2014年9月アーカイブ

 Youtubeでビデオ投稿者に広告収入をもたらすエコシステムが出来たことで、MCN(マルチチャンネルネットワーク)という業態が成立している。音楽のVEVO、ゲームのMachinima、パフォーマーを束ねているFullscrennなどだ。


https://www.machinima.com/

http://www.fullscreen.com/


 私がMCNに注目したのはディズニーがMCNの大手「メーカースタジオ」を950億円で買収したことがきっかけだ。

http://www.makerstudios.com/

 普通に考えると、何でわざわざディズニーのようなコンテンツ企業がこんなオンラインビデオのクリエイティブ会社を買うんだろうという疑問が残る。しかしどうやら「メーカースタジオ」の価値は、チャンネルというかたちで囲い込んである視聴者と、テクノロジーをもった企業であることが分かる。

どうやらメディア企業と広告主企業という従来の広告のセルサイド、バイサイドという話ではなくなっているようだ。マーケティングコンテンツ(あえてマーケティングメディアという言い方はしないで書こう。)つまり自社ブランドをオンライン(例:ユーチューブ上)に最適化することが求められており、そのための技術、人材、クリエーター、専門知識等は、コンテンツ企業であるディズニーでさえテレビ事業の延長ではなく(ABCはディズニーの傘下)全くの外部の取込が必要だったのだ。やはり文化が違うという考え方もあるが、事情は日本とはかなり違う。映像コンテンツクリエータ(映画を中心にエンターテイメント産業)の裾野は広く、そもそも放送事業もハードとソフトは分離している。オンライン発の映像クリエイティブ文化はすでに萌芽している。

 一方、日本でTV局のオンライン動画コンテンツへの対応を見てみると、まず自社でやろうとすると放送番組との収入の差があり過ぎて本格化しない。しかし放送収入と同じスケールにまで成長するまで手が出せないとしたら、(そもそも同じモデルの中で考えているなら)オンラインでのビデオコンテンツプライヤーの主役たちのなかにはテレビ局はいないということになるだろう。
 
 YouTubeによって確立したエコシステムに順応してクリエーターが次々と世に出てくる。ユーチューバーをマネージメントで囲い込む業態は出てきているが、もっと踏み込んでチャンネル化を進める業態が日本にも出てくるかどうか。期待も高まる。

  前々回のブログで少し書きかけた「タイミングの最適化」についてもう少し話を拡げよう。キャンペーンという送り手のタイミングから消費者ひとりひとりのタイミングに合わせたコミュニケーションに広告マーケティング予算は相当シフトされるべきだと書いた。


 さて、検索マーケティングがこれだけの市場を獲得したのは、これが関心のマーケティングと同時に、検索行動に即カウンターで接触するというタイミングのマーケティングが成立しているからである。
  ただ消費者にとってのタイミングは関心を顕在化(行動化)でキャッチできるものばかりではない。というかほとんどの場合行動でサインを送ってくれる訳ではない。
 
 ビッグデータ時代のマーケティングのひとつの大きなテーマは、個々の消費者のタイミングを、その「兆し」をキャッチし、カウンターで最適なタイミングのコミュニケーションを志向することだと思う。

 メールマーケティングもここ数年の最も大きな進化は、配信のタイミングが送り手の都合から受け手にとってのタイミングを模索するようになったからだ。昔からやっている最もプリミティブな例はユーザーの誕生日に合わせた情報プッシュだろう。当然開封率が格段に上がる。

 登録情報は最大限生かすとして、(登録してもらえるユーザーは極一部なので)消費者にはどんなタイミングがあるのか、それがどんな兆しとして補則できそうか・・・という仮説設計は、まずはやはり人間が発想しないといけない。それらをデータで検証することが次の手で、そしてデータから文脈の発見(カスタマージャーニーの逆引きなど)の試行を繰り返し、消費者が意識していない「兆し」を発見出来れば面白い。仮説立ては人によるものだが、消費者にも意識されていない「何か」の発見は、データ分析による試行錯誤を繰り返すしかない。
ただその「試行錯誤」にもふたつあって、仮説立てが出来るメンバーによる知見の蓄積あっての「試行錯誤」と、全くとらわれのない「試行錯誤」である。ただこればかりはやってみないと分からない。(だから面白い。)まったく思いもよらない角度から分析してみることで「大発見」があるやもしれない。これからのデータ分析とは実にクリエイティブな作業だ。

