ベム: 2009年10月アーカイブ

 Webサイトでクッキーを使うことを躊躇っている企業は意外と多い。はっきりポリシーだとしてクッキーを使わないことを宣言している場合もある。企業サイトを訪問するユーザーをお客様と考え、そのユーザーにクッキーを付与することでの不快感を与えないようにとしている。クッキー利用に対する見解は、それぞれにあるだろうし、クッキーを使わないというのも確かにひとつの見識である。

 しかしこの考え方は、顧客本位のようで実はそうでない面もあると思う。クッキーはブラウザを個別に認識するために使われるもので、CRMの発想からすると、顧客のためにこそ使われるべきものである。

 何度も訪問してくれている上客に対して、毎回毎回初めて来たお客として扱うことを、顧客は望むだろうか。個人情報には全く触れない仕組みのクッキーを使うことを躊躇うのは、Webサイトのマーケティング活用を本当に志向し、サイト訪問ユーザーを大事に考えていることにはならないのではないかと考える。見込み客であるユーザーに、求めている情報を的確に提供しようと考えれば、積極的にクッキーは活用すべきである。
 
 また、ビーコン型のWeb解析ツールをしっかり活用するためにも、当然クッキー利用は前提となるし、サイト内行動ターゲティングやリターゲティング広告も上手に使うべきである。よくクッキー利用を「後を付け回して同じ広告ばかり見せる行動ターゲティングのための手法」として毛嫌いする傾向があるが、実際は違う。
 クッキーでブラウザIDを認識しているからこそ、フリークエンシーをコントロールして、過度に何回も広告を出さないということもできる。利用の範囲を限定して上手に使えば、ユーザーのためになる。

 ヤフーやアマゾン、楽天でアクセスごとにログインしなければならなくなったら、私は面倒だ。勘弁して欲しい。これもクッキーの成せる技であるし、こうしたサイトでの利用が進んでいるので、しっかりクッキー利用のガイドラインを明記して、オプトアウト方法も分かりやすくすれば、ほとんどのユーザーは嫌がることはないと考える。

 クッキーにネガティブな企業は、その会社のお客様には全くならない一部のクッキー嫌いのネットユーザーの反応を恐れるあまり、逆に知らないところでユーザビリティの悪さから顧客を怒らせたり、がっかりさせたりしていることも考えられる。肝心のお得意様に十分な接客ができていないかもしれない。
 そもそもネットマーケティングではすべての人に全く少しも嫌われないようにしようという発想はなじまないのだろう。

 またWebマーケティングがこれほど効果的になるとは思わなかったころのポリシーで、成果がそれほど期待できないからリスクは少しでもないほうがいいという発想だったと思う。しかしWebマーケティングのビジネス成果への期待値はたいへん高くなった。クッキーに関するポリシーは再考すべき時期ではないだろうか。実際、使っていなかったが活用を始めている企業サイトはたくさんある。
 
もちろん、クッキーを使わないという方針もひとつの見識である。それぞれの企業の考え方であり、それ自体を否定しているのではない。誤解のないように・・・。

 「広告業」のど真ん中がシュリンクしている。CMをつくり、TVスポットや番組を買い、キャンペーンを展開する王道は、絶対なくなりはしないが、マーケットは小さくなっていく。そのかわり、従来「広告」の中心ではなかったようなソリューションサービスが、広告周辺領域として拡大している。もっともこれは広告側にいる人間の見方で、ITソリューションサービスが本業の人たちから見れば、ビジネスソリューションからマーケティングソリューションへ、はたまたアドソリューション活用に拡大しているということだ。

 日本の場合、総合広告代理店という業態には、ワンストップにサービス提供するところに優位性があった。しかし、広告周辺サービスの拡大で、ワンストップで供給できなくなった。営業のフロントラインが様々なスキル拡大に追いつかなくなった。いくらスタッフを用意しても、顧客とインターフェイスしている営業に知見がないのでは仕事にならない。
 またワンストップでサービス提供するのに価値あるメニュー構造が変わってきたともいえる。広告マーケティングにおけるソリューションサービスの再編が必要なのである。
 
 そこには、従来レイヤーが違うので、別々の人間が別々のサービス体系でやっていた仕事を、バーティカルに統合すると価値の高いソリューションサービスになる可能性が出てきている。例えば、Web領域においても、コンサルテーション、プランニング、オペレーションといったレイヤーの違う仕事は、その人材のスキルや給与体系も異なり、同じ会社が提供しずらいものである。しかし、これらをあえて統合してサービス提供することに新しい価値がありそうだ。別に同じ会社にする必要はない。ワンストップにプロデュースする能力に価値がある。
 特に従来のマスマーケターであるメーカーなどが、ECに参入する場合などにこうしたソリューションサービス体系が必要で、そうした再編は進むだろう。

