2008年12月アーカイブ

「業界人間ベム」を今年1月から始めて1年経った。
年初と今では景況感が天地ほど違う。しかしかなり前から地殻変動が起きていたマス広告の地盤沈下は、この大不況によって決定的なものになるかも知れない。これまで本気ではなかったマス王道にいた人たちもさすがにお尻に火が付くだろう。とはいえ、デジタルのビジネス感覚を培っていなかった者が簡単に対応できるほど甘くはない。確立したビジネスモデルでしかやったことがない人間には荷が重いかもしれない。

さて、不況だ不況だというわりには、マスメディアが報道しないところでは利益がでている企業もある。今年の年央にかけて原材料の高騰にさらされて何とかかんとか売価を上げられた企業は、今輸入原材料の価格下げと円高の恩恵に預かっているはずだ。全部が全部大不況ではない。トヨタまでが・・というセンセーショナルな報道に全体が完全にシュリンクしているように感じるが、実は「儲かってるけど、黙ってようっと」という企業はけっこうある。

 インターネット広告は来年もその市場のなかで大きく動いていくだろう。従来のマス広告は様々な広告手法がいったん確立すると、新しいものもその上に積み上がって成長してきた、しかしネット分野はいったん市場を形成した広告スタイルや媒体社(ビークル)が3年程度で姿を消すことが常識だ。ネット広告全体は右肩上がりでも、その中身はたいへんな変遷をしている。常に激動していて一瞬たりとも油断がならない市場だ。
 しかし今回の不況は、企業のマーケティング体制の見直しに貢献するかもしれない。
今はブランドごとに、そのブランドの販促予算のなかでWebを使ったプロモーション施策をとっている。だからインタラクティブ活動の施策のスケールが小さい。企業はブランド横断的にデジタル&インタラクティブマーケティングにコストを注入できる体制や仕組みを用意すべきだ。
 こうした体制が実現してくると、ネットモバイルへかなり大きなマーケティング予算が流入してくるだろう。
 ただそこには、ビジネスプロセスに対するコンサルから、マーケティングコンサル、コミュニケーションプランニング、キャンペーンオペレーションとフィーに変換する要素が多くある。ここを従来の広告代理店モデルで稼ごうとしてもうまくいかない可能性がある。いずれにしてもスキルのある人材をクライアントが買うイメージが強くなるだろう。
 
 おそらく2009年はデジタルインタラクティブ領域のシェアが相当上がるだろう。絶対額の伸びはそう大したものではないかしれないが、本当に存在感のあるシェアになる年だと思う。そこに意味がある。

「広告コミュニケーション」は「気づき」(Awareness)を誘発し、ブランドを認知させ、
そのブランドは自分に関係のあるものだと意識させる「レリバンシー」を獲得する。
そしてこれを購入意向(パーチェスインテント)にまで醸成し、実際の購買行動を起こしてもらう。

このような購買プロセスに対して、より購買時点に近い部分にマーケティングコストをシフトさせる動きが顕著だ。景況感の悪い今だからこそ、こうしたマーケティングコストのシフトは当然行なわなければならない。しかし対応するマーケティング活動の処方箋が間違っていることが多い。間違っていることの代表がふたつある。

ひとつは、「パーチェスファネルの下流へのコストシフト」を単純に販売促進活動のシェアアップと捉えてしまうことである。従来の「アバブ・ザ・ライン」と「ビロー・ザ・ライン」の発想での販促活動を精査してみると、それが必ずしも購買プロセスの下流(つまり購買意欲が顕在化しつつある状況)に至っている見込み顧客に照準が当たっているわけではないものが多い。販売チャネルでの施策など、「売り場」(買い場)施策は当然あるべきだろうが、インマーケットの顧客をターゲットとした施策はなにも売り場だけではない。

マス広告コミュニケーション以外はとにかく販売促進活動に位置づけられていて、その目的や効果検証がおざなりになっているものが多い。
その商品カテゴリーないし、そのブランドへの興味関心が顕在化した、あるいは、顕在化しつつある対象者に対するコミュニケーション活動が、パーチェスファネルの下流への重点シフトと云える。それが従来の概念でいう広告コミュニケーションか販促活動かという施策スタイルで区分されるものではない。

 また、「興味関心が顕在化しつつある人を見つけ出してメッセージを送り込むこと」に対するコスト意識の変革が求められる。関心のない人を含む広く一般に「気づき」を誘発させるコミュニケーションへの一人当たりのコミュニケーション単価と、インマーケットの顧客へのコミュニケーション単価をどうみるかだ。これは業種、商品やサービスのカテゴリーによって大きく違うだろうが、総じて高額商品であればあるほど、後者に対するコミュニケーション単価は通常のコミュニケーション単価より一桁以上違っていいはずである。
(ブランド認知分の購入意向者の割合に反比例するはずだ。)
 私が提唱したいのは、是非ブランドごとにこのパーチェスファネル設定と、それぞれのレベルの対象者別に投じていいコミュニケーション単価をベンチマークすることだ。
 このブランドでは、インマーケット(興味関心が顕在化している)顧客へのコミュニケーション単価は最高いくらまでと設定できるといい、これはそうした施策で最終顧客化できたユーザーでの売上利益でROIを弾き出すことになる。

 従来の販促活動には依然ROI管理ができないものも多い。量販店で売られるもので定番棚ないし大陳スペース確保の流通施策はともかく、それ以外の販促活動にもROIの設定と、いったいどのくらいの見込み客に到達したか、コミュニケーション単価はいくらだったのかと管理すべきである。
 
 従来販促活動として捉えていたイベントなどの施策も、実はコミュニケーションコンテンツとして認識できるものもある。話題のネタとして、ネットでインフルエンスする仕込みをすることで、実態はアウェアネスとして機能することもある。イベントだから販促活動を捉えるのは間違っている。
 顧客の購買意向レベル別に施策を分けて、それぞれの投入コストを単価設定することも、マーケティング活動の最適化を図るためのひとつの手法ではないかと思う。

 不況感は日々強まるばかりだ。メディアも調子に乗って「不況だ。不況だ。」と煽るのもいかがなものかとさえ思う。結局広告費が減って首が絞まるのはメディアもいっしょだ。

 この大不況突入の時節、「広告費が減る」のはどうにも仕方がない。企業は売上利益が上がらなければ当然コストを見直す。しかし、従来のマーケティングコストの使い方のまま、ただ一様にコスト削減するのは全くのナンセンスだ。

 ものが売れにくくなるのだから、パーチェスファネルの下流(つまり購買行動に近い部分に)マーケティングコストをシフトさせる必要がある。それも従来の単なる販売促進活動というのでは芸がない。(そもそも効果があるかないかとROIを測定できるかどうかだ。)
 
 パーチェスファネルの下流にシフトするということは、興味関心が顕在化するかしつつあるユーザーを見つけて、そこにコストを集中させることである。
 そして、それをマーケティングROI測定可能にすることだ。

 つまりデジタルインタラクティブ領域を中心に据えて、マーケティング活動を設計する意味が今こそある。この時節はWebセンタリングマーケティングへのシフトの最大のチャンスと云える。

 クライアントの方々と直接話すと、皆さんそういう状況を実感し、企業側のマーケティング体制再編の必要性を認識されている。ここは経営トップが判断をして、CMOを設置し、新たなマーケティングへのトライを勇気をもって挑戦すべきである。この時期に新しいトライをした企業と、ただただ不況を耐え忍ぶだけの企業とでは、景気が回復した後で、凄まじく大きな差が生じるだろう。

 この不景気は「マーケティングリモデル」の最大のチャンスである。

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