3)米国が採用する放送の新規格「ATSC3.0」への注目。2018年2月の韓国は平昌冬季オリンピックで、放送局主導による「テレビ番組のネットIP上での放映」が実用として開始され、テレビ局側のネット配信側に対する逆襲が見もの。日本の放送業界は韓国視察が花盛りに。

 「ATSC 3.0」は日本のマーケター企業や一般企業の方にとっても「自分ごと」としての馴染みが少ない単語だろうが、重要な規格単語だ。米国と韓国(サムスン、LGのお膝元)ではすでに「地デジ」の後継となる次世代テレビ方式「ATSC 3.0」が「テレビのネット化」に向けて前進し始めている。このトレンドの先が明日のビジネスを左右する日本のテレビ局界隈では、周知の話題である。ATSC3.0方式が世界の先陣を切って開始される今年の韓国での平昌冬季オリンピックに向けて、その技術のインパクトを感じるために日本のテレビ局による「視察ツアー」が大賑わいになる。

 現在私たちが日本で馴染みのある「地デジ」放送とは、「デジタル」という名は付くが、決して「IPのネット上」に流れるコンテンツではない。依然として「テレビ」の世界と「ネット」のビデオ世界との間には、「IPの壁」が存在している事に気づいておこう。新ATSC3.0方式はこの壁が無くなり、例えれば、Wi-Fiいらずで「スマホでテレビ」が見られて「テレビでネット」が見られる技術なのだ。

 現在のWi-FiやブロードバンドによるIP放送と何が違うのか、という技術的な事はテレビ局関係の方にお譲りするとして、知りたい課題は「ATSC 3.0に移行するのか、それはいつか」、「移行すると、何が変わるのか」である。

 大掛かりに移行完了した「地デジ」化は、この「テレビとネットの融合」技術のためのイントロ整備であり、ATSC 3.0(的な)技術が導入されてやっと「テレビ放送とデジタルビデオの垣根」がなくなり、アドレサブルな配信がテレビ局によって可能になる。特に「地方局」にとっては、キー局やGoogleに頼ることなく、自社オリジナルコンテンツを開発し、自立オーディエンスに向けて発信ができる「新生ローカル局」となれるチャンスを与える技術だ。

 この方式は米国の連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)の旗振りで進んでいる。ちまたの日本のマスコミ報道ではFCCによる「ネットの中立性撤廃」について取り上げ、否定的な報道に偏った報道傾向がある。MAD MANレポートの読者には片側の意見だけではなく、両側やその先の考えを見ることで視野と思考の広がりを共有したい。例えば過去の「情報スーパーハイウェイ構想」などのキャッチコピーで釣る政策ではなく、着々と業態変革に向けて実務が進んでいる政策の1つがこの動きなのだ。(続きはMAD MANレポートにて)■


AIにおけるAmazonブームの一服、Googleの王座防衛、中国「ビットメイン」社の躍進(その「智子」とは:英語名Sophon)。中国はビットコインの技術と投資の矛先がAI側へ向けてシフトさせる予兆。

 音声入力のAmazon Echoの発売が日本でも開始され、音声AIのAlexaの「スキル」が日本語仕様で出回り始めた。いよいよ日本も「毎日Amazon」状態である。

広告業界の中に絞って見ても、広告主側企業&エージェンシー800社を対象とした「DSP利用」調査では、Googleの「DoubleClick Bid Manager」と、Amazonの「Amazon Advertising Platform」がダントツの2強と報告されている程だ(今年前半の発表ではAmazonが首位であった。広告主側の「DSPとは何か」、の定義課題は横に置いておく)。

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昨年のAmazonは、1月のCESで「出店していないのに一番目立っていた」存在となり、「Whole Foods Market」のリアル流通網を8月に買収完了させて稼働し、11月は「DeepLens」AIカメラを発表しと、「Amazon祭り」の一年だった。その結果、日本でも年末には「Amazon Effect(影響)」の呼び名が日経の2017年ヒット番付の横綱に輝く盛り上がりようである。

 とはいえ、まだ現在はあまりにも「表層的」な報道ばかりだ。たとえば、Amazon Echoは確かに出荷個数を増やしているが、音声入力端末カテゴリーでのマーケットシェアで見ると、昨年は8割を超えていたが今年は68%にまで落ちてきている。

 あるいは「スキル(アプリ)」の個数は25,000個を超えているが、その6割以上が「レーティング」無しの「実験スキル」にすぎない。筆者は最近、Alexaに向かって声を出すための「横隔膜」の動作の方が、スマホにタップする「指先」よりも逆に面倒であることにも気づき始めた(例えば就寝中の静けさの中など)。音声デバイスとその先のAI機能やDeepLensに至ってもまだまだ用途は「おもちゃ」の領域から抜け出せず、これからがAmazonの腕の見せどころであり、AWS(Amazon Web Service)で蓄積するデータの入り口を用意したばかり。

身近なB2Cの「周りに見える」世界に目が行きがちだが、むしろAIとディープラーニングの分野では、Googleの方が開発費や過去のデータ量では圧倒的に「先回り」していると見る方が的確で、IBMやMicrosoftを含めた「巨人」達との力関係を把握する必要がある(そのためAmazonが凄いという判断はなかなか出しにくいものだ)。

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むしろAIの分野のリーダー(打ち上げ情報)を追いかけるだけでなく、この章では「ダークホース」にも目を向けておきたい。思わぬ産業が互いに繋がろう(ブリッジ)とする様子が見え始め、新たなエコシステムが形成されている。

 たとえば過去にもマーケティングテクノロジーの「DSP/DMP/RTB」の概念が始まったのは、リーマンショック以降に金融業界の「フラッシュ・ボーイズ(マイケル・ルイス原作)」のテックチームがマーケティング業界に乗り込み、10億分の1秒の「取引プラットフォーム」の世界を作り上げたと言われている。現在も同様に、金融のビットコインの「マイナー(コインを掘る人=計算インフラで儲ける人)」たちが、その知識と資金力を使ってAIの産業に流れ込んでき始めた。計算能力とスキームを通貨市場だけでなくAI市場に向け始めたのだ。中国での出来事だが米国では既に話題になっている。ビットコインのマイナーとして最大手の1社である「Bitmain」社がAI産業に向けて矛先を変えて来た。
※:冒頭の「智子」は「ともこ」ではなく「Sophon」と書く。(続きはMAD MANレポートで)■

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デジタルインテリジェンスは「MAD MANレポート」としてニューヨークに在住の榮枝(MAD MAN)の視点の市場状況を、契約いただいたクライアント企業(個人)にのみに毎月お届けしている。

