① 企業の姿勢が問われる個人情報扱い

~経営マターとしてのデータ取り扱いポリシーとファーストパーティデータの同意取り直し~

 前回のエントリーで書いたように、今年1月1日からCCPAの施行される。CCPA(カルフォルニア州消費者プライバシー法)は、Cookieや位置情報に代表される「許可なき追跡」に対して消費者に主に5つの権利を与えている。まず、消費者はデータを取得している事業者に「わたし」のどんな情報を持っていて、どこから集めたのかを聞ける権利を有する。そして、それを過去12か月分どんなデータかを知る権利がある。また、それらを確認したら「消去しておいてくれ」と命令できる権利がある。同時に「わたしのデータを他社に売ってはいけない」と命令できる。ついでにデータ消去を命令したからといって事業者が「わたし」へのサービスの質を低下させてはならない。

その上で、オプトイン(同意)のプロセスに関しても従来よりはるかに誠実な対応を求めている。
 
 この潮流は確実に日本にも来る。企業でデータに関わるすべての人に関わる重大な事態となるだろう。構築してきたDMPがほぼ使えないという状況も考えられる。
 また1stパーティデータを再構築、つまり同意の取り直しを行う必要もでてくるだろう。この際、保有している1stパーティデータがそもそも持っていても大丈夫なのか、保持していることが逆にリスクになるダークデータではないのか検証すべきだろう。その意味でも2020年はCMP(コンセント・マネージメント・プラットフォーム)が注目されるようになるだろう。

 企業のデータマネージメントにおける大きな変化は、広告業界にも(特にデジタル領域において)大きな影響を与えることとなる。サイト内ではクッキー取得を同意するかしないか問わなければならなくなると、クッキーを取得できないブラウザのPVカウントにも影響する。当然、リタゲや位置情報による広告配信は大打撃を受けることになるだろう。

 リスティングの費用対効果の頭打ちによって大きく市場を拡大したリタゲ広告ではあるが、今度はそれに代わって「指名検索」を得るためのコミュニケーション施策が幅広く追及されるだろう。


② テレビ広告の反転増加  

~オンライン&データによる枠選定で蘇るテレビCM少量投下需要とデジタル連動~

 リタゲに限らず、ターゲティング手法全般にプライバシー法の影響がおきる。そうなると、「指名検索」を促す広告をしてテレビCMが改めて注目されるだろう。ただそこには従来の番組やスポットのような買い付け手法ではなく、1本1本買い付けるASSのような買い付け手法に行くことになる可能性が高い。
 ベムは従来から「テレビで認知させてネットで刈り取る」というよりは、「デジタルで素地をつくってテレビで刈り取れ」と主張している。テレビはやはりスラッガーなので、1番バッターを打たせるより、デジタルで1~3番を出塁させておいてテレビにホームランを打たせて4点とるほうが良い。
 また、ASSのような買い付け方はデータを基にターゲット含有や視聴質を吟味して1本1本を選定する。これは従来のスポット広告の空爆型投下というより、デジタルとの連動を最初から織り込んだ「ミドルファネル施策」としてのテレビ広告というポジションが確立できる。
 当然デジタルの知見とミドルファネル用のクリエイティブを開発できるエージェンシーにチャンスがあり、この領域を制するエージェンシーが2020年代に大きな成長をすることだろう。


③ テレビとデジタルの境目の消失


  現状、日本ではネットフリックスを見るデバイスは大型テレビ受像機が37%程度、スマホ、タブレットが60%近くとなっているが、アメリカではこれが大型テレビディスプレイが7割近い。オリンピックも契機をなって、4K・8K普及と同時にテレビの結線率も大きく伸長するはずで、オンラインでテレビ番組や映画を見る機会はリビングの大型ディスプレイが主流になるだろう。いわゆるリーンバック型の視聴態度の比率が高まる。またオンラインでのリニア配信を大型テレビ画面で視聴する機会が増加することになる。
 オンラインでもリニア放送型の視聴され、そこに挿入型CMチャンスも増える。そうなると、テレビCMとデジタルCMの境目は放送かオンラインかではあるものの、同じCM枠に放送と結線テレビにはアドレッサブルCMと差し分けられるようになるので、これらをテレビ広告かデジタル広告かを区分することはナンセンスかもしれない。
 まあ、ずいぶん前からテレビ受像機もデジタルデバイスではある。

 さて、リビングでは大型テレビディスプレイが結線され、放送でも配信でも視聴され、個室ではテレビではなくスマホやタブレットでテレビ放送の同時配信やオンデマンド配信を個々に視聴される。こうした形態が定着するだろう。そうなるとリビングで家族で視聴されるコンテンツやCMには、個別視聴とは別の価値が出てくる。
 リビングで複数の家族の構成員で視聴する「コ・ビューイング」は、テレビの個人単独視聴より、画面への注視率が高くなる。2人よりも3人の方がより注視率は高い。つまりより大勢で視聴すればするほど画面へよりコミットするので、こうした視聴形態に価値があるということだ。昔の「お茶の間」視聴はまさに画面にみんな見入っていた訳で、現代にこうした状況を再現できるか番組の質にかかっている。
 ベムが持っているデータでも番組によってこのコ・ビューイング率に大きな違いがある。世帯視聴率はさほどではないが個人全体視聴率が高い番組はいい番組(いい視聴質の番組)となる。

 「個の時代」への対応は限界点を迎える。十人十色は一人十色にも百色にもなり、ただ人を特定するだけではモードになる(触発する)タイミングに合わせることも難しくなった。家族なり、誰かと一緒に見るオケージョンにフォーカスした方がよさそうだ。

 また、ベムの会社(デジタルインテリジェンス)での調査データでは、高齢層はCM接触頻度(フリークエンシー)が高くても認知率が上がらず、若年層では少ないフリークエンシーでも一定以上の認知が取れている。これはもうフリークエンシーの理論は崩壊しており、ターゲットリーチのコントロールとクリエイティブのパフォーマンスを上げることがより求められるだろう。従来なかった視聴データが、到達実態や視聴実態を詳らかにする。データによる効果検証(クリエイティブを含む)と改善は2020年代大きく進むだろう。


④ 日本版DNVBの台頭  NPO的小さなブランド支援と深いデータ

Digitally Native Vertical Brand については、http://g-yokai.com/2018/03/dnvb-1.php
と、http://g-yokai.com/2018/03/dinydnvbiab.php を読んで欲しい。ウォルマートが数年前から矢継ぎ早に買収してきたり、ジレットのシェアは奪い、ユニリーバが買収したり、P&GもDNVB買収に積極的になっていた。
このマーケティングモデルに関してベムは、これの日本型はどういうものになるのかと考えてきたが、①で書いた潮流によって、やはりプラットフォーマーの強さが改めて確認されることで、巨大プラットフォーマーとは全く違う消費者との繋がりをつくることが試行される中で、日本版DNVBが登場して来るかもしれない。

 そして、そこには日本的な事情が大いに影響するものになるだろう。
 日本の人口動態は極めて急激な人口減少に見舞われている。2019年の出生数が89万という現実は驚愕せざるを得ない。270万人いた団塊の世代の3分の1以下である。
こうした現象は少子高齢化での年金問題もさることながら、日本にある「いいものづくり」や「いいサービス」の継承者がいないことで消えていってしまっていることに改めて気づく。ベムは新しい価値の提案とともに、改めて「無くなりそうないいものやいいサービス」の生き残りをデジタル空間で支援するモデルの確立が待たれるところだと思う。
 
 クラウドファウンディングや本来のふるさと納税の思想は、日本版VBの支援することにブランドとの濃い繋がりを持つことに価値を感じる消費者によって、プラットフォーマーにはない関係づくりを目指すだろう。
 まずは消費者が「価値」を感じるブランドとの関わりがあることで、濃い個人データがトレードオフしてもらえる。そこには消費者がブランドから受ける「価値」だけではなく、消費者がブランドに与える「支援」が消費者にとっての「価値」となるモデルがどんどん現れると思う。
 
 DNVBに関しては米国IABが特集レポートをつくったくらいで、広告を核としたマーケティング産業に携わる者にとっても、無関心ではいられない注目のマーケティングモデルである。
 つまり、CCPAの影響によるターゲット広告などの減衰に代わる施策は、広告ではなく、新しいこうしたマーケティングモデル支援であったり、自社ビジネスとしてのブランド構築であったりするだろう。
 誠実なデータ取得同意は突き詰めると、消費者からの積極的なデータトレードオフにある。
 データをどう取得するかから思考するのではなく、どんな価値のあるカスターエクスペリエンスを創造するかから考える者が、2020年代のデータを制するだろう。

