ブログ管理者: 2015年6月アーカイブ

 ベムはその昔、とあるビール会社さんでのダイレクトマーケティングを担当していたことがある。ヨーロッパの名窯であるマイセン、ジノリ、ウェッジウッド、ヘレンド、ロイヤルコペンハーゲンほかでそのビール会社のオリジナルビアマグを焼いてもらい、それを会員募って頒布するものだった。オリジナルビアマグにはそれはそれは多くの附帯情報がある。売るのは単なる物(ブツ)ではない。背景にある文化も一緒に売っていた。会員には石坂浩二さんもいたし、多くの文化人がコレクターとなってくれた。
 またある化粧品会社さんでも、カード利用明細に同封される小冊子のなかで文化的背景のある(情報がある)小物をマーチャンタイジングして毎月頒布する(商品数が限られるので抽選でお売りする)仕事もしておりました。
 確か第一号は箱根の寄木細工、二号では甲州の印傳(鹿革ですね)だった。また、まさにその会社の企業文化そのものである商品や広告宣伝素材を、歴史を辿って紹介した。
 そこにはコンテンツが山ほどあった。もともとあるものも、その企業だからこそ新たに生み出せるものも含めて・・・。
 
 バブル期は広告業界には実に面白い時代であった。広告も広告会社もその幅をいっきに拡げた時代であり、様々なコミュニケーション手法と生活者へのアプローチ方法を試した時代だった。

 だから僕が今「コンテンツマーケティング」と聴くと、例えば自分が携わっていたこうしたCRM×情報マーケティングも昔の「コンテンツマーケティング」だったんじゃないだろうかと思う。ただ企業側からの一方的な情報提供には限度があって、企業が「テーマ」とユーザーがコンテンツを上げる「場」を提供するのが現代版のコンテンツマーケティングなんだろうね。(それだけ周辺情報量や情報選択の仕方、コンテンツの消費のされ方は変わったんだろう。)

 ただ必要なのは、Webやデジタルが専門の人というよりは、味わい深くストックしたくなったり、コミュニケーションに参加したくなるテーマとコンテンツをプロデュースできる人なんでしょうな。デジタルのプロはそういう人をサポートするくらいでないといいものは出来ないんじゃないかと思う。おそらくデジタルのプロは装置としてユーザーからコンテンツが醸成できる「場」づくりを上手にするのが役割かもしれない。

 僕は今でもマイセンに行って日本のビール会社のオリジナルビアマグ焼いてくれと交渉しに行った元上司がすごいなあって思うんですよ。また、それ以上にGOサイン出してくれたクライアントが素晴らしかったなあと・・・。

 そういう意味で、企画を「仕掛ける」ということは机上(パソコン上)だけではなくて、行動してみることなんだよね。企画力とは発想力だけじゃなくて実現力でもあるから・・・。

ネットマーケティングとデジタルマーケティングは何が違うか

 答えは簡単。
ネットマーケティングはWebサイトやネット広告といったインターネット領域しか最適化しないが、デジタルマーケティングはマスもリアルも含めたマーケティング活動全体を最適化するということだ。

今はテレビだってデジタル放送、消費者が店頭を訪れるというようなリアル行動もポイントカードほかでデジタルデータに取り込める。

故に、マスコミュニケーションもリアルな販売時点を含む消費者接点もデジタルマーケティングの対象である。だから、「デジタルマーケティング」といいながら、テレビの話がないとか、O to Oとかオムニチャネルの話がないというのは「デジタルマーケティング」じゃない。

つまりデジタルじゃないマーケティングがなくなる前提で、過渡的にデジタルという形容詞をつけているのであって、もう5年もしないうちに当たり前なのでデジタルという形容詞がなくなるのが「デジタルマーケティング」である。

マーケティングのデジタル化を意識づけるためにデジタルと頭につけているだけなので、マーケティングに関わるすべての領域がデジタルマーケティングの対象とならないといけない。


さて、マスもリアルということでは、テレビこそ最後のマスメディア。唯一プッシュ力のあるメディアである。マスの本丸であるテレビもデジタルマーケティングの対象だ。もちろんTVCMだけでなく、番組内で提供される情報もトラックしないといけない。

その意味では、テレビメタデータとソーシャルメディアデータの相関性を見ておくのもデジタルマーケティングの重要な視点だ。テレビで話題になり、取り上げられるようになると、ソーシャルでもそれを受けてバズっていく、また逆にソーシャルでバズるとテレビが取り上げ、それがまたネットで話題になる・・・。というようないくつかのパターンがあり、ある特徴的なパターンを踏むとその後の話題拡大(商品が売れる)がある程度予測可能になってくる。

 テレビもCM到達と、番組のメタデータとソーシャル反応を追う。そこに検索量やサイトアクセス、そしてPOSデータと、POEを網羅して目的変数との相関を把握することでダッシュボードが成立する。
 これらを時系列、つまりリアルタイムで捕捉することで、状況に対応した「打ち手」を打つことができる。