・バックナンバー例:http://www.di-d.jp/mmbacknumber/
・デジタルインテリジェンス ニューヨーク 榮枝洋文:http://www.di-d.jp/dinewyork/

2018年をニューヨーク側から、どう見ているかを一部紹介しよう。

◆◆◆◆

下記のリストは「すでに米国で起きている」事として、MAD MANレポートで既にお知らせ済みの事象としての紹介だ。

 今年はこれらが順次、水面上に浮上してくる。少々波乱の要素が多いが、それらこそが想定していればチャンスとして考えられる。項目を列挙することで2018年の「色」が見えるだろう。予想というよりも、注目しておきたい事象をMAD MANの独断で、経済インパクトが大きそうな項目を挙げた。


その1 景気の腰折れに対する予兆。景気の「遅行指標」であるはずの、グローバル広告企業(WPP、Omnicom、IPG、電通)の2017株価下降が意味するもの。

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2017年の米国市場(S&P)の株価推移(図1)は一直線で右肩上がり(約18%・年)であった。特にトランプ大統領誕生の2016年11月から見れば25%も上昇している。2018年、年明けの最高価格更新のニュースも、すでに耳慣れてしまった方も多いのではないか。

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ところが、5大グローバル広告企業(WPP、Omnicom、IPG、Publicis、電通)の株価は揃って冴えない。図2は昨年1年のS&Pの右上がりのグラフ(+18%)にWPP(オレンジ)、Omnicom(紺色)、IPG(水色)のグラフを重ねてみた。各社が一様にマイナス14%〜17%に下がっている事がわかるだろう。仏のPublicisと日本の電通はニューヨーク上場では無いので重ねてないが、重ねれば他のグローバル広告会社と同じ下降を描いている(検索すれば電通の東証のチャートはすぐに見られる。お試しあれ。)。

 景気の動きを示す各種の経済指標のうち、総体としての景気変動に「遅れて」追随変化するとみなされる指標を「遅行指標」と呼ぶ。広告費はその代表だ。日本の経済産業省の考えでは、広告業売上高と名目GDPは、非常に高い相関を見せることが確認されている(相関係数0.74、有意水準1%)。

与件として、上記グラフは、

・「売上高」の変動ではなく、「株価」である点。株価は「未来を織り込む」性質がある。

・グローバル広告(マーケティング)企業(=OgilvyやBBDOやMcCann等)を束ねているホールディング企業(WPP、Omnicom、IPG)の株価であるので、米国1国の状態を表しているのではなく、「世界を総じて」のトレンドを表している可能性。

・全体の景気(株価)が上がる(+18%)のに、相関性が強いと思われている「遅行」指標の広告企業の指標がほぼ反比例している(-14%〜18%)のは、どういう事態なのか。

 これらの広告ホールディング企業の株価の落ち込みを、後付の理由で「広告の透明性の議論や、デジタル広告のボイコット等があったから」など一時的な出来事の影響とは言い切れない大きさがある。特に相関が逆向きであるのは非常に強いシグナルだ。グローバル広告企業へ発注する「広告主企業群」の発注量や広告ビジネス自体の景気を表しているのではないか。

 FAANG企業に代表される好調のテクノロジー企業を除いた、「その他一般」の世界全体の景気には最大の配慮を持って望むべき2018年が始まった。■

ベムのコメント:「グローバルエージェンシーがデジタル化、データドリブンにこれだけ傾注してもなお、広告ビジネスに対する期待値が下がっているとすると問題だなぁ。大手コンサルなども競合してくる中でどう評価されているのか・・・。」

 年初に業界7つの予測を書くようになってかれこれ9年目だ。

今年2018年については、2020年代に起こるであろう広告マーケティングの劇的な構造変化を踏まえて、企業マーケターとして獲得すべきスキルを文末に定義しておこう。


予測その1 
『テレビ×デジタル』統合管理による動的アロケーションを実施する広告主が増える。

  ご存知のように、この4月から関東地区のテレビスポットの買い付け単位が「世帯GRP」から「個人全体GRP」に変更される。

  ベムは従来から「世帯GRPは取引通貨であって、マーケティングデータではない」と言い切ってきたが、この変更は方向感としては良いことではないかと思える。ただ、関東地区だけとか、今後個人視聴データが整っていないローカル局はどうするのか・・・など課題は多い。今後個人視聴データを基本とした買い付けが標準化すると、ベムが従前から提唱している「テレビの投下量もインプレッション数に換算して、デジタル動画と統合的に思考する」ことが普及していくだろう。

 このようにテレビとデジタル統合的に考えることがメジャーになるには、
① 広告主側で別々のセクションで別々の目的で買い付けるのではなく、
② テレビとデジタルそれぞれに予算を固定化しない。
ということが求められる。

例えば、ブランドマネージャー側でテレビ2億、デジタル5千万と予算化したら、合計2億5千万をベストパフォーマンスになるように運用(配分)するのは宣伝部という案配だ。

 そもそもリアルタイムで競合ブランドのテレビ出稿やソーシャルからの消費者の評判、オウンドで観測されるスパイクなどをダッシュボード化できる今、事前にプランしたとおりにすべて執行する従来のやり方は早く脱却すべきである。予算化しないと始まらないものの、達成目標の設定がないまま予算消化が目的化することが多い。

 キャンペーンのKPI設定を徹底し、「目標達成を目指して運用する」ことが求められる。
そのためにも、キャンペーン予算の1割をどちらに使うか流動的にしておくなどの方法が考えられる。


予測 その2  AIスピーカー、AIカメラのマーケティング活用が始まる

  昨年末から普及が進むAIスピーカーだが、これらを無償で配る代わりにトレードオフにデータ収集を許諾してもらうモデルでのマーケティング活用が出てくるだろう。

 準備されているAIカメラでもよりこうした活用が広がると思う。
 例えばカメラであればペットの見守りサービスとトレードオフにテレビ視聴データを提供してもらうなどが考えられる。

 いずれにしても調査をパネルを謝礼で維持するモデルは旧態依然としている。出来るだけ多くのデータが集まってくるモデル開発にAIスピーカー、AIカメラが活用されるだろう。


予測 その3  競合ブランドの動きを観測するレーダー型ダッシュボード広まる

  マーケティングダッシュボードとは飛行機のコックピットにある計器類のようなものだ。だから表示される数値を「ふ~ん」と眺めているだけだと飛行機は墜落してしまう。そもそも計器類があるのはどう操縦するかを判断するためだ。マーケティングダッシュボードも同じで、「打ち手ありき」でデータが表示されていないといけない。

