2016年8月アーカイブ

ゲームアプリやEC系ビジネスなどネットビジネスが広告主となってテレビ広告を大量に使うようになった。もちろんどのCMクリエイティブでどのくらいダウンロードされたかとか測定はしているものの、そもそもCMクリエイティブ開発には、ろくにクリエイティブブリーフもない感じで、いきなり出てきたアイディアベースのつくり方をしていると感じる。

 ベムが昔CM制作に携わっていた時は、かなり表現戦略上のRationaleというか思考回路も吟味されたものだ。だからKJ法だのラダー法などいろいろやってみた。まあ演繹的に作り込むのはそう簡単じゃない。
 クリエータもだいたい引き出しに入っているアイディアを使いたいから、表現戦略上のコンセプトで理屈をつくる僕のようなアカウントプランナーとは大概衝突する。クライアントにプレゼンの席で、「う~ん。アサツーさんのは、考え方はいいんだけどねぇ・・・。表現案がその考え方と違うというか・・・。変にジャンプしちゃってて・・・」とよく言われた。(笑)

 で、ネットビジネスの広告主のCMクリエイティブなんだが、やはりネットでCPAとかが指標で、ABテストとかばかりやっているから、「クリエイティブ」することがどうも分かっていないように思う。バナーみたいなものは既存のクリエイティブ素材の副産物として制作されてきたから、ネット専業代理店の人は撮影に行ったこともない人が多いだろう。
そもそもパソコンの画面上でしか思考していないように思う。

 ABテストをすると言っても、考えられる表現が100あるとしたら、レベルの低い99番目と100番目を比較して、「どっちがいいか」とやっているかもしれないよね・・・。

 クリエイティブというのは、いったん考えられる「表現」を1000本ノックで拡げられるだけ拡げ、そこから修練させるというプロセスを踏む。
 
 また修練させるロジックも、クリエイティブブリーフをつくって、そのフィルターを通ったものでないと成立しないわけで、「面白いからいい」という訳にはいかない。
 
 「ネットインプレッション」という最終的に視聴者に残るパーセプションを計算しつつ、ブランドメッセージの伝え方を企てる。

 そうした「ブランディング」を長年思考してきた者と、CPA思考とにはかなり距離があるようだ。

 ネット広告に関しては、重箱の隅をつつくような細かい最適化を追求する割には、テレビCM制作には大雑把というか、つくり方が全く分からないのかぁと思う。

 せっかくテレビ使うなら、テレビCMをどう作るかは、クリエイティブ開発にしっかりした思考回路を持たず、代理店任せにすると(というかこういうのは代理店のせいにしちゃいけなくて、広告主の能力が出るものなかので)、いくらABテストして最適化していると言っても、ABテストではなく、YZテストしてるかもしれないだけどね・・・。

CMOを育てようというムーブメントが起きて久しい。しかし、日本企業でのCMO設置は相変わらず進んでいるとは言えない。
 その本質は、「日本ではマーケティングという考え方そのものが根づいていないこと」、それに尽きる。

・マーケティングが定義されていない。
・広告・販促のことをマーケティングと呼んでいる。
・そもそもマーケティングは営業がやっている。

 だから欧米流のCMOの機能など遠すぎてイメージすら出来ない。

「事業部ラインが求める売上利益よりブランド価値を優先する」というようなCMOの基本思考を述べられても経営トップからそんな思考がないし、経営トップがCMOの機能について腹落ちしていない。

 一方、デジタル社会は到来しており、企業の「デジタル変革」(デジタル・トランフォーメーション)が喫緊の課題と言える。

 「マーケティングは経営そのものだ」とまで言い切れる欧米企業と違って、マーケティングは広告・販促と考える日本企業にも等しく「デジタル変革」が急務となっている。

 であれば、ベムは無理してCMOを戴くよりも、会社のすべての分野の「デジタル化」を役割とするCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を設置して、デジタルトランスフォーメーションを推進する方が分かりやすいのではないかと思う。むしろそういう大きな権限の中でないと、マーケティングのデジタル化でさえ出来ない。

 マーケティングを再定義する機会として、「デジタル変革」は最も都合のよいはずだが、そもそもマーケティングが定義されていない企業は、再定義が出来ない。
 マーケティングを云々している間にタイムアウトになるくらいなら、COO、CFOと並ぶくらいの大きな権限も持ち、すべての領域のデジタル化を使命とするCDOが大なたをふるう方がマーケティングのデジタル化は進むだろう。

 CMOよりCDOを置こう。

2009年にWeb研セミナーにおいて私が「3つのメディア」として考え方を紹介したことを契機に、「トリプルメディア」という概念はかなり普及したと思う。
https://www.wab.ne.jp/wab_sites/contents/115

