CRMから新規顧客獲得としての広告を考える。

 DSPを広告バイイングの新手法として研究すると、顧客化したユーザーを分析して、顧客になってくれそうなユーザーに広告を配信するという考え方ができる。(しかも可能性の高い見込み客には入札価格を上げて必ずゲットするとか・・・)
 実はベムはおそらく日本で初めていわゆる「リターゲティング拡張」の実験をした張本人である。あるリコメンドエンジンによる「クッキーとクッキーの繋がり(グラフ)」に企業サイト訪問者のクッキーを持ち込んで、サイト訪問者と「似ている」人(クッキー)を配信先とする手法である。リターゲティング広告がパフォーマンス効率は良いが、効果の絶対量が獲れないという欠点を補うものだ。
 この手法の考え方は、サイト訪問を果たした(ないし何らかのコンバージョンに至った)ユーザー情報をベースに新たな顧客獲得のための「広告」を打つという考え方である。

 広告をパーチェスファネルの下から遡っていけると、ファネルの上からつくっていくプロセスではできないことがかなりある。
 従来の「認知」からスタートするコミュニケーション開発では、広告を送り手(広告主とクリエイティブ開発のプロとしての広告会社)だけで作り上げる。ターゲットも想定してはいるが、そのコミュニケーションが、ターゲットが反応するものになっているか、つまり誰が反応したかは最後まで分からない。
 その結果、「認知」を主な目的とするマス広告と、ある程度関心が顕在化した後の購買意向を後押しするネット広告やWebサイトとの連動性がほとんどない状況になっている。
 いわばプッシュの接点とプルの接点の接合が出来ていないのが現状のマーケティングコミュニケーションと云える。
 
 しかし、顧客化したユーザー、ないし見込み客としてクッキーで認識できるユーザーからの逆引きで、新規顧客のターゲットとその「認知のあり方」を設計することができると一連のコミュニケーション活動は紐づいてくる。

 そのためにも「顧客とは誰か」を十分知る必要がある。この何年も広告業界では「消費者インサイト」とか「顧客インサイト」というワードが頻繁に使われるようになった。情報爆発で広告が効きづらい環境にあって、「消費者の琴線に触れるコミュニケーションを」ということなのだろうが、そもそも「顧客が誰か」が分かっていないのに、「顧客インサイト」もない。
 実際の顧客のプロファイルを理解することから、そのインサイトを探ることが可能になるのではないか。その「顧客と将来の顧客」の行動パターンをリアルとネット上で捕捉することはマーケティングの進化の大きな要素のひとつである。
ビッグデータを本当に駆使できるマーケターはそう多くはないだろう。マスマーケティング型のファネルの上層から思考する人と、ダイレクトマーケティングで刈り取り部分しか評価してことがない人が、完全に分離しているからだ。ビッグデータから顧客や見込み顧客の行動の相関を発見して、効果的なコミュニケーションの再設計ができるのは、コミュニケーション開発プロセスを理解、経験した人でないとそううまくできない。しかしデータをじっくり渡り合うスキルは既存のそういう人たちにはできない。データの大海原に浸るのが平気な人も仮説というストーリづくりがないと「意味のある」データは抽出できない。「ビッグデータ」を声高に言う人たちは当然IT系に多いのだが、おそらくマーケティングコミュニケーションの実践経験の乏しい彼らには「意味の読み取り」は難しいだろう。その意味で「ビッグデータ」を駆使できるスキルと人材を育成しなければならない。
 
 ただ、そうした人材をどうつくるかだが、私はブランドコミュニケーション開発とかイベントプランナーのような顧客の体験プランニングをしたことがある人材に、デジタル/ソーシャルの勉強を徹底してやってもらう。当然、ネット広告やWebサイトプロデュースの経験もSEMを含めしっかり実践してもらい、ログ解析データをしっかり読み取る訓練もしてもらう。ユーザー行動をセッションベースではなくクッキーベースでしっかり見定めるスキルを養い、「顧客と将来の顧客」の発見を実践し、ターゲットを実証する。そこから実証したターゲットが最も反応するメッセージ開発をするという一連の作業を理解し、プロデュースできるスキルである。
 自分でもこう書いていて無理難題を言っている感じは否めない。しかしシステムやツールばかりが先行し、それを使いこなす人材があまりにいない現実に対しては、難しいなどと言っていないで、「育成」という行動を起こすことである。それしかない。

 DSPで日々の広告配信運用をしていると、TVスポットが入った時のCTRほかの効果が上がることを実感する。TVのパワーを最大限刈り取るには、TVで起きたプル(情報取得意向)を上手に手繰り寄せることが必要だ。それをしないと「もったいない」のだ。
 一方で、テレビを使うようなキャンペーン期間単位でしか、興味関心の刈り取りをしないのももったいない。「ビデオムービー」という検索ワードの検索数の年間推移を見ているとほとんど常時変わらない。しかし、広告キャンペーンは卒業入学シーズンと運動会シーズンの年2回ほどのチャンスである。ユーザー側には結婚式やお誕生日会のような通年の需要チャンスがある。入札モデルのDSPではわざと広告の需要期を外して「指し値」で買い付けるという戦略もある。「枠」を買ってキャンペーンを仕立てる従来の手法では、あまり考えつかないかもしれないが、入札出来高制の広告バイイングの特徴をうまく使いこなすことも考慮されたい。

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