⑤ DX推進が進む企業、落ちこぼれる企業


  企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の核となるのは「教育」である。
 デジタルかつビジネスクリエイティブ発想ができる「カルチャー」と「スキル」を獲得することである。そのためには、まずはビジネスのプロセスにおけるデジタル化とは何かを発想し合い、試行するマインドセットを植え付けることだ。CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)の役割はこうした「教育」と「スキル開発」である。

 CDOというのはCOO、CFOクラスの強い権限が必要である。場合によってはCEOが兼任するか(CEOにデジタル知見が十分にあれば)、強い権限をCDOに与えなければならない。デジタル化は企業のバリューチェーンのすべてで行なわれなければならない。部門横断で推進するからには、各部門より強い権限が要る。
 そして、そのためにもまずはCEOのデジタル化への認識が最も重要である。昨年11月に「マーケティングのデジタル化5つの本質」という本を上梓した。是非経営層に読んで欲しい。

 DX推進に関しては、成功する企業には下記の3つのタイプが出てくるだろう。

・個人情報ではないデータで成功する企業、
・「紙芝居モデル」で成功する企業、
・泥臭いアナログ施策(のプロセスをデジタル化して)で勝機を得る企業

  *紙芝居モデルとは、紙芝居そのものは無償だが、駄菓子や水飴で商売するようにメディア利用やコンテンツで関係を築き、別のビジネスで回収するモデル


⑥ デジタルメディアでの「動機づけ」のコミュニケーション機会拡大

ネット世界では関心が顕在化することで、情報接触の機会が格段に増える。しかしながら欲しい情報が明確でない、または漠然と情報空間を散策している場合は、いわゆる「動機づけ」してくれることは稀かもしれない。
 書店を覗くのが好きだという人は、意識していない関心事に出会うことを求めているのだろう。
 従来のリコメンドは基本協調フィルタリングで、関心事を示すことで「他の人はこれも観てますよ」というリコメンドでしかないので、「無意識の関心事」に出会うことはままならない。これまでネット空間はリアル空間のメタファーにことごとく失敗している(セカンドライフしかりである)。
 リアル空間に模すことの最大の利点は書店のような「意識していない関心事との出会い」だろう。

予期しない出会い、あるいはテーマを動機づけるという、その昔特に雑誌が果たしてきた役割を、デジタル環境が果たすことができる時代になるかもしれない。
手段としてのAIやVRに注目するというより、「動機づけ」のコンテンツに対するマーケティング的「価値」に注目されるだろう。

          
⑦ 電博CA 三大広告会社体制確立とマーケティング支援サービスの構造変化
     
  2019年はネット広告専業代理店の伸長が止まった年として、後に記録されるだろう。
 そして2020年はテレビを中心としたマス広告、CPAを追求してきたネット広告という2分化した(発注者もエージェンシーも二つに分かれた)状況が終わり、マスをデジタルが吸収し始める年となるだろう。③に書いたようにテレビとデジタルの融合というか、境目がなくなり、分けて考えることがナンセンスになる。
 そもそもテレビもデジタルデバイスだし、新聞、雑誌、チラシ、OOH、ダイレクトメールなどもそのプロセスのデジタル化が進み、デジタル施策との連動は当然のこととなるだろう。
  デジタル施策を中核にしてマスやリアル施策を展開するようになり、立体的なコミュニケーションプランニングと実行ができるエージェンシーが主役となる。

  こうした中でエージェンシーも、コアスキルの再設定を余儀なくされるのは言うまでもない。
  
  2014年にベムが書いた「広告ビジネス次の10年」には、ネット専業の業界シェアは2020年前後に縮小すると書いた。しかし当時はここまでネット広告におけるプラットフォーマーによる寡占化が進むとまでは考えていなかった。今後もYahoo、Google、FB、LINE、Twitter、Amazonの広告枠が市場のほとんどを占める状況は当面はあまり変わらないだろうが、広告以外のマーケティング施策に大きな市場が形成されるだろう。

 エージェンシーはDNVB支援やブランド事業者への資本業務提携などによって、スキルを持つ人財の囲い込みに走るだろう。こうしたことに対応できる経営のスピードと社員のセンスが決め手になるように思う。
 
 基本、電通グループ、博報堂グループ、CAグループの3大エージェンシー体制は2020年代も続くだろうが、新たなブランド開発に事業者としても参入できるスピリットとセンスにおいてサイバーエージェントに勝機が出てくるかもしれない。
 エージェンシーはフロント(従来営業と呼んでいる)のスキル改革と、企業のインハウスへの人材供給でどこまで収益性が確保できるかが課題となるだろう。
 日本ではまだまだ広告主側にマーケティングスキルやメソッドが乏しい。
 
 ビジネスに成果が出ないとエージェンシー機能も評価されない時代は、事業者側のマーケタースキルとエージェンシー側のプランニング&オペレーションスキルがオーバーラップしていく必要がある。
 ブランド側であり、エージェンシーでもあることが新たなマーケティング支援集団になる可能性がある。

 
 さて、「業界人間ベム」は2008年にスタートして丸12年経ちましたが、今回の投稿をもってこのブログを閉じようと思います。長い間、皆さんありがとうございました。

 2020年1月1日からCCPA(カルフォルニア州消費者プライバシー法)が施行される。
日本の企業はGDPRでヨーロッパは個人情報扱いに厳しめで、アメリカは今まで結構野放図だから、その中庸で構えていればいいのではかと考えていたのではないだろうか。ところがいきなりカリフォルニア州の州法である意味GDPRよりも厳しいプライバシー保護法が出来てきた。許諾の取り方も流れで無理やり同意させるような手法は基本アウト、「許可なき覗き見(追跡)」を排除するために消費者にいくつかの権利を付与している。

日本で言えばタクシー広告でカメラによって男女などを見分けて広告素材を差し替えるなどの手法は、データはサーバーに送られていないとか、記録されないとかいう問題ではなく(そういうエクスキューズが書かれているが)カメラで乗車客を見定める行為そのものが「気持ち悪い」と感じられるのであればアウトの可能性大。

 カルフォルニアにつづいて各州(ニューヨーク州も)でも同様な法案が出てきていて、いずれもCCPAよりもずっと厳しい内容だ。あわててアメリカの商工会議所のような団体が、今のCCPAベースで連邦法を作ってくれと嘆願する署名まで出した。

 CCPA施行から日本にも来る大きな潮流として踏まえておきたいのは、これがリーガルの側面というよりも企業の「姿勢」や「振る舞い」の問題であることだ。「そもそも気持ちが悪いと思われるようなことはしない」「同意をとる行為も誠実に行う」・・・、個人情報の取り扱いに対する姿勢は、企業として環境・社会・経済のサステナビリティへの取り組みと同じレベルで問われるだろう。
 これは本質的に経営マターであり、現場や法務が法律やガイドラインにどう対応するかという次元の問題ではない。

 そしてこの潮流は2020年日本のネット広告業界を直撃するだろう。

公正取引委員会もクッキーや位置情報を使うことに関して問題を提起している。公取がこの問題に入ってきたということは、法的に個人情報保護法だけだったところに独占禁止法も加わったということだ。これは当然巨大プラットフォーマーをターゲットに公取がクッキーや位置情報使用に制限をかけようとしているのだが、結局IDと消費者にとって必要で欠かすことのできない、習慣(癖)になってしまっているサービスで囲い込んでいるプラットフォーマーはびくともせず、サードパーティの広告事業者やクッキーを使ってリターゲティング広告をしている普通の広告主がダメージを受けたり、制限をかけられる結果になるだろう。
 ツイッターも先日、一部ターゲティング広告を配信しない方針を打ち出している。ネット広告でクッキーを使ったターゲティング広告、スマホの位置情報を使ったターゲティング広告などは相当厳しくなる可能性がある。

 こうしたネット広告需要はかなりテレビ広告に返るようになるだろう。
しかし、ターゲティング広告需要なので、ほとんどターゲティングできない従来のスポット広告に戻るのではなく、ASSのようなデータで枠選定ができる買い付け手法に返っていくはずである。