 そもそも、従来のキャンペーンは予算化から始まっていて、予算化できると、その予算でできるキャンペーンがプランニングされ、そのプランが忠実に実行される。そして終わってから調査で効果検証とするということを未だに多くの日本企業はやっている。

 しかし、終わってから調査しても、もう終わっているのだから、もう何も手の打ちようがない。

 そうではなくて、常にリアルテイムのKPIを把握していて、キャンペーンによってKPIをどこまであげるかという目標設定をして、予算内で目標達成に向けて運用していくというのがこれからのキャンペーンである。

 リアルタイムで打ち手を最適化していくのであって、ある意味事前に最適なプランがある訳ではない。大枠の計画があっても1~2割は運用予算に当ててリアルタイムでKPIを把握しながら打ち手を打っていくための予算にしておくことだ。

 リアルタイムでKPIを把握するためにも、デジタルマーケティングデータを常に取得できる装置を用意していくべきなのである。

 そういう意味ではデジタルマーケティング基盤はPOEを網羅するマーケティングダッシュボードということになるんだろう。

 「マス・リアル・ネットをデジタルで繋ぐ」 これがデジタルマーケティングである。

 「広告ビジネス次の10年」に書いたように、企業のマーケティング支援産業としての広告業界は大きく変わっていくと思われる。もちろん広告マンに求められるスキルも同様だ。

 データドリブンなマーケティング、デジタルを活用したマーケティング、これらは当たり前すぎて、そのうちデータドリブンともデジタルとも形容詞はいらなくなるだろう。

 これから起こることは、当たり前に「デジタル」と「データ」を介して、マスとリアルとネットの領域を連動させるということである。だから広告周辺のビジネス環境に身を置くのであれば、マスとリアルとネットの十分な理解が必要である。

 トラディショナルな広告代理店マン諸氏はデジタル対応が必須であることは十分意識しているであろう。それはデータと向き合うことであり、テクノロジーを使いこなすことである。若い総合代理店マンは自身のキャリア形成において、広告マーケティングのデジタル変革で今後何が起きて、自分のスキルをどうしておかなければならないかを真剣に考えるべきだ。今まだ考えていないとしたらそれはもうアウトだ。

 一方、ネット専業代理店を中心とする広告マンはどうすべきか、今のままCPAに縛られたメディアバイイングだけの部分最適に日夜四苦八苦しているだけでは将来価値あるスキルを獲得できない。確かにそこに市場はある。企業としてその市場で生存していくことを私は何らおかしいとは思わない。しかし、ひとりの広告人として生涯価値を上げようと思うならば、ネット領域だけで、しかも通販の営業代行のようなことをしていくというだけであれば、それではマズい。しかもずっと続くものでもない。求められているのは「作業」である。
企業は人を換えれば済む。しかし一人ひとりの広告マン(ウーマン)から見れば使い捨てでは困る。オペ疲れして、疲弊してただ辞めてしまうのでは非常に残念だ。
今の仕事はけっして無駄ではないが、次のキャリアステージをしっかり描いていかないといけない。

 よくネット系人材が、トラディショナルな広告会社に転じることがある。本人はネットに疲れて、マスやリアルな領域をトータルにプランニングしたいと願ってくるだろうが、採用する側はそもそもデジタル人材がいないから採っているのであって、デジタルをやってほしいのだ。そこにギャップが生じる。どちら側も片方しかやっていないから融合したスキルを開発できない。

 しかし、まだ数は少ないが、当たり前にデジタル化してマスもリアルもトータルにアプローチしている所もある。
 早いうちにそういう「場」に身を置いて、マーケティングやコミュニケーションの本質を体感すべく、仕事のプロセスや考え方(行動様式/思考様式)を覚えるといいだろう。(そこをリセットしないとスキルが身につく、つかない以前の問題なのだ。)
 
 でないと、そうした先進的な企業は、地頭の良い新卒の学生をどんどん採用して純粋培養するだろう。中途半端に癖のついた人材は修正が面倒だからだ。
 
 
 いくら仕組みを取り入れても会社の文化というのはそう簡単には変わらないものだ。

マスもリアルもデジタルで統合したマーケティングに対応するのだからこうした方がいいと言ってくれる上司、先輩がいない。誰も思いつかない。根付いた文化とはそういうものだ。

広告マンとしてあるいはマーケターとして高い価値を得るには、当然デジタルを理解していてビジネス全体、マーケティング全体をコントロールできる人財になることである。

早くそういう「場」を探そう。


 キャリアの次のステージをどうつくるかに関しては、近々ベムがセミナーイベントを実施します。詳細はこのブログでも告知します。

 海外では番組やCMをデータ分析してどんな因子に視聴者が反応するのか突き止めるような試みがどんどん始まっている。Netflixがドラマのシナリオをビッグデータ解析で変えるのはもうお馴染みの話だろう。リアルアイズという会社は、動画を映像、音声、その両方と分けて視聴者の脳波や心拍数を測っている。それによると、音声つまりサウンド効果が思いのほか大きなインパクトを持っているようだ。

