2008年9月アーカイブ

 先日、G社のT氏と食事しながら、次世代の広告コミュニケーション開発の方向を議論していたときに、T氏が云った「送り手発想と受け手発想のギャップを埋める。」というコンセプトに強く同意した。
 従来の広告コミュニケーション開発の基本は、テレビCMのしかも15秒を前提にしたもので、商品のレギュレーション(規格)からそのUSP(ユニークセリングプロポジション)、商品ベネフィット、そしてそのエッセンスとメッセージを尖らせていく手法だ。「そうしないと刺さらない。」「他のノイズに埋もれてしまう。」という考え方。やはりアテンションを獲得することが一義的なクリエイティブである。
 一方、WebマーケティングやSEMの世界では方向は180度違う。ユーザーのインタレストに対してひとつひとつカウンターでメッセージを返すのが役目で、まさに受け手主導の発想である。見込み客であるひとりひとりのユーザーが買う理由を見つけに来るところに、ひとりひとりにすべて答えを用意する仕組みをつくらなければならない。
 
 こうした送り手主導のコミュニケーション開発にも、受け手主導のコミュニケーション開発も実は万全ではない。前者はもちろん、世の中のコミュニケーションの本質が、がぜん受け手主導のものになったことを受けて、送り手発想のコミュニケーションの力が圧倒的になくなったことを前提にモノを云っている。
 しかし、受け手の琴線に触れるものが何かをさぐりながら、メッセージ開発するのはいいが、そこは現状追認型であって、新しい価値を提案する場合は、送り手がやはりしっかりしたメッセージをもつ必要がある。
 
 そこには「送り手発想のアプローチ」と「受け手発想のアプローチ」の間にあるものを埋める作業が要る。
 きっとそうした作業をするのが次世代広告コミュニケーション開発の担い手なる者のミッションだろう。

テレビの報道番組のMC人材の枯渇が顕著だ。古館伊知郎氏が報道ステーションのMCになってずいぶん久しいが、未だ彼には荷が重い。単調でエキセントリックな反応ばかりで、知的な深みがまるでない。
同じテレ朝でいうと、田原総一郎氏はもうあまりに歳をとりすぎていて、手に負えない偏屈爺になってしまった。さすがにもう彼は引退したほうがいいのだが、後継者がいない。
TBSも筑紫哲也氏の降板後彼に匹敵する力量のあるは全くでてこない。ニュース23の場合筑紫哲也の復帰前提だからだろうか。同じくTBSではサンデーモーニングが未だにタレント司会者でしか視聴率がとれない。関口宏は、栃木での少女殺害事件を、「そんな事件がありましたっけ?」と発言したことがあり、報道番組のMCとしての最低限の見識すらない。みのもんたも同様のレベルだ。自分の影響力を誇示する傾向もあり、性質が悪い。

今年フジテレビの日曜朝の報道番組から長年の顔だった竹村健一が勇退した。久米宏がニュースステーションをやっていた時代の各局の報道番組MCのラインアップに比べて今は人材の枯渇が目立つ。そこに輪をかけて、局の制作費圧縮の流れだ。TBSのブロードキャスターが終わり、後継番組が局アナでやるのも、高いギャラが払えないからで、こうした傾向で尚のこと、有力なキャスターは育たない。(ところでお笑い担当アナウンサーかと思っていたCX伊藤利尋アナが「サキヨミ」でのキャスターぶりが以外にも優秀だ。)
いろんな要因で次世代を担う人材が出てこないのは、やはりもうテレビの時代ではないことの表れかもしれない。

リスティング広告を中心にSEM領域は今のところダイレクトマーケターの主要なマーケティング手法である。パフォーマンス管理がしやすいし、何よりダイレクトな効果がある。通常、SEMに関わる作業というと、キーワードの抽出と、ワードに応じたテキスト広告文の開発、ワード別のパフォーマンス管理となって、常に検索結果ほかに表示される広告文からのクリックによって誘導された見込み客を扱っている。

