2016年1月アーカイブ

 テレビCMとデジタル動画広告、その「補完・組み合わせ・相乗効果」を考える場合、それぞれの視聴態度やどんな時間帯でどんなモードでユーザーは接触しているかを考察する必要がある。

 テレビの視聴態度は他のメディアと比べるとかなり受動的(パッシブ)だ。
だから、CMクリエイティブを事前チェックする場合、ある意味強制的に視聴させて測定する手法なので、実態とのギャップが出ると思われる。

 またクリエイティブチェックの調査では、CMだけを評価することになるが、実際には、どんなタイミング(時期・曜日・時間帯)で、どんなコンテンツ(番組)の中で接触したかも大きな変数となる、また接触頻度別に感じ方や反応が変わることが確認されていて、それもクリエイティブによって、オーディエンスによって違う。
脳波や心拍数、アイトラッキングなどで測定する場合、男女差が相当出る。脳科学も進歩していて、男女の脳の構造や感じ方が違うことは時々テレビ番組で話題になるのでご存知の方も多いだろう。女性がターゲットのCMクリエイティブ制作の際は、よくよく女性脳を研究した方がいいのだ。それは男性ターゲットでもまったく同じことだが・・・。


 「モード」という言葉を使ったが、テレビ視聴者ないしスマホユーザーがどんな「気分」で接触しているかは、当然デバイス別の傾向もあるが、それだけではない。利用プラットフォームやタイミングやコンテンツによって違ってくる。またどうもスマホというデバイスはPCとはまたずいぶん違って、幅広い「モード」があるように思う。

 テレビCMは受動的、パソコンは能動的と単純に考えていた時期と違い、デジタルデバイスの主流がスマホになった今、スマホの接触態度はもっと研究する余地がありそうだ。
 デジタルデバイスだからアクティブだと考えるのは安易である。スマホ利用でもパッシブな接触をするものや時間帯などがあり、テレビとの組み合わせを構成する際の重要な要件となるだろう。

比較的自己関与の低い「商品カテゴリー」では、パッシブな視聴態度のアプリ利用時に広告を配信した方がいいかもしれない。

 テレビCMが若年層特にティーンにおいてその到達効率が落ちていることは拙著「新世代デジタルマーケティング」でも実態データを含め言及している。

 子供はみんなテレビを観るものという時代は終わっていて、周辺の小学校くらいのお子さんをお持ちの方に聞くと、ほとんどがYouTubeばかり観ているという話が多い。

 昔は「全員集合」みたいに観ておかないと、学校で話題に乗り遅れるという番組があったが、今はほとんどない。また視聴ログを見ると必ず観ている番組というのは非常に少ない。例えば、10%くらいの視聴率のドラマだと、リアルタイム視聴をしたTV端末はとりあえず全話ないし1話観ていないという視聴パターンが1番になるものの、2位~8位くらいまではどこか1話しか観ていない。
 
いずれにしてもティーンのテレビCMの到達率は昔に比べ大きく落ちている。


さて、本題はこれからだ。

 テレビでティーンエージャーにブランド訴求をしようとすると、一番効率の良かったテレビが期待できなくなっていることで、懸念されることがある。それは「ターゲットが20代以上だからティーンには今はいいや」と思っているとたいへんなことになるということだ。

 従来は対象が大人でも十分テレビCMはティーンに到達していた。それが今は非常に届きにくい。若年層は観ない人と観る人が2極化していて、ほとんど観ない人がじりじり増えているのだ。全く観ない人にはいくらテレビのGRPを増やしても意味はない訳で、テレビCMだけブランド訴求をしていると、まったくブランドを認知もイメージも持たない若者がいっぱい醸成されているということになる。

 ベムは昔、あるアニメキャラクターのインスタント麺の商品化とCM制作に携わったことがあるが、この商品の味はその即席麺メーカーの定番ブランドの味だった。つまり子供たちに味を刷り込んでおきたいという戦略であり、将来の需要のために商品化した戦略的なものだった。(キャラクター商品だけではほとんど黒字化できなかったかもしれないが、目的は単に今の売上ではないのだ。)
 
 テレビCMはブランド訴求には最も効果的なものだろう。そのテレビCMがティーンに届きにくいとすると、彼らが大人になった時に、「そのブランドに何の意識も反応もしないでスルーする」ことになる。