 その昔、新卒で代理店を受けた時、クリエイティブ志望だったので、クリエイティブ面接の時にCMにおけるサウンド効果の話をしたことを思い出した。学生時代バンドで自主レコード盤をプレスしたり、楽曲つくっていたので、例えばギターのリフで引っかかるリフと、いい曲だけど引っかかりがないリフがある。楽曲選びやサウンドエフェクトについて素人の学生のくせに生意気なこと言ったと思う。

 
 テレビは点いているが、じっくり観ていない時間が長い。朝の時間帯は時計がわりでもあり、付けっぱなしだが、ウィークデーの朝は当たり前だが身支度しているのでじっくり観ている暇はない。しかしきっと聴いてはいる。

 そう思うと、テレビというメディアはデフォルトで音が出ているものだ。スマホもパソコンも必ずデフォルトで音声オンというわけではない。

 つまりテレビは唯一パッシブなメディアで、観る、観ないは「音」がきっかけになっている場合が多い。つけっぱなしでサウンドがデフォルト、しかし画面に専念することはテレビの前にいる時間の一部である。
 
 パッシブな接触を習慣的にしているのでプッシュ力があると言える、そしてその専念視聴のきっかけはサウンド効果だ。

 例えば朝の時間帯のCMはサウンドやナレーションを意識したバージョンにするのもアリなんじゃないかな。

 

一流企業なので、いずれも大手代理店の一流クリエーターがクリエイティブ提案に来るはずなのに、出来上がってくるCMクリエイティブにどうしてこんなに差が出てくるのか。

 これはやはり選ぶ側の力が反映するのである。もちろんプレゼンしてくる方にも多少の問題があるだろうが、選ばれないと意味がないので、代理店側も長くやっていると選ばれる案しか持っていかくなるわけで、原因は「選ぶ側」にある。

 企画は「提案する」より、「選ぶ」方が100倍難しいと言われる。

「選ぶ」能力、リテラシーを鍛えることも広告主には必要だ。なぜならクリエイティブが最も大きな変数であって、コミュニケーションの最適化には表現力開発に「強く」ならないと競合に勝てないからだ。
 ただこうした広告主側の「選ぶ」力は一朝一夕には獲得できるものではない。ある意味企業文化とも言えるくらいの伝統芸だったりする。

 例えば、長く広告宣伝に力を注ぎ込んできて蓄積された企業文化がある会社は、担当者がつい最近営業から異動してきた人であっても文化のある宣伝部に所属するとリテラシーが鍛えられるものだ。典型は代理店が持ってくるCM案の絵コンテを読み解くリテラシーだ。絵コンテから出来上がるCMの完成度、トーン&マナーが想像できるリテラシーである。なぜか分からないが、こうしたリテラシーが伝統的に受け継がれている企業がある。これは素晴らしい企業文化であり、貴重な財産である。こうした資産を上手にデジタルマーケティング時代にも対応させたいものだ。

 一流企業でも、広告表現を開発する際の「思考プロセス」を大事にするところと、アウトプットを直感的に評価するところがある。
 
 どちらがいいという訳ではないが、選ぶ能力のひとつは、コミュニケーションの考え方とアウトプットの間のジャンプをどう評価できるかだ。クリエイティブにはいいジャンプと悪いジャンプがある。いいジャンプなのか、悪いジャンプなのかを見抜く力が「選ぶ」リテラシーの重要な要素だろう。

 さて、CMを選ぶということは何十年もやってきたのでそれなりに経験値があるものだが、デジタルコンテンツとかなるとどうだろうか。オウンドメディアのコンテンツを企画開発するとなるとCMを選ぶのとはかなり違うかもしれない。フォーマットが確立している中のものを選ぶのとは違い、フォーマットや仕掛けから選択していかないといけない。そうなるとアイディアだけで選んではいけない。素材をつくって終わりではないので、運用体制がどうなっているか、しっかりPDCAを回せるのかなどチェックポイントは多い。そもそもオウンドなので、自ら仕組みやコンテンツを企画して表現のHowの領域をアウトソースするくらいでないといけない。ここでもアウトソース先は「どこに頼むか」より「誰に頼むか」で、まだまだデジタルのスキルは属人的だ。

 今の時代の優秀なクリエーターとは、CMプランだけでなく、その企業やブランドのマーケティングコミュニケーションにおける課題やポテンシャルをしっかり把握して、コミュニケーションコンテンツ開発のコアアイディアを創出できる人である。広告クリエイティブだけなく、サービス開発やビジネス開発までクリエーター的センスでデザインする能力と再定義されると思う。

 広告主のリテラシーとはこういう優秀なクリエーターと自らが「ストプラ」として渡り合うことが出来ることではないかと思う。そもそも考え方やコンセプト設計から代理店にお願いしないといけないようではダメだ。マーケティングメディアがほとんどペイドメディアであった時代はまだ良かったが、オウンドやアーンドも統合的に設計しなければいけない時代は完全に広告主たるマーケター側にストプラとしての高いスキルがないといけない。

 クリエイティブを選ぶ力を発揮させるのも、まずはそのあたりから構築していく必要があるだろう。