 さて、ネット広告でのパフォーマンス管理は、CPAをもって測る場合、常にアクイジションに結びついた最終誘導にのみ焦点を当てている。これに対して、ATLAS institute.では、アクションに至った直前の広告レスポンスだけでなく、それ以前の広告接触を把握して、その効果も分析する一歩進んだオンライン広告分析を始めている。

 いずれにしても、短期的ないわゆる「刈取り」型のダイレクトマーケティング手法をとる広告主がその大部分であったネット広告市場は、今後はROIを管理していく立場からアプローチして「ブランディングとは何か」を追求することになる。

 そんな大きなトレンドのなかで、今は非常に世知辛いダイレクトマーケティングの世界の代表であるSEM手法が、ブランディングコミュニケーション開発に寄与していくのではないかと考える。
 ここ何年か広告コミュニケーション開発の重要なテーマになっている「消費者インサイトの発見」。これはとりもなおさず、従来広告コミュニケーションが「送り手の思い」からつくられ、TVCMの15秒というフォーマット用にまずは刺さるためにエッジを立たせる作り方であったのに対し、送り手の思いだけではどうにも受け手が反応してくれなくなった状況を反映している。
 それに対して、SEMは消費者行動のどこに琴線が触れるかを突き詰めて考えている。受け手側の興味関心のすべてにカウンターでメッセージを用意しようとする試みである。この考え方は、消費者の多様な求めに対してブランドができるだけ答えを用意しようとコミュニケーションすることで、従来のマスコミュニケーションと正反対のアプローチだ。しかしこうしたアプローチにもブランディングコミュニケーションを成立させる可能性は実は確実にあって、多様なメッセージ開発の仕組みを用意することではじめて成立する新しい考え方になるだろう。この時SEMのスキルをもった人たちに多様なメッセージ開発、コミュニケーション開発のための基盤をつくってもらう時期が早晩くるだろう。

 現在の広告会社には基本テレビ広告的な(送り手発想の)コミュニケーション開発の装置しかない。個々の消費者がそれぞれの琴線にカウンターでマッチングされる広告メッセージ開発ができる新たな装置の開発と、SEMの立場からのブランディングコミュニケーション開発への参画が必要であろう

 先日、ADTechを主催するDMG world media社のアジアチームのメンバーとお会いすることができた。

 DMGの親会社の英国デイリーメール&ジェネラルトラストは、日本でいえば朝日新聞みたいな100年以上の歴史のあるパブリッシャーだそうだ。

 来年の9月に待望のAdTechが東京に来る。
 このAdTechを日本に招聘できたのも、オリコムの武富局長の熱意の賜物と云える。
 すでに11年目を迎えるAdTechだが、欧米はもちろん、アジアパシフィックでは上海、北京、シンガポール、シドニーと 開催されていながら、広告市場世界第二位の日本がずっとパッシングされてきた。
 これを、武富さんのコネクションで引っ張ってこられた。業界として氏のご努力に敬意と謝意を表すべきかと思う。

 AdTechはテックという語感から、テクノロジーの見本市のように思われるところもあるが、実は広告それも次世代マーケティングコミュニケーションのカンファレンスと云っていいようだ。参加社の業態も、広告主、広告会社、出版社、ソリューションプロバイダーらが、ほぼ均等らしい。
 
 たいへん興味深いのは、欧米での広告主と広告会社のパートナーとしての関係確立までのプロセスである。欧米では日本にくらべて広告会社の地位も高い。メディアスペースのディスカウント合戦や10社コンペなどという、そもそも広告会社の付加価値や生産性を否定するような状況にならないのはなぜか。広告主と広告会社がよりクオリティの高いサービス提供のためにどんな試行錯誤があったのかを知ることができるといい。
 海外の情報でいうと広告賞の受賞作としての作品を知る機会はあるが、そのバックヤードでのビジネスとしてのいきさつが見えると参考になる。

 

 

 

月別 アーカイブ