 今ターゲットでないからと言って、放っておくとトンでもないことになるのだ。昔は意識しなくてもテレビで届いていたティーンへのブランド訴求が、今はほとんど出来ていない」という実態、気づいておこう。

その4)デジタル人材の本格的な流動化スタートの年

    ~レガシー代理店マーケ・ストプラ系人材復権の年~

昨年からいわゆるデジタルマーケティング人材が転職する傾向が始まったと言える。2016年はさらに流動的になるだろう。マーケター側もエージェンシー側も両方である。
特にエージェンシー側は、デジタルに特化していた人材をレガシー代理店が取り込もうとする傾向が顕著になる。しかしいわゆる転職市場にいる人材は限られている。デジタルマーケティング支援をする企業は、地頭の良い学生をいかにこの業界に連れて来られるかは今後の業界の趨勢を決めるだろう。
 
 またコンサルティングファーム系にデジタル人材が異動する傾向はさらに顕著になるだろう。コンサルティングファームはIT系人材や広告会社人材、ブランドマーケター人材などを取り込むだろうが、そもそもコンサル会社の文化の違いによって、取り込んだもののうまく機能しないケースが多いだろう。
 コンサルも従来の概念論で終わる訳にはいかず、エグゼキューションを担ったり、成功報酬モデルを導入するなど、マーケティングのデジタルシフトでは実際成果を上げることを求められるだろう。

~使うのはデジタルデータでも必要なのは従来のマーケター発想~
 一方、レガシー代理店では、従来のマーケ・ストプラ系人材にデータドリブンなプランニングを求められる傾向がいっそう強くなる。これはネット専業系にデジタル領域を任せてきた広告主が、「打ち手」がネットに閉じていた間は良かったが、「打ち手」の広がりと伴に、プランニングにそもそものマーケター発想が必要なことに気づき始めるからだ。

 デジタルデータを駆使して最適化されるのはテレビであったり、リアルなメディアだったりするようになる。スマホのロケーションデータを使ったターゲティング発想もネット専業文化の知見では難しいだろう。
 その意味で、レガシー代理店のこうしたスキルへの見直しが起きるだろう。

 しかし、事はそう簡単ではない。
 レガシー代理店のマーケ・ストプラがこうしたデータドリブンなプランニングが出来るかどうかである。

 料理すべきデータの扱い方に慣れている人材はほとんどいないだろう。
 アウトプットする能力はあっても、インプットデータを咀嚼する能力がないというのが実態だろう。ここがこういう能力開発も最もキモになるところだ。
 
 ただ、マーケター発想でデジタルを料理しなければならない以上、まず必要なのは従来のストプラ思考なのであって、デジタルしか知らない人材には求められるアウトプットは出来ないと考えていいだろう。
 
 いずれにしても、「マスメディア・リアルプロモーション、クリエイティブ」という領域と「ネット・テクノロジー・デジタルデータ処理」という領域が分かれて存在することでの「価値の低減」はなんとか食い止めなければならない。

 ベムは従来から、アナログおじさんのところにデジタル小僧が来てマン・トゥ・マンでコンビを組んで新たなスキルを創出するようなトライがされるべきだと発信している。
 そうした意味では単なる人材流動だけではだめで、オン・ザ・ジョブでの融合スキル開発などチャレンジすべきことはたくさんある。そもそも新しい種が出来る時は個体に突然変異が起きる。あまり大きな組織単位の発想ではなく、個人に「突然変異」が起きやすい環境を用意することが先である。
 何人かにスキルが生まれてからスキルトランスファーのための組織を考えるべきだ。

  マス広告を扱う人材のデジタルデータ活用能力が試され始める年だとも言える。


その5)マーケティングダッシュボードから事業ダッシュボード・経営ダッシュボードへの進化の年   

~POEリアルタイムダッシュボードが確立することで入力変数は広告プロモーション領域だけではなくなる~
    
   
ビデオリサーチ以外にも秒間データでテレビ視聴ログデータを供給する事業者も複数現れている。ほぼリアルタイムでテレビCMのアクチャル到達データを自社競合とも取得して、ダッシュボードに反映させることが可能だ。テレビに限ってはペイドメディアのリアルタイムデータは取り込める。ここにオウンドのセッション数やブランド名検索数、ソーシャルメディアでもブランド名記述などが持ってくることが出来る。

