2013年3月アーカイブ

 もうじき4月なので広告業界に入社してきた新入社員の方々のために少しコメントします。
私はDACの新人研修も長くやってきましたし、「横山塾」も最初は新人対象だったので、まずは何を意識して研修にのぞむべきかのヒントだけでも書こうと思います。

 まず、総合広告代理店に入ったみなさん。
  おそらく最低でも4月の一カ月間は各社の新人研修カリキュラムで、いろいろ詰め込まれるでしょう。座学中心ですが、内容は結構先端的な話なはずです。むしろ旧態とした経営陣が受講したほうがいい内容となるでしょう。
 しかし、昨日まで学生だったみなさんには「豚に真珠」、なんだか良く分からないままです。そもそも座学を何も経験のない人間に短期間に詰め込むだけでは意味がないのです。
半分はいちおう研修したぞというアリバイみたいなもんです。
 実際には仕事を実務でこなしながらでないと、知識を知見にすることはできないでしょう。(まあ知識にもならないでしょう。)「横山塾」の経験でいうと、毎日の実務のなかで毎週1時間の座学研修を続けることが最もよい方法です。「継続は力なり」2年間もこれを続けたメンバーは相当な力をつけたと思います。
 
では、新人研修が全く効果や意味がないかというと、そこは受講するあなた次第です。
ひとつは、配属されたところの実務に入り込んでからビジネス全体を俯瞰できなくならないように、最低限自分の入った業界と会社のビジネスの全体像をしっかり把握しておくことが新人研修の意味です。

 そしてもうひとつは、今が広告ビジネスのたいへんな変革期であり、自分たちが変革の主役であることを意識して、今の会社にどんな職能が存在するのか、何が足りないのかを考えるきっかけにしてほしいということです。

 総合広告代理店は、基本的なマス広告メディア枠を売るために出来上がっている組織と職能開発体制をもっていますが、広告主は「広告」を買いたいのではなく、マーケティング目標を達成するための手段、マーケティング課題を解決するためのソリューションが欲しいのです。
 POE(ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディア)でいえば、広告代理店に知見があるのはPだけです。新人研修で、「テレビはこうやってます。新聞はこうやってます。プロモーションはこうです。」みたいな部門紹介みたいな研修だったら、その矛盾
と将来性への疑問をもって受けてください。
 つまり新人研修が、このままではだめな会社の部門紹介でもあることを理解する機会にしてほしいと思います。

 デジタルマーケティング(私はこれを、デジタル施策によって得られるデータを活用して、マス/リアルを含むすべてのマーケティング活動を最適化することと定義しています。)
を推進するためには、マーケティングテクノロジーの理解が必須です。
 おそらく広告代理店社内には知見がないことでしょう。知見がないので誰に頼めばいいかも分からないのです。
 
ただ、総合広告代理店の新人さんたちは、せっかくブランディングコミュニケーション開発の本筋を歩んできた資産をもつ会社に入ったのですから、そもそものマーケティングとは何か、コミュニケーション開発とは、クリエイティブ開発のプロセスとはどういうことをしているのかを十分に学んでください。それが総合代理店の財産です。
 ネット専業代理店では、得られない知見です。
 最近では、大手総合代理店に入社したのに、最初からネット広告セクションに配属されると、CPA至上主義になってしまう残念な人もいます。ブランディングの価値と、その価値をつくる事への造詣を持とうとする立場を確立してください。それが総合広告代理店に入ることになった一番の意味です。


 それから、ネット広告代理店に入ったみなさん。
基本的にネット専業の広告代理店さんがやられていることは、ネット広告の最適化です。広告主にひたすらCPAを安くするためにどうするかを追求されることが多いでしょう。
しかしそれは部分最適であること、またはきわめて短期的なROIの最適化であることがが多いと思われます。
 せっかくマーケティングコミュニケーションに携わる仕事についたのですから、「コミュニケーションの本質」とは何かに触れる機会を持つ努力を是非してください。
 ネット専業代理店さんの研修ってどういう内容か、私は知らないのですが、リスティングやネット広告の実務研修だけでは寂しいですよね。
 よくネット専業系でリスティングのオペレーションを中心に業務をしているみなさんには「オペ疲れ」と言われる現象がおきます。リスティングのオペレーションをずっとやっていると、その業務(ひたすらCPAを追い求める)に限界感を感じることと、「自分はこの先もずっとこの作業をしていくのだろうか」という将来のキャリアに対するイメージが構想できないことでバーンアウトするということが起きているやに聞きます。
 