 いずれにしても今のままの「広告代理業」というのは、ソリューション提供サービスとしてはあまり付加価値の高い仕事ではなくなっていく。

 従来からずっとマスマーケティングを機軸としてきた企業にとって、やっとブランディングなる発想を獲得し、ブランドマネージャー制度が定着したところで、デジタルの波が押し寄せた。Webマーケティングとかネットマーケティングとかは、Web上で顧客獲得をする手法だけでなく、マスマーケティングにもネットシフトが強く求められている。
 この状況で、実はブランドマネージャー制の弊害が起きていると言っていい。今Webを使った広告及びプロモーション施策というのは、各ブランドマネージャーが管理するそのブランドのプロモーション予算の一部を「Webを使った施策」に振り向けているだけである。

これではまずスケールが小さい。ネット施策はとかく少ない予算で大きな効果を期待されるが、そんなにいつもうまくいくわけではない。「ユニクロック」がネットを使えば誰でもできるというわけにはいかない。各ブランドの予算を集めて、大きな施策にしたほうが各ブランドにとっても還元される効果が、個別でやるより大きくなる。

次に知見が共有できない。各ブランドの担当者に蛸壺的に貯まるだけになる。

 これを解決するには、まず各ブランドのデジタル系への投資予算を集めて企画、執行するデジタルマーケティングのCMOを設置する方法がある。なにせ新しいマーケティングへのトライであり、従来の縦割り組織の壁を越えないとできないことだらけだ。
実際にネットマーケティング(顧客ないし見込み客をWebで獲得している)を実践している企業でも、売上利益責任を負っているセクションのほかに、サイトの運用を預かっているシステム部とか、広告出稿の窓口である宣伝部とか、コールセンター、サポートセンターを管理しているセクションとか様々な部署が関わる。例えば、サイトのユーザビリティを改善してコンバージョンを上げる施策の予算を取ろうとする場合、改善すれば広告による集客や、サポートセンターの人員を削減できるのに、管理する部署が違うので、予算のシフトができない。そもそもこうした部署編成は従来型であって、Webマーケティングをスルーザラインで実行するモデルではない。(私の経験でも、こうした提案のプレゼンに社長が出席すると決まるが、そうでないとなかなか決まらない。)

企業経営者は、デジタル施策のR&Dも含め、ヒトと金をデジタルCMOに集約してみるといい。経営トップがこういう判断をする時期がきている。デジタルマーケティングには典型的なフォーマットやモデルがない。各社がそれぞれのベンチマークを積み上げるしかなく、だからこそ、実践した企業とそうでない企業に大きな差がつくのが、デジタルだといえる。

2009年1-6月の集計として、英国での広告費が発表され、全体で前年17%ダウンという状況のなか、ネット広告だけは前年4.6%増を果たして、とうとうテレビ広告費を超えた。

しかも英国のネット広告の60%が検索広告だそうだ。テレビなどのマス広告が軒並み2桁減のなか、直実にサーチ広告とクラシファイド広告が牽引したらしい。

なるほど、どこでもいわゆる「パーチェスファネル」の下流に(つまりその商品カテゴリーに関心が顕在化しているところに)マーケティングコストをシフトさせているということだ。

さて、この現象はいつまで続くのだろうか。また英国ではもう二度とテレビはNo.1メディアに返り咲くことはないのだろうか。

英国の事情に詳しいわけでもなんでもないが、検索広告への出稿は一定の堅調さを保つであろうが、検索への投資だけでは獲得効率が下がるのが必然である。おそらくテレビ広告は、価格体系を見直して、ある一定の需要を回復させるだろう。但し広告費の額が従来ベースに戻るかどうかは微妙だと思う。
要は、従来テレビ広告を使えなかった広告主をテレビ広告は獲得できるかどうかだ。検索広告に投資してきた(検索広告から広告を始めだした)広告主が、単価の安い(安くなるであろう)テレビ広告を使い出すかどうか。
とはいえ、テレビ広告はネット広告ほどのロングテール広告主をつかむことはできない。そもそも一定以上の出稿量がないと効果が顕在化しない。

 しかし、どこまで言っても広告のもっているプッシュ力が必要なくなるということはない。

またHULUのようにテレビのコンテンツのネットシフトがかなり起きて、ネット広告市場のさらなる優勢となるかもしれない。テレビのようなプッシュ型広告の要素を今後は高めていくだろうから、ネットの優位は変わらない。

 すべてのメディアがデジタル化する時代では、何がテレビ広告で何がネット広告かはあまり意味がない。

デジタル化は、広告を「フォーマットニュートラル」にしていく、特定の広告フォーマットを前提としないコミュニケーションコンテンツを開発が必要だ。そうした発想のできるマーケター、広告マンの育成が必須である。