 ベムはリアルタイムダッシュボードが普及する一番の意味は、競合ブランドの動きが即時把握できるということだと思う。
 競合がテレビキャンペーンを打ってきた時、ソーシャル上に競合ブランド名がグンと盛り上がってきた時などをすぐにキャッチアップして、即時に対応策を打つことができることに価値がある。
 
 そういう利用法が今年は広まるだろう。


予測 その4 「正しいインプレッション」が定義され、実効性のあるアトリビューションが再興する。広告接触が正しく評価されるため正確な認知相関が把握される。

  昨年、ビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセイフティについての問題が、ネット広告のクリティカルな側面として強く認識された。
  ネット広告にブランディング効果を担わせてきた米国市場だけでなく、日本でもこの3つの課題が論点化されてきたことは、日本でも本格的にデジタル広告のブランディング効果を期待されていることの裏返しでもある。
 長くCPAを効果指標としてきた日本のネット広告市場では、コンバージョンして初めて課金されるのだから、多少ビューアブルでない、あるいは人が見ていないインプレッションがあっても、あまり問題にしてこなかった面もあり、買う側の責任も少なくない。

 過去一時流行った「アトリビューション」も、実際には人の目に触れていないインプレッションもカウントしていたとすると全く間違った評価となってしまう。

 昨年はしっかり課題として認識された「これは正しいインプレッションか?」は、今年「正しいインプレッションを買う」手段が模索されるだろう。

予測 その5 テレビ視聴データの「売る側のデータ」から「買う側のデータ」の変換が進む。 ブランドが指値が出来る環境へ テレビスポット入札応札型取引きへの素地づくり始まる。

  昨年、年初予測に「テレビCM枠のオンライン入札の試み始動」と書いたが、これは
今年に持ち越した。
 そもそも有限な枠を販売するからには入札応札型の価格形成がもっとも合理的なはずだ。

テレビスポットはどんなパターンで投下しても、基本テレビ視聴者に万遍なく到達する。
よって、視聴時間の長い高齢層に若年層の何倍もの回数当たる。この買い方だとどうして
もいらない枠も一緒に買わされている。
パーコストが高くても効果的な枠だけ買う方がいいのだが、どこの枠がターゲット効
率や視聴質がいいのかのデータがないので、指値ができない。
 今はテレビCM枠を売る側のデータしかない。
買う側が指値ができるようになるための「買う側のデータ」が必要だが、そうした動きが
進んでいくだろう。

 つまり「売る側のデータ」から「買う側のデータ」への変換である。例えば、エリアご
との投下データも広告主の販社エリアごとに編集するなど、局単位が当たり前という発想
から脱却する時期だろう。


予測 その6 アマゾンエフェクトによる小売り激変現象が顕在化 従来の小売りデータや施策を前提にしたDMP構想はいったん破綻する

 小売りの現場のID-POSなどの購買データを連携して、施策を最適化しようという構
想は、データを扱うSIerなどに多くある。
 しかし、こうしたDMP構想が実現する前に、リアルな店舗販売時点でのマーケティング
施策の有効性はなくなってくるだろう。

 店舗に人を呼び、ものを売るビジネスは、根本的にその価値の転換を迫られるだろう。
百貨店は、昔は店舗に人を呼ぶのではなく外商していた。あらためて、サブスクライバー
ビジネスへの転換を余儀なくされる。
 もし眼鏡を専門に売るECビジネスがあり会員が20万人いるとすれば、まだ資金がある
百貨店はこれをひとり10万円でもいいので買収すべきだろう。店舗は売っぱらった方がい
い。
 こうしたサブスクライバーの縦のラインをいくつか買収して、横につないで新たなマー
チャンダイジングをしていくのが本来の「顧客ありき」の外商ビジネスのDNAである。
テナント事業という不動産業に転じた時点で百貨店ビジネスの崩壊が始まっていたといえ
る。
  「売りものありき」で不特定多数に売るビジネスから「会員が買ってくれるものやサ
―ビスを商品化」するのが百貨店のような小売り業の価値である。

 

予測 その7 スマホ動画へのユーザー反応に関する研究が進む

   スマホの動画コンテンツや動画広告にユーザーがどう接触していて、どんな反応をしているのかについての研究が進み、ユーザーの受容性が高く、ブランディング効果の高いスマホ広告のフォーマット開発のきっかけになるだろう。

  以前、ベムはスマホ広告(特に動画広告)の成長には、ユーザー受容性があり、広告効果の有効性も高い広告フォーマットが確立するまで、いったん踊り場に来ると予測した。これからテレビとの統合効果を求められる時代に、スマホでの広告フォーマットはもっと検証されるべきであり、その基礎データをつくるためのユーザー反応データが必要となるだろう。


最後に2020年代の広告マーケティングの構造変化に向けて

企業マーケターがすべきことをPOEで整理してみた。

Paid (買うべきもの)

  これは直接買うべきものと言ってもいいが
  ・良質なパブリッシャーのコンテンツ
  ・良質なパブリッシャーの掲載面
  ・プログラマティックオペレーション

Owned (所有すべきもの)

  ・広告配信先データ
  ・広告配信設計知見
  ・インハウストレーディングのオペレーション知見  自動入札への布石

Earned (得るべきもの)

   ・マス×デジタル統合のハンドリングスキル 
 ・ブランド視点からユーザー視点のデータマーケティングスキル
   ・パブリッシャー(メディアから優良なアフィリエーターまで)と
ダイレクトなやり取りをしてネイティブコンテンツ開発をするスキル

ベムの会社には「テレビ×デジタル」のアロケーションに関してそのモデル化についての相談が多い。ただテレビとデジタルを統合的に考える上での前提はテレビの到達実態をしっかり知ることである。
デジタルインテリジェンスには、喩え好きなU副社長がいて、その比喩はなかなか上手い。

そのなかのひとつを紹介しよう。


ここに、10代後半の女性Aさんとそのお母さんと、おばあさんがいる。

Aさんにリンゴをひとつあげたいのだが、Aさんにひとつあげるには、お母さんに3つ、おばあさんには6つあげなければならない。
つまり、Aさんにひとつあげるには全部で10個リンゴが要る。

ところが、パイナップルは、ひとつだけAさんにあげることが出来る。

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お分かりだろうか。リンゴはテレビCMでパイナップルなデジタル(動画)広告ということだ。デジタル広告はターゲティングして対象であるAさんにだけ渡すことが出来るが、テレビCMでは、人口の多い高齢層の視聴時間が長く、人口の少ない若年層の視聴時間が短いので、テレビスポットのような投下方法ではどうしてもAさんに一個あげるのに10個要るという状況になっているのである。