 ところが、社員のスキルの幅を広めるようなこと(育成)をあまりやっていないというのが私の実感です。悪い言い方をすると、どうせ4~5年で辞めちゃうから、お金かけて研修してもね~という感覚をもっている経営もいるように思います。オペレーション業務を中核ビジネスにしている会社ほどそんな印象を受けます。
 しかし、これからのテクノロジーを扱うことが主流になる広告マーケティングの世界では、管理画面でオペレーションするからこそ培われるスキルがあるのです。
 データサイエンティストもオペレーションが出来なければ始まりません。「文脈発見型マーケター」もこうしたオペレーションがしっかりできる人材から多く産まれてくるでしょう。
 そのためにも、スキルの幅を広げる、または普段接することのない、「コミュニケーションの本質」について座学とワークショップや実践型研修を受ける意味があると思います。
「コミュニケーションが分かる人がテクノロジーを駆使する」という状況をたくさんつくる必要があるからです。
 
 マス広告でのブランディングコミュニケーション開発とネット広告の両方をやってきた私から見ると、従来の広告クリエイティブ(マス広告を中心とした広告フォーマットの中をクリエイティブする作業)は、バットをぶんぶん振り回してひたすらホームランを狙う野球です。一方ネット広告がやっているのは、ひたすらバントをする野球です。
 バントでは、バットを出す角度を1度づつ調整して、ボールのころがり方を計算して出塁率を1%でもあげようとする確率の野球です。
 ホームラン狙いでは、ホームランが出てもどうして当たったかも、またどうして三振したかも検証はしません。
 こんなマーケティングが並走しつづけて融合しないのは、実にもったいない。
 シュアなバッティングで、連打で得点し、検証できるマーケティングを目指す必要があるでしょう。
 
 せっかく真っ白な新人さんが入ってくるのですから、ふたつが融合された新しい知見を身に着けてもらうような研修をはやく受けさせてあげたいと思うのです。

 デジタルマーケティングは広告主企業側が自身でやらないといけないことが多い。全部はできないのは当然だが、構造的に言って、やはり自分でやらないと意味がないものがいくつかある。そのうちのひとつが、3PASの導入と運用。第三者配信サーバーとかいうから意味が分かんないが、本来は広告主が自ら使うサーバーつまりバイイングサイドサーバーということ。DFAは「ダート・フォー・アドバタイザー」の略。DFP(ダート・フォー・パブリッシャー)とは利用者の立場が違う。
 つまりセルサイドじゃないということ。だから枠を売りに来る広告代理店にバイイングサイドサーバーを扱わせるのは基本的にはやらない方がいいというのが私の見解。ハウスエージェンシーがあればそこに担わせるのはアリです。
 
 これはそもそも日本の広告主の広告代理店の使い方に関わることで、一概に言いとか悪いとかではないが、メディア扱いを発注することでマージンを得ている代理店に、付加サービスをさせるというやり方がほとんどであった。別途フィーを要求しないで、マンパワーも提供してくれるからね。人が張り付いて、お客さまとして何でもいうこと聞いてくれるから心地いいし・・・。
 しかし、枠売りが基本の広告代理店にバイサイドの論理での運用が本当にできるか。またそれ以前にテクノロジー活用の知見が本当にあるかどうか。吟味した方がいい。
 高い知見のコンサルを入れないといけないところは、自社内にスキルが育つまでの間はフィーは仕方ないと考えた方がいいかと思う。ずっとマージン取られるよりも・・・。

 入札運用型広告は基本的にバイサイドの理屈で出来ている仕組みである。ブランドごとにAE代理店を競合させてベストな提案を求め、選んだ代理店に体制を整備させ、ブランドキャンペーン管理を、責任をもって運営させることは広告主にとって良いやり方であるのは間違いない。
しかしAE代理店ごとに入札型広告のバイイングもさせると、社内で同じキーワードやクッキーを入札し合って価格を上げてしまうという実にナンセンスな現象を起こす。やはりブランド横断の管理が社内で必要なのである。どこまでインハウスにするかはやってみてから決めれば良いが、基本「セルサイドにお任せ」ではなく、自社で(インハウス)で運用するつもりにならないといけない。自社でやった者には、苦労に見合った恩恵がある。自社で買った広告のデータは自社のものであり、それを本当の意味で分析できるのも広告主だけなのである。自分でやる企業と任せる企業、おそらく2~3年するともうとんでもないくらいの差(もう追いつけないような差)が生まれるだろう。

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