 つい先日までW杯で盛り上がったブラジル。ところで、日本のデジタル放送方式がブラジルを始め、南米諸国で採用されていることはご存じだろうか。

 ところが、せっかく日本のデジタル放送方式が採用されたにも関わらず、現地で売れているテレビはほとんど韓国製なのだそうだ。いろいろ訊いてみると、価格の問題もあるかもしれないが、スマートTVとしてのオンライン接続規格で、日本のTV機器は世界のニーズにしっかり対応できていないからだという話もあった。

 そもそも日本では、テレビはデフォルトで放送を受信する状態になっていないといけないことになっている(らしい)。次世代スマートTVの仕様においても、テレビ放送を主体としてネットを従属サービスとしている。
 しかしグローバルには、ずっとテレビの生産を止めていたフィリップスが久々に再開したテレビがアンドロイド搭載だったりしていて、今や放送の受信は選択肢のひとつであると考えていいと思う。

 昨年のスマートビエラのテレビCM放送拒否問題も記憶に新しいが、(拒否ってしていいのかな。どうなんだろ?)

http://www.huffingtonpost.jp/2013/07/08/panasonic_n_3559736.html

放送事業者を中心にテレビというデバイスはデフォルトで放送を受信するものと規定する発想には、「それを選ぶのはユーザーなんじゃないの?」と思うし、テレビ局はコンテンツ制作者でもあるんだから、ディストリビューション手段がオンラインでも「ドンと来い」と構えて欲しい。編成権が視聴者に移ってしまった時代の番組供給手段としてむしろオンラインを活用しないといけないのでは?・・・、というか、そもそもオンラインの動画コンテンツ供給にテレビ局が本格参入しないと面白くないのよ。HULUにだって番組の供給がかなり出てきているんだし、オンラインでも広告収入モデルにチャレンジして収益性を確認してみたらどうだろう。(コンテンツごと課金⇒見放題課金⇒広告で無料)

 アメリカでは放送とオンラインの垣根は本当になくなっている。Netflixが制作した「HOUSE of CARDS」がエミー賞を獲得したことはみなさんご存じのとおり。一回もテレビ放送されていないドラマがエミー賞。また、アメリカではテレビスポット広告はアクチャル保証するけど未達の場合の補てんを放送によるかオンラインによるかは「おまかせ」という仕組みが出現している。
 
 私の家のリビングのTVでは、だいたいNHK2:民放4:WOWOW2:HULU2ぐらいの視聴時間シェアだから、まだまだ放送受信主体だが、ただ専念視聴時間でいうと、NHK2:民放2:WOWOW2:HULU4くらいかな。(今は全米オープンテニスやってるからWOWOWとHULUは逆転してるかも)

視聴者が能動的に、かつ自ら選択的に視聴するオンデマンド番組の方が専念視聴される分広告効果が高いなんて調査が出てきてからオンラインに本気出しても遅いんじゃないの? 頑張ってよ!テレビ局・・・。


 今のテレビリモコンじゃあ、まあオンラインコンテンツ視聴は面倒だし、そもそも回線は早いのにテレビ側の処理速度が遅かったりする。画期的なポインティングデバイスや入力方法などにイノベーションがあれば、大きな高精細画面をリーンバックで享受するコンテンツをネットから自在に選びたいという欲求は大きいと思う。放送で観ようが、オンラインで観ようが、テレビの大画面で観たいのは、今のところは映画やドラマがメインだしね。(今のところはね・・・。)

 さっそく買ってみたChromeCastはうちではそれなりに活躍しているが、テレビは既にデジタルデバイスなのだ。放送事業者側がその仕様を決めるのではなく、テレビメーカーも通信事業者も一緒にユーザーオリエンテッドな開発を進めて欲しいものだ。そうでないとメーカーもただただ端末ハードを売るだけが続くだろう。しかも40インチくらいのテレビが4~5万で売られていて、スマホより安いのだから・・・。

「どうやら広告に接触すると買わなくなってしまう人がいる」ことを広告接触と購買行動を紐付けたデータの中に垣間見ることができると前回書いた。
 では、どうしてほっとけば買ったかもしれない人が広告を当てたばかりに買わなくなるのか。仮設としては、

① 広告のトーン&マナーが嫌い。(または出てくるタレントが嫌いなど)
② ブランドを勧める文脈が共感出来ない。(かえって自分には関係ないブランドと認識する)
③ 広告がしつこい。(リタゲバナーにもありそう。)タイミングが悪い。

などが考えられるが、コミュニケーション内容が嫌悪感など反感を与えてしまい、逆効果になるという表現の問題と、フリークエンシーが多過ぎるまたは、タイミングが悪いという広告接触のさせ方の問題と2つあると思う。