U氏の喩え「その2」は次回のエントリーで・・・。

テレビ、ビデオのコンテンツはOTT送信か、OTA送信か
「vMVPDの衝撃」ホワイトペーパー+オンラインレクチャー

デジタルインテリジェンスNYから「vMVPDの衝撃」を特別レポートとしてリリースすることになりました。

OTT(Over-the-Top:ケーブルTVや衛星TVを超えた、ネット経由のコンテンツ)による番組送信がNetflixやHuluが火付け役となり、「旧テレビ業界」が侵食されているイメージはすでに定着してきた。このあたりの米国でのOTT進化状況を「vMVPDの衝撃」としてホワイトペーパー+レクチャーを公開するので、ご興味のある方はデジタルインテリジェンスまでご連絡ください。

一方で今年のラスベガスで開催されるNAB SHOWあたりからOTA(Over-the-Air:地デジを含む放送電波)側にも新しい展開が見えて来た。今月に入り米国ではさらにその進化の断片を日経が報道してくれている。
ーー
日経2017/11/17
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23601940X11C17A1FF8000/
『米、42年ぶりのメディア規制緩和 業界活性化にはなお課題』

>今回廃止するのは、メディア企業1社が同じ地域で新聞社と放送局(テレビ局とラジオ局)を両方持つことを禁じた1975年制定の規則

>1つの地域でテレビ局のシェア上位4局のうち2局の合併を条件付きで認めることも決定した。経営状況の悪化に苦しむテレビ局同士の再編を促す目的
ーー
日経2017/11/22
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23785020S7A121C1MM0000/
『米、「ネットの中立性」撤廃 コンテンツの扱い格差容認』

>トランプ大統領がFCC委員長に指名したパイ氏は声明で、オバマ政権による規制強化が通信会社のインフラ投資を抑えたと指摘し「間違いだった」と批判した
====
これらはじわりと、旧テレビ局勢への政府による追い風の方向転換だ。米国での「地デジ」化は日本より2年早く2009年に完了している。この送信方式は「ATSC1.0」と呼ばれているが、これが次世代方式の「ATSC 3.0」へのアップグレードを推奨すべく、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)が後ろ押しを始めたのだ。上記2つの記事はいずれもFCCの指針である。

この「ATSC 3.0」方式の一番の特徴は、放送とネット(ブロードバンド)を組み合わせたIPベースの放送システムであること。4K、Ultra HDを含めた高画質、高音質、マルチキャスト、多言語、緊急警報放送等は当然として、アドレサブルな広告配信も可能だ。これらのテレビコンテンツが「IP上」にてテレビ局からOTA送信(Over-the-Air:電波送信)される。

視聴者はテレビ局からの電波を受信するだけで、Wi-Fi&ブロードバンドの契約不要でIP上のコンテンツ(番組)を視聴できる。テレビ電波そのものが「ネット」になるのだ。これはテレビ局側の勢力復活であり、特に地方局には夢のようなシステムとなりえる。ネット回線に頼らず、さらにGoogleに頼ることなく、ネット上の視聴者とインタラクティブに繋がれるのだ。

技術的な事はテレビ局側の方々の説明に任せるとして、これは「求心力を作る国策」であり「地方の活性」へ向けた大きな転換である。放送システムの違う日本(ISDB-T方式)としても目が離せない動きだ。お隣の韓国は来年のピョンチャン冬季オリンピックに向けて、すでに今年からATSC 3.0方式テストを開始し、Samsung、LG等がテレビやデバイスを販売している。

この流れは本当に動き出すのか、そして何が起こる(必要となる)のか。これらを上記レポートに「動き出したATSC 3.0」の項目を添えてご興味のある方にお伝えする。お申込みは、info@di-d.jp まで

 ベインキャピタルによるTOBが成功するか否かまだ分からない現時点で、今回の買収劇がどう推移するか予想するのはさて置いて、そもそも3番目のADKという存在は、日本の広告業界においてどんな役割、機能を果たすべきなのかと考えてみよう。

 その時、その視点は広告主にとっていい環境とは・・・ということだ。


巨人である電通と博報堂、そして3番目のADK。

歴史を振り返れば、ベムが入社した当時の旭通信社は7番目、第一企画は5番目、その後旭通はぐんぐんランキングを上げて3位になり、第一企画を実質吸収合併して今のADKとなった。

 この2社の企業文化の違いはかなりあった。旭通は営業主導文化で、真っ向から電博に対抗できないことは重々分かっていたので、アニメやプロモーションで差別優位をつくるのに長けていたと思う。一方、第一企画は特にCMクリエイティブに力があり、テレビの扱い比率が高かった。

 合併時、ベムには「旧旭通のこの営業と旧第一企画のこのスタッフを組ませたら最強だろうな」というイメージが浮かんだように、お互いは強みを補完する合併だったと思う。
 そして、「電・博・ADK」なるワードが生まれるのだが、ベムはこれが自分を見誤る最大の要因となったと思う。同じステージに上がったと勘違いしたのだ。

 つまり、電通や博報堂と本当に対抗できる総合力がないにも関わらず、同じ土俵に踏み込んでしまったということだ。電博相手に競合プレゼンが1勝5敗では、利益が上がる訳もなく、かなり当て馬的にコンペに参加させられることも多かったろう。

 そんな中で広告業界にもデジタル化の大きな環境変化が訪れた。
それは3番目にはチャンスであったはずである。ベムは当時こんな比喩で、当時のN社長に話をしたことがある。
 「ある小学校で、プール開きの時期になり、プールの水を抜いて底の大掃除をしていた。掃除をしているのは、えらくノッポさんと、中背と、おチビちゃんの3人。ところが掃除の最中にプールに水がはられてくる。最初に気づいて早くプールサイドに上がらなくてはいけないのは誰か・・・」
この比喩には続きがあって、一番小さい奴が最初に溺れるので、一番早く行動しなくてはいけないのだが、実は一番背の高い奴が、状況が一番よく見えているので、アクションも早い」ということだった。

 新聞紙上では「ADKがネット広告に乗り遅れた」と書いてある。
しかし、乗り遅れたのではなく、明らかに経営判断を間違えた。
 2006年から始め、2008年には会社として設立したADKインタラクティブは、まさにデジタルの営業会社を目指して立ち上げた。本体が変わるのは難しいが、デジタル新会社が大きく成長すれば資本全体としては変身することができる。それが狙いだ。