 また、これらの市場は広告以外に転じる可能性が大きい。

 そもそも新たなマーケティングモデルに移行する流れも出来ると思う。DNVBのような対象が少なくてもブランドへの深い関与と信頼で、むしろ消費者側から濃いデータもトレードオフしてくれる「価値」の提供を前提とするサービスが試行されるだろう。

 単にクッキーや位置情報を使ったターゲティング広告がやりにくくなるという次元の問題ではなく、巨大プラットフォーマーとは違う消費者との繋がり方を考える時代となった。

 大したデータでもないのに「データを所有しているから、なにかマネタイズできないか」というような議論から早く脱却して本質論に向き合うべきである。
 
 企業にとって価値あるものはデータではなく顧客である。カスタマーエクスペリエンスの最適化のために、「顧客にとってより価値のあるサービスとは?」を考えるべきで、データはその手段に過ぎない。「データの活用」は目的ではない。


 ベムは学生のころからバンドを組んでいたが、今でも高校時代、大学時代のバンド仲間とは親友として付き合っている。社会人でのバンドは実に30年を超えて続いている。
長く続く秘訣は、各自がやりたい曲を主張しないということだが、それが成立しているのはバンドメンバーに「好きじゃないもの」が共通しているからだ。「好きなものはそれぞれだが、好きじゃない音楽は一緒」という不思議な共通性が長く続いた要因である。

 また、ベムが会社をつくるときしっかり定義(意識)したのは、やることを決めるというより、やらないことを決めることだ。やらないことを決めることの方が、やることを決めることより、有り様を決定づけることがある。
 
 さて、なんでこんな話をしたかというと、「好きじゃないことが共通」とか「やらないことを決める」とかと一緒で、ターゲティングの考え方に、「対象としない相手を決める」という除外(Exclusion)のターゲティング発想があり、これが結構重要な考え方になるということだ。

 ネット専業系がCPAに準拠した効率論での絞り込みに奔走してきた。一方で、ブランディング目的でしかもデジタルターゲティング活用するという領域が大きくなってきている。デジタルだから細かくターゲティングできるのだが、コンバージョンコストの効率を高めるための絞り込み発想を、ここに応用するのは間違い。
 
 そもそもデジタル広告は広告を配信していると同時に調査しているようなもので、ベムが昔から言っている「反応した人がターゲット」という考え方を実現する広告手法である。よくマーケティング領域のデータ活用を想定するときに、1stパーティ、2ndパーティ、3rdパーティデータともに、もうひとつ「広告配信結果データ」の活用が意外にされていないことに気づく。
 やたらとセグメントをかけてしまい、外したのか、外してないのか分からないのでは、デジタル配信している意味がない。
 見込み客を発見する魚群探知機である「デジタル広告配信」の機能を発揮させるためにも、まずはオールターゲットもあるかもしれないが、今時無駄打ちをお薦めするわけにもいかない。そのためにも、当てない対象を定義することは重要である。

 また、ネット専業系であれば「コンバージョンからの逆引き(拡張)発想」はあるかもしれないが、「買った人」からの拡張だけではだめで、買わなかった人に(なぜ買わなかったを突き止めて)メッセージする発想が必要だ。買った人だけをデータソースに拡張すると現状追認型でしかなく、新たな顧客獲得や、新たな顧客層を創造することはできない。
 いわゆるスモールマスを発見するにも、その各々のインサイト発見にもデジタルは機能するだろうが、そのためにもまだ見えていない対象者にも何かしらの情報を当てて、その反応をトラックすることが必要だろう。

 そのあたりが「除外のターゲティング」(対象としない人を定義する)ことをおススメする理由だ。

 この1~3月期は、いわゆるネット専業系が苦戦している。一方電博のネットメディアは堅調のようだ。(特に博報堂は好調のようだ)
 今回はこの傾向を分析してみる。

従来、マスメディア宣伝部とマス広告主でもネット広告を買い付けるダイレクトマーケティング部門は二分されていて、ネット専業系は後者にと棲み分けていたところもあった。しかし、ブランディング目的でのデジタル広告市場も大きく伸長するばかりでなく、テレビ×デジタルの統合戦略がやっと本格的になってきた。
 ブランディング広告とはいえ、「売り」に繋がっているかは厳しく問われるのは当然だ。テレビ広告がそれだけでは「売り」をつくる力が落ちているという議論は、ずいぶんされてきたと思う。デジタル連携がその答えになるかどうかを今試していない広告主はかなり遅れていると言わざるを得ない。

 ベムの理論は、ユーザーの文脈でコミュニケーションが成立している「デジタル」とブランドの文脈でプッシュされる「テレビ」とを役割を分担し、双方の接触を促すことで「売り」に繋がる力を創出しようというものだ。ユーザー文脈でコミュニケーションするデジタルにはブランドを「自分事化」させること、テレビはそのブランドが「社会事化」しているというパーセプションを与えることである。
テレビCMの一番のディスアドバンテージは、メッセージを特化するとネガティブな反応を起こす人にも当たってしまうこと、逆にデジタルターゲティングのアドバンテージは「当てたい人に当てられる」ことよりむしろ「当てたくない人には当てずに済む」ことである。ということは特化したコミュニケーション、つまりその人の文脈に合ったメッセージを受け入れるだろう対象者にだけデジタルで配信し分け、一方テレビCMでは「テレビでもやっているブランド(皆が周知しているブランド)であるということに意味がある。テレビでもやっていることが購買行動の背中を押すことになる。従来の「テレビで認知させ、ネットで刈り取る」のではなく、「デジタルで素地をつくって、テレビで刈り取る」のである。


 さて、主題に戻ろう。1~3月期にネット専業が苦戦して、レガシー代理店が健闘したのは、ブランディングコミュニケーションの中核を担っているテレビCMクリエイティブをおさえている電博が、テレビ×デジタル統合戦略のなかでデジタル広告の受注も果たしているのではないかと思う。
 一方、ネット専業は、いわゆるCPA需要に若干頭打ち感が出てきたことと、ブランド広告主のテレビ×デジタルに対してメッセージ開発で電博の遅れをとっているがために、この領域での受注に至っていないのかもしれない。

 これは、ベムも以前ブログに書いたが、ミドルファネルをめぐる攻防が始まったことを意味する。その初戦は、空爆のテレビ広告クリエイティブを担っているレガシー代理店が、そこからミドルファネルに降りてきてデジタル扱いも手に入れることで勝利しているというところか・・・。

 たしかにこちらの方が初戦では有利だろう。比較的楽に落とし込める。


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しかし、このままずっとこの優位が続くかは少し議論だ。

 最終的に購買した、あるいは他ブランドを選んだ、その理由に迫れるのは、購買時点に近いポイントでのデータを持つ者であり、そこから押し上げる「ミドルファネルにおけるターゲット文脈ごとのメッセージ開発」が非常に重要になるだろう。
 また、買った人のシェアではじめて認知する人のパーセプションフローを設計して開発するメッセージなど「デジタル領域を起点とする強み」もある。

 ファネルの上から降りるか、下から押し上げるか・・・

 押し上げる方が、力が要るだろうが、下から逆引きする、「買う理由」から迫るミドルファネルのコミュニケーション開発とデジタル配信設計が本当の勝負所になる。

 ここに「エージェンシーの本丸のデジタル化」が絡むだろう。

 面白くなってきた。

 いくつかの秘策はある。 ネット専業も頑張れ! 

