ブログ管理者: 2017年1月アーカイブ

  「マーケティングダッシュボード」活用に関する本を上梓することになった。この本を書いていて、会議体のあり方を考察することになった。

  会議の資料をそれぞれの部署の現場の若手が徹夜でつくるようなことがよくあると思う。しかも会議では、資料のデータが指標としてオーソライズされていないので、データの信憑性についてうんぬんされ、指標をもとに経営判断を下す以前の話で終始する。
 日本企業の生産性が低いのは、こうした会議のための会議が蔓延っていることにもよるのではないか。会議にかかる時間もそうだし、会議のゴールが設定されないことなども問題視されてきたが、上層部の会議への資料作成も、生産性を損ねている原因のひとつと言える。

  残業を減らし「働き方改革」(労働時間を減らすだけでなくどう生産性を上げるか)をするなら、こういう紙の資料に頼るだけでなく、経営判断のできるリアルタイムダッシュボードを会議で見ながら判断したらどうだろう。


 まず、紙の資料ではデータの視点がひとつしかない。
データは、視点や角度を変えると違う見え方がする。時間軸もそうである。

データから意味を読み出す力を幹部が持たないといけない。資料を部下に作らせ、作業に時間を費やせることから開放すると同時に経営ダッシュボードから経営判断できる能力を経営幹部が養う必要がある。

 データドリブンなビジネス遂行には、関わる社員全員がデータを浴びていないといけない。プッシュされている状態だ。
 従来は、PCからそれぞれがデータをそれぞれの都合のいいようにプルして紙にする。
それでは部分最適から脱することはできない。経営幹部であればあるほど全体を俯瞰すること、様々な角度からデータを見ることで「データ」を「インテリジェンス」とすることができないといけない。無駄を作業を省くと同時に次元の高い仕事へのスキルを獲得することに「マーケティングダッシュボード」「事業ダッシュボード」「経営ダッシュボード」を活用するようになりたいものである。

④ トランスペアレンシーは広告主・エージェンシー相互関係の構築へ

2016年に起きた事象は、デジタル広告(特に細かいオペレーションを伴うもの)が従来の枠取引とは違う文化にあることを改めて再確認した。ベムは、「紙のレポートを1週間に1回代理店の営業が持ってきて広告主に向き合って報告するモデル」から、「広告主とエージェンシーのトレーダーが横に並んで同じ画面を見て状況を共有し、その後も方針を確認していくモデル」と定義している。

いずれにしても、「何でもお任せください」と言ってきた代理店側が爆裂してしまった訳で、広告主側も丸投げすることができないということを認識したことと思う。改めて広告主が勉強することが大事だし、広告を発注する側、請け負う側という立場だけなく、パートナーとして情報を共有する相互信頼関係の構築が必要である。
ANA(全米広告主協会)のメディアトランスペアレンシーガイドにも7つ目にこの「相互信頼関係の必要性」を謳っている。
 デジタル時代、広告のセルサイドとバイサイドという関係を超えて共同して価値をつくることを目指したいものだ。業界としても米国IABのモデルを参考にしたい。

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⑤ テレビCM素材のオンライン送稿開始の影響と、ブランドごとの発注の非効率さ露呈 ~バルク買い&ポジションごとの素材差し替え志向と、スポットから番組への流れ~

ずっとやるやると言ってきたテレビCMのオンライン送稿がやっと今年実現しそうだ。CMプロダクションの食い扶持がプリント代なので・・・という議論はひとまず置いておいて、ベムが広告主ならプリント代が節約できることよりも、改めてCMの機動的な差し替えやオーディットを求めるだろう。オーディットと言っても以前の間引き問題のような話ではなく、バルクで買って細かい素材ごとの1本1本のポジションごとに適切な素材を入れたいのだ。ポジションごとにオーディエンスや視聴質が違うのだから、そうする。
差し替えの問題とオンライン送稿は直接関係ないが、機動的な差し替えがどうして出来ないの?という議論と素材が何種類かに分かれていた場合、入れたいポジションに入れたい素材がしっかり入っていたかをオーディットしたいけど・・・という議論を誘発するだろう。

