2016年9月アーカイブ

デジタルインテリジェンスNY 榮枝のレポートです。

ADWopening1.JPG ニューヨークのアドバタイジングウィークが26日月曜日から開催されているが、メディア取引の透明性議論について全米広告主協会(ANA)側が広告業協会(4A)と対抗する様相になってきた。

28日に行われたANA主催のセッションには、
・Bill Bruno CEO, North America, Ebiquity(ANAの透明性調査を受けた調査会社)
・Bill Duggan Group EVP, ANA(このセッションの主催)
・Ben Jankowski SVP, Global Media, MasterCard(広告主側ゲストパネラー:マスターカード)
・Tony Pace Founder, Cerebral Graffiti(広告主側ゲストパネラー:元サブウエイCMO、ANA Chairman)
・Julian J. Moore, Esq. Senior Managing Director, K2 Intelligence(透明性調査を受けた調査会社)

がパネルとして参加し「メディア取引の透明性」について議論が行われた。

 広告主と広告業界とがフェアーなディスカッションをするためには、このパネラーの中に広告業界側からも登壇する「バランス」が欲しいところだが、実現に至らなかった。実は4Aの代表(CEO)のナンシー・ヒルCEOは登壇を「予定」されていたが、直前にキャンセルを発表している。

キャンセルになった理由は、ANAの指摘している「個々の」エージェンシー&クライアントの契約ケースが多様で、4Aとしての「統一見解」としての公言難しからだ。

広告主側のANAの指摘は「あれも、これも、色々ある」という報告レポートなので、それを受けて4Aが協会として返事をするには「あれはこう、それはこう」という個別対応説明する難しさがある。この難しさを協会内で調整なしに代表公言するのを控えた形だ。本件の4Aの対応ミーティングは、すでにニューヨークでは第一回が開催されたが、サンフランシスコ、ダラス、、、と広告マーケット主要各都市で複数回開催する必要がある。

4Aナンシー・ヒルCEOは本件につき全てオープンに話すとしながらも、When it comes to legal and contract specifics, we feel these are best left between agency and client.(個々のケースの検証は、法的な事も関係するので、個々のエージェンシーと広告主との協議に委ねたい)としている。「協会対協会」のレベルで議論をしたり、和解するではなく、「個々の」広告主の行動とそれに伴ったエージェンシーの行動が頼りになる。

ANA側のトランスペアレンシー・ガイド(ANA transparency guidelines)に続き、4A立場もトランスペアレンシー行動ガイド(Transparency Guiding Principles of Conduct)を策定した。これは指南書ではなく「4Aメンバーの規定」のレベルの気合の入った書類だ。

4Aの立場は三面記事的に見れば「表に出てこない」立場に見えるが、今後しばらくの間、協会としてのコメントは控え、それよりも個々のケースを自主的に洗い直しする事を待つ事になる。4A協会の防御ラインとして、まずガイドラインは策定できた、という段階が上記だ。

28日のセッション登壇のマスターカードのグローバルメディア・バイスプレジデントは「広告主はベストのエージェンシーとして採用契約をし、エージェンシーもそのベストの結果を提供する立場だ。しかしエージェンシーのスタッフには、日々進化するデジタル環境に未熟な若手も存在する。玉ねぎの皮をむくように、管理職がひとつひとつ洗い直す義務もあるはず。」とした。

ADWmatt.JPG

 今年のアドバタイジングウィークに参加来場者にとって、先週9月23日に電通が発表た「不適切」取引の話題は、ホットであり今年の大きな話題の一つだ。ちなみに、刻々と英文の表現が微妙に変化している。10月23日には電通の取引が「Inappropriate Operations(不適切なオペレーション)」であったのが、「irregularities(不正行為、不正直行為)」にシフトしている。

10月23日 Inappropriate Operations'
http://adage.com/article/special-report-advertising-week/ana-media-transparency-issues-solved-individually/306068/

10月28日 irregularities"
http://adage.com/article/special-report-advertising-week/ana-media-transparency-issues-solved-individually/306068/

現在ANAと4Aとの協会同士の立場は平行線のままだ。しかし、明るい方向としてANAのチェアマンは「何もドラマのような展開や、エージェンシー企業を告訴しようとしているのではない。」と述べた。「現在は答えの見えない平行線でも、きっとより良い着地点がみつかるはずだ」。

