「大きいことはリスクかチャンスか」 ~デパート型総合広告会社のゆくえ~

 広告業のスケールメリットは、基本的にメディアのバイイングパワーにある。大量に仕入れることができることによって仕入先への大きな影響力を持ち、場合によっては原価率を下げられる。有限で価値の高い広告枠を仕入れる力がそのまま顧客であるクライアントへの影響力を生み、多くの顧客を獲得でき、インクライアントシェアも高められた。また広告マーケティング領域の様々なサービスをワンストップで供給できることには大きな価値がある。総合力ということの意味は非常に大きかった。
 しかし、今いわゆる総合広告会社はクライアントの求めるサービスをワンストップで供給出来てはいない。クライアントが求めるスキルに対して、(特に営業のフロントラインに)知見がない領域が多すぎる。もちろんデジタルがそうだが、デジタルだけではないのだ。世の中に自分が売っている商品をお客にちゃんと説明できない営業マンはいないと思うが、広告業界にはいっぱいいるのだ。
 デパート型の総合広告会社であることのメリットは非常に少なくなってきた。もちろんワンストップでサービス供給する価値は不変だから、スキルを再編できたらいいのだが、いきなり変身できるほど甘くない。
 営業のフロントラインを含め、特定領域に強い広告会社に機能分社する選択を、欧米の広告業界はすでにしている。デジタル特化、ダイレクトマーケティング特化、ブランディング特化、メディア特化、BTL特化・・・という具合だ。その必然性は、AE制という商習慣ゆえというばかりではない。
 
 ただ、日本の総合広告会社の変身は、多少欧米とは違うかもしれない。つまりこのまま広告ビジネスの中心を領域とするのなら、単に機能分社しての強化策も良いが、成長戦略を描くのであれば、それだけでは意味はない。広告ビジネスの真ん中はシュリンクするからだ。自らにスキルのない周辺領域を、そこにスペシャリティのあるプレイヤーと組んで、広告・マーケティングコミュニケーションの知見があるからこそ価値が上がる「新ビジネス開発」をしなければならない。情報商社としてB to B の情報サービスビジネスだけでなく、B to C のメディアコンテンツビジネスまで業態を変貌させなければ成長など見込めない。そのためには大きな会社であること、企業体力が必要だ。
 大きいことは現業ではマイナスだが、本当に変貌して成長するには必要条件ではある。それを広告業と呼ぶかは別にして・・・。

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