プロセス革命とアートの温存

  広告ビジネスが面白いのはクリエイティブを始めとして「アート」な部分を少なからず温存しているからだが、本格的にデジタル化が進むとどうなっていくだろうか。またこれは当事者である広告マン自身がどうして行きたいかという問いかけでもある。

 以前ある講演で、AIによって最初に人がクビを切られる産業は、広告業界(ネット広告業界)だろうと話したことがある。AIまでいかなくても、今「人手が足りない、人手が足りない」と騒いでいるオペレーション領域が真っ先にオートメーション化する。いわゆるRPAで業界は息を吹き返すだろう。とはいえ一方で雇用の面では、単純オペレーションしか出来ない人材は要らないということが急激に起きる。

 そもそもプログラマティックという以上はプログラムによる自動最適化であるので、いつまでも人力でシコシコやるべきものではない。また人では絶対に出来ないことをこなすのが機械であり、AIの仕事だ。
 数年で、バルクで買っておいた広告掲載面に、タイミング、オーディエンス、コンテンツ・コンテキストによって1インプレッションづつ最適なブランド広告を最適なメッセージ(クリエイティブ)をマッチングし、かつ各ブランドの予算配分管理をするようになるだろう。人間のオペレーションでは絶対に出来ない領域にRPAなりAIなりが踏み込んだ瞬間から一気に雇用環境、労働環境が変わるだろう。

 さて、この業界でのAIの使われ方だが、まずは拡張に使われるのだと思う。拡張に関しては、当初DSPを作ったアドテクの人たちが、マーケティング思考なしに(つまりはしっかりした拡張ロジックなしに)ネット上にある手短な材料で「拡張」と称してしまったので、当然効果がなく、成果を出しましたという話をほとんど聞かない。ベムはこうしたことはトラッドなストプラの思考をもって拡張ロジックをつくらないと成果は出ないだろうと言っていたが、前言を翻す。実は拡張こそAIがうってつけなのだ。ロジックなどという理屈でなく、広告反応・効果という結果から配信対象を最適化する。

 この考え方は、それこそ拡張すると、マーケティングにおいて「なぜそうなっているか」を突き止める必要がなくなるのでは?ということに行きつく。つまりは調査なんかいらない、インサイトの発見など、AIが最適化した後に人間が理屈をつけたかったら「勝手にどうぞ」の世界になるかもしれない。
 
 エージェンシーのデジタル化のエントリーに書いたように、本丸はクリエイティブやストプラ、メディアプランニング、SPプランニングなども「経験と勘」「職人技」でやってきた施策をデジタルによるプロセス革命で(おそらくそこには「働き方改革」の文脈も強く作用するだろうが)、効率化だけでなく、従来の手法では絶対に出来なかった新しい価値を創造することが求められる。

 進化する広告配信が人間のオペレーションを超えるように、AIが参入するプロセス革命では、人間による(理由を発見して、それに対処する)プロセスが淘汰される可能性もあるだろう。
 
 そうしたプロセス革命に「人間系」(アート)をどう残すか、残すというより新たな価値をつくれるかどうか、人の力が試される。

 将棋や碁のAIは既に人間との対戦領域を超えてAI同士で鍛え合って、どんな天才でも人間では絶対に発想できない差し手の領域まで行っているようだから、知的な作業ほどAIが代替するほうが、効果が出るようになるんだろう。

 マーケティングはどうなりますか・・・。

 広告マンはどうありたいですか?

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