 従って、POEの動向をリアルタイムで表示するダッシュボードが成立する。これらの説明変数をもとに、例えばメーカーなら取得しているPOSデータなどを目的変数としてフィードするとPOEダッシュボードが出来る。少し狭義な意味でのマーケティングダッシュボードである。

 今年はPOEダッシュボードが普及し出す元年となるだろう。

・テレビCM出稿量
・テレビ番組内でのブランドや商品カテゴリーに関する話題発信数
・ブランド名、競合ブランド名検索数
・自社ブランドサイト訪問数
・ソーシャルメディア上でブランド名を記述するソーシャルアカウント数
・POSデータなどの売上データ

これらをリアルタイム捕捉することで、一定の閾値を超えた場合の「打ち手」を想定しておき、随時アクションが起こせる状況にするのは「マーケティング施策対応のあり方だと言えよう。

 そして、このようなダッシュボードが価値を持ってくると、説明変数には単に広告プロモーション施策だけでなく、値引きのデータや工場からの出荷状況など、より売上利益に影響するデータの入力が求められるようになるだろう。
 「狭義のマーケティングダッシュボード」から「事業ダッシュボード」に変革していく。

また、データドリブンな思考をより活性化するために、「データドリブンなオフィス環境」をつくることも課題になるだろう。実際にイトーキなどはこうしたオフィス環境設計を提案している。

 エージェンシーがそうなるのはまだまだだと思うが・・・。


その6)ユーザーの関心文脈でコミュニケーションする動画制作がスタートする年

    ~テレビはブランドの文脈、オンラインはユーザーの文脈~
     シェアやすく、かつブランドメッセージが伝わるクリエイティブとは?
     ターゲットユーザーが反応する要素(因子)は何か

オンライン動画広告の市場拡大は顕著になっている。しかしまだまだテレビCMと同じ素材を使っている例の方が主流で、動画広告というより動画のブランデッドコンテンツを作りシェアさせようという試みにテレビCM以外の素材制作は向けられている。
 それはプロセスとしては当然の流れだが、オンライン動画広告用素材制作もオンライン独自素材を制作する企業が増えるだろう。

 もちろんインストリームでのスキップ防止なども目的に改修されるCMというものから始まり、テレビとは違うオンラインでの視聴を前提にしたクリエイティブが量産され出すだろう。

 テレビは非常にパッシブな環境であり、オンラインは基本アクティブな接触だ。またテレビでは視聴者はどういうユーザーか分からないが、オンラインではある程度分かる。どんなユーザーが広告配信面に来たかで配信する素材を最適化できる。
 であれば、オンライン動画広告はそのユーザーが興味を持っている文脈でのブランド訴求にクリエイティブを最適化するという考え方が出来る。


オンライン用の動画の意味はそもそもどう考えたらいいのだろうか。
ベムが提起するのは、「テレビはブランドの文脈、オンラインはユーザーの文脈で」つくるべきだということだ。話を単純化すると「猫が大好き」で「可愛い猫の動画」をよく観ているユーザーには「猫」はユーザーが強く反応する文脈である。こういう要素分析を行い、ターゲットに強く刺さるクリエイティブを創出するのがオンライン側の役割になるだろう。そして、テレビCMとオンラインCMの双方を視聴した時に(おそらくターゲットによってはテレビCMは同じでもオンライン動画は違う)、化学反応のようにブランドメッセージがより強くスパークすることを目標にするようになる。

 またブランディング効果に繋がる指標として「よりシェアされる」というデータ取得が可能で、「シェアされやすく、かつブランドメッセージが伝わるクリエイティブ」を制作する能力がオンライン動画クリエイティブでのスキルとして標榜されるだろう。

 またユーザーが反応する因子分析をして、「クリエイティブに持ち込む要素」をデータから特定するようにもなると思われる。

 データドリブンな「クリエイティブ・ブリーフ」が作られ、その上で良いアイディア、良いジャンプが出来るクリエーターが「良いクリエーター」として評価されるようになるだろう。(従来から本来そういうものだったはずだが)