「データドリブン・・・」というワードのには、ビッグデータが何でも解決してくれる
という幻想が含まれている。

データという材料をインプット側だけで語る人たちがいかに多いか・・・。

データはマーケティングの米ではあるが、炊かないと食えないし、料理しないと価値がない。
データをインフォーメーション化し、それをインテリジェンス化してこその
マーケティング活用となるし、そもそもどんなマーケティング施策を最適化するか
どんなアイディアや判断を生むために、データを使うかという
アウトプット側からデータ使いをプロデュースする人材がいないと全く成果はでない。

だから、データドリブンマーケティングというのは机上の空論で

施策ドリブンでデータを使いこなすマーケティングといわないといけない。

そこで重要なのは、こうした施策(アウトプット)側からデータ使いを
プロデュースするスキルセットの定義と育成である。

ベムも自分の会社で、大会社のマーケティングダッシュボードを構築させてもらった
ことがあるが、重要なのは施策ドリブンでどんなデータを引っ張ってきて
どんな分析をかけ、どんな視覚化(表現)するか
に留まらず、

一番重要なのは、使い出してからになる。

月に一回毎月、ダッシュボードを活用しての施策の最適化は実際にどう行われたか
どんな判断やアイディアが生まれたかを
マーケターのメンバーたちが共有するためのワークショップを行い、
それをファシリテートした。

そこで、もっとどんな「データの見える化」が出来るのでは?とか
データの質や分析法を改善するというPDCAが繰り返されないと

だいたいのダッシュボードは半年もたずに使われなくなる。

その典型が、まずは、企業内にあるデータをとにかく繋ぎましょう!みたいな
ところから始まる、全くアウトプットを考えないやり方だ。

「顧客のデータがバラバラだから統合しましょう!」

「CRMを再構築しましょう!」

は一見聞こえはいいが、では「日本でデータ統合で成功した事例を上げてください」と

云われてちゃんと答えられる人ってあまりいないのでは・・・。

何でもかんでもデータを統合するとデータは淀む

統合して淀ませて、改めてクレンジングしても、クリアはデータにならなかったり、
そもそもその苦労は何でしてるのかという話にもなる。

特定の施策を最適化するため、あるいはある方向感で新たな施策を発見するために

データをどう活用することができるのかと考えれば、
始めからいらないデータをみんな繋ぎこむような愚かなことにはならない。

やはり重要なのは

施策(アウトプット)側からデータ使いを
プロデュースするスキルセットの定義と育成である。

さて、こちらはデジタルインテリジェンスNYからグローバル版です。予測というよりは、既に起きていることで、非常に重要な事象をもって2019年を占うものです。

① エージェンシー・ランキングの大変動

■世界一の広告グループだったWPPの時価総額が、半分に
マーティン・ソレル前CEOが辞任した英WPPは、2017年1月時点で3.4兆円規模だった時価総額が2018年12月には約半分以下になってしまった。12月7日時点(※1)でWPP(NYSE)の時価総額は1.497兆円(株価USD 52.09)。これに対して同日の電通(東証)は時価総額は1.476兆円(株価5,120円)で、ほぼ同サイズだ。米Omnicom(NYSE)は1.881兆円(株価USD 75.50)で一位に逆転した。電通は仏Publicisと並ぶ二位グループである。※同日のUSD TTM 112.94円にて計算

 2019年はこの業界内部のランキングの変化に注目しておく必要がある。Adageが毎年集計する「Agency Report」では、2015年ごろから「Deloitte」「Accenture」「PwC」に代表されるコンサルティング系企業が突如ランキング上位に現れ、大きなトレンドとして注目されたのは周知の通り。

■AdobeやSalesforceがWPPや電通の上位に?
 このトレンドがさらに進化し「B2Bマーケティング・オートメーション(テクノロジー)」分野の企業が、マーケティング・エージェンシーとして上位にランクインする可能性がある。たとえばAdobe、IBM、Oracle、Salesforce、SAP等の「テック巨人企業」たちが、WPPや電通を抜き去ってランキングで上位にランクインするイメージだ。


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「Adobe」は2018年9月に「Marketo」を約5,200億円(47.5億ドル)で買収すると発表し、マーケティング業界を驚かせた。この金額は2012年に電通が巨大買収した「Aegis」の約4,000億円(当時)を上回るサイズである。Adobeのこの投資が「すごい体力と行動だ」と流れを認識している人は、電通の上層部を除いて何人いるだろうか。

 これまでのマーケティング・エージェンシー領域におけるM&Aは、WPPや電通をはじめとした広告&マーケティング出身企業が「のし上がって」デジタル・テクノロジー企業を飲み込み、巨大化するパターンであった。しかし今後は、逆に巨大なAdobeやOracleといったテクノロジー企業が、M&Aを経て総合サービス化へ「降りてくる」動きには注目だ(図1)。ちなみにAdobeの1社の企業価値は11.2兆円、Salesforceは9.9兆円、Oracleは17.4兆円だが、これは広告ホールディングス5社(WPP/Omnicom/Publicis/IPG/電通)を「合算した」企業価値(6.9兆円)よりもはるかに大きい。※2018年12月22日時点


② 広告会社の事業拡大の鍵は、「Googleのインフラ」と、教育

昨年は「Programmatic-As-A-Service」のコンセプトに遅れをとっていたWPPが、大急ぎで社内改革を行った。100年以上の歴史を持つ「Y&R」をデジタルエージェンシーの「VML」と統合させて「VMLY&R」と改称した。そして同じく100年以上の歴史を持つ「J.Walter Thompson(JWT)」をデジタルエージェンシーの「Wunderman」と統合して「Wunderman Thompson」を作った。「JWT」や「ヤング・アンド・ルビカム」という、マディソン・アベニューの代名詞が広告の歴史から消える年となった。

■マーティン・ソレル氏の方向転換
再編に苦悩するWPPを横目にWPPを離脱したマーティンソ・レル氏は欧州に上場する「S4 Capital」に資本参加して広告・マーケティング業界に復活を果たしている。ソレル氏はS4 Capitalを母体にして2018年には2社買収した。第一号の企業は「MediaMonks」という欧州のクリエイティブ&デジタル・エージェンシーで、クライアントには「Uber」「Snapchat」「Mercedes Benz」「Google」「Adidas」等、デジタル起点ばかりだ。2社目の「MightyHive」も「Sprint」「SAP」「Sephora」「Nationwide保険」「Carlsberg」「Bayer」等で、同じくOne-to-oneマーケティングを行う企業がクライアントだ。

これは単なる「デジタル・エージェンシー」の買収、ではない。2社に共通するのは「Google Marketing Platform(DoubleClickから改名)」の全てのツール・サービスに関して「Certified Partner企業」としてハンドルすることが共通する。ソレル氏はWPP時代にGoogleのことを「フレネミー(フレンド+敵の意味)」と形容していたが、S4 Capitalでは一転して、「自分が好むか好まないかに関係なく、トレンドの流れに従うだけだ」と発言している。いわば「Googleと共に次の時代を作る」と決めたのだ(図2)。

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 たとえば2社目に買収したMightyHiveは、クライアントの「インハウス化、お手伝い教育」を6ヶ月〜2年のスパンでサービスを掲げている(ベム予言の「教育」ビジネスは、欧米ではすでにマネタイズされている)。「インハウス化を手伝う」ということは、自社が提供するサービスが素晴らしければ素晴らしいほど、いずれインハウス化されたクライアント企業側がサービスを必要としなくなるようなサービスという事である。デスクトップ、モバイル、動画、音声の領域だけでなく、「コネクテッドTV」も一元管理で運営できる体制を提供する。

参考日本語訳
https://digiday.jp/agencies/mightyhive-in-house-agencies-agency-brands/


■キーワード「One P&L」の意味すること
 ソレル氏の動きは、エージェンシー・グループから見た大手テック企業に対する次の一手を示している。デジタル・プラットフォームでのメディア「配信」のトレーディングデスクだけでなく、クリエイティブとの「タンデム」状態の組織を作る。ソレル氏のキーワードは「One P&L」。これは「分社化ではなく、一つの財務(P&L)でサービス提供できる組織」を目指すものだ。これまでの主流であった、メディア扱い部門をクリエイティブ・エージェンシーから切り離して、メディア部門を束ねる方式と比べ、ま逆の方式だ。実は電通やPublicisは数年前からこの「One」を掲げており、今年のトレンドの大きな部分を占める合言葉になる。たとえば日本国内のデジタル・トレーディングデスクが、どのクリエイティブ・ユニットとタンデムになるか。あるいは博報堂DYメディアパートナーズが「メディア事業」で単独で居続けられるか等、日本への影響は大きい。


③ 景気の波がユニコーン企業を襲う

読者が心の中で「大きな景気の津波が、すぐそこまで迫っている」と自覚しているならば、物見草はキケンと察し、いち早く自社ビジネスの高台を目指す対策を取ることだ。「津波」と表現するほどの出来事が、いかに想像を絶する威力を持っているか。昨年のこのブログ新年の投稿で、「景気の腰折れ」を予告したことが的中したが、肝心なのは「次にどうするか」だ。

