トリプルメディア時代のテレビ広告投下量についての一考察

 テレビ広告の効果に関する議論は当然昔からあって、変遷しながら様々な考え方が提示されてきたが、トリプルメディア時代には、また従来の考え方と少し違ってくるように思える。
 最初に断っておくが、競合ブランドの出稿状況との兼ね合い(シェア・オブ・ボイス)は大きな要素で、投下量の最適化というのはそう簡単ではない。それは別途考慮されるべきものとの前提で、下記に考え方を記す。(今回はどちらかというとマス広告のバイイングを主にやってきた宣伝担当の方向きの話です。)

 テレビ広告の到達量と、広告認知率の相関は変数が多く、特にクリエイティブによって、またそもそものブランド力(コミュニケーション資産)によって違う。個人GRPで500%以下の投下で、広告認知率が10%しかとれないものも、80%取れるものもある。また認知率調査をすると、必ず誤認、つまり実際にはやっていない広告を認知したと答えるケースがある。まあ平均値で〇〇GRPで広告認知〇〇%ということにはなるが、さてテーマはどんな指標を目標にするかということになる。

 もちろん商品カテゴリーやブランドごと、あるいはターゲットによっても変わってくるが、しっかりした調査をしてきているブランドでは、単純な認知の先にある評価、つまり「魅力がある」と評価したり、「評判がいい」と周りの評価を認識していたり、「購入意向」、「購入実績」を抑えている。

 おそらく「続・トリプルメディアマーケティング」的な講演では、お話すると思うが、従来の意識調査で把握できる指標だけでなく、トリプルメディア時代では、行動を把握できる、そしてこのユーザー行動を指標として管理し、それをドライブさせるマーケティング施策が必要となる。(この件の詳細は別途)

 さて、こうした認知以上の指標をしっかりとると、テレビとネットを組み合わせる目的が明確になってくる。例えば、テレビCMだけで認知した人の「評価」、「購入意向」、「購入経験」と、テレビCMとWebの両方で認知した人の、同じ指標に大きな差がでている場合、「単なる広告認知者」をより多く獲得するよりは、いかに「ブランド評価者」を獲得するかを目標にする方が戦略的だと云える。というのも、ブランドを評価してくれたり、購入して利用経験をしてくれる人を獲得する方が、ソーシャルメディア空間でのレピュテーションをより期待できるからであり、逆にいうといくら広告を認知する人だけを多く獲得しても、オピニオンをもって発信してくる人を獲得できないなら、広告投資のパフォーマンスは低いと言わざるを得ないからである。

 そこで、同じ投下コストでリーチをシミュレーションしてみる。スポットの取り方や持ち単価にもよるが、あるケースだと、テレビで約3億円の出稿をしても、5千万円減らして2億5千万円にしてもリーチはほとんど変わらない。テレビを減らした分の5千万円をネット広告に投じてみると(プランの詳細は省くが)20%強のリーチが獲得できる。テレビと合わせると、テレビだけより多くののリーチが獲れる。(テレビだけでこのリーチを獲得するには約4億5千万が必要だ。)
その上で、テレビとネットの両方に接触した人の広告認知以上の「ブランド評価者」、「購入意向者」、「利用経験者」をしっかり捕捉して、どう組み合わせると単なる「広告認知」だけでなく「ブランド評価者」をより多く獲得できるかをベンチマークする必要がある。

 もちろんこれはメディア配分の議論だけでは意味がない。コミュニケーション施策そのもの(コミュニケーションプラン全体)が何を目標に設計されるかということに帰結する。
トリプルメディアの3つの円の真ん中(3つが重なっている部分)には、「統合シナリオ」というべき「コミュニケーション戦略」が位置づけられる。

 今、生活者のデジタルメディアへの接触時間は、メディア接触時間の21.6%を占めている。一方、広告費としては10%強しかないので、このギャップは埋まっていくべきものと考えられるが、単にそういうことより、「ブランド評価者」の獲得効率で、テレビ出稿やWeb施策、モバイル施策、ソーシャルメディア施策を、トリプルメディア連動という概念のなかで組み合わせることが必要である。結果的にデジタルメディア投資は増えるとは思うが・・・。

 マス広告を中心にペイドメディアへの出稿をメインでやってきた宣伝部でとっては、オウンドメディアとソーシャルメディアを考慮して組み合わせないといけないというミッションは、そんなに簡単ではない。ただ、ソーシャルメディアにも連携して「ブランド評価者」をいかに効果的かつ効率的に獲得するかということに、目標を再設定すると、到達量や認知率だけを指標にしていた時代よりは、マーケティング担当(ブランド担当)や広報担当、顧客窓口担当と連携して、同じ目標を共有して機能する「トリプルメディアマーケティング」発想に近づくのではないかと考える。

 組織体制が時代に追いつくにはそれなりの時間がかかる。この間、いくら組織体制が悪いと愚痴を言ってみても、対応できなければ担当者のせいにされるのだから、企業内で、少なくとも、ブランドのマーケティング担当者と、広報担当者と、お客様窓口担当者は、マインドと情報の共有を進めた方がいい。3者で「握る」ことをお薦めする。このあたりうの詳細は、来年の講演で・・・。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: トリプルメディア時代のテレビ広告投下量についての一考察

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://g-yokai.com/mt/mt-tb.cgi/3203

コメントする

ブログ記事 アーカイブ