 昨年、電通デジタルさんがまさに同じような考えを標榜されたと思うが、それを10年前にやっていたと思う。

 だが、2011年にADKはこれを解散し、DACの株も売ってしまう。
今年、DACの時価総額は一時ADKを超えた。今も保有していれば300億超の価値だ。財務的な価値より、やはりデジタルテクノロジーの目利きとしてのDACを傘下にし続けた方がどれだけ価値があったか分からない。

 DAC株を売却したADKは、今度は電通さんと合弁会社をつくるが、(ADDCというこの会社はネット広告のバイイング会社で電通系メディアレップのCCIさん他のリソースで成り立っていたが、そもそもデジタルをネット広告販売ビジネスとしか捉えられない時点でアウト、しかもデジタルに全く疎いADK本体の営業の下につくだけの構造を脱却できない)これも昨年から今年にかけて資本提携を解消してしまう。ただ解消するだけで、次に組む相手もいない。

 この迷走の原因、経営判断の間違いを、うやむやにしてLBOでリセットしても、再生するためにデジタル化は必然で、この間違いを犯した経営陣がそのままでデジタル化など出来るはずもない。ベインが持ち込むお買い物リストにあるデジタル企業を目利きすることもままならないだろう。(ベインは無理やり買わせるだろうし、ADKは抵抗できない。機能する会社であることを願うしかない。)


 さて、本論に戻ろう。

 日本の広告業界にとって、3番目のADKのあるべき姿は、データによるブランド横断のマーケティング支援ができる広告会社である。もうこれだと「広告会社」と言えるかどうかだが、データ分析ができたとしても実際に成果をあげるにはマーケティング施策の企画実施(エグゼキューション)が伴わないと意味がなく、その実行こそが広告代理店でしか出来ないことでもある。
 データはマーケティングの米である。しかし米は炊かないと食べられない。またしっかりした技術で調理しないと高く売れない。コメのままだと一俵1万円だが、その分をチャーハンやドリアにすれば、また高級料理に仕立てれば100倍にはなる。

「電通・博報堂をブランドAE担当エージェンシーとして競わせて、3番目にはデータドリブンな、かつブランド横断の施策支援をさせる・・・」これが広告主にとって最も良い環境だ。

 ただ、そのスキルが今の3番目にあるかが、もっとも大きな課題だ。
正直今の陣容では機能しない。人材の半分以上を入れ替えないといけないだろう。(ただ今回このスキームでは現経営陣も含めリストラは可能になった)
しかし、逆に今まで培った広告代理店のマーケティング施策(クリエイティブ、マスメディアプランニング、ストラテジックプラニング・・・などなどの)開発のスキルセットとDNAがないと、データアナリストを揃えただけでは機能しない。
 荒療治にはなるが、3番目は大改造しだいで、データドリブンなマーケティング支援が広告主企業に提供できる可能性がある。

 広告主から見て、3番目はどうあって欲しいか、もしTOBがうまく行ったとしてADKの再生の鍵がここにある。

このネタで、業界人間ベムとしては、(ベムは82年の旧旭通信社の新卒である。DACを起案設立し、ADKのデジタルを率いて、いちおうADKの執行役員も務めた。)たくさんの方々から所見を求められた。何も発言しないのもなんなので・・・、おまたせしました。

このブログ・エントリーは、ADK社員を含む全ての読者に向けて、特に自分の未来を10年20年作っていく若手に向けてのベムからの気持ちだ。すでに私の所には個別に解説打診の連絡が沢山届いているが、ベイン社のスキームやADKの次のゴールがどこにあるのかは、この機会に自分で調べ、考えた方が良い。

ADKが現在上場している会社の恩恵として、公にリリースとして発表されている。これらの文章に関しては一度全部読んでおくのが筋だろう。マスコミ・大手メディアの報道だけを読んで現状を把握しているつもりなら論外だ。君たちの1番の収穫は、きっかけはどうであれ、このような資本政策や事業の未来について考えるチャンスを身近に頂いたと言うことだ。

そしてあなたがADKの社員だとして、自分で調べたのなら、社内の人同士で審議するのではなく、外部の人に自分の仮説を聞いてもらい検証してみると良い。同じ船に乗っている人同士の話やADKの役員からの話では、船が浮いているのか沈んでいるのか、はたまた沈められようとしているのかの判断ができない。今回の件の「賛否」はベムには予想があるが、検証を求める若手の相談には個別で乗っている。

・どうしてTOB策に踏み切ったかのADKの意見表明

https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/431288c69c7ab0ef4535c81bb3ee3a6c.pdf

2016年2月から11月まで、WPPとは交渉会議を持っていたが結論に至らず。今年2月~8月までWPP抜きでTOB策を練り、9月下旬にベインを買い付けパートナーとする事を決意し、10月2日の役員会で強行突破した。WPPから役員で送られているStuart Neish 氏は、決議に反対。

・WPPとの資本提携解消のお知らせ

https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/26076683b3a44626cdf24aeb15e21a9c1.pdf

ADKが保有するWPP株の簿価が223億円で、このWPP株の9月29日現在の市場価格が約654億円、税引き後の利益は完了時の計算になるが、この20年でざっくり数百億円は「儲かった」勘定=これは本業の利益並。(これに対してWPPが持つADK株価はほぼ横ばい。)

・もうWPPには1円も配当出さないぞ、の表明

https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/a0eb331a418c2d64040cbb6972d7881b.pdf

2012年は特別配当141円、2014年に特別配当526円、純利益以上の配当を絞られていた。

・植野社長の信任状況、反対が4割(今年3月29日の総会結果)
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/8023935ed2b0fe97cbb675fbc364fde2.pdf

WPPを含め外国人株主から、賛同されていない状況がよく分かる。

・最初の1株目の公開買付けがN取締役(TOB案件実行の主導者) Page 5

https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/53c61f446dd732f2af88a9b99788c37d.pdf


■TOBのスキームに関して:
日経等の報道を読んだだけではピンと来ないのではないだろうか。マスコミの報道は基本的にはベインやADK側の発表をベースにコピペしているだけなので、称える側のコメントが多く真の意図までは解説できていない。ブログで専門的に解説してくれているサイトや海外のBloombergなどの分析もあるので、そのような外部の意見を自分で聞く良い機会だ。

今回のスキームを平たく例えれば「中年のADKがWPPと離婚・出家したいためにベインというLBOファンドの荒手とTOBという手で駆け落ちをした、家出みたいなもの」だ。ADKとしては「もうこの年になって、離婚・家出となると、こうするしか他に方法がなかった」という選択だろう。