昨年の投稿:http://g-yokai.com/2018/01/mad-man2018.php

今年はこの余波がさらに進む。Appleの年初「アップル・ショック」は単一企業の結果ではなく、中国市場とリンクした世界市場の健康状態の一端が見えた形だ。過去およそ10年間、景気の津波というものを見たことがない平和心理と、「アルゴリズム」で制覇されたマーケットが、それぞれが極端に反応し合って動くことになる。経済各論はここでは省くが、現在の「バブル量」は「リーマンショック前(2007年)」や「ドットコムバブル時(2000年)」の比ではない。景気の「波」が下方に動いて、マーケティング&広告業界の中で「真っ先」に影響が出るのは、「マイナス・キャッシュフロー」の事業だ。

■FAANGを始めとした、注目を浴びている事業の下落幅を認識すること
サブスクリプション事業を含めた大半のスタートアップ事業の特性は、売上は「うなぎ登り」で成長しているが、営業利益となると赤字の止血どころか、赤字幅が年々拡大しているタイプが大半。あのNetflixでもフリー・キャッシュ・フローはマイナス額を増大しつづけている。昨年後半のFAANG企業らの下落(2018年の最高値〜12月24日の差)が話題になったが、下落幅は下記のとおりである。

Facebook -43%, Apple -37%, Amazon -35%, Netflix -45%, Alphabet -24%

これらはまだマシな方で、ユニコーンとしてIPOしたばかりの企業は、生き延びる体力を持っていなく、下落率はさらに激しい。下記はマーケティング業界ではおなじみの欧米企業のうち、2017〜18年にIPOを果たした企業の2018年株価の最高値〜12月24日の下落率である。

Snapchat -82%, Sonos -68%, Roku -65%, Blue Apron -62%, Zuora -56%, Yext -52%, Dropbox -52%, Spotify -45%,

さらにこれらの氷山の下に眠るIPO待ちのユニコーン(Uber、Airbnb, WeWork等)や、それ以外のスタートアップの財務状況は容易に想像できるだろう。今年はさらにこの傾向に拍車がかかる。

 気をつけたいのは「景気の崩れ」という時期は、「一瞬」や「一直線」ではなく、12〜18ヶ月程のダラダラとした上がったり下がったり繰り返しながら降りていく事だ。これが「茹でガエル」の心理を作り、危機感が感じられなくなる。昨年10月頭に付けたピークからまだ2ヶ月しか経過していない。今年は要注意の「期間」であり、自社の「高台」はどこか確認しておく必要がある。

④ テレビCMが「テレビ広告」として買われる最後の年(米国)

このタイトルは既存のテレビ番組やテレビCMが無くなるという意味ではなく、放送局が手売りでCM販売するよりも、「プログラマティック・ダイレクト」でのネット出稿CMを含めて、「これもテレビCM」と呼ばれる販売手法に拡大するという意味だ。

「コネクテッドTV」という単語が日本ではまだ浸透していないが、米国でのデジタル上でのマーケティングにおいては「主役」の単語である。コネクテッドTVは、マーケティング業界における欧米と日本での浸透度のギャップが最も大きい分野なので、今年はこの進化を「対岸の火事」ではなく日本でも注意しておきたい。

■コネクテッドTVを前提とした指標への変化
「コネクテッドTV」の意味は、ネットに繋がる「スマートTV」を含み、「ゲームコンソール」や「Chrome TV」、「Apple TV」、「Amazon Fire Stick」等を介してネットに接続可能なテレビ画面全てを含む総称だ。米国ではコネクテッドTV世帯は全体の約8割を超え、日本でも実はすでに約半数はこの状態の世帯が広がっていると考えられる。今年1月にラスベガスで開催されるCESショーと、毎年5月から始まるテレビ局による「アップフロント」と呼ばれるCM枠販売の期間中でも、今年はこの言葉とそのビジネスが一気に拡大するのは確実で、それをきっかけに日本にもようやく浸透が始まる時期だ。

米国の場合、たとえば視聴者は壁掛けの50インチテレビで映像を見ていても、テレビ・チャンネル局の放映コンテンツを「テレビ電波orテレビケーブル回線」経由ではなく、「ネット」経由で見ている「コードカッター」が急増している。2017年で2,700万世帯、2018年で、3,300万世帯に増えて、これは全米一億弱の世帯の32%を占めている。

ネット経由で「TV番組&CM」が視聴されているのであれば、TVCMは技術的にはターゲット別にアドレサブル配信が可能になる。そうなると、いよいよネット上で使う指標を「TV画面」に応用する必要(統一する必要)がでてくる(前出ベムの指摘がこの部分。TV画面コンテンツに「50%ピクセル表示」をビューアブル・カウントするのではなく、100%表示が標準となる)。

■「目と耳」を持つテレビモニターとのコミュニケーション
この状況が前提で今年はさらに進む。「Samsung」や「LG」の韓国製を筆頭とした、今年米国で普及する新型のテレビモニター(画面スクリーン)は、すでに「目と耳」を標準搭載している(カメラと音声認識を搭載している)。米国でのこれらの普及は、今年テレコム企業が一気に普及させる「5G」のWiFiスピードと共に、威力を実験するのが今年。日本製のモニターも同じく東京オリンピック用に「目と耳」は標準搭載されて普及する。「テレビ画面」が視聴者側からの入力端末として普及する年になる。

テレビモニターは単なる番組や広告をPush表示をするためだけの端末ではなくなり、いわば「目を持つアレクサ」に変身し、家庭の「御用聞き」を担う。オプトインで契約する視聴者には、リモコン不要の音声コマンドで画面やコンテンツ情報を操作できることが前提とするビジネスが増える。これは企業側にとっては、個人を特定した視聴動向データの入手を越えて、生体認証データまでもが蓄積される。こうなるとテレビ広告の役割が変わり、「露出(Push)」だけを基準にした、一方通行のGRPが取引通貨としては考えにくい。

 視聴者とOne-to-Oneの会話(音声&表情のやりとり)をするテレビ画面が増えて、そのインフラの上で番組コンテンツやCMをプログラマティックに(アドレサブルに)コントロールする。そんな企業とのパイプを太くするコミュニケーションの形。米国の今年は来年に向けて「テレビCMの買い付け」、という動作が時代錯誤だ、という放映事例が溢れる年になる。

⑤ コンテンツ・ビジネスによる「紙芝居モデル」が広がる

今年は米国でのコンテンツ放映ビジネスに巨額資本が動く年である。昨年「AT&T」が「Time Warner」買収を完了し、今年はサブスクリプション型の放映サービスの開始が予定されている。同じく「Disney」も参入し、そしてついに「Apple」も予定がささやかれている。大手・王者による「プレミアム・コンテンツ」の配信が最も花開く年になる。「TikTok」や「YouTuber」等によるソーシャル(一般人)コンテンツだけに目を奪われず、1本あたりの制作が巨大なプロ・コンテンツがマネタイズに注目する必要がある。

ところがこれらのプレミアム映像コンテンツの事業(サブスクリプション収益型や広告収益型を含む)において、キャッシュフローが黒字化している事業は、現状ほんとんど見当たらない。「いつか、どこかで」回収する事を想定した、未来のモデル作りが求められている。その解決方法の一つとして筆者が例えているのが「紙芝居事業モデル」だ。「紙芝居」は、視聴に集まった集まった子供たちに、飴や駄菓子を販売することで収益をあげるモデルであった。現在のオンライン上に登場する映像コンテンツは、人の目をひきつけているが、コンテンツ・コストの収益回収に結びついていない。どこかで飴が必要なビジネス・モデルといえる。

では何を飴として、コンテンツ・ビジネスが「紙芝居モデル」をマネタイズ回収するのか。「視聴データ」の蓄積だけでは、サブスクリプション課金や広告販売課金では元が取れない。言い換えれば、視聴者のさらにどの他のデータをオプトインで預かってマネタイズをするのか、である。

■「視聴データ」よりも「重み」のあるデータを求めて
コンテンツという紙芝居で集まってきたアカウントから、視聴データよりも価値のある(重みのある)データをオプトインで預かる(共有する)事が飴となる。重みのあるデータの典型は「人体にまつわるデータ」である(生体認証、健康情報からDNAに至るまで)。これに続くのがファイナンス・金融にまつわるデータ」だ(決済口座情報、保険・債権情報 等)。

