2011年8月アーカイブ

今日は、田端さんといろんな会話をしてインスパイアされたので、教えてもらった情報も材料に枠売りと次世代バイイングシステムないし最適化配信に関する考え方を書いてみたい。

前々回のこのブログのエントリーに関して、尊敬する業界の先輩から下記の意見をもらった。別に反論という訳ではないが、私の理解にはもう少し違う角度からの見方があるので書いてみる。

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DSPに関してはデータ活用により、ROI向上には資すると思いますが、メディアサイドはコンテンツ力等で培ったプラチナアド枠はやはり付加価値をつけた売り方をすべき、このコンテンツ評価はソーシャルで高まります。ここを高めたアドを僕はもっと追求したい。

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おっしゃることは、
これは全くその通りです。
そのとおりですが、コンテンツに価値が認められても、今はなかなか単価を上げる術が見当たらないのが本当のところではないでしょうか?

どうして、日本のネット広告のimp単価はアメリカの1/3とかなのでしょうか?

コンテンツ価値の高い掲載面を高く売る努力はどんどんすべきです。

しかしながら、一方で日本のネット広告の価格形成は、CPCやCPAが見合うか(つまりメディアがどのくらいブランド力をギャランティしてくれるか)、それを尺度に「定価をどのくらいディスカウントするか」にはまっているのです。
また、獲得系ではないブランディング広告主にしても、しっかりしたKPIを設定していないか、設定してもコンバージョン単価が見合わないということになっているのでしょう。こういった広告主のKPIは施策とKPIが表裏一体にあるので、プランニングされた施策によってKPI設定は変わるので評価が難しくなってしまい、そもそもそのKPIが高いか低いかさえ評価できなくなることがあります。

いずれにしても、ネット広告は、直接間接を問わず、効果をトラックできる構造にあることで、測定可能な範囲を効果とされる宿命を負っています。

その意味で、どうしても買い手市場になる性格を帯びています。有限な「枠」でないことももちろん売り手市場にしにくい大きな原因です。
そういう意味では、
買い手市場なのに売り手が定価をつけて売るからディスカウントさせられるのですな。

ネット広告のブランディング効果については、それを測る別の手法が必要です。シングルソースでディスプレイの認知効果ほかをトラックするしかない。まあやろうと思えば出来るけど・・・。でもせっかく効果の測定できる範囲だけで買えるいいペイドメディアがでてきたのに、バイサイドはそうやすやすとブランディング効果なんて認めてはくれません。テレビで懲りてるんです。

さて、セルサイドに立って考えるとする。
枠ものを高い付加価値で売ろうと必死になります。でもそれには営業マンコストや、枠を売ったあとの、掲載や、レポーティングのオペレーションコストがかかります。実を言うと、アドネットワークでそういうコストがかからないで売れちゃったほうが収益がいい場合もあります。メディアの営業部長としては営業マンのモラールや自分の存在意義を考えれば、枠をセルサイドの理屈で売ることが使命ではあります。しかし、媒体社の経営者にとっては、PVの売上利益の最大化が成されることがいいのです。
もちろんバイイングサイドの理屈でおいしいところだけ買われるのは適わんということはあるでしょうが、掲載面のコンテンツに自信があるのなら、こういうことがあります。つまり、DSPが配信効果の最適化を図るプログラムで動く時、もちろん最適な配信先(クッキー)ということもあるでしょうが、掲載面の質によってレスポンスが最適化されるという要素は実に大きいのです。
 実は掲載面のコンテンツの質が高く、良質であれば、セルサイドの理屈で「枠」にしようが、DSPでバイイングされようが、掲載面の収益最大化については変らないのではないかというのが、私の解釈です。
 むしろ定価をつけて売っていることで、買い手の論理で、ブランド力をギャランティさせられて、ディスカウントさせられるより、株価形成と同じ理屈で、そもそも定価というものがなく、基本受給関係と良質なクッキーが来るかどうかで価格形成される仕組みの方がセルサイドにとって優位になる可能性があると思います。いいコンテンツには良いクッキーが集まり、「買い」が集まるからです。