ベインはADKの幸せを願う存在というより、この出獄を手助けする事で商売としている。現在話題の東芝メモリーの日韓チームを作っている主導がベインであるのは報道でもおなじみ。ベインは2兆円の巨大ディールで相当「忙しい」はずの時期に、ADKのような小口をよく相手している時間があるものだ。それ程「おいしい」ディールとタイミングである事も伺える。

TOBはベイン(が作ったペーパーカンパニー)が市場の株をTOB価格で買い戻しする事で始まる。価格はすでにTOB提示の3660円を上回り3800円台になっているが、その買い戻す資金は、東京三菱UFJ(ら)から有利子負債として借りて、ADKを子会社化する。

ADKが非上場になった後は買収した会社(ADK)をベインが設立したペーパーカンパニーと合併させる。つまり、有利子負債を手配するのはベインだけれど、買収完了後はADKのバランスシートに押し付ける形。

ADKの企業価値が1500億円の会社だったとして(TOB価格がいやらしい程に低かった。徐々に上げる気配)、ベインが3割程の出資だと仮定して(東芝メモリの2兆円の場合は1割程度しか自腹出費していない)、残りのざっくり数百億円~1000億円くらいの有利子負債を積み上げて株を買い戻す。ADKはWPP株を放出し、他の持ち合い株を放出売って、かなり現金にはなるけれど、それでも自らの株式を買うために支払った「のれん」=「プレミアム」を乗せて買い戻しを行うので、負債額はかなり重い金額に膨らむはずだ。

ポイントはこの有利子負債を負担する(返済する)のが、現在・未来のADK社員の仕事(未来のキャッシュフローの行方)である事だ。ADKは「買収されるため」に作られた負債を、自らがせっせと返済する。一方のベインはおそらく数百億円の自腹は再上場で取り戻し、さらにADKの多くの株式を握る(さらに売って儲けられる)し、配当がある、という構造だと考える。

現在のADKが本業で営業利益が(減価償却を差し戻したEBITDAが良いが)どれくらい年間作れるかといえば、55億円(2016年)。今年はさらに上昇かどうかは、まだ不明。では、いったい積み上げる負債は稼ぎの何年分なのだ?と横で比較してみると良い。あのソフトバンクでもARM買収後でさえ4倍(EBITDA対有利子負債の比率)だ。まあ「利子払は増えるけれど、搾り取られていた年末配当が無くなるからいいじゃん、」という考えにでもすり替えて説明するのだろう。

ADKの株式をすべて握るベインの「お仕事」は、この非上場会社を「なる早(大急ぎ)」で再上場させて、上場益で稼ぐ事が彼らの事業だ。広告事業は景気に左右されるので、オリンピックに向けた上り坂さえあれば、自動的に再上場が狙える。(景気の腰が折れると負債が重くのしかかる)

ADKはこれまで「自社で実行したかったシロウト投資」に関してのアダコダを「プロのWPP」から言われなくなっても、ベインからアダコダ言われるのは同じであり、今度はスピードも要求される(ありがたい事に)。上場後はたっぷりとベインが株式を握る事になる。再上場に向けて、何やら株式のオコボレがあるのでは、と期待する不勉強な社員は残念ながらベインの負債返却のための労働者となる。

■今後のTOBの着地点は:
東洋経済には「買い付け予定数の下限は50.1%としているため、WPPが応じなくてもTOBは成立する。」なんて書いてあるけれど、「チームWPP」である「外国人株主」は6割(61.88%、2017年中期発表)存在する。彼らはWPPあってのADK投資なので、リーダーのWPPの言い分側に付く。

とはいえスキームそのものは、ADKが心中を覚悟でベインと連れ添ったのだから、好きなもの同士であるし、WPPも長年伸び悩んだADK株が4000円近くで売れるならヨシとする面もあり、さらに貸付側の銀行を含めて、資金の流れだけ見ればWIN・WIN・WIN・WINの構造は見える。問題は「早いこと」再上場をする時のADKの事業体制とそのセンスにある。

■今後の体制:
ADKのリリースによれば、今後の事業柱をありきたりに2本立てており、
1.テクノロジーに強みをもつ企業との連携によるデジタル・マーケティング、統合的マーケティング・サービスを実現

2.デジタル&データ領域や、中国・タイ・インドネシアなどのアジアを中心とした地域における事業業の再構築。コンテンツビジネスにおいて、事業拡大

と表面上のセリフを掲げている。

1つ目の柱はWPPからの束縛から解放されて、経営の自由度を高めて、今後デジタルやテックに投資していくつもり。しかし今回のディールを決めたADK取締役を見れば、その中にデジタルのデの字も、テックのテの字も一言も見当たらない経歴の人ばかりで、さらに執行役員のグループも同様だ。

このブログを読む君たちの未来を創るリーダーがこのようなチームで良いのかどうかは考えればすぐにわかること。ベインでさえもその事は気づいているだろう。おそらく案件ベースで外部の取締役が入ってくるのは間違いない。

2つ目の柱も同様だ、(日本でも市場専有はほんの5%程の存在だが)欧米では歯がたたないので、アジアへ、という図式だ。電通や博報堂を手本とする必要もないが、先行する電・博の取った道順は身近な参考になる。

例えば電通は米国出身の取締役専務執行役が英イージスの買収を決め、そのイージスCEOが執行役員として就任し、そのチームが米マークルの買収を決めてマークルCEOはCRMデータ業界の目利きとなっている。電通のレベニュー(粗利)は国内よりも大きくなったが、これらを取り仕切るのは「東京で就活入社した電通マン」ではない、米国、英国のプロ精鋭だ。ADKはシンガポールにFCB出身の「旧来クリエイティブのオフィサー」を立てたが、アジアを知る「経営とデジタルのプロ」が必要になってくる。

デジタルにせよ、海外にせよ圧倒的に不足する執行レベルの「その道のプロ」が今後入れ替えられて、仮にADKに入ったとして、さて、そこから一人相撲をどうするかだ。

今後は「WPPグループの」ADKという枕詞は使えなくなる。日本で5%市場サイズのちびっ子ADKでも、なんとなく海外でのプレゼンスが保てたのは圧倒的に「良家」であるWPP傘下に属していたからである。「ベインの子供のADKです」ではマーケティングビジネス上は無名であるのと、知られたとしても「経営があまりよろしくありませんでした」と宣言するようなもの。

———
ベムが入社した旧・旭通信社は、87年に東証二部に広告会社として初めて上場し、90年に一部上場を果たした。(若手の人は、この頃に「産まれました」の世代かもだ)電通の上場はこの10年後である。