その7)広告ブロックが端緒となってその連鎖によるネット専業ビジネス衰退の始まりの年

2015年はステマ問題などデジタル広告のなかでも「野放し」感のあるものに警鐘が鳴った年でもあった。またアドブロックの出現で業界は騒然となった。
広告ブロック自体の直接的な影響は少ないと思うが、ユーザーが気持ちよく受け入れられる広告配信への基調が出来る。うんざりするオンライン広告を是正する動きは、「刈り取れればよい」とする広告の配信を抑制する方向になるだろう。
既に買ったものやオーダーしたのに在庫がないとキャンセルさせられた商品の広告を配信してくる杜撰なリタゲに対する明確な拒否感も出てくる可能性も高い。

    もうひとつは「消費者契約法」の改正がらみ。ここには業界的にもたいへん懸念される状況がある。一連の動きはユーザー重視、消費者重視の観点から、「刈り取れればよい」系の広告に一線を画して、そのあり方を問う傾向が強くなるだろう。この流れをきっかけとして、この領域の広告市場だけで食っている専業会社の淘汰が始まると思われる。

  
~ネットに閉じているスキルとCPA至上主義の限界露呈~ 
とはいえ、ネットを販売チャネルとしている事業者にとってのネット広告の「刈り取り機能」のパフォーマンス最大化志向はまだまだ続くだろう。刈り取り広告市場がシュリンクすることはない。しかしその最適化ソリューションを提供するサプライヤー側のスキルの限界は露呈してくる。そもそも「打ち手」が配信先や配信手法を変えるだけというのでは、もう誤魔化しは効かない。つまりそうした「打ち手」だけのパフォーマンス改善に限界が来るので、抜本的なクリエイティブ改善やそもそも広告以外の本当のソリューションを提供できるプレイヤーでないと淘汰され始めるだろう。
今までは、広告主の担当者が広告費を使うアカウンタビリティのあるCPAで社内を通してきた傾向は、パフォーマンスが頭打ちになることでもっとトータルな施策な考え方と効果指標が求められるようになる。ただCPAだけが目標化されてきた行動様式は特定の専業代理店では「文化」として浸透しきっているので、これを改革することは容易でないかもしれない。

~ダイレクトマーケティングでもブランディング効果を付加しないと続かない~
ブランディングとは「マーケティングの時間軸を長く設定したときのROIの最大化」だとすると、ダイレクトマーケティングの世界でも今日明日の売上の最大化ではなく、今後1年または今後3年の売上を最大化するにはどんなコミュニケーションが必要かを考える事業者も出てくるだろう。こうしたことは俯瞰して全体最適が考えられる経営に近いポジションから生まれる必要があるが、アフィリエイト、リスティング、リタゲと来て、刈り取りに特化してきた広告のパフォーマンスの頭打ち現象から、商品力とブランディングコミュニケーションへのマーケティングコストシフトが起こる可能性は高い。ただし、やはりそこには経営層のこうしたマーケティングへの見識が問われることになるだろう。

~優勝劣敗がはっきりし始める業界~
こうした市場の右肩上がりに翳りが見えてくるため、CPAを目標化してのパフォーマンスを試されている専業広告会社のなかにも、そろそろ優勝劣敗がはっきりしてくると思われる。広告本来のまだ興味関心が顕在化していない層(潜在層)に認知と態度変容を促す役割をどう醸成するかに関して、多様な「打ち手」をもって課題解決が出来る広告会社とそうでない会社というところで一線が画されるという言い方も出来るだろう。


番外)  ブランド横断型マーケティング担当(DMPによるデータマーケティング担当)
     が重要な機能として認識される年

 人口現象社会の日本の市場で、ブランドマネージャーがブランドごとのマーケティングをすることの限界が明確になる。複数ブランドを展開する企業にとって、この位置づけのマーケターの必要性が大いに語られ、表明する企業が増えるだろう。
人口が減るなかでLTVを上げる、クロスセルを促進するなどの課題が出てくると、これはブランドごとにマーケティングしている事業部やブランドマネージャーでは出来ないことだ。またユーザーの年齢が上がれば、効率的に自社内ブランドに引き継ぐためにはどうしても商品視点ではなく、ユーザー視点でのマーケティングがメーカーにも必要なのである。

 ブランド側のマーケターがCMOに成長するプロセスに、まず営業や広告部門を経験し、ブランドマネージャーを経て、ブランド横断型のDMPを駆使したユーザーベースマーケティング担当となることが求められるだろう。
 複数ブランドを展開する企業では、こうしたスキルがCMOの必要条件となるだろう。