ベムは、特に都市部ではテレビからデジタルデバイスへ投下予算のシフトが起こると思うが、テレビ予算でいうと「スポットから番組へ」というシフトが起きると思う。

 人口が多い高齢層の視聴時間が極めて長く、人口の少ない若年層の視聴時間が短い今、まんべんなく投下するテレビスポットは結局ほとんど高齢層に当たる。コンドロイチンならそれでいいだろうが、ターゲットが50代までの男性ないし30代までの女性ならば番組というコンテンツでターゲティングする買い方を再評価すべきだ。まただからこそ局も広告主も番組を世帯視聴率ではなくターゲット視聴率で評価するようにならなければならない。そしてそこにはタイムシフト視聴もしっかり評価することも大事だ。そのためにはリアルタイム視聴でもタイムシフト視聴でもCMがどの程度見られたかを測定しないと意味がない。録画だからと言ってすべてCMがスキップされる訳ではない。スキップ率は番組によって全然違う。また録画再生だけがタイムシフト視聴ではないので、どこまで足し上げて評価するかが問われるだろう。
 
おそらく2020年代にはデジタル広告のシェアがテレビを超えるだろう。その際、従来とは全く違う2つの構造的な課題がある。
ひとつは配信先データのコストも広告主が払うのかどうか(自分で所有できる場合があるからだ)、そしてブランドごとの発注の非効率さだ。
後者を説明すると、既にリスティングやDSPといった入札運用型広告では、キーワードやクッキー、IDを「競っている」ので、社内で競合して値段を上げているのだが、それに気がついていない。複数の広告ブランドを展開する大きな広告主は、バルクで掲載面を購入し、オーディエンス、タイミング、コンテンツ、コンテキストに最も適したブランドの広告原稿を配信するモデルになる。それはまさにプログラマティックのなせる技で、当然ブランドごとの予算配分も行うことになる。AIが広告の最適化にも応用されるだろうが、まずはこうしたところが対象だろう。

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⑥ オペレーション人材不足の懸念と受注を断られる広告主、そして自動入札の試運転へ

広告のプログラマティック購買の流れは止まらない。オペレーションのマンパワーが足りないという問題を抱えつつもこのトレンドは進むだろう。プログラムと言っているのにどうしてこうも人手がかかるのか・・・。
これだけ人手がないと、あまりにディスカウント要請が強く、かつ細か過ぎる対応を要求する広告主は仕事を断られることがあるだろう。もちろん受け皿は他にもあるだろうが、そのクオリティは担保されない。
一部で「断られる」ということが今後のこのビジネスの変化をきたす。

広告主の一部は自社で解決しようとするだろうが、
インハウストレーディングデスク構築はこれだけ人材不足だと厳しいと言わざるを得ない。

またサービスのサプライヤー側も人材不足を解決するため自動入札システム構築に動き出すだろう。これにはいくつかのハードルがあるが、ハードルを乗り越えるプレイヤーも出てくるに違いない。実は汎用の自動入札システムをつくるのは難しいが特定の広告主に特化したものの方がつくりやすい。


一方、オペレーション人材を育てる研修などの仕組みへのニーズが高まる。
それは直接オペレーションする人材だけでなく、プログラマティックとは何かを関わるすべての人が知る必要に迫られるだろう。
特にマーケター側の研修やスキル獲得のための仕組みづくりが重要なテーマになる。


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⑦ 企業にCDO設置が本格化する年

企業における「デジタル変革」(デジタル・トランスフォーメーション)の概念や必要性の認識がようやく定着してきた。マーケティングのデジタル化もその一環である。
そう考えると、マーケティング領域だけがデジタル化するということでもなく、またマーケティングをデジタル化するには、営業マーケティング領域以外の部門との再編や連携が必要で、それを統括するCクラスにはマーケティング領域を超えた力が要る。
 そもそも日本にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)が根付かないのは、マーケティングが定義されていないからである。またマーケティング活動の目標として「ブランド資産」に対する意識・価値観が欧米と全く異なるからでもある。日本のマーケティング担当者にその活動の目的を聞くと「売上・利益を上げるため」と答えるだろうが、欧米のグローバル企業に同じ質問をすると「ブランド資産を維持拡大するため」と答えるだろう。ブランド力のある企業が何億もかけてキャンペーンを実施し、その効果を分析したとする。おそらくそのキャンペーンによって増えた売上はほんの一部でしかなく、ほとんどがキャンペーンをしなくても売れた分になるだろう。しかし、そのベースライン(プロモーションをしなくても売れた分)こそが大きな価値であり、このブランド力そのものをどう維持拡大するかにゴールがあるマーケティングと今年の売上利益を追求するマーケティングはかなり違う。社長がCMOに今年の売上目標を持たせず、ブランド資産の指標を目標とさせる日本企業はほとんどないだろう。まあ、いきなり欧米グローバル企業のマネをしても無理がある。
しかし、このデジタルトランフォーメーションの機会は、日本のマーケティングを変革する大チャンスでもある。
 そのためには、マーケティングという領域を超えた企業活動全体のデジタル化を推進するCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を設置し、そのなかでマーケティングのデジタル化を果たすという手法にこそ可能性がある。

