広告会社のマーケは企業のデータドリブンなマーケティングをサポートできるか

 「広告会社の行く末」では、広告会社の営業マンをやり玉にあげてしまったが、次は広告会社のマーケである。昔はマーケティング対象商品を企業シーズから組み上げるのではなく、コミュニケーション開発の目線から商品ブランドのコンセプトワークをする広告会社のマーケの役割というのが注目された時期もあった。

直接、エンドユーザーとコミュニケーションしづらいメーカーからすると、メディアと、メディアを通して消費者を理解している代理店の提案にはそれなりの価値はあった。しかし今、商品ブランドのマーケティングに関しては、広告主企業側の優秀なマーケターに対抗できるわけもなく、さほど優秀でない代理店のマーケの多くは、企画書の代書屋さんになっている場合が多い。

 営業の能力が比較的落ちてきて、ろくに企画書すら書けなくなったので、こうした需要が広告会社社内で膨らんだからとも言えよう。

 だいたい「ストプラ」と呼ばれるような「代理店のマーケ」は、表現戦略やメディア戦略を明示し、具体的なアウトプットを理論武装するのが役割だ。

 しかし、優秀なクリエーターは、何故こういう表現なのかというロジックを簡潔明瞭に説明できるので、企画書を何枚も書いてプレゼンに時間をかけるまでもない場合も多い。


従来、広告会社側に情報が多かった時代には、いわゆる「前段」で、クライアントが気付いていないことを提起できて、それに基づいたアウトプットを提案できた。
もちろん今でもこうした「前段」が決め手となってコンペに勝利するシーンもあるだろうが、代理店しかもっていないメディアの情報からアプローチしたり、クライアントが気づかなかった「消費者インサイト」を提起することは難しくなっていると言わざるを得ない。


 企業にとってのマーケティングメディアは「ペイドメディア」だけではなくなった。そしてオウンドメディアを持ち始めた広告主は、代理店よりはるかに消費者を知ることになる。広告主は「買うメディア」に関してのみ、代理店を必要とすることとなる。様々なテーマの中の「短期的な認知獲得」だけ「代理店さんお願いね」になってしまう。


 そもそも、広告会社のマーケがマーケティング施策を「こうすべきだ」と提起する時、何をもってそう判断するかのロジックはあるようでない。データを持ち出して論拠をつくるものの、ではそうしたデータがどのくらいだったら、どうすべきかという客観的、科学的理論に基づくことはあまりない。「データがこの閾値を超えたら、こうすべきである」という判断基準を明確にすることはほとんどできない。


それも仕方がないというか当然で、「そんなに単純にデータだけで判断ができるものではない」というのがマーケティングの奥深いところだ・・・なんていうようなマーケターの経験や知見による(能力による)判断がすべてだったころはそうだったであろう。


しかし、今後はそうはいかなくなる。データドリブンな判断や施策決定が求められるようになると、理論や経験的理論値から、データに閾値を設定して、これを超えたらどうするという方針が事前になければならない。具体的施策案ではなく、戦略方針である。高速PDCAを廻す場合、具体的な施策はまだしも、基本戦略ではどういう手を打つかは事前に設計されていないと、高速化できない。従来の年一回のキャンペーンであれば、代理店にオリエンして1カ月後提案を受けるスタイルでも良かったが、時間軸だけの問題でなく、そもそもキャンペーンモデルで対応するのか、から考え直さないといけない。

そして、ビッグデータ時代に、マーケティングに関わるデータはどこくらい広告会社が手にすることができるだろうか。まず代理店でなくても誰でも手に入る(当然広告主も)データがネットによって爆発的に増えた。クエリー情報などは典型だ。(グーグルトレンドくらいは当然使ってるだろう。)その上に、企業がもつデータは膨大に増えた。特にオウンドメディアにおけるデータだ。マーケティングコミュニケーションに関わるデータ測定を行うコミュニケーションダッシュボードの概念だと、ペイド、オウンド、アーンド、すべてのメディアを観測することになる。ペイドメディアで起きた効果(反応)も、オウンドやアーンドで観測するので、広告主企業が、「説明変数」をほとんど手にする。もちろん「目的変数」は当然企業側にしかない。


マーケティングダッシュボード2.jpg

*上記の図は日本インタラクティブ・マーケティングの真野英明氏の「マーケティングダッシュボードの概念図」に、ずうずうしくも少し書き足させていただいたものです。真野さん有難うございます。


その上、従来リアルな販売チャネルだけでなく、自社でECや会員化によるサービスを開発する企業が増えると、エンドユーザーと直接コミュニケーションできる。もう代理店は広告主企業にデータを貰わないと何も提案できなくなる。

 こうした時代に、代理店のマーケはいったい何が出来るのか。

 コミュニケーション(クリエイティブ)という「右脳」の作業にロジックらしいことを加える作業でやってきた代理店のマーケが、ビッグデータ時代の企業のデータドリブンな評価や判断をどうサポートできるのか。
 データを貰うとして、どこまで分析できるのか。ビッグデータからどんな文脈を発見できるのか。そもそもそんなことを企業は広告代理店に頼るのか・・・。
 
 岐路にあるのは、明白だ。

アンケート調査のような「意識調査」、つまり消費者に意見を聞く調査データからではなく、行動を起こしたログとしての「行動データ」から文脈を読み出すことが、今の代理店のマーケに出来るか。勝負はまずはそのあたりからだ。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 広告会社のマーケは企業のデータドリブンなマーケティングをサポートできるか

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://g-yokai.com/mt/mt-tb.cgi/3265

コメントする

ブログ記事 アーカイブ