 企業の経営トップは、マーケティングのデジタル化に伴って、「マーケティング」を再定義して全社員とその認識を共有する必要がある。「マス・リアル」と「ネット」の分断と部署ごとの部分最適化を打破して、全体最適に持っていくのはトップの責任だろう。もう「デジタルが分からない」というエクスキューズは通用しない。


総論として、2016年はマス(テレビ)とリアルにデジタルデータが最適化のために活用されたり、デジタルメディアとの連動が本格化する。そういう意味で、日本でも「広告マーケティングの本丸が本格的にデジタルを取り込みだす年」ということになるだろう。どうやら「アドバタイジングウィークTOKYO」も始まる。これも象徴的なことで、アドテク業者同士が説明し合うだけでは、(ネット領域のアドテクに閉じたところに)本当の意味のソリューションがないことが明確になったところで、新たに「本当のデジタルマーケティング」が認識される年と言っていいだろう。

その1)デジタル広告でパブリッシャーの連携が始まる年

 英国の「パンゲア」など、巨大プラットフォーマーに利益を持っていかれているパブリッシャーが連帯して、自らの利益基盤を作ろうとする動きは日本でも始まるだろう。
 良質な一次コンテンツを創出しているパブリッシャーが、デジタルシフトしても持続的な経営基盤を維持出来るようになるのは、受益者であるユーザーにとっても大切なことである。
広告というマネタイズでそれが成立するためには、アメリカの1/4とも言われる広告単価を本当の価値に見合ったところまで引き上げる必要がある。そのためにも掲載面の良質コンテンツが誘引する良質なオーディエンスとその接触態度をもって、広告の「ブランディング効果」をもっと主張したい。
それには、ブランディング効果を生むフォーマットや効果指標を新たにつくる必要がある。こうしたことはパブリッシャーが単独で出来ることではない。連携・連帯が必要となるだろう。
また、今後期待されるネイティブ広告の動画フォーマットなどでのクリエイティブも、ブランドの文脈というより、パブリッシャー側のコンテンツ文脈(=オーディエンスの文脈)でつくられるべきであり、こうしたことはエージェンシーに頼ることなく、パブリッシャーが連携してクリエイティブ開発機能を獲得すべきである。

競合意識ばかりでお互いに向き合うのではなく、協調できることは積極的に連携を進める時期に来ており、大手パブリッシャーのリーダーシップにも期待する。


参考) http://digiday.jp/publishers/pangaea-symmachia-pubulisher-alliance/


images (11).jpg


その2)スマホのロケーションデータ活用で交通広告・折込チラシ大変革スタートの年

これはまた、ユーザー情報活用ポリシー再検討の年でもある

2016年はスマホのロケーションデータをターゲティングに活用する元年になるだろう。しかし、これには大きな課題もある。ロケーションデータを使われるユーザーにとって「気持ち悪さ」の払拭はそう簡単ではないからだ。これにはパーミッションの仕方もあるが、そもそも広告配信ルール、運用上の自主規制が必要である。
 例えば、「セグメントする一括りを5000人以下にまでは絞らない」とか、個人特定に近づかないように運用面でのケアをするということである。

 ここを間違えると、すぐには市場形成に至らない可能性もある。いくらシステム的に個人情報と紐づいていないと言っても使われるユーザーからすると「気持ち悪さ」には変わりない。

 その上で、スマホのロケーションデータを活用したターゲティング技法が実現していくと、かなりマーケターにとっては幅広く使えるものになるだろう。

 先ほどのダイレクトマーケターの「潜在層からの新規ユーザー掘り起こし」にも新たなターゲティング手法として注目されるはずである。
 昨今はリタゲ偏重のように、既に興味関心を顕在化したユーザーにばかりをターゲットし、刈り取り促進にばかりコストを集中されているが、これはそもそもマーケターとしての発想が貧弱な証拠である。
 ロケーションデータを使った新たなターゲティング発想は、「新たなターゲットを創出する」発想であり、リタゲ的な縮小均衡のターゲティングではない。
 
 また、このターゲティングは従来の交通広告や折込チラシ、ポスティングサービスのプランニングに劇的な進化をもたらす。「打ち手」はスマホへのデジタル広告ばかりではなく、デジタルサイネージを含む従来の交通広告、折込チラシ、ポスティングほかリアルな施策に応用できる。2020年のオリンピックに向けて特に都内のサイネージなどは大きく変革され、進化するだろう。山手線の新型車両をはじめ、ディスプレイへのシフトで、時間を区切った広告表示など、印刷物からディスプレイへの進化の真骨頂というべき革新が起きるだろう。

