辺領域を、そこにスペシャリティのあるプレイヤーと組んで、広告・マーケティングコミュニケーションの知見があるからこそ価値が上がる「新ビジネス開発」をしなければならない。情報商社としてB to B の情報サービスビジネスだけでなく、B to C のメディアコンテンツビジネスまで業態を変貌させなければ成長など見込めない。そのためには大きな会社であること、企業体力が必要だ。
 大きいことは現業ではマイナスだが、本当に変貌して成長するには必要条件ではある。それを広告業と呼ぶかは別にして・・・。

gokai4.gifgyokai3.gif広告業のビジネスモデル変化については、いろんなところで語られている。このブログでも「広告業の将来」のエントリーで一部このことに触れた。メディア扱いによるマージンに頼る事業モデルはどんどん危うくなる。そうしたことも含め、広告業に起こっている構造変化は次のふたつの図で表すことができる。

 ひとつは、「広告ビジネスのど真ん中が小さくなり、周辺が拡大する」ということ。「TVCMをつくり、テレビスポットや番組枠を買い、新聞や雑誌、SP施策を組み合わせてキャンペーンを張る。」といった広告らしい仕事は少なくなり、広告なんだか良く分からない仕事が増える。広告周辺というところには、もちろん広告業ではないプレイヤーたちの領域でもある。しかしそれらを広告マーケティングの知見をもって企画実施するかどうかでの価値は違う。

 領域が被るということでは、ひとつ目の概念図のような状況が起きる。起きるというかもう既に起きている。

 広告会社も多様な機能を求められ、情報サービス関連企業のすべてが潜在市場となり、すべてが競合ともなる。

 昨年のNYアドテックでWWPマーティン・ソレル氏の基調講演内容として、彼が言っている「広告業が進むべき道」は、いずれも広告業界にはリソースがないことばかりだ。そうした領域には既に専門プレイヤーはいる訳で、広告業には基本知見がない。

 広告会社が提携を進めるべきは、こうしたこれからどんどん領域が被るが、もともと知見のない領域とのパートナーとだ。もう広告会社同士が組む意味はあまりない。シュリンクする市場同士が組んでも意味はない。


 企業のWebサイトのパフォーマンスを上げるために、ダイナミックにサイトのページを最適化するサイト内行動ターゲティングなどの施策が普及する元年になる。
 オムニチュアのテスト&ターゲットのようなページ最適化が実践され始めるだろう。日本でも数多くの企業がサイトカタリストなどの高い機能をもったアクセス解析ツールを導入している。しかしこれを使い切れている企業は少ない。導入しているはずなのに、ろくにタグが貼られていない場合も多い。
 
 原因の多くは、データをとっても改善に繋がるプログラムがないということだろう。実際に広告のパフォーマンスを上げてコスト効率が良くなれば、もっと活用しようということになる。リターゲティングの一定の評価が進むと、さらにどのページまで来てどういう行動までしていただいた見込み客かで最適化するレギュラー施策が定着してくるだろう。
 
 スケダチくんは、「これは来年ですね。」と言っとりましたが、期待を込めての「予測その5」とする。

 周知のとおり、モバイル広告のメインの出稿クライアントはモバイルコンテンツプロバイダーである。モバイル広告はその目的とするクリック誘導力を買われている。誘導先が顧客獲得のマーケティング装置になっていないと、高額な広告費がペイするマーケティング成果を獲得できるものではない。マスマーケティング企業にとっては、モバイルサイト上でできるのはあくまでプロモーション施策である。モバイルプロモーションへの投資がより大きくならないと、ナショナルクライアントのモバイル広告出稿は本格化しない。それが飲料、菓子などモバイル世代をターゲットとする業種の広告主を中心にやっと本格化するだろう。
 こうした企業のモバイルサイトのリニューアルが進み、大型キャンペーンの装置として本格使用するチャンスが増える。
 インターネット接続時間のモバイルシフトは確実に起こっている。スマートフォンの普及もさらに進んでいく。モバイル施策も面白い仕掛けがスマートフォンではより展開できそうだ。
ネットユーザーのモバイルシフトを受けたモバイルプロモーションの本格化が、大量誘導を買う「モバイル広告出稿」に結びつくと思われる。