前回、従前にターゲティングするのはナンセンスで、反応(レスポンス)する人がターゲットだと書きました。もちろんレスポンスという行動を起こすまでに至らないが、その期待値が高い人たちにメッセージを送りたいのが広告でもあります。そういう意味では、レスポンスデータを使って、レスポンスしやすい人(すなわちターゲット)を探索するのが、レスポンスデータによる予測モデルであり、新たな考え方のターゲティング技術なのです。これは人間業ではできません。
送り手の広告主、代理店が、「こういう人がターゲットでは」とか「こういう人がターゲットであって欲しい」とかいう少人数の頭で考えて想定するターゲティングというものに疑問をもつことができるか、ある意味で自分自身の存在意味を問われることなので、結構たいへんなことです。
 しかし、おそらくこの流れは止めることはできません。
 

コンテンツ評価はソーシャルで高まることは事実ですが、であればソーシャルグラフを活用したターゲティングが先に機能します。
つまり掲載面のコンテンツ評価は、配信の最適化システムのなかでおそらく最重要ファクターとして機能するので、ソーシャルで評価が高まったコンテンツの掲載面を配信対象として選ぶのもまた、DSPだったりするのです。そしていい掲載面は良い配信として高い価格でとりひきされることになります。


そうなっていくと、「枠」にして手売りする必然性はどこかで崩れるのです。ビッティングというのはセルサイドとバイサイドが折り合うポイントということなので、両方の最適化がなされるとすると、それ以上の売り買いのあり方はありません。
一方やはりセルサイドの理屈で設定された広告メニューを「手売り」する限り、両者がともに折り合うことは難しいのではないかと思うのです。つまり将来は「枠」は「DSPで買うよりコストパフォーマンスが良いですよ」という「福袋」になりかねないのです。

それでも手売りのプラチナ枠は生き残るとは思います。私もそうあって欲しいとは思います。

ただ、プロの作り手による良質なコンテンツが、プラチナ枠として売れるには、今後もプロのコンテンツクリエータが読者に真剣に読まれる記事である要素を維持できる必要がありますが、今の雑誌などのコンテンツにはある疑問が生じてきています。

エントリーが長くなったので、それは次回に・・・。

 直前のエントリーで、DSPの登場で、ネット広告のいわゆる「手売り」が、その価値を失っていくと書いた。私はこれから3~4年で金額ベースで逆転すると思っている。というのも日本独特の状況があるからだ。
 そう書けば、この世界の人は大概ピンとくると思うが・・・。そう。日本に第三者配信サーバーが未だに(そしてほとんど)定着していないからだ。各媒体の広告メニュー単位でのメディアプランであっても、オーバーラップするユニークブラウザをカウントしたり、ポストインプレッション測定が出来たり、(それによってクリエイティブの最適化思考が促進されたり)したはずなのに・・・。広告メニュー単位の「手売り」でも、第三者配信の活用が定着していれば、現状よりはるかに最適化のクオリティが高く、まだまだ「手売り」が頑張ったと思われる。しかし今から出来ても遅すぎだろう。逆にバイイングサイドサーバーを拒んできたが故に、広告主が広告メニュー単位の「手売り」よりDSPに画期的な意味と価値を見出すだろう。それが故に急速にDSPによるバイイングにシフトすると思われる。
 
 そして広告主側も、大きなチャンスと同時に、競合企業に先んじられるリスクも十分考えておかないといけない。
当然自社メディアのマーケティングROI測定装置化がすすむなかで、最適な広告配信ということになる。自社のwebサイト内と、その外の広告が配信されるインターネット空間を切り分けて考えるのはナンセンスである。ネットユーザーにはすべてがシームレスな空間だ。DSPの利点を活用できる広告主企業とは、そういう発想ができる(そういう組織の構造改革を含む)ところが先を行き、ライバルに差をつける。

