2009年1月アーカイブ

100925.gif eMarketer.comに面白いデータが公開されていた。日本、米国、英国、ドイツなど各国別に、ネットユーザーが購買意志決定に影響されるメディアのトップスリーに入っている率をメディアごとに出している。  日本はテレビ、オンライン、新聞、ラジオ、ブログ、モバイルで相対的に高く、雑誌、ビルボード・屋外、劇場、DVD、ビデオゲームで低い。  オンライン、SNS、ブログ、モバイルを合算した数字だと、日本87%、米国66%、英国61%、ドイツ65%となり、オンライン広告費がテレビ広告をも超えた英国より、この数値が高い。  前にネットユーザー一人当たりのオンライン広告費を算出したが、トップの英国は日本の2.38倍もある。(米国で1.47倍)、当然オンライン広告はネットユーザーを対象してものであるので、ネットユーザーが購買に影響されているというメディア領域で、対英国で87:61ということであれば、数字上英国よりネットモバイル広告市場のシェアが高くてもいい訳だ。  何故もっとマーケティングコストにWeb周りに流入しないのか、企業側、サービス提供側にそれぞれ課題がありそうだ。

 マーケターである企業にとって、今後どんな人材が必要になるか。またどうやって育成すべきなのか。景気後退期だからこそ次世代の人材育成を本気で行なうべき時期だと云える。
 欧米だと、クライアントである企業のマーケター、広告会社やメディア、アカデミズムの3者を人材が行き交って、どんどんスキルを醸成していく。これに比べて日本はこうした人材交流が極めて少ない。

 さて、これからマーケティングコミュニケーションの世界で起きるであろう人材の行き来は、下記の2つのトレンドで引き起こされると思う。

 ひとつは、広告主企業自身が、メディアマーケティング事業に踏み込むことでのコンテンツ開発人材やメディア運営人材を取り込むこと。

 もうひとつは、メディアがB to Bでコンテンツを売る体制を作り出すことで起きる。メディアのもつコンテンツをブランデッドコンテンツに仕上げるプロデューサー人材を取り込むことだ。

 前者でいえば、メディアにいる人材が広告主企業に、後者で云えば広告会社にいる人間がメディアに、という具合である。

 一方、企業のマーケター人材育成もまた、従来と異なった手法がとられるだろう。ポイントはふたつ。ひとつはスルー・ザ・ラインというかビジネスプロセス全体に精通していて全体最適思考ができる人材が求められるということ。もうひとつは、そろそろデジタルネイティブが社会人になってきている現在のネット社会のコミュニケーション構造を体感的に理解している人材であることである。

 この要件を満たすには、若い年齢層で、ネット社会でのユーザー目線をしっかりもっている人材に、企業のビジネスプロセスとか、ビジネスロジックを再構築してもらうことをミッションとして与えることだ。人材育成は基本実践をもってしか成立しない。

 経営層でも若手をCMOとして大抜擢して、人材育成を兼ねた組織再編を若手や社外から人を採って、行なうべきである。また次世代マーケティング体制の構築の観点でいうと、現時点でROIの測定管理ができている企業内マーケティング人材に、全体最適を任せていくべきである。
 

日本のネット広告のCPMが米国の1/3くらいになっているということは前にも言及した。何故かというと、基本買い手市場にあるので、買い手の求めるCPAから逆算したCPMでの取引への圧力が働いて価格を押し下げるからである。ただそうした傾向は日本以外でもそう変わらない。にもかかわらず日本の単価が低いのは、メディアがブランド力もクリエイティブのパフォーマンスもギャランティする売り方をしてきた結果と、日本のネットマーケターが「同じクリエイティブでクリックベースでのCPAで評価する」という極めて単純化した手法を続けているからである。買い手サイドから見れば、安く買えることは良いことだが、単純化した手法では長期的にはROIは良くならない。短期的な最適化の繰り返しが、返って日本のネットマーケティングスキルの水準を上げずにいる。

 この状況を変えるきっかけは、ネット広告枠の需給環境の変化と、本格的なクリエイティブパフォーマンスを展開した手法が大きな成果を上げることのふたつだと思う。
 そして、このクリエイティブのパフォーマンスが本格的に機能するには、ユーザーの文脈に応じた多様なクリエイティブの量産体制ができて、最適配信が可能になることである。
 
 実はタイトルの「行動ターゲティング」が本格的な価値を創造して価格を上げられるかどうかは、このクリエイティブの最適配信に対する期待だと云える。
単に配信対象を絞り込むだけの機能では、単価は上がっても投下量は少なくなって、ネット広告全体の市場を押し上げる効果があるかどうか疑問になってしまう。現状のままでは「行動ターゲティング」は効率を上げるかもしれないが、効果の絶対値を劇的に上げるまでにはならない。マーケティングROIとは、効果/効率であって、ひとり当たりの獲得コストを下げることだけがゴールではない。
インマーケットにある見込み客をつかまえることができるのがインタラクティブメディアであるネット特有の機能であり、行動ターゲティングは顕在化した興味関心をほとんどリアルタイムで捕捉してコミュニケーションチャンスをつくる技術である。であれば、興味の文脈に応じたメッセージで、ほおっておけば関心を失うか、他のブランドへの興味に行ってしまうパーチェスファネルの中間にいる対象も、自社ブランドへの関心を醸成しておく機能を含め、最終獲得とその即効性だけに焦点を絞らずに、本来の広告の機能と目的(積極的な興味を持たない人にも広告訴求することで顧客化への道筋をつくる。)を展開するようにならないと行けない。

 さて、2009年最初のエントリーは、「マーケティングリモデル」についてである。この景気後退感は、マーケティング戦略を大きく見直すきっかけになるだろう。
 売上が期待できないのだから、マーケティングコスト特に広告費を抑制するのは当然である。ただこの「大きな売上が期待できないから広告費を削減する。」という思考には、全体最適と将来最適と考える経営思考がないとダメだ。もし経営トップが売上見込みが落ち込んだから、単にコスト合わせとして広告費削減を指示しているとしたら、その会社のマーケティング遂行力はダメージを受けている。景気が回復したときに競争力を持てなくなると云っていい。

 広告費の削減は仕方がない。しかし、減らすのであれば、減らしても極力売上を落とさないコスト投下の選択と集中を行うべきである。
 ひとつの方向はパーチェスファネルの下流にマーケティングコストをシフトすることであり、もうひとつはアウェアネス獲得に従来のようなコストを使わない新しい手法を試みることである。

 パーチェスファネルの下流にコストをシフトするということは、インマーケットの見込み客に集中させることが基本だ。そして、これをマーケティングROIの測定管理可能にするということである。この2つを実現させるためには、多くの企業がマーケティング推進体制を再編しなければならないことに気づくだろう。

 最近、私もWebサイトコンサルに関わるプレゼンテーションをすると、クライアントの社長が出席する場合ですべて仕事が決まっている。なぜかというと、この時期に必要な提案は、全体最適化の提案であり、それが組織横断的な判断が必要だからだ。

 逆にいうと、組織ごとのミッションに縛られていると、この時期のマーケティングリモデルと新しいチャレンジができない。「パーチェスファネルの下流にコストをシフトさせて、そのROIをしっかり測定管理する。」これを実行するためには、経営トップの理解と経営判断が必要だ。

 ここで、こうした再編に手をつける企業と、状況を不況のせいにだけして手をつけない企業とでは、景気回復後に決定的な差がつくだろう。

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