2008年7月アーカイブ
最近になって日本でも「アドテクノロジー」というワードが業界で使われるようになった。ただアドテクノロジーの本質を理解している人は極めて少ない。
昨年、aQuantiveをマイクロソフトが買収したり、グーグルがダブルクリックを買収したり、WPPが24/7を買収したりと、広告配信を中心とするアドテクノロジーを大資本が(MSに至っては自分が世界最大のソフト開発会社であるにもかかわらず)次々と囲い込んだ。その影響で日本の広告会社の経営層もアドテクノロジーを認識しないわけにはいかなくなったようだ。
アドエイジ誌の世界の広告会社ランキングで、10位はADKだが、その上の9位にランキングされているのaQuantiveである。aQuantive自体は持株会社なので、事業会社としては、AvenueA Razorfishというインタラクティブエージェンシー、Atlasというテクノロジー会社、DrivePMというアドネットワーク=メディアの3つで構成されている。
これがある意味次世代の広告会社の業態の将来像かもしれない。
とはいえ、未だに日本では「アドテック」が開催されていない状況で、日本のアドテクロノジーに対する認識は低い。
例えば、グーグルのAnalyticsを使ってトラッキングデータを分析してくれとか、アド配信ツールを使って、企業Webサイトをユーザー別のダイナミック表現を展開してくれとか、クライアントに依頼されることは今後いくらも出てくる。そのニーズに対応できる広告マンがどれだけいるかである。
別に広告会社が技術を囲い込むことはないが、駆使できるスキル育成は必須である。
そうした環境下には、広告会社がチーフテクノロジーオフィサーを置くことが求められる。
おそらく、人材はいないだろうから、テクノロジーに精通した外部に人を求めがちであるが、広告ビジネスを十分理解していることがまず先で、その上でテクノロジーの評価ができることが重要だ。
従来広告業界はITなどの技術に疎い人の集団で、システム構築もSEベンダーに結構いいように鴨にされてきた。
またせっかく大金を投じてつくったプランニングシステムとかをろくに使わないできた。どこかでシステムやメソッドに使われているような気がして、人の産業である広告マンのプライドが許さないような感覚があるのだろう。
しかしもうそんな悠長なことを言っていられる時代ではない。
この際、CTO人材育成を社内外に打ち出して、テクノロジーによる広告ビジネスの付加価値向上やオペレーションコスト削減を推し進める時期にある。
「あるある」事件をきっかけにテレビは健康情報番組から、雑学(および雑学クイズ)番組に大きくシフトした。特に日本語を再認識する番組も多く、そのこと自体は良い傾向だと思うのだが、その効用という点ではあまり顕在化していない。テレビの日本語(テレビ番組で使われる日本語)は、依然非常にあやしい。
特に日常的な会話での基本、尊敬語、謙譲語の基本ができていないのが情けない。その典型が自分の妻のことを「奥さん」と呼ぶケースが非常に多いこと。云うまでもなく「奥」とは尊敬語であって、自分の配偶者に対して使う言葉ではない。これを使うだけでその人間の教養のなさが露呈されるのだが、その辺の三流芸人であれば、「さもあらん」で済むが、そうでもなさそうなタレントが使うと、事務所や局は注意しないのか、あるいは事務所や局も知らないのかと思う。
気持ち悪い日本語は、スポーツを取り上げるときも多い。一番気持ち悪いのは「応援よろしくお願いします。」という今やテレビ向けの挨拶用語化しているフレーズだ。
この日本語を変だと思わなくなっているのは、皆まねをして、皆でいうようになったからで、そもそもスポーツ選手のボキャブラリーがないことに起因している。
それはともかく、「自分を応援してください」ということを言うこと自体、従来日本人のメンタリティにはなかった。だいたい勝手にやっていることを応援していただけること自体、たいへん有難いことであって、さらにそれを本人が促すことなどはずうずうしいとしか云えない。
とは云え、そこは「皆さんの応援が力になりますから、応援していただけると幸いです。」というもの云いはないではない。しかしこのフレーズは、その辺の謙虚さは全く省略されていて、全く知的に感じない実に変な日本語だ。
おバカと称して、テレビタレントの教養のなさを面白がるのもいいが、タレントが自分の妻君を「奥さん」と云っていたら、ディレクターが「それは日本語としておかしいですから」と云って直すことすらしなくなっているテレビの制作現場の質の低下に、テレビの将来への不安を感じているのは私だけだろうか。
メディアプランニングは従来、クライアントの対象ブランドにとって最も適したメディア、ビークルを選択する作業なので、一見広告主サイドに立っているようではあるが、実のところは、対象ブランドと広告メニューのマッチング作業といえるので、選ぶ権利はあるが、基本的にはバイイングサイドの論理でカスタマイズされるものではない。
従来、広告スペースが有限な「枠」の論理で、その希少性をもって価値としてきたが、本来希少価値があるのはあくまでコンテンツであって、広告枠そのものではない。そして今後は、すべての広告主にとって価値のある「枠」というものは少なくなっていくだろう。
広告が、「多くの人が集まるところに出す」ことに価値がある、つまりリーチに価値があることはすべての広告主にとっての価値ではなくなる。