わかりやすい架空の例として「コンテンツ視聴アカウントを持つ人は、処方箋薬が宅配されるサービス」と表現してみよう。実際にAmazonは昨年、「PillPack」という処方箋薬の宅配スタートアップを約1,100億円(10億ドル)で買収している。さらにAmazonは銀行最大手の「Chase」と、保険最大手の「GEICO」を傘下に持つウォーレン・バフェットの「Berkshire Hathaway」と3社で手を組み、社員だけ向けの格安保険事業を開発中だ。

日本でもその予兆が昨年末発表されている。日経新聞が12月25日付けで『処方薬、自宅で入手可能に 在宅医療を後押し 20年度めど、スマホで服薬指導』と報じた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39325800U8A221C1MM8000/


厚生省が緩和(解禁)の方向を示したのだが、これを映像コンテンツと結びつけて「紙芝居モデル」が発想できるかどうか。政府規制が解禁になったので、参入障壁が下がり、資金力だけの勝負土俵に移った。処方箋薬を含む医療産業は「高成長かつドル箱」なのは理解できるだろう。たとえばAbemaTVが健康事業を立ち上げ、視聴登録者にクスリやサプリの格安宅配を行っても不思議でなくなる日は近い。

今年も年初恒例の業界予測です。

①デジタル化に向けて教育・人材育成への投資本格化

デジタル変革の核心は人材である。企業のマーケティングの本丸では、ここ何年かはデジタルに関して変なコンプレックス(つまりデジタルは専門性が高く、自分たちでは対応できないのでは?という)があって、デジタル専門人材を外部から招聘したりしてきた。しかし、概してそうしてつくった外人部隊のデジタル部門は、Webやアプリといった施策そのものがデジタルなものに対応するだけで、マーケティングの幹の部分にはタッチできない構造をつくってしまった。
 枝葉の部分をデジタルで化粧を施すだけなので、かえって本当のデジタル化を阻害してしまった。
 ベムが「出島(デジタルマーケティング本部、略してデジマ)」と呼ぶのは、江戸城本丸はそのままで、「デジタルというエイリアンと対峙するのは出島で」いう状況を指している。
 肝心なことは、その企業のビジネスロジックに精通して、社内に声が通る(周りをしっかり動かすことができる)人がデジタル化することである。
 人材難が甚だしく、採用市場に頼ることが無理である今、「教育」こそが最大のテーマになるだろう。
 自分たちのビジネスを十二分に理解し、そのビジネスを実際に動かしている社内のキーマンに、デジタル化の本質を認識しもらい、効率化だけでなく、従来にない新しい価値を創造するために、ビジネスプロセスをデジタル化することを実践してもらうための素養を育てる教育が必要だ。
 2019年は社内人材への「デジタル教育」への投資が本格化する年になるだろう。そのためにも社長以下経営陣や幹部への「マーケティングのデジタル化の本質」とは何かを徹底して認識させる必要がある。
 

② TVCM枠オンライン取引本格化

2017年の予測で兆しが出ると書いた「TVCM枠のオンライン取引」は今年本格的に試される「オンライン取引元年」となるだろう。
昨年のラクスルのTVCMの発注システムの登場は、そのきっかけをつくったかもしれない。しかし、オンライン取引はテレビ局自身がシステムをつくることになるだろう。
 究極の取引形態は入札応札による価格形成によるものだが、今年はまだ定価ベースでスタートすることになる。
CM枠を買う側が「指し値」をするためには、その枠の買い手にとっての価値が評価できるデータが必要だ。1本1本買い付けるスタイルになるオンライン取引では、1本1本の枠の価値を個別に買い手が評価するためのデータである。
 個人視聴率はもちろん、視聴質(ビューアビリティやアテンション率、誰と誰で観ているかのコ・ビューイングなど)データも要求されるだろう。従来の「売り手のデータ」から「買い手のデータ」が流通することで、むしろパーコストは上がる。広告主も効果を買える。視聴者は様々なCMに接触するチャンスが広がる。テレビ局も広告主にも視聴者にもハッピーな状況になるはずである。

 
③ 広告費アロケーション最適化が活発に 広告主事業部が宣伝費・販促費・流通対策費などを統合して再配分する「テレビ×デジタル×リアル」アロケーションが試行される。

経営層にデジタル化によるマーケティングの構造変化が認識され出すと、デジタル時代のマーケティング投資の最適配分とはどういうことが理解されてくるだろう。
そうなると、テレビにいくら、デジタルにいくらとブランドマネージャーが事前に予算化したら、一切それを変えられないといったナンセンスな事前予算主義から脱するチャンスも出てくる。
 デジタル時代のアロケーションの本質は、「事前に最適なプランなどない」という考え方である。施策による「達成目標」が数値で設定され、「運用」で達成させるという発想である。マーケティングダッシュボードによって、リアルタイムで効果がかなり把握できるようになったからこそ、どこに出稿するかは流動的にリアルタイムに対応すべきである。これからの宣伝部はファンドマネージャー(効果がないものは損切りしてでも新たな枠を買って運用する)であるべきで、決められたプランをそのとおりに買い付けるだけなら購買部でしかない。
 最適化するには、どのメディアに張るかだけでなく、どのブランドを出すか、あるいはブランドの宣伝費・販促費などを統合した予算内での配分をどう最適化するかという本質論に拡大するだろう。
 
 またテレビ×デジタルのアロケーションを設定する以前に、全国でテレビスポット広告を展開するナショナルクライアントには、大きな課題がある。それはエリアアロケーションである。スポットの発注エリアごとに、ターゲットひとり当たりのコストが相当偏っていることに気付いている広告主は少ない。もちろん可処分所得や商品カバレッジ、販売量ほかの変数も最適配分のために必要だが、そうしたものを加味してもバランスが取れない場合が多い。デジタル広告のCPMは当然全国一律になっているので、テレビ×デジタルを最適にアロケーションするにはテレビのエリアアロケーションがまず必要で、その上で首都圏ならテレビ:デジタル=7:3でもいいが、北海道や四国はまだまだテレビが強いので9:1でいい・・・などの設計となる。その設計上も従来のテレビの指標GRPはエリアごとに母数の違う数値なので、視聴率を足し上げるGRPによるパーコストという指標ではなく、到達インプレッション数という絶対値をもって計算する必要がある。(ちなみに個人GRPをインプレッション数に変換することはデジタルインテリジェンスが特許を持つ「CMARC」のコアアイディアです。)

④ プレミアムなデジタル広告掲載面がレギュレーション化され、需要拡大

 アドベリフィケーションは話題になって久しい。2019年はその結果として、ヒューマニティ(人の目に触れているインプレッションか)とブランドセイフティを解決した広告掲載枠とはどんな在庫かが定義され、実際に商品化されることとなるだろう。ホワイトリストでプレミアムな枠が提唱され、それを標榜するメディア(パブリッシャー連合)などが立ち上げってくる。
 広告主にアドべリコストを負担させないで、メディア側が品質保証する枠が、ブランディング目的のデジタル広告枠としてテレビ×デジタルのアロケーション対象となるだろう。
 またプレミアムな広告枠とは、そもそも銘柄の良い広告主しか出稿されない枠とも言える。その意味で、まずプレミアム広告主で取りまとめた需要に、良質なパブリッシャー連合が枠を供給するというスタイルが出現するかもしれない。

⑤ デジタルのビューアビリティだけでなくテレビのビューアビリティを含めた「人の目に届いているインプレッション」を評価

 アメリカ業界団体であるMRC(Media Rating Council)は従来デジタル広告(ディスプレイ広告)のビューアビリティのレギュレーションを、「広告スペースの50%以上が静止画像で1秒、動画で2秒以上」としている。
 このビューアビリティにテレビCM側もどう定義するかが今年動き出す。
 ただテレビにもこうしたビューアビリティルールを適用しようとすると今のニールセンの分間測定では意味をなさず、秒間データを使わなければならない。またテレビではCMは画面にフルサイズで常に移っているので、デジタル側も50%以上では比較できないので、デジタル側も画面の100%としてからまずはOTTに転用してから、テレビ放送にも適用されていくだろう。
 今年2月にMRCに新たな発表がありそうだ。これをきっかけに、ブランディング広告におけるテレビとデジタルのビューアビリティ定義が統合的に指標化される可能性がある。
 デジタルインテリジェンスでは昨年「コレクトビュー」という概念(テレビとデジタルを双方ともビューアブルなインプレッションをもって評価する)を提唱しているが、テレビとデジタルもしっかり人の目に触れたインプレッションを測ってこそ、その効果(例えば購買)と広告投下量の相関が見える。広告のアロケーションをするにはこうした説明変数を整地化する必要がある。