 3.本格的なソーシャルメディアマーケティングと云える施策が登場する。

 「ソーシャルメディア」がしっかり定義され、マーケティング活用する手法がいくつか出てくると予測する。これはSNSやツイッターの掲載面にバナーを出すということではない。
 今はネットユーザーの接続時間のうちのソーシャルメディアの時間シェアが上がっている。一方企業のWebサイトのPVはおそらく落ちている。サイトに誘導をはかるだけでなく、ソーシャルメディアにブランドが出向いて行って出現率を高める施策も必要だ。
 昨年はアプリが契機をつくり、ツイッターの面白さが業界周辺には浸透してきた。これがもっと一般化する過程で、本格的なマーケティング施策がいくつか試されるだろう。
3つのメディアのうち、まだ掴みどころがないのが「ソーシャルメディア」だが。今年はこういう考え方が「ソーシャルメディアマーケティング」という実態が見えてくると予想する。私は特にSNSに期待しているが・・・。

2.ラストクリックだけでの広告のパフォーマンス評価の効率の減退(獲得効率低下)が起こり、ファーストクリックやポストインプレッションなど間接効果に対する見直しが起きる。

 間接効果を測定するには、基本的に第三者配信サーバーの利用が必須である。ただ、日本の広告主はバイイングサイドのサーバーを利用する価値をまだ見出してはいないようだ。残念なことである。たしかに配信コストはかかるが、コスト以上の価値がある。
どうも広告レスポンスデータを複雑にすることが嫌われているようだ。しかしながら最終クリックベースで広告レスポンスをすべて語るのはさすがに無理があるのだ。広告クリエイティブのパフォーマンスも測って広告効果の最適化を目指すためにも、ポストインプレッション効果を含めたトータルな広告効果を測定管理することが求められる。

 広告レスポンス効果をクリックベース偏重、広告メニュー選択偏重(クリエイティブパフォーマンス無視)という単純化は必ず行き詰る。
 複雑で面倒かもしれないが、本当に事業の最適化を目指すなら、欧米で定着した配信と測定に一定の評価をして、トライすることをお勧めする。しっかりやる企業は必ずやらない競合に差をつける。

「リスティング広告の未消化率が上がり、それに対応してブランド関連ワードの検索を促すプッシュ広告の見直しが起こる。またリスティングをバックアップするリターゲティング広告が拡大する。」

 広告出稿がインマーケットの顧客対象にシフトしたことで、検索広告需要は比較的堅調に推移している。ただ、リスティング広告からの誘導のアクイジション単価が効率的とは言え、期待する絶対値を獲得できるかは別の問題である。そもそものネットユーザーの関心の絶対量は一定で、何かしらの刺激を与えないと拡大はしない。関心の絶対量の比較的少ないカテゴリーの商品やブランド力そのものの地力がない場合、「プル」に頼りすぎるとリスティング広告への出稿の予算化はしても、消化できないという現象が起こる。
 広告会社からすると、せっかく予算化してもらったものが売上にならないのは「もったいない」ので、このギャップを埋めるソリューションを提案しなければならない。
 もちろんプッシュ型広告でブランド固有のワードでの検索を促す手段もある。またリスティング広告のような出来高払いでのリターゲティング広告もありうる。従来、リターゲティングは、単価はそこそこだが、配信対象ブラウザが比較的少ないので、配信絶対量が確保できなかった。しかしアドネットワークの連携などにより、対象ブラウザの出現率が向上するリーチの大きい掲載面ネットワークの確保ができるようになるだろう。
 敷衍すると、企業サイトのクッキー利用も定着すると思われる。長期間ログを連続的にとって分析手法を確立しているところでクッキーをあえて使わない企業もあるが、しっかりアクセス解析ができていない会社は、Web解析ツールとクッキーの活用をしっかりすべきである。サイト内行動ターゲティングや、外部ネットワークへのリターゲティング配信は利用率が上がるだろう。

