グリムの法則

 グリム童話で有名なグリム兄弟のお兄さんの方の、ヤーコブ・グリムは言語学者でもあって、「グリムの法則」という言語学上の大発見をしている。
 どんな法則かというと・・・

インドヨーロッパ語族間の言語において、同じ単語の子音部分が一定の法則で変遷することを見つけているのだ。
 例えば、インドヨーロッパ祖語において、有声音の(b、d、g )は古代ギリシャ語では、(p、t、k)の無声音に変化する。またこれがロマンス語では、(f、d、h)となる。具体的にいうと、英語(ゲルマン語)のbrother は 印欧祖語やサンスクリット語では、bhrator で、ギリシャ語では、phrator 、ラテン語では、fero 、というように同じ言葉で先頭の子音部分が一定の法則で変化するのだ。

 面白いのは、これがそのまま日本語の大和言葉と首里語(琉球語)間でも同様に起こることである。グリムは当然、日本語などは調べていないだろうから、印欧語族内の法則としての発見は、もっと広範囲でおこる言語としての大法則だったといえる。

 ところで、他の言語と日本語はどの程度の差異があるだろうか。言語間の距離と方向を、多変量解析をかけてマッピングするという作業がある。月(tsuki)とか海(umi)とか千年たっても変化しない基本語を各言語から取り出してシラブルに分解してマッチするかどうかを見ていく。その結果から各言語の距離と方向を出す。
 そうすると、見事に印欧語族は小さい範囲に固まる。で、日本語はというと、全くの極東の離れ小島そのまま。日本語はアルタイ語族だから、モンゴル語系統だとか、とりあえず入れてもらっていた時期はあったが、実は他に仲間がないので語族を形成できない孤独な言語である。その日本語が唯一親戚だといえるのが朝鮮語である。マッチ率が統計学上の偶然を超えた、関係の必然を意味する比率をもっているのである。

文化人類学上、日本語の親戚ではないかといわれたいくつかの言葉があるが(例えば、米のことをイネというから、タミール語は日本のルーツとか)、解析をかけると非常に遠い存在だ。言語全体マクロでみると近い言葉はKoreanしかない。もっとも日本という島国に文化を送り込んだのは紛れもなく半島から来た人たちであり、大和朝廷を開いたのも半島文化をもった人たちである。

 グリムはそこまで考えなかったかもしれないが、人類の話す言葉は根源的にはどこかでつながっている。神話が共通しているように、言語構造や子音の発音変化が共通するのは実に面白い。構造主義という思想潮流が、フェルナンド・ソシュールの言語学から始まっているのも、ある意味で合点がいくところがある。

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