 この際、チーフ・デジタル・オフィサーには外部からの登用が主力になるかもしれない。COO,CFOと並ぶCDOの設置と「デジタル変革」対応に期待が集まるだろう。CMOよりまずはCDO設置という企業が増えそうである。


今年でブログ「業界人間ベム」も10年目に入りました。
年初の業界動向予測も2010年からそれらしいことを書いてきたので、これが8回目になります。

 さて、2017年の広告マーケティング業界7つの予測である。
2016年は広告業界にとって衝撃的なことがいくつかあった。いろんな意味で変革期として後に「2016年がきっかけで変革が加速したよね」と言われるようになるだろう。

そうした変わり目の翌年は、総じてデジタルが専門分野から本丸に吸収される年と言ってもいいかもしれない。

7つは以下のとおり

① 「出島」から本丸のデジタル化へ~POEダッシュボード採用で加速するデジタル化~
② アナログ施策を最適化するDMP本格始動の年 ~DMP2.0の始動~
③ テレビCM枠のオンライン入札の試み始動 ~テレビの本当の効果(間接効果とブランディング蓄積)を見極めて初めて出来る入札とデジタル偏重への一石
④ トランスペアレンシーは広告主・エージェンシー相互関係の構築へ
⑤ テレビCM素材のオンライン送稿開始のもたらす影響~ブランドごと発注の非効率~
⑥ オペレーション人材不足の懸念と受注を断られる広告主、そして自動入札の試運転へ
⑦ 企業にCDO設置が本格化する年

まずひとつめは、

① 「出島」から本丸のデジタル化へ

~POEダッシュボード採用で加速するデジタル化~

  昨年、ベムは一部の企業の「デジタルマーケティング本部」(略してデジマ)を「出島」と呼んだ。まさに「デジタルというエイリアンとインターフェイスするところは特別なところ」ということである。デジタルマーケティングは専門性の高い特別なマーケティングという意識(ある意味のコンプレックス)が生んだデジタルマーケティングという特殊なマーケティングをする位置づけによる組織化は、本丸のデジタル化を返って阻害するという結果を生んだと思う。
 再三言っているように「デジタルマーケティング」という特殊なマーケティングがある訳ではない。マーケティングがデジタル化するのである。
 その意味で、広告マーケティングの本丸がデジタル化しないといけない。

 昨年、日本アドバタイザーズ協会にデジタルメディア委員会が新たに設置された。従来アド協の下部組織であるWeb広告研究会(Web研)が広告主側のネット領域に関する活動を担っていた。しかし、企業のWeb担当者という位置づけは既に変質していると思う。今起きていることは、MAを導入しても「営業」が自ら関わらないとうまく機能しないということだったり、マーケティング施策全般を実際に実施している部門、担当者がデジタルツールを主導的に使わないと成果が出ないということだ。
 それは広告領域もそうである。マス広告、リアルプロモーションというメインストリームをやっている人たちがデジタルを駆使することで初めて「デジタルマーケティングが実践される」のだ。

 さて、その広告マーケティングの本丸である宣伝部がデジタル化する一番大きなきっかけは、マーケティングダッシュボードの導入になると思う。
 それは、POEを1画面で把握するリアルタイムダッシュボードであり、「打ち手」を前提にしたものだ。「打ち手」のタイミングと強弱を最適化するためにリアルタイムで競合を含めたKPIを把握する。
 Pは当然一番影響力のあるテレビCMの到達実態とデジタル投下が主なものになる。そして、これがある意味でオーディット機能も持ち合わせる。デジタルは3PASをかませてデイリーで配信数とユーザーレスポンスを見る。テレビも指示した素材が適正なポジションで出稿されているかリアルタイム確認ができる。
 Oへの流入も宣伝部がしっかり把握すべきだ。またEも自社ブランド名をコメントするソーシャルアカウントの数をカウントするなどダッシュボードに入れるべきデータは多いが、前述したように「打ち手」ありきでデータ整備をすべきでデータまみれになればいい訳ではない。

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② アナログ施策を最適化するDMP本格始動の年 ~DMP2.0の始動~
 
 ベムは2010年代前半のDMPブームがある意味一過性で終わったと思っている。その理由には2つある。ひとつはDMP構築という大変な作業で最適化されるのがDSPによるディスプレイ広告くらいだったこと。もうひとつは、汎用拡張ロジックではまったく成果が上がらなかったことだ。

