ベム: 2009年3月アーカイブ

「マス領域とネット領域の双方を理解し、クロスコミュニケーションキャンペーンをプランニングしたり、プロデュースできる人材が欲しい。」これはマーケティングコミュニケーションの業界の願いである。当然そうした人材育成を考えてはいるだろうが、まだこれと言った育成の方法論は見つかっていない。またこうした人材育成が広告会社の中だけでできるものとも思わない。
 マス領域もインタラクティブ領域を両方理解して、360度のクロスコミュニケーション戦略を立案できるようになるには、まずクライアントといっしょにキャンペーンの開発プロセスを変えないといけない。
 従来の広告主企業内のプロセス、それを受けた広告会社側のプロセス、これらを抜本的につくりかえる必要がある。従来のようにテレビ広告クリエイティブ発でスタートするのではなく、ブランデッドコンテンツ発で、かつWebをマーケティング装置として中核に位置づけるというようなキャンペーン構造をもとに、企業側ではどういうメンバーによって、どこから組み立てるか、広告会社にはどこからどういうメンバーに参画させるかを発想し直すことだ。
 そして、こうしたプロセス改革としないと人材育成もままならないのではないかと思う。スーパーマン人材を育成してやるか、スキルが開発されるようなプロセス改革をするか、「卵が先か、鶏が先か」の議論だが、こうしたプロセス改革を行える企業が次世代をリードするのは間違いない。

WPPとグーグルの共同研究プログラムに関して、11件の研究プロジェクトが選ばれた。

以下、公開されているリリースを優秀なベムの部下がさくさくっと訳してくれたので、業界人間を見ていただいている皆さんにも共有します。

どれも興味ある研究課題だ。

WPP PLC (“WPP”)
Google・WPP市場リサーチ賞プログラム、11賞を授与

ロンドン-Google・WPP市場リサーチ賞プログラムの主催で、リサーチ賞を11大学に授与したことが、2008年秋に両企業により発表された。申込の締切までに様々な領域から120ものエントリーが集まった。

プログラムはジョン・クエルチ教授(ハーバードビジネススクールの副学部長/WPP取締役)、ハル・バリアン博士(Googleチーフエコノミスト)、グレン・アーバン教授(MITスローンビジネススクール)により監修されている。この委員会が、どのエントリーに資金を提供するかの最終判断を行い、提案プロジェクトの実現を監修する。

オンラインメディアが消費者行動、態度変容、意思決定に与える影響に関する調査のために、WPPとGoogleは3ヵ年計画を組み、460万ドルを投入する予定で、今回資金提供を受けたプロジェクトはその受賞第一弾であたる。プロジェクトへの資金提供は今月よりリリースされる。

アーバン教授は次の通りコメントしている。「提案書の質と量に大変感動した。真に創造的で、学術的で、デジタルマーケティングの実施に関連性が高く、期待値の高い受賞者が揃っていると思う。」

バリアン博士は次の通りコメントしている。「オンラインとオフラインのマーケティングがどのように消費者の態度、意思決定、そして購買行動に影響を及ぼすかを調査するにあたり、受賞したプロジェクトは非常に説得力のある調査設計を提案している。マーケティングがよりデジタルに、そしてより効果測定が可能になるにつれ、これらの研究結果によって、広告への投資をメディアチャネル間でどう配分すべきか、更に深く理解できるようになるだろう。」

クエルチ教授は次の通りコメントしている。「これらの賞は、デジタル革命がマーケティングに及ぼした影響を研究するマーケティング学の分野に優秀な頭脳を集めることを約束している。」

資金提供を受けるプロジェクトの第一弾に参加している研究者と所属の学術機関は以下の通りである。

①“オフラインでの購買に対するオンライン露出の影響:オンライン露出がオフライン要素のインパクトを増大させることで、どのようにオフラインでの購買を助長、もしくは阻害するか”アミタフ・チャクラバルティ、ニューヨーク大学スターンビジネススクール マーケティング学科

②“デジタルマーケティング戦略とオンライン・オフラインでの販売実績の相互作用”エリー・オフェック、ハーバードビジネススクール マーケティング助教授;ゾルスト・カトナ、カリフォルニア大学バークレー校ハースビジネススクール マーケティング学助教授

③“ブランド評価は伝染するのか?オーガニック検索トレンドと消費者レスポンス”ドナ・L・ホフマン及びギャリー・アンダーソン教授 カリフォルニア大学リバーサイド校経営大学院;トーマス・P・ノヴァック及びギャリー・アンダーソン教授 カリフォルニア大学リバーサイド校経営大学院

④“インターネット広告は確立されたブランドとニッチ(ロングテール)ブランドのどちらにとってより良く作用するか”キャサリン・タッカー MITスローンビジネススクール マーケティング学助教授;アヴィ・ゴールドファーブ、トロント大学ロットマンビジネススクール

