広告会社とコンサルティングファームの協業

  Webマーケティングが従来マスマーケティングを展開してきた企業にも活用され始めて久しい。しかし、企業の組織体制はマスマーケティング時代のままというところがほとんどである。従来の概念でいうところの「アバヴ・ザ・ライン」と「ビロウ・ザ・ライン」で担当セクションやミッションが違い、それぞれの部分最適に走ることになる。マス広告がアウトプットのほとんどだった時代は、いずれにしてもマス広告の効果は直接把握できるものではないので、宣伝は宣伝、販促は販促として機能せざるを得なかった。
 ところが、Webマーケティングを展開していくと、商品によっては、広告による効果を企業Webサイト上に設定し、尚且つ顧客化まで、あるいは客単価、リピート率などロイヤルカスタマー化率までを追尾することができるようになった。
 こうしたWeb活用の成果を、一部のダイレクトマーケターは徹底して享受している。マーケティングの時間軸をどの程度の長さにするかによって、刈り取り型のコミュニケーションか、ブランド醸成型のコミュニケーションか、その按配も最終的なROI設定から逆引きして最適化を図る手法を確立している。

 ところが、従来からマスマーケティング型の組織体制をもっている企業は、こうした全体最適を図るための仕組みをもっていない場合が多い。
 例えば、会員制の仕組みがあったとして、宣伝とは別に販促部があって、会員獲得をミッションにされているケースは少なくない。この販促部は会員ひとりを獲得する単価が一番安い販促手段をとることが、与えられたミッションになる。
 しかしこの場合、ふたつの視点で、部分最適と全体最適が矛盾する可能性がある。ひとつは、ブランドコミュニケーション戦略とのズレである。ブランドコミュニケーションを担う宣伝部は、ブランドの認知、関心、購買意向を醸成しようとしている。こうした活動とは別個に、ただ顧客刈り取りの単価が安いことで(アフィリエイトなど場合によくある。)ブランドコミュニケーションの訴求対象とは関係のない、別の活動としての販促活動になってしまうことを同じ企業の別部署が一生懸命やっていることが往々にしてある。

 もうひとつは、獲得した見込み客の質の問題である。販促セクションは、従来であれば、獲得した顧客のクオリティが分からなかったので、会員など見込み客のひとり当たりの獲得単価が安ければ良かった。しかし今では、どんな手法で獲得した顧客が、「どの程度の客単価になるか」や「リピート率がどの程度になっているか」を把握することができる。つまり単純会員獲得パーコストは指標にはならず、売上利益貢献度までを、広告を含む顧客獲得施策の評価の指標にできる。できるのだが、これを阻害しているのが、従来のマスマーケティング型組織体制である。現場の社員は理解していても組織がうまく機能しない
 また社内開発型のWebマーケティング体制と広告会社をパートナーとするマスマーケティング体制が、しっかり融合できていない側面もある。

 いずれにしても、企業の経営トップが、組織体制を新しいマーケティングに対応したものに再編する必要がある。
 
 この場合、コンサルティングファームがやってきたマーケティングコンサルのスキルで企業の経営層の判断を促すことに注目できる。従来もプロダクトマネージャー制など様々なマーケティング体制を企業に指南してきた。
 そして今こそ、広告会社とコンサルティングファームが連携して、企業のマーケティングリモデルに貢献する時期だと考える。

 コンサルティングファームには、組織論も含め、企業の利益向上のための様々な角度からの提案ができる。広告会社は基本、売上向上のためのマーケティング提案はできるが、資材購買や工場ラインの稼働率など、企業コストの部分まで踏み込むことがなかなかできない。(広告費もコストだからだ。)
 一方、コンサルティングファームの提案には、組織体制変革の提案があったとしても、実際のマーケティング活動の具体的なアウトプットを提示することができない。

 今、J-SOX法対応などで、一部のコンサルティングファームは大忙しだ。またこうした基幹システム導入などをゴールにしたコンサルの方が、地道なマーケティングコンサルよりはるかに儲かる。しかし良く考えると、今こそマーケティングの大変革時代であり、「『アバヴ・ザ・ライン』『「ビロウ・ザ・ライン』から『スルー・ザ・ライン』へ」、「部分最適から全体最適へ」という時代である。こういうときに、一部のコンサルティングファームと広告会社が相互補完してのコラボレーションによって、企業のマーケティング活動の効果、効率を上げるお手伝いができるのではないかと思う。

 企業のマーケティング体制整備によって、しっかりしたROI設定と管理がなされ、結果、広告コミュニケーションへの正当な評価がなされる。メディアの価値、コミュニケーションコンテンツの価値も、おそらく良いものはより良く評価されるはずである。

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