 ネット広告の業界は、常に新しい商品が市場に登場して成長してきた。昨年はリスティングの堅調さに加えて、やはりモバイルが牽引した。ディスプレイ広告はむしろ減少したかもしれない。ネット広告市場での2010年のトレンド予測をすると、

1.リスティング広告での予算未消化率が高くなる。それに対応してブランド関連ワードの検索を促すプッシュ広告の見直しが起こる。またリスティングをバックアップするリターゲティング広告が拡大する。
2.ラストクリックだけでの広告のパフォーマンス評価の効率の減退(獲得効率低下)が起こり、ファーストクリックやポストインプレッションなど間接効果に対する見直しが起きる。
3.本格的なソーシャルメディアマーケティングと云える施策が登場する。
4.モバイル広告へのナショナルブランドの出稿が本格化する。
5.第三者配信サーバーをWebサイト内のパフォーマンス評価と連携させ、広告配信の最適化を図る広告主が現れる。

 以上5つを予測する。

  広告業界は売上減が続いている。1-3月も引き続き厳しさは変わらないだろう。問題は4月からの新年度に広告主がどれだけ積極策に出るかだ。デフレに歯止めが利かない状況下、雇用状況はさらに悪くなっている。新卒の大学生、高校生の就職難も、消費にボディブローのように効いてくるだろう。民主党の政策に消費経済が反応するのは、その効果のほどは別にしても年の後半からだろうから、広告会社もまだ当分仕込み期間が続き、刈り取れるのは基本的には来年になるだろう。
従来、広告は景気の先行指標だった。しかし今は景気回復に遅れて反応するようになった。落ち込む時は先に、回復する時は遅れてくる。生き残りも体力勝負だ。企業も広告コストのいっそうの見直しを図るから、「売り」に繋がらない広告出稿は本当に厳しい。メディア別で見ると、ネットは微増、テレビは前年割れを回避し始めるだろうが、新聞、雑誌、ラジオ、SPメディアはまだ減少すると思われる。

 広告会社もこの状況に対応して、すばやく体制の整備を行なうべきだ。まずメディアマンの人員配置を適正にすべきだろう。雑誌や新聞は数年前の半分になってきている。同じ人員体制を維持していては意味がない。メディアマンはメディア別に対応するのではなく、複数のメディアの知見を持って、顧客別に対応することを志向すべきである。また当然であるが、人員は余るので、どんどん営業のフロントラインに出て行かなければならない。基本的に「セリングサイドに立って売り物を開発する」というスタンスは最も強力な広告会社以外にはできない。売れるものをつくるのに、クライアントに接することのない部署にいては全く話にならない。

 さて、ネット広告市場もさらに、中身の変遷が進む。メーカーのEC参入はさらに進むだろうし、モバイル化も進むはずだ。モバイルサイトの構築市場とWebサイトの機能強化と分化が進み、サイト制作はモバイルを中心に成長する。ただ案件単価は微減するだろうから、制作だけメディアだけというトータルプロデュース力のない会社の収益力は依然上がらない。ただWebサイトもモバイルサイトもトータルプロデュースやコンサルティングは大きな企業ほど求められる。コンサルティング、プランニング、オペレーションと提供できる会社が強くなる。
 一方、マス系の仕事にはある転換が起こると思う。マスを起点にしていた広告人のうち優秀な人材がいっせいにデジタルへのアプローチを始める。ただ、いったんデジタルに起点をつくってマスとの融合にアプローチする者とのコラボレーションがないと、マスからネット、デジタルにアプローチするだけではうまくいかないだろう。
広告業界には、「今のままでは生き残れない」という意識はだいぶ顕在化してきた。今の時点でまだ意識がない広告人、昔の成功体験にいまだにしがみついている広告人は、さすがに退場すべきだろう。
 いずれにしてもアクションが起こる年になる。広告のビジネスが完全に変革する「次の10年」が始まった。