 こうしたサイネージへの広告配信プランニングを支えるのが、スマホのロケーションデータになるのは間違いない。またデジタルサイネージはその視聴可能エリアにいるスマホデータをキャッチして最適な広告配信をすることになるだろう。このような実験も今年2016年に行われると思う。


ダウンロード.jpg


その3)全数系テレビ視聴データと全数系購買データが紐づく年

~新たなテレビ視聴データ分析とその活用が本格化する~

 テレビ視聴データというとビデオリサーチ社をはじめパネル調査によるものと理解されているが、テレビ端末の結線率が上げることでネット回線を使った視聴ログデータ収集は様々な事業者によってトライされると思われる。いわゆる全数系のテレビ視聴データである。これに全数系の購買データが紐づくことが想定される。
 つまりテレビ視聴と、その効果としての購買行動が測定されるということである。従来、メディア接触と購買データをシングルソースで見ることは出来たが、やはり数千、数万のパネル数だと確認したいブランドの購買データが出現しないとか、特定の広告のテレビ視聴者が少なすぎて分析に耐えられないということがあった。しかし、ビッグデータ時代、マーケティングデータは、ECやポイントカードデータという全数系購買データと紐づくべくテレビ視聴データも全数系となるだろう。

~視聴率から視聴質へ~
 視聴率はテレビが点いているという状態を測定しているに過ぎない。また個人視聴を測るピープルメータも自分が観ている時はこのボタンを押し、観ない時はまたボタンを押すという行為を被験者に強いている訳だが、これがどの程度正確なのか、疑問を挟み込むとキリがない。
 視聴率だけでなく、視聴質を測定できたらということはその昔当時の広告主協会からも業界に発信された経緯もある。

 ベムの考える「視聴質」とは、「誰が観ているか」(オーディエンス)と、「どの程度専念して観ているか」(ビューアビリティ=テレビの前への滞在度合い&アテンション=注視度合い)、「誰と観ているか」(コ・ビューイング)、「どんな反応をしているか」(表情分析)などで構成される。
 2016年はこうした「視聴質」データが世に問われる年にもなりそうだ。

 Netflixが上陸してきたが、彼らが視聴データ分析をコンテンツマーケティングにまで応用し、成果を上げているのに対して、日本のテレビ局はあまりに視聴データ分析を怠ってきた。視聴率は単に「商品が何個売れたか」に過ぎない。視聴者構造やオーディエンス分析をして、「誰が何個づつ買ったか」、さらに視聴質分析によって、消費者が商品(番組やCM)にどんな関与をしたかをアテンション=注視度合いや、コ・ビューイング(誰と誰で観ているか=例えば母親と子供で観ている)状況、反応分析(表情)などでさらに深めるべきだろう。
 昨年の週刊ダイヤモンドの特集タイトルは「誰がテレビを殺すのか」だったが、実際は体調が悪いのに血液検査もしないのだから、誰に殺される訳ではなく、自ら病気で弱っているのに処方箋を書いてもらっていないに過ぎない。需要より供給力が落ちているのが今のテレビ業界だ。ゼロサムだから日テレが頑張っているというよりCXの落ち込みで他局が相対的に良く見えるだけ。

 
~全国ネット番組をしっかり分析するローカル局データ~
全国ネット番組に関してはすべての地方局の視聴率がとれている訳ではなく、個人視聴率は機械式では東阪名しか取れていない。そういう意味では全国30局ネットと言ってもローカルのデータはほとんど分からないにも関わらず巨額なコストをかけて全国ネットの番組を買っている。
 前述のようにテレビ視聴ログデータも全数系データで分析できると、すべてのローカルデータも十分分析できる。
こうした分析が進むと、ベムが予測するに、「都市部はデジタルデバイスシフトが進むが、ローカルのテレビ出稿はかえって増える。」と思う。
そうした「都市部のデバイスシフトとテレビ出稿のエリアシフト」の基調がこうしたデータから起きるのも2016年と言えるだろう。


 いずれにしても、従来のマスメディアとデジタルメディアを連携して使うという基調が2016年から始まると言っていいだろう。


images.jpg

月別 アーカイブ