翌2010年には拙著「トリプルメディアマーケティング」が出版された。

この本では、企業のマーケティングメディアをペイド、オウンド、アーンドの3つに整理し直して、それらを有機的に連携することを提唱した。
改めて、WebやSNSの登場で、企業のマーケティングメディアを再整理して、施策検討の幅を広げないといけないと言った訳だ。
つまり、マーケティング施策検討に「気づき」を与えるために幅広く網羅するためにPOEの概念を使うのである。そしてその中から検討すべき施策があれば、それらを繋ぐことが重要である。何も全部やれということではない。だからそれらの施策の企画実施には出来れば同じ人、同じチームが携わる(ディレクションする)方がよい。

時々クライアントで目にする資料にPOEを縦軸に、潜在層施策からリテンション施策までをヨコ軸にしたマトリックスがあってそれぞれの箱ごとに施策と職務分掌が記入されていることがあるが、このマトリックスをそのまま組織編成という名のもとに分断してしまうことがあるようだ。

POEmatrix.jpg


私が提唱したのは、POEの輪が3つあるとして3つが重なるところにピンを打ってバラバラにならないようにしようという考えである。POEは施策検討の網羅性を担保するために行うのであって、POEに担当者を分けることを必然とはしていない。

poepin.jpg

 POEを職務分掌のための概念にしないほうがいいのだ。逆にPOEを俯瞰してコントロールできる人材が育たない。

そうは言っても大きな企業では、やることが膨大で役割分担しないといけない。

しかし、機能的な役割分担する上で、POEで分掌化するのがいいかどうかを考え直して欲しいのである。いちおうPOEを日本に紹介した張本人なので、やっとIMCの考え方でスルー・ザ・ラインを実現したのに、今度はPOEで分断するようになってしまっては、提唱者としてはなんだか責任を感じる。

 もし組織上の職務分掌としてPOEで分けるなら、3つのベクトルを合わせてのKPI設定と担当者の評価軸設定が必要である。POEのトータルディレクターがいて、そうした設定をしないといけないが、そもそもそういうことができる人材が育つには、POEが別々に機能する組織体制では難しくなってしまうのだ。


企業のオウンドメディア戦略は、自社ドメインに見込み客を集客するという従来モデルでは成立しなくなった。ソーシャルメディアも企業にとっては基本、ソーシャルCRMを踏まえて、カスタマーセンターと広報を同一部門に置くなど、パブリックリレーションとカスタマーリレーションがオーバーラップしてしまう今の時代に合わせた企業インフラ整備の問題である。

ある意味、Web担当やソーシャルアカウント担当という職務だけでは部分最適ばかりが進む。POE全体最適をディレクションできる職務とそのスキル開発を考えよう。

テレビCMに関しては、他のマスメディアと比べれば従来からもかなり科学的なアプローチをしてきたと言える。リーチ、フリークエンシー、GRP・・・と確立した指標がある。しかし、人口減少社会となった現在、いくつかはそのまま使っていていいのかと首を捻りたくなるものも、そもそも「そんなんでいいのかな?」というのもある。

 例えばM1やF1の人口は10数年前の8掛けになってしまっているが、ずっとTARPというパーセンテージで指標化している。母数が減っているから同じパーセンテージでも到達人数が減っていることになるが、それでいいの?とか・・・、平均フリークエンシーはリーチした人の平均だし、その平均値で当たっている人がどのくらいいたかは把握しないままということが多い。
 フリークエンシー分布(つまり、ゼロ(未到達)は何人、1回は何人、2回は何人・・・)を到達実態として把握していないと意味がないのだが、どうもそうしたデータを見ないまま、適正フリークエンシーを議論しているケースがある。

 実態としては過少フリークエンシーとフリークエンシー過多に2極化しているので、実は7回とか8回の接触者は極めて少ないのだが、その回数を適正だと言ってみても、適正フリークエンシーに補正する「打ち手」を議論しないのであれば全くナンセンスだ。

テレビの到達力はまだまだ強力だ。ただそれは初速においてで、一定以上からどうしてもサチる。特にターゲットが若年層となると、デジタルデバイスと組み合わせないとリーチを獲得できない。

 まずはターゲットにどれだけリーチできるかを、テレビとデジタルを統合的に把握することから始めないと、ターゲット到達実態が分からないまま、認知や態度変容をうんぬんするのは順番が違うだろう。

 「届かないパットは入らない」と青木功も言っている。(笑)

 まず、ターゲットリーチ補完、そして認知効率を上げる施策としてのターゲットにおける適正フリークエンシーへの補正・補完、その次に態度変容効果(購入意向)を促進するためのデバイス別のコミュニケーション・・・と、進化させたい。

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