 まず、コミュニケーション内容の方だが、昔も今も「広告」というのは出来るだけ万人が共感し、好感するコミュニケーションを目指しているものだが、機能するメディアがマスメディアだけはなくなると、最大公約数のコミュニケーションづくりだけではなかなか成立しづらくなっているのも否めない。
 ただ、ほとんどの対象者が共感や好感するコミュニケーションが出来るブランドとそれが難しいブランドがあるだろうから、従来のマスアプローチがすべてだめな訳ではない。

 ところで、「嫌い」ということは無関心よりはまだ見込みがある訳で、コミュニケーションの改善によっては顧客になってもらえるチャンスはある。とみて、「コレ嫌い」という反応に対して「スミマセン。では、こんなのいかがでしょうか?」と返すことができると面白い。嫌いだった以上に好きになってもらえるチャンスがあるかもしれない。まあ無反応のなかの「嫌い」を観測できればということだが・・・。

 DMPで分析をしていると、何らかのクリエイティブに反応する人というセグメントをつくることが必要になる。(だからデータ分析をする人にもクリエイティブのセンスや知見が要るのだが・・・)逆に言うと反応しない人という括りも当然できる。ビッグデータ時代のカスタマージャーニー分析とは、コンバージョンした人だけを分析するのではなく、しなかった人、広告に反応しなかった人を分析し、コンバージョンした(広告に反応した)人にはあって、しない人にはない文脈を発見することである。従来、膨大なコンバージョンしない人のデータを分析対象にすることはまずなかった訳だが・・・。
 もうひとつの、「しつこい」「タイミングが悪い」は、上記に比べて解決しやすいかもしれない。フリークエンシーとリーセンシーの最適化はテクノロジーで対応もできる。
 
 一部のDSPには、クリック率を最大化するために、配信間隔を自動最適化するテクノロジーを搭載しているものもある。ユーザーが「しつこい」と感じているかどうかを感知している訳ではないが、結果クリック率が低くなるフリークエンシーや配信間隔は自動補正される訳だ。

 いわゆるタイミングも曜日や時間帯であれば最適化される。しかし、本当の意味の消費者のタイミングというのは個々の人の欲求のタイミイングのことで、今ある仕組みだけでは十分把握出来ない。しかし、そこはビッグデータ時代、消費者ひとりひとりのベストなタイミングを察知する仕組みをつくることは出来るかもしれない。

 今はほとんどの広告活動が、送り手側のタイミングで行われている。キャンペーン期間とは広告主のタイミングであって、必ずしも消費者のタイミングではない。リスティングや一部DSPのような運用型広告は、こうした消費者のタイミングに合わせた広告とも言えるが、本来はもっともっと通期で消費者のタイミングに合わせて広告が送られる施策に予算は配分されるべきではないかと思う。
 検索行動という分かりやすい消費者のタイミングだけではなく、様々なデータから消費者のベストタイミングを察知して配信する仕組みがこれから必ずでてくる。おそらくデータをフィードしてきて自動入札される仕組みだと思うが・・・。

 広告の無駄と逆効果を減らす努力は、テクノロジーを活用しつつ、これから本格化するだろう。今までは逆効果だったことも分からなかったからね。送り手の「思い込み」は検証されないといけない。

広告の関係者としては出来れば信じたくないことだが、広告に接触すると購買率が落ちるという現象もいくつかのデータで散見される。
ということは、究極のターゲティングとは「広告に接触すると買わなくなってしまう人をきれいに配信対象から外すこと」(至難の技だろうが)ではないかと思う。そのうえでそうした対象者には「買わなくなってしまわないコミュニケーションに替える」ことが求められる。

 おそらくだが、(希望的観測ではあるが)、広告によって買ってくれる人の方が、広告によって買わなくなる人よりかなり多いので、広告は成立しているのだろう。


 広告接触者と購買行動を組み合わせると、以下の集合に分けられる。
① 購買者/広告非接触者
② 購買者/広告接触者
③ 非購買者/広告非接触者
④ 非購買者/広告接触者

ただ、購買者のなかには、広告接触しようがしまいが買った人がいる。②をすべて広告に接触したから購買したと考えてはいけない。また④には広告に接触したけどで買わなくなった人のほかに、広告に接触したから買わなかった人もいると言える。
前者は、リピートを促す効果も期待できるので必ずしも無駄ではないかもしれないが、後者は無駄どころかマイナスの効果と言える。

 通常、広告は非購買者を購買者にする活動だが、購買者を非購買者にしてしまうとすると一刻も早く止めないといけないし、改善を図らないといけない。


以下のように考えがちだが
matrix1.gif

実際はこう
matrix2.gif

 広告の役割を再定義すると、
① 広告に接触することで買う人を増やす。
② 広告に接触してもしなくても買う人の購買チャンス(リピート)を増やす。

の2つになる。
 そのうえで、広告に接触すると買わなくなる人に広告を当てないことだが、このターゲティングは極めて難しいので、接触することで買う人を増やし、かつ接触すると買わなくなる人を減らすクリエイティブに最適化していくPDCAを廻すというところに落ち着く。