ADKがWPPとの資本提携(=つまり、外資に自社株を売る、という当時としてはスーパー経営手法)を行ったのが98年、そこから20年目に非上場への道へと進めるADK。

今のままで立ち止まらないぞというADKの姿勢は評価したいが、キャスティング・ボートを持っている組織や人物がどこの誰で、そのインテンションが何かを考えれば、次なるドミノ倒しは自然に読める。資本構成をいじる事による「儲け」が、本業の業績が低迷な企業程儲かりやすいと、この景気状況が教えてくれたのだろう。若手の自分の未来の熟考を期待したい。

2020年代の広告マーケティング体制やスキル構築に関するコンサルをするベムとしては、テレビとデジタルの統合指標化、相乗効果の可視化やアロケーションも具体的なエグゼキューションにして実証していく重要なテーマだ。

その中で、この5年くらいでメディアに起こるであろう「衝撃的」な事象を予想し、マス広告宣伝部のデジタル化の方向感も示唆している。

ここでは、デジタルインテリジェンスNYのレポートを中心に、今後起こるであろうテレビのネット化(その中心となる「vMVPD」を解説する。


vMVPD.jpg


ここからはダウンロード版レポートの予告編です。


にわかに日本で沸いてきた、政府による「電波オークション」の導入(電波の周波数帯の利用権を競争入札にかける)の検討は、偶発的な出来事ではない。米国や欧州ですでに始まっている「電波オークション」も、それを包括する「ネットxテレビ」の融合のトレンド(医療から交通まで他産業を含む)の隆起から、ようやく日本でも重要課題として(再)浮上してきた現れである。

この議論の背景には、既存の利権課題は横に置いて、テレビ変革の第一波としてやってきた現在のOTTストリーミング(※)を超えた、「ネット上のテレビ」の需要が今後ますます拡大流通している事にある。視聴者側の選択肢が増えて広告主、放送局を含めた再編に向う実在シグナルと見て良いだろう。

そのエコシステムが立ち上がるタイミングは「オリンピック前」を目指すことが各ステークホルダーも望む所だ。テレビ業界には既存利権の上に成り立つ旧ビジネスとのカニバリを含む、いよいよ待ったなしの新ビジネスへの移行の「本格的な第二波」がやってきた。(Over-the-top, 従来の放送電波やケーブルTV設備に頼らない、ネット経由の動画番組コンテンツの配信。第一波の代表格がNetflix、Hulu、等)

このOTTストリーミングを含む「テレビのネット化」において、日本にはまだ上陸できてない概念だが米国で急激に注目を浴びている「vMVPDs(virtual Multichannnel Video Programming Distributors:以降vMVPDと記す※)」というテレビ(番組)の放映事業形態がある(図2)。米Googleを筆頭とした大手企業の参入が相次いでおり、このビジネスモデルを把握することは、デジタル上での番組コンテンツを使ったマーケティング・エコシステムを把握する上で重要となるので、現在準備中の「特別レポート」の予告編としてお伝えする。(※発音はそのままヴィ・エム・ヴィー・ピー・ディー、あるいは「バーチャルMVPD」と読む)

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この聞き慣れぬ「vMVPD」の例として、日本では「YouTube TV」が今年7月に米国で始まった事が日経新聞等で報道された。筆者(在ニューヨーク)は今年のテニス「USオープン」の生放送を、この「YouTube TV」を使ってスポーツチャンネルのESPN上で視聴した。テニスのファンでは無い筆者でさえも、ニューヨーク中でマリア・シャラポワが復活出場する事が話題になって知っていた中、「今、試合に出てる!」と街で聞いた時にスポーツバーに駆け込む事なく、その場でオフィシャル映像での試合をスマホ上で見られた(図3)。

上記は些細な事例だが、「テレビがまんま、スマホで見るネット上にある」のだ。これがvMVPD配信とNetflixに代表される他のOTTストリーミングとの大きな違いの1つだ。vMVPDの「YouTube TV」のアプリがあって月間視聴の購読 (35ドル=約4,000円)をしていれば、現在テレビ放映されている主要チャンネルの全番組が、モバイル環境でも(もちろんリビングの70インチスクリーンでも)どこでも見られるのだ(しかも「録画=あとで見る」の設定も可能だ)。本編で說明するが、「YouTube TV」は現YouTubeと全く別サービス、別事業と考えた方が良い。

■vMVPDはOTTストリーミング配信事業の形態の一つ
新興の「vMVPD」概念は動画・番組を配信目線から事業の形態を表す「くくり」の言葉だ。元々「v=virtual」が付かない「MVPD」のくくりで、欧米の「ケーブルテレビ放送事業者」や「衛星テレビ放送事業者」の事を総称していた、その延長概念が「v」MVPDである。

元のMVPDは100チャンネル以上もの番組チャンネルを束ねて(=Multichannel Video Programming)、自社の放送施設とケーブル回線や衛星電波経由でテレビ受像機に番組を配信するサービス(Distributors)を現していた。このくくりの単語「MVPD」他にも「VOD」のカテゴリーには「SVOD」、「AVOD」、「PPV(EST、TVOD)」と、業界お得意の3文字・4文字のくくり略語がずらりと登場する(本編で詳細仕分け補足する)。

この長年続いた「テレビ放送」事業の形態が、「v」MVPDの登場により放送電波だけでなく、ケーブル回線や衛星電波の放送設備や回線を持たずとも、「通信」の範囲で行き渡ったネット回線上で「バーチャルに」同様の番組配信ビジネスが行えるようになり「v=virtual」を付けてvMVPDと称し、事業拡大してきている。

このvMVPD事業が米国で何を動かしているのか(凄いのか)を紐解くのが本編の趣旨だ。決してバラ色の側面だけではなく、答えの見えないトンネルに突入している側面もある。

■vMVPDは、NetflixなどのOTTストリーミングサービスと何が違うのか
ビデオ・ストリーミングやVOD (Video On Demand)の流通を通じ「テレビ x ネット」の融合が掲げられて久しいが、これまでの「ネット上のテレビ」は一長一短の機能ばかりであったのを感じるだろう。

例えばOTTストリーミングの最有力である「Netflix」のオリジナル・コンテンツの品揃えは素晴らしいが、民放のバラエティー&ドラマ番組が見られる訳ではないし、生のニュースもスポーツもほとんど無い。この状況は程度の差はあれど、「Amazon Prime Video」も「Hulu」も同様であり、「d-TV」や「Abema TV」に至っては「現行のテレビ環境」とはまったく別のニッチ・コンテンツを流す。