⑤“地図上のマーケティング:検索の可視化と消費者の意思決定”ニコラス・ルーリー、ジョージア工科大学経営学部マーケティング助教授;サム・ランスボタム、ボストン大学キャロルビジネススクール 情報システム学助教授

⑥“多変量解析の手法:変動要素の特定”トレバー・J・ハスティ、スタンフォード大学統計学科 教授

⑦“ディスプレイ広告と検索連動広告の相乗効果の解明:中国人インターネットユーザーのデータマイニングからのインサイト”ハイロン・リー、ミシガン州立大学広告・PR・リテール学科;シュグワン・チャオ、清華大学メディア調査研究所

⑧“オフライン及びオンラインメディア予算の最適な配分”スニル・グプタ、ハーバードビジネススクール経営管理学教授;アニタ・エルバース ハーバードビジネススクール 助教授;ケネス・C・ウィルバー 南カリフォルニア大学マーシャルビジネススクール マーケティング学助教授

⑨“個々の認識スタイルに合わせたターゲティング広告:市場テスト”グレン・アーバン MITスローンビジネススクール 教授

⑩“物事の関連性について消費者はどのように判別するか。オンライン検索と広告効果についての計量心理学と神経科学的研究”アントワン・べチャラ 南カリフォルニア大学心理学部心理学と神経科学教授;マーチン・レイマン 南カリフォルニア大学心理学部

⑪“ブランド生成型及び消費者生成型コミュニケーションのブランド理解、セールス、及び市場シェアに与える影響の包括的なモデル”ダグラス・ボーマン及びマニッシュ・トリパティ エモリー大学ゴイズエタビジネススクール マーケティング学教授

次回の資金提供への申込は今春開始予定である。

Google・WPP市場リサーチ賞プログラムに関する情報はhttp://research.google.com/university/に掲載されています。

 NHKの「テレビの、これから」と題した放送記念日の特別番組をたまたま観た。生でこういう番組でやるというのもNHKならではだが、今頃こんな議論がされているのかとがっかりしないでもない。(ある意味一般の視聴者として参加している人のほうが良く分かっている。)夏野さんの「単に視聴率を換金レートにするモデルは崩壊しますよね。」とか「ネットとテレビは対立軸にはありません。」という当然の議論が革新的になっちゃうあたりが物足りなく感じた。それにしてもテレビ製作者側のネット社会に対する認識の貧弱さが改めて露呈して見えた番組でもあった。

問題の本質は、情報の受け手に主導権が移行しているにもかかわらず、いまだにある「送り手の思い上がり」である。それが彼らの使命感といった自身高尚なものと考えていようと、無意識にでも送り手の影響力を誇示したがる潜在意識がものごとをゆがめている。今の社会のコミュニケーション構造からすると、そうした送り手主導構造はすでに破綻しているのである。そうした「送り手の思い上がり」を視聴者がみな見抜いていて辟易としていることにすら気づいていない。

ただマスメディアの最大の影響力は、「今話題とすべきはこのテーマ」と決定してしまうことである。テレビでコメンテーターが何を言っても、今の視聴者はそれにすべて流されるほどバカではない。議論の賛否はネットでも両論どころかさまざまな視点で評価される。しかしマスメディアはその議論するテーマを特定してしまう。報道も大事なテーマを全く報道しないできたことがたくさんある。意図的に封殺してしまうこともある。

それでもネット社会は、マスの送り手が勝手に決めてしまうことを認めないだろう。そのうちオリジナルな取材力を身につけてくるに違いない。そしてその伝播力と信憑性を高めるメカニズムを獲得するだろう。

 知らない間に、Revenue Science社が社名を「Audience Science社」に替えていた。確かにこの方が的を射た社名だろう。行動ターゲティングの先駆者として、掲載面ではなく、配信先を特定する仕組み、つまりオーディエンスのデータベースをもつ企業であるからだ。

 この会社が匿名のクッキーに意味を持たせ、価値を生み出すことを本格的に実現させたと思う。ただ、行動ターゲティングの歴史は実に古い。
 96年当時、infoseekはすでにブラウザ単位に、サイコグラフィカルなベクトルをつけてクラスター化し広告配信のインベントリーとすることをやっていた。(但し、この仕組みは在庫量のフォアキャストが難しくて、実際の販売では挫折した。)

 レベニュー・サイエンス改めオーディエンス・サイエンスでは、確かクッキーのデータベースの企業同士の取引のようなこともやっていた。競合会社でなければ、お互いに訪問者のブラウザIDを交換して、活用しようという思考は働く。

 さて、最近リターゲティング商品が注目を集めている。
 当然、企業サイトの訪問履歴があるユーザーはそれだけ見込み客としての期待値が高い。実際に通常の行動ターゲティングよりCTRははるかに高い。CTRは必ずしも行動ターゲティングの効果を計る最終指標ではないが、リターゲティングに比較的レスポンスが高いことは事実だろう。
 企業にとって、自社のサイト訪問者のクッキーデータベースをどう活用するかは、日本ではまだポリシーを定めているところは少ないだろう。
 以前は、これを外部サイトでの広告配信データベースにしたり、協業企業と交換するなどという感覚はほとんどなかったと思う。(今もまだないか。)何か個人情報に近い感覚=お客さま情報の感覚があって、活用しずらい文化が日本にはある。
 