 こういうところのコンサルティングがきっと私のミッションであるように最近特に思えてきた。別な視点では、これは広告会社の経営コンサルとも云えるけど。

 広告会社のメディア部門は「取次ぎ業の原型」を残している。そもそもメディアの枠を売って、送稿する作業自体に価値があった時代の原型である。その昔、新聞原稿は凸版に製版して持っていかなければならなかったし、(同じ段数でも新聞社によって微妙にサイズが違うなどという製版業者保護政策があった・・・。)テレビCMも16ミリのフイルムをスポットであれば、一番本数の多い1日の本数分を各局に送らないと行けなかった。CMプロダクションはこのフイルムのプリント代が収入源だった。(もうこんな時代を知っている広告マンも少なくなっただろうが・・。)デジタル送稿によって、凸版やフイルムを持って届けることはなくなってきて久しいが、それでもパソコンに向かって送稿作業をやることでの「取次ぎ」のオペレーション価値がマージンをとる本質だ。また広告メディアを売るということは、ほぼ広告枠としての既製品を売ることであった。

 そしてネット広告にしても、いわゆる「手売り」がメインである。広告メニュー単位に、メディアプランをつくっては、実施してみて、次からはパフォーマンスの悪いメニューを落として、また別の「良さそうな」メニューを足してみて廻す。これがPDCAとされている。まあ掲載期間が1週間から2週間として、PDCAサイクルは短くても半月くらいで廻ることになる。
 さて、この「広告メニュー」なる掲載単位は、もちろんセルサイドが設定したものだ。これは従来メディアの習慣が強く残っているためにこういう「枠」の概念が強く意識される。広告会社の営業に売らせるには、分かりやすい「枠」モノにしてあげることが良いわけだ。確かにそうした「枠」に高い効果が認められ、広告主がその枠に出稿する価値を見出しているのなら、それで良い。しかし広告(ペイドメディア)は「枠」を買うものだという習い性でそうしている、ないし広告代理店の営業が「枠」でないと売りにくいという理由からそうなっているとしたら、バイイングサイドとしての広告主はもう少し考えた方がいい。
ネットでは、バイイングサイドの都合に合わせた買い方がかなり自由に出来る。アドネットワークであれば、特定の期間、時間に大量出稿も出来れば、特定のクッキーに長い期間ピンポイントで配信し続けることもできる。
 そもそも従来のメディアのほとんどが、買う側の理屈に合わせることがないがために、自由に買い付けることへの想像力が働かないというのもあるだろう。既製品を買う方が面倒臭くないというのも事実だろう。
 
 さて、特にデジタルメディアにおける広告メディア取引に起こることは、既製品の広告メニューを「手売り」する価値が、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)つまりバイイングサイドの都合に合わることが出来て最適化されるバイイングシステムによって、大きく揺らぐということだ。また今「メディアプランニング」と称している作業が、ほとんど価値を失うと考える。売り手の事情で設定された「広告メニュー」を売る作業において、どのメニューがいいか選択するのがメディアプランニングだとすると、基本掲載面の情報をベースにしているが、メディアプランニングはかなりの部分で配信先を選定することになり、掲載面の情報はあまり意味がなくなる。また、配信先クッキー、掲載面、配信曜日、時間帯、メッセージ内容ほか様々な変数を、それぞれのプライオリティで最適化していくシステムがDSPの真骨頂であるので、そもそも従前にターゲティングするということ自体がナンセンスになる。
こういう人がターゲットだと想定して広告を送るのではなく、反応する人がターゲットなのだ。この考え方はおそらく「広告をつくる」とか「プランニングする」という作業の意味を劇的に変えてしまうと思う。
 DSPは、システムを使うオペレータが要れば良い。メディアプランナーという人的スキルは、おそらくシステムには全く敵わない。1配信ごとに最適化しようとするシステムは人の作業では絶対出来ないことをしようとするからだ。
 つまり知見やスキルの価値がほぼなくなる人、要らなくなる人がいっぱい出てくるということだ。オペレータはオフショアでも十分だ。

 そうなったら、ネット広告のメディアプランナーは生き残るにはどうしたら良いか。この辺は、「続トリプルメディアマーケティング」にあたる次の本で書こうと思う。

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