民放が寄り添って開始したTVerは極端に一部の番組に限られている事と、上記同様に生のニュースやスポーツや映画は一切無い。(元々、TVerの設立の経緯はネット上でのテレビ番組の違法配信が増加したことから、これらを撲滅する「対抗手段」として無料サービスを開始していた。)

一方で、欧米のvMVPDが地殻を動かしたのは「テレビ放映の全番組が放映時間帯の生で見られる上に」、「ネット環境でモバイルデバイスで見られて」、なおかつ「録画視聴(後で見る)でイッキ見も可能になっている」サービスが、「月額費用がMVPD配信よりも安価で(約35-45ドル、4000円前後)」で見られるのだ(チャンネル数は約40-50程度)。

このビジネスが成り立つためには、vMVPD事業者は「現テレビ局」から番組コンテンツをネットに解放する同意(仕入れ契約)を得る必要がある。

知っておきたいのは米国ではすでに2年前からこの「同意」にテレビ各局が踏み切り、自社のコンテンツ(番組)のネット流通先を増やし、副次的な収入を得ている事だ。減りゆく既存テレビ放映の視聴数に対し、ネット経由の視聴数を増加させるため、その(分散)流通先の増加がビジネス課題になっている。

そして今年は前出Googleが「YouTube TV」ブランドでvMVPD事業者としてコンテンツ買い付けに参入を果たし、Googleより先に参入済のテレコム企業2強の一角であるAT&Tが「DirecTV Now」として参入しており、そしてもう一方のテレコムのVerizonも今年中に参入するいうのが米国の状況だ(図3)。

vMVPD3.jpg

こうなると放送電波の利権を借りてビジネスを行っていた旧来の「テレビ局」は放送事業主という立場ではなくなり、コンテンツ提供者というニッチ位置に下がる(上がる)。そして「新」放映事業者としては、Googleやテレコム企業が担うイメージである。

さらにこの領域に、「FAANG企業(Facebook, Amazon, Apple, Netflix, Google)」の残りの企業が参入する事が予想されている(Googleが先発した)。利権に守られてきた(欧米の)電波帯がオークションによって再配分されたのは、電波の「放送局」による利用価値よりも、モバイル環境の激増に比例したテレコム&ネット電波の利用価値にシフトしている(需要が増大している)という、テクノロジーの移り変わりの力関係が影響する。

これまで日本語で言われてきた「(地上波放送の)ネット同時送信」の「同時」とか、あるいは「融合」の意味は、電波放送が主体で「ネット放映も、同時に」流れ融合するという主従関係であった。ところが近年は前出電波オークションに代表されるように、電波も放送利用からネット利用へ政府がシフトした事に続き、vMVPDの登場によりついに「ネット側」に主役が逆転しようとしている。

一方で視聴者は既にすっかり「ビデオのストリーミング配信慣れ」しており、「6秒ビデオ」も「1時間ドラマの10話イッキ見」にも慣れて来たが、「リーンバック姿勢」や「同時、ライブ」で見られるこれまでのテレビの様な「ながらコンテンツ」や「同時視聴魅力」が実はネット上では「まだ顕在化していない」需要として存在する。

さらに視聴者は今後「スタンダード・プレミアム(ブロードバンド経由)」の位置づけで月額有料視聴を好む層と、「有象無象の広告付き無料放送(地上波)」に甘んじる層と二種類に分岐していく。当然、広告主のマーケティング費用は有料視聴のプレミアム層を好み、「その他大勢」へのマーケティング予算が地上波放送向け(無料視聴)に仕分けされる。欧米では政府のネットに対する規制の変化も伴い、巨大資本がこのプレミアム分野に流れ込んでいるのだ。

このネット上での旧来の「テレビ」の出現(=vMVPDの出現)インパクトは、2014年頃以降の「Netflix」の登場より大きい変化だ。Netflix自体すらもが現状の事業をvMVPD化にシフトさせると予想される程である。既存の米国(欧米)の全ての(現)テレビ事業体はvMVPD事業へのシフトに向けて、(現)テレビ事業資産のカニバリを覚悟の上で、大再編に動き出しているのだ。

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ベムはあるシナリオをもって、日本での「テレビのネット化」(同時配信事業開始)によるインパクトをクライアントに説明している。

「アメリカと違って日本ではまだまだテレビが強いから・・・」という議論を根底から崩すであろうこの「vMVPDの衝撃」は、デジタルインテリジェンスからホワイトペーパーとして出します。

ご期待ください。

昔は子供も、お酒やクルマや化粧品のCMをたくさん見ていた。だから、お酒を飲める歳、免許をとれる歳、化粧を始める歳になった時に、さんざんテレビCMで見てきたブランド力が機能する。そういうものであった。

しかし、今クリティカルなのは本当にティーン以下の子供たちのテレビ接触が落ちてきていることだ。
そして、一方企業側ではブランドマネージャー制度が普及し、担当ブランドのターゲットにだけ訴求しようと懸命になる。当然、クルマやお酒や化粧品は子供相手ではないので、ターゲットされない。

このまま行くと、子供たちが相応の歳になった時に。「はい。お酒飲めますね」とか「クルマ乗れますね」とか「もうお化粧するご年齢ですね」と言って、「〇〇です。」とブランド名をコミュニケーションしても、「???」になりかねない。

もちろん広告だけがブランド力形成手段ではない。おそらくもっと商品やサービスそのものの体験がより重要だろう。

 だからブランド体験の場も含め、従来テレビCMが果たしていた若年層へのブランドコミュニケーションは何に代替させていくかを考えないといけない。

おそらく、「コンテンツ」提供や「ブランデッド・コンテンツ」制作にこの課題解決の方向感を得ることができるだろう。

そして、こうしたコンテンツによってブランドが得られるエンゲージメントの質的評価をすることが今後重要になる(これはもちろん若年層に限ったことではないが)。

センサーデータによる視聴動向と認知相関を調べていると、高齢層と若年層には明らかな違いがある。若年層はマルチな情報取得行動が可能で、周辺視野に少し入るだけでも認知したりする。一方高齢層はテレビをぼおっと見ているが感度が低くなっている。

テレビも視聴者の高齢化が顕著だから、もう高齢層相手にするしかないのでは?という意見も出てきそうだが、世帯視聴率ベースで番組制作をするだけではなく、もっと視聴者の8割がティーン~20代という番組づくりにもチャレンジしほしい。そしてそのコンテンツにネイティブなブランドコミュニケーションにもチャレンジして、強いエンゲージメントを得られるように広告主と一緒に番組とCMづくりを作ってくれるテレビ局「出てこいやぁ!」ですな・・・w。

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