そのさきがけになっていく仕組みを、ネット広告の「行動ターゲティング」にみることができる。巨大なリーチのアドネットワークを対象に、広告配信対象ブラウザを特定していく「行動ターゲティング」は、広告の概念を「どこに掲載するか」から「誰に配信するか」に変えている。
この時に、起きる現象は、「配信対象を特定する(プランニングする)」作業は、従来のメディアプランニングの感覚とはずいぶん違うものになるということだ。
どんな商品ブランドにもターゲットプロフィールが設定されている。自動車などに至っては緻密なマーケティング調査を積み上げて、時間と労力をかけて「ターゲットプロフィール」を設定している。そしてこのプロフィールは単にデモグラフィックで想定できるものではない。ライフスタイル、志向性、などサイコグラフカルな切り取り方がされる。こうしたプロフィールから配信対象者を特定する作業には、新たなスキルが必要である。
「行動ターゲティング」でブラウザを特定するキーは「○○というキーワードで検索したブラウザ」とか「○○の掲載記事を閲覧したブラウザ」になる。
この時、このターゲットプロフィールが対象をなるのであれば、検索ワードは何で、どんなコンテンツを閲覧したブラウザなのか、またそのブラウザに対してどんなタイミングで、どんなキーワードやメッセージを含んだ配信をするかを設計することになる。
この作業をするには、ターゲットプロフィールとそこへのコミュニケーションコンセプトに十分精通していないとできない。
またクライアント側の送り手の論理だけでなく、受け手である消費者側が、どんなキーフレーズやイメージに対して琴線が触れるかを理解している必要がある。
ネットではこうしたマーケティング活用可能なレスポンスデータがふんだんにあり、スキルのあるマーケターによって読み取れる「インサイト」がある。
コミュニケーション開発のプロセスが、受け手主導になる時代、メディアを売るスキルも掲載面の情報に精通するだけではなく、広告配信対象者を選ぶために、広告主つまりバイイングサイドの情報に精通する必要がある。
こうしたスキル開発(人材育成)は従来のマスメディアの枠セールスの職能のなかからは開発が難しい。やはりコミュニケーションチャネルプランナーとコミュニケーションコンテンツプランナーとの連携、融合が解決のひとつの方向だろうか。
元博報堂でマーケティングコンサルティングをされている山本直人さんが、ブログをリニューアルされた。新ブログはスタートされたばかりだが、エントリーは実に面白いというか、興味深い。
まずは、広告業界人を、マス右派、マス左派、ネット右派、ネット左派の4象限に分けた議論。
http://www.naotoyamamoto.jp/blog2/archives/2008/06/post-6.html
自分はどこにいるのだろうということと、今後どこにいる人たちと連携すべきか。あるいは、自分は橋渡し役になって新しい価値をつくりたいとか発想する起点になる議論だ。
山本さんのブログにあるように、会社を超えたところで、人による再編が広告のビジネスリモデルには必要かもしれない。
オリンピックの年だというのに、日本の広告界の業況が芳しくない。
これは世界的な現象なはずだが、燃料、原材料費の高騰で、企業も大型の広告キャンペーンを行なうブランドを絞り込んでいる。おそらく大型のキャンペーンの案件そのものが少なくなっている。
一方アメリカを中心に、景況感が悪いにもかかわらず、2007年の世界的な広告市場の伸長率は高い。2008は厳しいものの、日本ほどは暗くないようだ。
世界の傾向でいうと、広告会社のドメインは、いわゆる「広告(アドバタイジング)」のシェアは年々少なくなっている。広告制作、メディアバイイングは半分程度で、あとはPR、プロモーション、デジタル、専門分野(医療など)やいわゆるDAS領域で構成されるようになった。
で、成長を牽引しているのが、これら広告周辺領域のビジネスである。
欧米のメガエージェンシーグループはもちろんこうした周辺領域のスペシャリストをM&Aを中心に傘下におさめて展開している。当然専門性の高い会社をまるごと買って、そのまま機能させて成功している。
日本の場合、広告ビジネスの領域の広がりや、周辺ビジネスの拡大に対して、広告会社の対応力が低い。またその戦略性において、欧米のようなダイナミズムに欠けているといわざるを得ない。
日本では、営業会社である広告会社本体機能を上げようとする傾向が強いが、M&Aなどをしてもスタッフ機能強化だけではあまり意味がない。つまり現状の広告会社の人間が、つかまえきれていない得意先や、できていないサービスを実施している営業会社を買えばいいのに、あまり営業力の水平展開をしようとしない傾向がある。
現在のように、広告ビジネスの領域が広がると、スタッフに専門性をもたせるだけでは機能しない。営業ラインそのものに専門性のある集団をもつことが重要で、各々の領域に営業スタッフ機能が一体化した、最適化した編成が必要である。広告会社のような様々なサービスを展開する業態では、欧米型の持株会社によるグループ会社編成が求められるようになるだろう。それによって現在の広告会社のもつ顧客に対して、より広告周辺サービスの提供を可能にすることが、足腰の強い構造の業態にする道だと思う。