このコメントの引き金は、先週の電通側の「能動的な社内調査」の中間報告が大きい。ANA側は「大いなる第一歩」として賞賛している。一方でJPモーガンチェース銀行、GE等の自主的なエージェンシー取引の「見直し検証」も始まったとWSJが述べている(先日のブログ・エントリーでも紹介済み)。

ANAはスモールサイズの企業においても他人事と言わず、ANAのレポートの一読を勧めている。英文での一読も1時間程かかる量だが「一読に値する」と啓蒙している。

ADW01.JPG

ANAのメディアトランスペアレンシー・レポート(英文)
https://www.ana.net/content/show/id/industry-initiative-recommendations-overview

WSJ出典:
http://www.wsj.com/articles/big-marketers-launch-audits-of-their-ad-buyers-1474567320

AD WEEK ニューヨークが開催されます。デジタルインテリジェンスNY代表榮枝からのレポートを速報で掲載します。

今年のOpening Galaは、何と、今年出来たばかりのワールドトレードセンター施設のOculusの「中」で行うと。

これはすごいです。JTB的には、観光ネタの目玉ですね。

写真ご覧ください。

IMG_5902.JPG オキュラスのグランドオープニングの時の イベントの模様です(榮枝撮影)。

おそらくこの自社オープニングにつづいての初の外部貸し切りじゃないかと想像します。

ちなみに、この「ドーム型」のこの施設、建設費ざっと4000億円です。
オリンピックの日本の国立競技場で、なにやらモメてた金額の倍(数倍)ですね。(これも税金使われてます)

そしてこの金額は新築された全米一番の建造物となった(541M)
ワンワールドの建築費と、ほぼ同額です。

それほど、すごーいドーム、という事で。
中に入っている店鋪は、有名ブランド精鋭ブランド総集めです。
アップルストアも当然あります。

続く

 出遅れてしまったので、少し角度をかえて取り上げてみたいと思います。
 
 この件、どういう訳か海外メディアから報道され、そもそも日本の広告マーケットの不透明性を槍玉に上げているようだ。海外メディアの論調は、電通だけが悪いのではなく「日本ってそういう国」、「こういう取引が当たり前の国」というイメージに持っていこうとしている。

こうした中で、米国広告主協会(ANA)が、電通の「Proactive(プロアクティブ:自主的な発表)を歓迎・評価している報道もある。

 「米国広告主協会のVP ビル・ダガン氏は、電通が今週、トヨタアカウントのデジタルメディアの取引において「不適切な」請求があった事について「プロアクティブ(自主的に)」報告した事は、好ましい行為だとした。

http://adage.com/article/agency-news/ana-applauds-dentsu-mum-reports-major-marketer-audits/305981/

第三者のオーディットが入ってから発見されてしまうのではなく、プロアクティブに広告主に報告した事は、好ましい行為だとした。

 もちろんそもそもはクライアントからの指摘で発覚しているということなので、完全に自主的とは言えないかもしれないが、非常に積極的な実態解明の努力をされたとは思う。ただANAがこういうコメントを出すことには米国での背景もある。

 ANAはエージェンシーグループの「不透明さ」をこの2年調査し、レポートして指摘し続けているにも関わらず、WPPもオムニコムもピュブリシスもANAの調査結果や指摘には「遺憾」しか唱えてこなかった。
 この「不透明だ」対「知らぬ」という均衡状態に、最初に「自主的報告をした」電通にANAは「よくやった」と褒め言葉を与え、「これが最初の1社目だ。次は誰だ」と言いたいようだ。
 
 ANAの発表によれば、米国でも実際、JPモルガン銀行、GE、シアーズ、AT&T、オールステート保険、ウォールグリーン・ブーツ、アリアンツ、フィデリティー、ハイネケン、USセルラーなどがエージェンシー・ホールディングス企業との「契約内容」の見直し監査を個別に始めている。

 広告契約内容が不透明とされるのは、今回の電通の件が子会社の作業のなかで起こったのと同様に、ホールディングスの「子会社」での取引で起こっている事を広告主が関知できない契約になっているからだ。

 例えれば、WPPのメディアエージェンシーのグループMと契約しても、傘下のトレーディングデスクのXasisの中や、さらにその中のアドテクのAppNexusで何がどう取引されているかは、広告主は関知しない契約になっている。承知の上の契約のはずだが、その旧来の契約のひとつひとつを吟味し始めたのだ。

