広告マンの遺伝子組み換え

 企業のマーケティング活動は、キャンペーン施策中心から、マーケティング装置化したオウンドメディアを中心とした継続的かつPDCAサイクルを短周期で廻すことを前提としたものになり、いわゆる「広告」は短期的な認知獲得に役割が限定されていくようになります。(と思います。)だからと言って「広告」が死滅するわけではありません。ただ、潜在層(ターゲット)の認知を獲得するという機能を、できるだけ短期に効率的に果たせる機能がないと「広告」として生き残ることは難しいのです。しかもその効果はしっかり測定できないといけません。
 そうなると、テレビのプッシュメディアとしてのポジションはいっそう磐石となるかもしれません。ただ測定可能にするかどうかについて、またオーディエンスを選べるかどうかについてテレビは本気で考えないといけないでしょう。逆にテレビ以外のマスメディアのポジションは、いわゆる4スクリーンに対してかなり劣勢を余儀なくされると思います。

 いずれにしても、広告会社がマス広告の「枠」を売ることを前提に、その機能と職能を確立させてきていて、今もその「型」から脱却できないでいることはたいへんなリスクです。しかしどう脱却したらいいものかよく分からないというところでしょう。
 まず、広告会社の営業は何を売る人かを再定義しなければなりません。広告主(という言い方も変えないといけない)は「広告」が買いたい訳ではありません。マーケティング目標を達成するための手段のひとつとして「広告」も買っているのです。従来の広告会社の営業はマス広告の枠を買ってもらうために、クリエイティブ、マーケティング、プロモーション、PR・・・といったスタッフ機能を集め、メディア扱いをゲットするのが仕事でした。昔はいちおうマスメディアに関しては知見を有していて、クライアントにその情報を持ってきては丁々発止できました。しかし現在、広告会社の提供サービスも幅広くなり、専門スタッフが後方に待機していて、その都度クライアントに出向くようになりました。アカウントプランナーという機能が注目されるようになるのは、こうした広告会社でフロントに立つ者の総合プランニング力やプロデュース力が重要になってきたからですが、デジタルメディアによって変化してきたマーケティングに対応する能力を、従来の広告会社の営業フロントラインに期待するのは本当に難しいということは、ここ10年の試行錯誤で十分過ぎるくらい分かりました。従来の成功体験の上に知見を積み上げた人は、どうにもこうにも、デジタル対応の知見に組み替えるのは極めて難しいのです。それこそ遺伝子組み換えが必要です。


前回のエントリーで「自動車メーカーの経営トップが『ハイブリッドカーがどうやって駆動するか理解していない』などと言うことは有り得ないが、広告会社ではそういうことが起きている。」と書いたら、この一文に一番反応がありました。


やはりこの期に及んでデジタル知見がほとんどない人間がコミュニケーション産業の一端を担う会社の経営をしていてはいけません。
 もちろん経営トップだけでなく、次の層(経営者のはしくれには)にも、単に知識とするだけではダメで、経験と見識と知恵をもって未来型を構想する力がなくてはなりません。そして会社の未来のために最適なことを純粋に構想することが求められますが、会社の未来のためとは今の会社の人員と体制を維持するということではありません。少なくても20代30代の若手社員が生き残るためにはどういう業態変革を受け入れるかということです。
 広告業としてやってきた遺伝子の組み換えを受け入れるのです。今の業態継続が叶わないと理解し、それに替わるビジネスモデルの構想力が自身にないなら一刻も早く若い社員のために退陣すべきでしょう。若い社員も自分たちのことなのですからもっと勉強して、具体的な変革プランを上にぶつけていかないといけません。若手にそうした意識や意欲、才覚のないようなら、その会社には希望はないでしょう。
 個々の社員も生き残りをかけて自ら遺伝子組み換えにチャレンジしなければなりません。広告マン個人としての変革をし、会社は生き残らなくても、個人は次の時代もマーケティングコミュニケーションの世界で新たな飛躍をしていかなければいけません。
 それには何はともあれクライアントと直接コミュニケーションのとれるフロントに立って仕事をするということです。また出来ればクライアントのなかに常駐させてもらいましょう。最近の広告主は短期のキャンペーンの企画と実施を求めているというよりは、マーケティング施策を継続的に、様々なトライを続けるマンパワーを借りたいというのが本音です。広告マンの方も、ペイドメディアならともかく、オウンドメディアやアーンドメディア対応の本当の知見は広告会社の中にいて得られるものではありません。どんどんマーケター企業に入って行って、オウンドメディアの運用知見を自らのものにしなければなりません。広告主企業もそうしたスキルや素養のある人材が全く不足しているので、ウェルカムでしょう。そもそもマーケティングコミュニケーションに携わる人間は、出来ればマーケターとしての仕事とサプライヤーとしての仕事の両方のキャリアがあると鬼に金棒です。これからのマーケティングは正にそうで、トリプルメディアを統合的に関わることでしか得られない知見があります。

 未来の広告会社が(広告だけを売る会社ではなくなっているでしょうが)提供するサービスの付加価値は、広告マン個人個人の知見を育成していった後にしか再編成することができません。(これも出来ない人員をリストラして入れ替えてしまうことが出来れば別ですが・・・)
今の箱の中から飛び出していく気概がない広告マンは全く期待できません。企業の箱の中にいて良いのは、そこに居れば将来役立つ職能が身につく場合です。先輩にデジタルマーケティングの知見がない、スキルトランスファーが期待できない会社にいても意味がありません。若いのに、大企業だからと言って安閑としている者は将来生き残れないでしょう。そういう業種にいるのです。

先達の創ってくれたビジネスモデルはもうしゃぶりつくされました。またもうすぐ卒業するだけの人たちに改革を期待するのはバカです。若い広告マンは自らどうやって自らの遺伝子を組み替えるかよくよく考えてみてください。まだ若いのだから比較的簡単に組み替えられます。またネット専業にいる広告マンは「ネットにクローズドのマーケティング」だけではオペレーション力を買われるだけだということを考えましょう。だからその付加価値は決して高くないことを認識しましょう。ネットではなく、もっと広い概念のデジタルマーケティングを志向しましょう。ブランディングやコミュニケーションとは何かを知り、マス広告やリアルなプロモーション、PRの実態も経験しましょう。その方法論については、場合によってはベムがご教授します。

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