 ベムはこの件に関しては日本もアメリカの動きを即追いかけることになると思う。

⑥ デジタル領域の特化型ソリューションサービス企業の横の連携進む。オーケストレーション機能が注目される。

 デジタル領域には、リスティングやデジタル動画やインフルエンサーマーケティングなど特化したソリューションが多くあり、専門性が高い故に広告主も直接こうしたソリューションベンダーと直接取引をしていることが多い。
 しかし、それらを統合的にコントロールするスキルが広告主側にあればいいが、なかなかプロデュースする人材がいないのは否めない。
 従来大手代理店がワンストップで対応すると標榜していたこうしたプロデュース能力は、代理店のフロントである営業がデジタル時代の専門性に全くついて行けず、ワンストップはほぼ否定された感がある。そこで、特化した複数のエキスパートの技量をコーディネートする、言ってみるとオーケストラの指揮をする機能が必要とされ、またそれが定義されるようになる。
こうしたことができる人材は極めて少ないが、出来る人材には多くのニーズが集まるだろう。

 「オーケストレーションとは何か」、また「どうやってオーケストレーションが出来る人材が育成されるか」が話題になり、多く議論されるだろう。

  
⑦ AIによるブランド横断型デジタル広告買い付け配信が試行される

  7つめは、現状少しづつ使われ始めている広告配信におけるAI活用が、AIでしか出来ない領域に到達するのが今年だろうということだ。
  広告配信の最適化は、最小単位である1インプレッションごとに行われる、この時、掲載面(コンテンツ)、オーディエンス、タイミング、ジオなどの加えて、そもそも当てるブランドやクリエイティブも変動的であることで、より最適化される。
 複数のブランドを抱えている企業は、バルクで良質な広告掲載面を買い付けておいて、この掲載面に、このタイミングで、このオーディエンスがアクセスしてきたらどのブランドのどんなメッセージの広告が配信されるのが最も効果的かを瞬時にAIが判断し配信、さらにブランドごと設定予算に割り振るという「人間技ではない」ことをAIがこなすことになるだろう。
 前述の④のプレミアムなブランディングのための広告枠が定義されると、こうした掲載面を最も効果的に使うAI配信が意識されるだろう。


番外 広告代理店のデジタル化展開予測

  広告ビジネスのデジタル化は、ネット広告の扱いに対応するレベルから本丸の「クリエイティブ」、「戦略プランニング」、「マス、リアルを含むトータルメディアプランニング」、「フルファネルへのコストアロケーションとコミュニケーション開発」のデジタル化、つまりアウトプットがデジタル施策でないものも、その開発プロセスをテクノロジーやデータを駆使してデジタル化するステージに来ている。

電通グループ、博報堂DYグループ、サイバーエージェントグループの3大代理店時代、各社はこの本丸のデジタル化ができるだろうか。電通・博報堂は伝統的なスキルの陳腐化をデジタル変革で打破することができるか、またサイバーはアウトプットがデジタルな施策に留まらず、トータルソリューション領域に踏み込めるか(もっともCAにその気があるかはベムには分からないが・・・)

まだまだ広告主側がマスとデジタルで対応セクションが分かれている場合が多い。マス広告宣伝部はブランディング、デジタル部門は刈り取り&CRMといった機能分化になってしまっている。
しかし、マーケティングのデジタル化による大きな変化のひとつは、いわゆるアバブ・ザ・ラインとビロウ・ザ・ラインの統合である。ブランディングを担う広告宣伝部門と、販促部門を別々に機能させることはナンセンスだ。従来IMCという発想でブランドマネージャーがマーケティング活動を統合的にみる考え方が定着しつつあるが、マーケティングのデジタル化は、この流れにさらにフルファネル(購買後のレピュテーション効果を含む)に統合的に(PR活動まで)かつ有機的に連携することが必須条件となる。
宣伝費・販促費・流通対策費など合算して(場合によってはR&D費も含め)マーケティングコストの配分を最適化することが求められる。

企業のデジタル化は、商品開発・製造・物流・営業・管理・人事など、広告販促領域以外もすべてのバリューチェーンにおいて起こる。
エージェンシーも企業のデジタル化をサポートする存在として、単に広告販促領域だけではなく、営業支援やR&DやHRに至るデジタル化支援サービスに広げるチャンスでもある。

「デジタル」とは「グローバル」とコインの裏表のようなものである。イージスというグローバルデジタルエージェンシーを傘下にもつ電通には、その両方を果たすための持ち駒が揃う。日本市場における広告ビジネスのデジタル化は、日本の広告主自身がイノベーティブでない以上、欧米のクライアントと共にビジネスとマーケティングのデジタル化を果たしている知見が応用できる電通グループの優位は変わらないだろう。

以前のエントリーにも書いたが、デジタルビジネスを推進するにはフロント(営業会社)が重要である。電通本体と電通デジタルが両方でフロントをとって、お互いにスタッフ機能を使う「両タスキ掛け」状態とすることが「本丸のデジタル化」を推進させるだろう。

一方、博報堂DYグループは、メディア会社のデジタル化はDACを吸収することで果たすことが出来るだろうが、博報堂本体のデジタル化にまだ手がついていないとお見受けする。(ベムにはアイディアがあるが)フロントに立つのは博報堂・大広・読広・アイレップとなる訳だが、リスティングに特化したアイレップ以外にもデジタルソリューション機能の水平拡大(M&Aによる編成)が必要だろう。つまりブランドエージェンシー博報堂のデジタル化と、フロントに立つ営業会社各社の再編は同義になるかもしれない。

サイバーエージェントは、グループとしてテレビ広告を出稿するクライアントとして、ある程度テレビ広告に関する知見を保有しているようだ。またメディア事業としてのAbemaTVが広告代理事業にテレビ×デジタルへの橋渡し機能をもつことになる。
ただ、当面テレビ予算をデジタル予算にシフトさせるという戦略には変わりがない。テレビだけでは「売り」までの機能不足をデジタルが補うのは当然だが、一方、デジタル施策もいつまでもネットのチャネルだけに閉じているのではエージェンシービジネスとして頭打ちとなるのは必然。デジタル側もテレビの力を借りないと成果を出すのが難しい。デジタルを起点としてミドルファネル施策にテレビの動員もかけ、テレビ×デジタル×リアルで設計できるかが、CAのエージェンシーとしての次のステージに行けるかどうかの試金石となるだろう。

 さて、最後にこのブログを読んでいただいている広告業界の若い人たちにベムからのアドバイス・・・。

 マーケティングのデジタル化で、様々な専門的知見を要する特化したソリューションに対応しないといけない今の時代、広告マンとして自分たちのスキルの核を何とすべきだろうか・・・。
 
広告マンとしての軸は今も変わらない。

「広告コミュニケーションの本質」を極めていくことである。

今でも我々のドメインはマーケティングとコミュニケーションがオーバーラップする部分において、コミュニケーション側を熟知しているからこそマーケターに提供できる知見にある。
 
 専門性の高いマーケティング手法は、最初は提供価値があっても、いずれは実践しているマーケターには敵わない。しかしコミュニケーション開発だけはマーケター側も自身でこなすのは至難な領域だ。
 
 ネットマーケティングが台頭してきてから、実は広告を知らない人たちが「広告」を語るようになった。CMを1本もつくったことがない人が「広告」を云々する変な時代だ。そういう「まがい物」に惑わされずに「広告コミュニケーション開発」をスキルの核にしてほしい。

 トラッドなエージェンシーが本丸の機能をどうデジタル化するかと同時に、いわゆるネット専業がどうブランドコミュニケーション領域にアプローチするかもベムは注目している。

 リスティングやリタゲなどいわゆる「刈り取り」に勢力を注ぎ込んできたネット専業代理店が、例えばテレビCMもつくり、デジタル動画広告もつくり、刈り取りの効果指標で評価するマス×リアル×デジタルを実現できるかである。

middle.gif

 この際、彼らがつくるCMはおそらく従来の空爆型(つまりファネルの一番上)ではない。刈り取りのすぐ上に当たるミドルファネルのコミュニケーション開発である。

 そこで、このミドルファネルに、デジタル動画と共にテレビCMをうまく使うことができるか大きなテーマだ。ミドルファネルはテレビCMではないのでは?と思う方もいるかもしれないが、効率論ばかりではなく、効果の絶対量を考えると、やはりテレビの到達力は別格で、コミュニケーションの内容、文脈、メディアプラン、デジタルやリアルとの連動次第で、ミドルファネルを購買行動に促す力が十分あると思う。