 そこで業界としてのガイドラインを明確にして、その扱い方を定め、ネットユーザーの不安や誤解を招かない施策が必要だ。

 ちょうど英国のIABが、行動ターゲティングに関するガイドラインを発表している。

 それは、

 ①通知(Notice)
  行動ターゲティング広告を目的として行動履歴を収集したり利用したりすることを、消費者に明確に告知しなければ  ならない。

 ②選択(Choice)
  消費者が容易に行動ターゲティング広告を拒否できる仕組みを提供しなければならない。

 ③教育(Education)
  行動履歴の収集と利用、およびその拒否方法について、消費者に分かりやすい情報を提供しなければばらない。

  というものだ。

また私見だが、ユーザーに対して自分の行動履歴を許諾するかわりに、同様の行動をしている他のネットユーザーがどんなコンテンツを閲覧しているかをリコメンドするような仕組みがあると、参加しやすいのではないかと思う。広告を最適化しますという広告の送り手の論理だけではなく、受け手にとってのベネフィットを、コンテンツのリコメンドをする仕組みとして提供すると面白い。
 リスティング広告が一見、検索結果に似せて成功したのと同様だ。

  オーディエンスサイエンス社が発表しているように、将来的には行動ターゲティングがサーチを抜くかもしれない。確かにネットユーザーが検索に当てているのは全体の5%に過ぎない。(米国の場合)ただ同じ論理でアドセンスがアドワーズの何倍にもなると言っていたグーグルの予測はまだ実現していないが・・・。

  技術的にも過去の行動からブラウザを抽出して、配信対象とするだけでなく、将来の行動を予約して随時配信する技術もでてくるだろう。

いずれにしても、企業サイト側のソリューションに軸を置かないと、「広告だけ」のサービスがあり得なくなる。

 私ベムは広告業界に新卒で入って26年経つが、その前半13年はマス広告とプロモーションキャンペーンを中心とした典型的なマスマーケティング、後半13年はインターネット広告のメディアレップを起案してイチから始めたインタラクティブ広告だ。ネット広告を始めた96年は電通さんがネット広告を「日本の広告費」のなかで初めてカウントした年で、16億円だった。それが昨年2008年には約7000億円にまで拡大し、今年は何と新聞広告を抜き去ろうとしている。
 英国ではすでにテレビ広告を超えているわけで、日本でもその日はそう遠くない。ただその頃は、ネット広告のデバイスはテレビモニターにも及んでいて、一般的には区別が微妙なものとなるだろう。
 
 さて、変化に鈍い広告業界も、さすがにこの変化には反応せざるを得ないだろう。ネット広告が新聞を抜き、大半の広告会社営業はデジタルに対応できるスキルを持っていない。一方で、自ら実践している広告主側のWeb担当者は知見を積み上げている。彼らには広告会社のアナログ営業はWeb言語で会話できないので、敷居が高くてあまりコミュニケーションがとれないでいる。(そしておそらく今企業でWebマーケティングを実践している人たちは、次世代の企業マーケティングの主役になっていく。)
 Webサイトの構築やネットモバイル広告は、今や重要な広告コミュニケーション活動で、場合によってはこの領域がコアになるケースもある。広告会社にはたいへん重要なビジネスであるはずが、営業のフロントラインにはこうした対応力がない。どこの世界に営業が自分の売っている商品について「良く分かりません」と得意先にいうだろうか。しかし残念ながら総合広告会社の営業の大半は平気で「俺、デジタル分かんないからさあ~。」という。そんな台詞を吐くことをまだ会社が許しているからだ。本当に真剣にデジタルに対応しろと指示していないからだ。
 いくらスタッフを強化しても、それは強化にはならない。デジタル&インタラクティブに知見のある人間が広告主の担当者と直接インターフェイスしてプランのみならず進行管理に携わらないかぎり、それは強化にはならない。また総合広告会社のインタラクティブ系スタッフも、営業ラインに知見ができると自分たちの存在感が希薄になるため、仕事の囲い込みばかりやる傾向もある。本当に会社や業界や後輩たちの将来を真剣に考える人は少ない。
 だからこそ今養成が急務なのは、インタラクティブ営業とでもいうべき存在だ。インタラクティブ領域といっても、ネットモバイルメディア、Webサイト構築(ネットマーケティング系、ブランドコミュニケーション系)、SEM領域、解析ツール、広告効果トラッキング、モバイル関連・・・といくつかの専門分野が成立している。
 それらをプロデュースできる営業こそ、今必要である。
 はっきり言って、マス領域もインタラクティブ領域も全部分かっているスーパーマンの育成など、そう簡単ではない。ほとんどいない。
 まずは「インタラクティブ・アカウント・プランナー」を育てることからはじめないといけない。