 インプレスR&Dから『DSP/RTB オーディエンスターゲティング入門』、『DMP入門』に続いて『オンラインビデオ広告入門』が出版されることになった。
 そこで、オンラインビデオへの期待に関して書いてみたい。

 その1は、テレビを中心としたマス広告による認知獲得と、検索など興味関心が顕在化したユーザーへの刈取り施策の間を繋ぐ役割に関してである。

 Webマーケティングの浸透で、関心が顕在化したユーザーの取り込み施策は一通り行き渡った。従来のマス施策による認知獲得もまた、TVの力が突出しているので引き続き出稿意欲は旺盛である。しかしよく耳にするのは、認知は十分に獲れているが、購入意向に結びついていないという話だ。

 さんざんテレビでやっているから「知ってはいる」。しかし関心を持つに至らない。
関心をもってもらって何らかの行動を起こしてもらわないと、ネットでも捕まえようがないのでプルの取り込みも出来ない。またそのブランドへの新規関心層を醸成しないと、既存顕在化層だけの刈取りに専念しても、いずれ畑は枯れてしまう。

 こうした状況を懸念している企業マーケターは多いと思う。

 つまり、マスによる認知獲得、つまりプッシュ施策と、何らかの関心を示したユーザーのプルに応える施策との間がなかなか繋がらないということだ。そもそもマス施策とネット施策が全く別の部署でやっていて連動する気がない企業も多い。


 『認知』と『興味関心の顕在化』の間にあるものは何か。
よく云われるのが『レリバンシー』つまり、「この商品(サービス)は自分に関係があるな」と感じることだ。それには自分事化する文脈が必要だが、そうした文脈はそれぞれのユーザーにあって、誰しもが「コレだ」と呈示できるブランドはむしろ少ないかもしれない。つまりテレビCMでレリバンシーまで醸成できる商品/サービスはいいのだが、最大公約数のメッセージだけでは「自分事化」しづらいブランドはこの辺を考えなければならない。

 テレビCMへの投資は大きな額だ。ただテレビは基本15秒しかないので、そのたった15秒で刺さる表現を開発しなければならない。
 ベムみたいに80年代から広告マンやっている者は、よく教わったと思うが、コミュニケーション開発には、「プロダクトコーン」という円錐を概念図にした考え方がある。ベースに「その商品の規格、スペック」、その上に「それによって消費者が得られるベネフィット」、ただベネフィットをそのまま表現するのではなく、「エッセンス」に尖らせて表現し、「刺さるクリエイティブを」ということだ。

product cone.gif


 例えば、○○デシベルしか出ないとても静かな掃除機があるとする。(これはスペック)、それによって得られるベネフィットは、「集合住宅でも夜ガンガン掃除機を掛けられる」なんだが、ただそれだけではなくて、「夜掃除出来ちゃうから、幼い子供たちと関わる時間が増えるシーン」をエッセンスとして表現する・・・となる。このエッセンスは若い母親をターゲットにするなら比較的誰しもに刺さるかもしれないが、こうしたたったひとつの文脈しかないコミュニケーションでは「自分事化」しないユーザーもたくさんいると言える。
 
 「コミュニケーションを尖らせる」のはいいが、この発想はやはり「15秒しかないから・・・」ということと、従来の「経験と勘」で「この表現で刺さるはず」という「作り手の思い」だけでCMをつくると、多くの「刺さらない」(自分事化しない)人を量産している結果になっている場合も多いのではないかと思う。


 もしカスタマージャーニー分析をしてみて、複数の「自分事化の文脈」が発見できたとしたら、テレビCMの最大公約数的なコミュニケーションだけでなく、オンラインビデオ広告を活用することで「レリバンシーの醸成」に効果が出るかもしれない。
 そのあたりに期待が高まるのが、「オンラインビデオ広告」と言える。

今回の「オンラインビデオ広告入門」にも記述しているが、海外での調査データにも、単純な広告認知を上げるだけなら、オンラインビデオ広告もテレビCMと同じ素材を使えばいいが、ブランドの特定メッセージ理解や購入意向をリフトさせるには、TVとは違うクリエイティブ素材を組み合わせて使う方がはるかに効果的という結果が出ている。

 その意味でTVCMとはまた違うクリエイティブ開発の考え方がオンラインビデオには必要だろう。広告主企業の方々と一緒に考えて創っていく「開発プロセス」が大事かもしれない。

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