 そこは、「000%以上打たないと効果はありません」みたいな話ではなく、たとえCM1本の出稿でも個全で2.5%でも関東なら100万人のオーダーに達するので、その到達力、伝播力、即効性に注目すべきだと思う。
 ローカルでも、ローカルだからこそエリアのリテーラーと連動した施策が設計できるだろう。

 もしかすると、ライブ感のある「生コマ」的なアプローチが奏功するかもしれないが、イメージしているCMクリエイティブは従来のブランディング広告CMとは少し違うだろう。
一定以上関心があるターゲット向け、ある特定のタイミングにある人向け、ある特定のエリアにいる人向け・・・などなど、つくり込みに手間がかかるのは否めないが、テレビは労力を惜しまず、こうした需要を創造していかないと、パーコストを上げるチャンスどころか、デジタル広告にここの需要を持っていかれる。

 そのあとからの巻き返しは困難を極めるだろう。

 また逆に言えば、デジタルもミドルファネルをテレビと連動していかないと目に見える効果を得られないだろう。
 テレビとデジタルは相互に補完したり、相乗効果を得るために連動、融合を進めないといけない。

 さて、その手間がかかるが、クリエイティブも含め、データで科学できそうなこのミドルファネルのCM(当然「テレビ×デジタル×リアル」の仕組みがマル必の)づくりはどんなプレイヤーが制するのか・・・。

 コンバージョンからの遡りでミドルファネルを設計するプレイヤーに不足しているのは、テレビやリアルの知見だ。
また買った人のデータからだけでは最適なコミュニケーション設計は出来ない。むしろ買わなかった人の「買わなかった文脈」にこそコミュニケーション開発のための宝の山であろう。

 アッパーファネルからの知見ももちろん必要であり、上からも下からも迫れるプレイヤーがやはり強いかもしれない。
 テレビも効果もマーケティングの時間軸を、購買に成果を生む即効性か、ブランドコミュニケーション資産の蓄積という中長期なのかも、フルファネルのコミュニケーション設計上欠かせないことになるだろう。


 ネット専業系の文化に「ABテストして・・・」という最適化概念があるが、これに関しては、ベムは昔から、「それってAからZまで考えてからABテストしてるのかな?AとBのふたつだけ考えてどっちがいいかなんて、もしかするとどっちが一番ひどいクリエイティブかを選別するYZテストかもしれないよね?」という憎まれ口を叩くことにしている。

 トラディショナルな広告コミュニケーション開発をやってきた僕には、表現開発には「まず考えられることを全部書き出してみよう」というプロセスから入るのが習慣づいている。「明日までに100本コピー書いてこい!」というのは、質を求めてはいない。量を求めている。つまりは表現する考え方をいったん網羅して、それから収斂させるというのが、クリエイティブ開発の王道だと思っているし、実際そういうことをやってきた。ブレストも、KJ法・ラダー法もこうしたプロセスに応用するために学んだ。

 一方、ネット専業カルチャーは、例えば「リスティングの広告文を書いたり、バナーの中の表現を有りものの素材で構成してみる」という話は、もともとえらく視野が狭い。Creative というより Creative Adaptation である。

 テキストで訴求する、画像とコピー文で表現する、動画で表現する・・・とデジタル広告のフォーマットが進化すると、情報量が格段に違ってくる。
 
 「いったん考えられる限りの要素を書き出してみる」という思考が、デジタルのクリエイティブにも必要になってきた。

 さて、ここで、ここ何回かのエントリーに書いているような従来からのアナログ施策のデジタル化を発想してみよう。
 
 表現開発のためにいったん考えられるコンセプト、キービジュアルなどを出来るだけ多く抽出する作業は、基本ブレーンストーミングでみんな集まってやるものだった。ブレストの原則は、批判しないで、自由に、質より量で、連想と結合、というルールで出来るだけ多くのアイディアをテーブルに上げる作業だ。

 で、この作業をAIにやらせることも、クリエイティブのデジタル化の発想ではないかと思う。以前、人がやった作業だが、ベムの会社で特定のサイトの中の動画を最後まで視聴したユーザーが、別のセッションでどんな検索やどんなサイトを訪問しているかを、ツールバー利用でパーミッションをとった対象者の全ログデータから分析したことがある。
 そこで、発見したユーザーの共通関心事をクライアントのブランドマネージャーに提示したところ、「これは我々が何百時間ブレストしても絶対出てこないワードだ」と言われたことがある。

 こうした分析は人間が分析するには限度があり、いったん大量に材料を広げる作業をAIにお願いしたらどうかなと思う。

 きっとその先もやってくれるようになるだろうが、まずはクリエイティブ材料を大量に抽出することをAIというデジタル発想のプロセス改革の一環でチャレンジするのはアリかと思う。

 「ABテスト」ってさあ・・と憎まれ口利くだけでなく、何らば、どうしたらいいかも今後は提言することにしよう。

  広告ビジネスが面白いのはクリエイティブを始めとして「アート」な部分を少なからず温存しているからだが、本格的にデジタル化が進むとどうなっていくだろうか。またこれは当事者である広告マン自身がどうして行きたいかという問いかけでもある。

 以前ある講演で、AIによって最初に人がクビを切られる産業は、広告業界(ネット広告業界)だろうと話したことがある。AIまでいかなくても、今「人手が足りない、人手が足りない」と騒いでいるオペレーション領域が真っ先にオートメーション化する。いわゆるRPAで業界は息を吹き返すだろう。とはいえ一方で雇用の面では、単純オペレーションしか出来ない人材は要らないということが急激に起きる。

 そもそもプログラマティックという以上はプログラムによる自動最適化であるので、いつまでも人力でシコシコやるべきものではない。また人では絶対に出来ないことをこなすのが機械であり、AIの仕事だ。
 数年で、バルクで買っておいた広告掲載面に、タイミング、オーディエンス、コンテンツ・コンテキストによって1インプレッションづつ最適なブランド広告を最適なメッセージ(クリエイティブ)をマッチングし、かつ各ブランドの予算配分管理をするようになるだろう。人間のオペレーションでは絶対に出来ない領域にRPAなりAIなりが踏み込んだ瞬間から一気に雇用環境、労働環境が変わるだろう。

 さて、この業界でのAIの使われ方だが、まずは拡張に使われるのだと思う。拡張に関しては、当初DSPを作ったアドテクの人たちが、マーケティング思考なしに(つまりはしっかりした拡張ロジックなしに)ネット上にある手短な材料で「拡張」と称してしまったので、当然効果がなく、成果を出しましたという話をほとんど聞かない。ベムはこうしたことはトラッドなストプラの思考をもって拡張ロジックをつくらないと成果は出ないだろうと言っていたが、前言を翻す。実は拡張こそAIがうってつけなのだ。ロジックなどという理屈でなく、広告反応・効果という結果から配信対象を最適化する。

 この考え方は、それこそ拡張すると、マーケティングにおいて「なぜそうなっているか」を突き止める必要がなくなるのでは?ということに行きつく。つまりは調査なんかいらない、インサイトの発見など、AIが最適化した後に人間が理屈をつけたかったら「勝手にどうぞ」の世界になるかもしれない。
 
 エージェンシーのデジタル化のエントリーに書いたように、本丸はクリエイティブやストプラ、メディアプランニング、SPプランニングなども「経験と勘」「職人技」でやってきた施策をデジタルによるプロセス革命で(おそらくそこには「働き方改革」の文脈も強く作用するだろうが)、効率化だけでなく、従来の手法では絶対に出来なかった新しい価値を創造することが求められる。

 進化する広告配信が人間のオペレーションを超えるように、AIが参入するプロセス革命では、人間による(理由を発見して、それに対処する)プロセスが淘汰される可能性もあるだろう。
 
 そうしたプロセス革命に「人間系」(アート)をどう残すか、残すというより新たな価値をつくれるかどうか、人の力が試される。

 将棋や碁のAIは既に人間との対戦領域を超えてAI同士で鍛え合って、どんな天才でも人間では絶対に発想できない差し手の領域まで行っているようだから、知的な作業ほどAIが代替するほうが、効果が出るようになるんだろう。

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