 デジタルメディアの取引が旧来の手売りメディアに比べて複雑で見えにくいというのは表面上の理由だ。不透明といわれる深部には、1)ホールディングス企業が企業買収を進めた結果、あらゆるマーケティングサービスを傘下に収め1本に集約したことから発生する不透明さと、2)「先買い締め、後売り」の利ざやを稼ぐアービトラージの方法が増えたことにから発生する不透明さが大きい。

 これは言い換えれば、「マーケティング全てを1社で集約する事業」を「アービトラージ」方式で先行して行った日本モデルに、欧米の方が近づいてきたと言える。

 海外メディアがこれは日本特有だと言いたいのには、日本モデルに近づいてきたメガエージェンシーの意向も反映しているかもしれない。そんななかでのANAのコメントである。
 

 しかし電通にとっては、ANAから歓迎のコメントが出ているのは「ケガの功名」かもしれない。透明性のある取引に改善したという「1番手イメージ」を世界に発信するチャンスではある。


 ただ、今後、本当にデジタル広告の運用の透明性を確保するには、第三者による配信設計とその精査と、買い付け運用そのものを分離するなどの仕組みが必要だろう。
 そうでなければ広告主自身がトレーディングデスクをインハウスに置くなど、人材難のなか少々ハードルの高い施策も考えないといけない。

 入札運用の管理画面を毎日広告主が見る意味をつくることで不正など起きようのない環境をつくるという手もある。

 そもそも従来の広告の「枠もの」の実施とそのレポートを週一で営業が紙でもってくるというパターンと、リアルタイムで入札運用していく「運用型広告」は文化的に相容れない。発注者である広告主が、リアルタイムで入札発注をかける仕組みでは、リアルタイムダッシュボードを「打ち手」の拠点とすることになる。

 今回のことは、広告の買い方、管理の仕方が新しくなっていく中での過渡期で、もし起きても(もちろん不正はそもそも起きてはいけないが)発覚しにくい状況を生んでいたとも言える。

 広告施策は「プランどおりに実施して、終わってから結果を見る」という従来型からリアルタイムで状況を把握しながらリアルタイムで「手を打つ」仕組みがメインになっていくだろう。

 前向きに考えるなら、今回のことを契機に、デジタル広告の実施管理が進化していくことを期待したい。ベムもこうしたことでデジタル広告の信頼回復に貢献したいと思う。

広告コストのアカウンタビリティ向上は結構な話ですが、オーディットでそれをコストカット材料にするだけでは意味がないのです。


大企業が広告に使うコストについて、社内的にそのアカウンタビリティを求める動きは常にある。特にネット広告の効果指標が(部分最適だが)明確に感じられる分、マス広告特に巨額なテレビ広告の効果効率についてもっと精査せよとの動きも顕著になってきた感がある。ベムのところにも財務系の部署から視聴質によるテレビCMの本当の効果算出に関して問い合わせも入る。

しかし、ベムはこういうただコストカットのためだけに広告を目の敵にする財務管理系の人たちのお先棒を担ぐつまりはない。

「広告の買い付けを資材部・購買部にして効率を精査する」という、短期的に利益を出すためにコストカットしようというコンサルもいて、売上を上げるための広告投資をどう最適化するかという視点に欠けた、広告を単なるコストとして見る向きには賛同しない。

 ベムはむしろこうした単なるコストカッターから、宣伝部を守りたい。もちろん宣伝部が説明責任を果たせるように効果を立証するのだ。

 テレビCMの効果も、その本当の効果を詳らかにして、その強さと弱さをしっかり見極めると、実はテレビ広告はやはり使うべきだとなるはずと思っている。また逆に今しっかりテレビの本当の効果をしっかり把握しないと、テレビがだめになるのを早めてしてしまうと思う。

 テレビの効果はブランドによって違う。だから個別に「いくらだったら買っていい」という投資ラインがある。

 以前このブログでも書いたが、ブランドごとに買っていい額があるなら、それを入札応札で取引されるということもあっていい。ただそのためにはバイサイドが本当の効果をしっかり把握できないと価格を決められない。テレビ局もその方がパーコストを高く売れる気がするが・・・。

 すべての広告投資の直接・間接効果と、効果のタイムラグと、ブランディング効果(マーケティングの時間軸を長期にとった場合のROIの最大化)をどう数値化するかなど、企業ごと、ブランドごとに可視化することで、投資対効果を最大化することにならベムは最大限協力します。

 僕は宣伝部の味方です。

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