「第三者配信サーバー」に関わるいくつかのことと感慨

 まだ20世紀だった99年、ヤフーが扱えなかったDACは、最初にダブルクリックに接触してアドネットワークを実現した後、ボストンでおそらく世界で最初の第三者配信サーバーをつくったアドナレッジ社と接触しました。
 ここの社長は元南アフリカの空軍のパイロットという異色の経歴で、元軍人らしく「できないことはできないと」いう真面目な人でした。(当時アメリカに行って、アドテクノロジーの会社の社長に会うと、大概「ノープロブレムおじさん」で、出来ないことも出来るというのにずいぶん騙されたものです。)


 ここの仕組みを日本に持って来ようと動き出してから、アドナレッジはエンゲージを経て結局ダブルクリックに買収されてしまうのですが、とにかくアドネットワークにはプレミアムな枠をリクルーティングしづらい中、個別の媒体社のプレミアム枠もクリックだけでなく、ポストインプレッションも計測して媒体価値をもっとアピールできたらいいなというこで、日本導入に走りました。
 

 ダブルクリックのDFA(ダート・フォー・アドバタイザーズ)は、ダブルクリックがアドナレッジを買収して、その技術を使ったのではなく、自社でも開発していたものでした。競合をつぶしておくための買収で、それだけアドナレッジはよく出来ていたとも言えました。

 さて、日本でもという当時、IBMさんは全世界でDFAを使っていて、DFA配信でないとそこの媒体社は使わないというくらいのスタンスだったので、最初はヤフーさんもタグを受け入れていたのを憶えています。
 その後、ヤフーさんが他社サーバーからの配信を受け入れない方針をとるのですが、第三者配信サーバーが日本で普及しなかったのは、それだけが原因ではありません。そもそもエージェンシーを含め、別途配信料を払ってまで、これを使うメリットを創出しきれなかったと言えます。


 ポストインプレッションやビュー・スルー・レートが分かったとして、いわゆるCPAの効率化にどう貢献できるのかの具体的な施策を提示できなかったわけです。また広告主さんのご担当も、クリックによる単純CPAの方が上司への説明もしやすいし、あえて話を複雑にするメリットも少なかったと言えます。
 こうして、日本のネット広告の単価は、どんどんバイイングサイドのCPAに見合ったCPMでの買い付けが進み(価格形成力がバイサイドになっていき)、インプレッション単価は米国の1/3ほどにまでなってしまいました。こうなると余計に、広告の購入代金に対しても配信料がリーズナブルな価格に感じなくなり、日本の第三者配信はずっと水面下に潜ったままでした。


 そんな折に、今回ヤフーさんと提携したメディアマインドの前進のアイブラスターがDACと提携し、これを代理店に販売すべく、よくF君と行脚したものです。
 

 アイブラスターは、リッチメディア広告フォーマットのシステムでした。もちろん配信サーバーではありましたが、その提供している価値は、フローティングアドなど媒体社の掲載面のなかで広告の画像の稼働範囲やアクション、インタラクションを、制作サイドとメディアサイドと広告主サイドがオンラインで確認しあうことができる画期的なものでした。今でも私は素晴らしいソリューションだったと思っています。


 いくつかの代理店、それも媒体セクションだけではなく、クリエイティブにも見せて紹介しましたが、これをどんどん使ってくれるところはほとんどありませんでした。まあ、広告クリエーターにとって、こういう画面上での作業がクリエーターの矜持にかかわるとかということもあったかもしれませんが、そもそもリテラシーに乏しいからではありました。そうこうするうちに、アイブラスターはリッチメディアフォーマットもいいけどレポーティングが実に良いという評価が先行していき、3PASとして、DFAの対抗にのし上がった感があります。


 しかし、今回のヤフーさんの発表で、宮坂さんがクリエイティブの提携先としてメディアマインドを上げたことは、良かったと思います。このソリューションの一方の本質がやはりそこにあるからです。

 まだ広告会社のクリエイティブには、ネット広告のクリエイティブを未だに見下しているところが少なからずあると思います。82年から15年、マス広告にどっぷり浸かって、十数本のCM制作とアウトプットまでの表現戦略やブランディングコミュニケーションのあり方のご提案をやってきて、かつ96年からネット広告をほとんどゼロから作ってきた自負のある私からすると、インタラクティブなクリエイティブ環境にワクワクしないクリエーターは信じられません。

私がクリエータだったら、新しいリッチメディア広告フォーマットを開発して、それに自分の名前をつけますね。(体操の技に固有名詞がついているように・・・)

 そういう新しいことへのチャレンジ精神をもっと発揮しないと、広告会社のクリエイティブは本当に領域が狭くなっていきます。
 

 3PASはアトリビューション分析とそれにもとづく「リ・アロケーション」によって、広告主企業に新しい価値を生むでしょうかが、分析によって最適化されるのは当然メディア配分だけではありません。そこにはメッセージの最適化(ターゲットとメッセージの最適化)と消費者のコンバージョン性向という文脈の発見によって、さらに最適なコミュニケーションの開発がなされることです。そこでは当然マス広告を含むマーケティングコミュニケーションすべてに関してです。


 エポックメイキングなアドテックを終えて、インターネット広告を自らのビジネスにして17年目の感慨ひとしおと言ったところでしょうか・・・。

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