 まず、DSPの機能拡張版としてのDMPでは、ほとんどの企業のマーケティング施策の1%にも満たない入札型のディスプレイ広告だけが最適化されると言われても成果として評価できないのは当然だ。また拡張ロジックもテック屋さんの作った汎用ロジックなので、それぞれのブランドにとって「購買行動を起こした人を逆引きして見込み客をセグメントする」ということができていなかった。汎用ロジックはほとんど「同じようなURLを閲覧していたルックライク」であって、「化粧品やクルマのルックライク」ではない。欧米でDMPで成果を上げているプレイヤーに聞くとみな「ブランド独自の拡張ロジック」づくりが重要であると言っている。DMPは潜在層に新たなターゲットセグメントを個別につくることができる。そこが肝心なポイントである。

 さて、今年は「DMPがアナログ施策も最適化する」というDMP活用による「打ち手」の拡がりが起こる年だろう。これをベムは「DMP2.0」と呼ぶ。

 つまりは、DMP特に3rdパーティデータ(パブリックDMP)を活用して、ダイレクトメールやチラシや営業マンのアタックリスト改善など、従来のアナログ施策を最適化するようになる。

 デジタル施策しか「打ち手の最適化」ができなかったDMPがリアルプロモーション担当や営業活動領域に改善をもたらすことで、DMPは本当の市民権を得るだろう。


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③ テレビCM枠のオンライン入札の試み始動 
~テレビの本当の効果(間接効果とブランディング蓄積)を見極めて初めて出来る入札とデジタル偏重への一石

 ベムは、テレビ局も手売りの限界を早く認識して、オンライン入札による広告枠販売をすべきだとかねてから主張している。その方がテレビ局にとっていいのに・・・と思っている。視聴者が放送から離れていく今状況での従来からの取引だけでは売上はシュリンクする方向にしかない。外資系を中心に「TARPをアクチャルで握れ」とか、局にとっては在庫管理ができない売り方を求められるくらいなら、1本1本の価値を、価値を評価するバイヤーに入札応札で売った方がパーコストは高く売れるはずだ。
手売りでは1案件のGRP量が多い方がいい。同じ作業でも売上が違うし身入りも多い。でも案件単価が高いとパーコストは抑えられる。言っちゃ悪いが、スポットはAタイム1本に深夜早朝を抱き合わせ販売するわけで広告主にとってもホントにそれでいいの?と聞きたくなる。
 今の売り方を一気に変えることは全くないが、一部はオンライン入札(応札)で販売してみることをそろそろ始めないといけないだろう。テレビ局は航空会社が飛行機のチケットをどうやって販売しているか勉強してみるといいだろう。

 しかし、オンライン入札のためにはバイサイドがその1本の価値を評価するためのデータが必要だ。今はセルサイドのデータしかないが、バイサイドに有効なデータ供給がオンライン入札には絶対に必要となる。
 
 ベムはテレビ視聴データを含め「送り手の指標から受け手の指標へ」また「セルサイドのデータからバイサイドのデータへ」ということをマス広告宣伝部のデジタル化のひとつの課題として上げている。

 2019年には放送と同時配信が予定されているなか、特にローカル局などは「手売りの限界」に早く気づいて対処すべきだ。ローカル局などはどっちみち販売は電博におんぶに抱っこなんだから、ちゃんとバイヤーにデータ開示をして、九州のダイレクトマーケターに入札してもらえるような環境をつくるべきだろう。

 アメリカではディレクTVが放送と同一コンテンツの同時配信を始めた。ベムにはもう放送という形態は必要がなくなっているように思える。4K・8K対応ももう放送ではない。5G時代に4K・8Kが普及するとローカル放送局の画像は、MXテレビで観る昔の4:3のアニメのように感じるだろう。

 そうした時代環境を感じるまともなテレビ局は今年オンライン取引のへの布石を打つだろう。


 また今年はテレビCMの間接効果やブランディング効果に関する検証がされるだろう。ある意味デジタルへのリ・アロケーション要請が過度におきている感をベムは持っている。経営へのアカウンタビリティの問題である。
 それはデジタルで測定できる効果データがテレビでは出来ていないことで起きている。ただテレビの効果はデジタルのような即効性や刈り取り効果と同次元に比較してはいけない。タイムラグがあるし、ストックとしてのブランディング資産への寄与は測定しづらいものだ。よく、テレビを止めても売上が落ちないということがよく言われる。しかしそれはその年くらいで、翌年、翌々年にはボディブローのように効いて来る。テレビとテレビCMの価値を再検証する年になるだろう。
 さらに、テレビとデジタルの相乗効果検証が進むだろう。そのためにテレビの1インプレッションとデジタルの1インプレッションをどういう価値で見るかが注目されるだろう。デジタル広告のビューアビリティが検証されるのは当然のこと、その反動でテレビのビューアビリティデータも求められる結果となるだろう。

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