「意見を聞くマーケティングから行動を把握するマーケティング」と言ったのはかれこれ10年前。行動データはネットのログデータからセンサーデータやスマホのロケーションデータに拡張する。


 かれこれ10年くらい前にベムは講演で「意見を聞くマーケティングから行動を把握するマーケティングへ」というフレーズで潮流を説明していた。
 この時、昔のグループインタビューでの経験談を話して、「消費者に意見を聞いてはいけない」という話をした記憶がある。

 そもそもグループインタビューという調査手法は「鵜呑み」に出来ない。モデレータの技術でもかなり左右される。ベムのカミさんはその昔、女性対象商品のグループインタビューのモデレータをやらせると結構な高いスキルをもっていたと(身内を褒めるのもなんだが・・・)思う。で、カミさん曰く、「インタービュールームに入ってきた時にファッションやアクセサリーや化粧などで、誰が意見をリードして、誰が迎合して自分の意見を言わないか分かる」と言っていた。
 そもそも、日本人は自己主張をすることが少なく、こういう答えをしてあげるといいのかなと慮ったりもするので、本音の引き出し方は案外難しい。

 で、ベムの経験談は、いろんな種類のテーブルウェアを評価してもらって、家で使いたいものなどを聞いたグループインタビューだったのだが、最後に「みなさんせっかくですから欲しいものをひとつづつお持ち帰りください」というと、さっきまでこれが欲しい、これを家で使いたいと言っていたものでなく、みんな普通の丸皿を持って帰ったのである。

 「行動」こそが真実である。

 そう考えていた25年以上前にはなかったインターネットが普及し、ネット上の行動をログデータという形式で把握できるようになったことを、前述の「意見を聞くマーケティングから行動を把握するマーケティングへ」と称した訳だが、ネット行動に限定されていた行動データは、リアル行動データやセンサーデータといったものに拡張されていっている。

 拙著「届くCM、届かないCM」で、テレビ画面をそのくらい注視したかというセンサーデータを使って、CMに対するアテンション(画面注視)を秒間データで取る分析手法を解説しているが、例えばこのデータは実際のテレビ視聴における視聴者の行動データと言える。

 そしてこのデータがアンケートによるCMの評価と違うことがあるのだ。

 アンケートで評価を聞くとネガティブなのに、AI値(画面注視率)は高く、こちらはある目的変数と相関している。

  そうなると、センサーデータによる視聴者行動を「打ち手」(この場合CMクリエイティブ)の最適化に使おうということになる。

  ユーザーの移動データ(スマホのロケーションデータ)にもおそらくアンケート調査では分からない「行動に表れる真実」があると思う。

  ベムは最近、こうした分析が楽しいw。

  一緒に切り口を考えて分析してくれる仲間を募集してます。

デジタルインテリジェンスNY榮枝から米国状況をレポートしてもらった。

この話の詳細は2/28のデジタルインテリジェンス主宰「デジタルマーケティング研究会」(広告主限定)で聞けます。

http://eventregist.com/e/GP7x9IUn24xT


「枠から人へ」のトレンドと、「枠から番組へ」のトレンド
「オートメーテッド・ギャランティード」の名の下に、米国で昨年から火が付いたテレビ・メディアのプログラマティック化(プライベート・オンライン取引化)が進んだが、今年は「テレビ番組視聴」の新データ指標が登場する動きがある。今年1月に日本で発表があったビデオリサーチと米ニールセンとの資本業務提携は、この米国での議論の延長線にあると考えられ、広告主各社は意味合いを掴んでおく事が必要だろう。
日本でも昨年あたりから「見逃し視聴」に関するデータの扱いがようやく注目されるようになってきたが、米国では約10年前からニールセンが提供するC3(放映から3日後までの録画視聴によるCM視聴のデータ)、C7(同7日後)という積み上げ数字がCM枠バイイング取引の通貨となっていた。しかしこのC3/C7はオンライン上でのCM+番組視聴の数字が拾いきれてなく、モバイル視聴を含めたコンテンツの分散配信に適応できていなかった。放映チャンネル局側はこの部分を加えた指標を登場を、数年待ちわびている。


■テレビ視聴数の減少の原因はNetflixやYouTubeの影響だけではない
テレビの視聴数(米国では視聴率、だけでなく視聴数を重要視する)が年々下降しているのは日米同じ。これはNetflixやYouTubeを始めとしたネット上の優良コンテンツが増え、「テレビ電波」や「ケーブルテレビ」だけが映像コンテンツでは無くなったから、が一般的な解釈だ。
しかし米国の4大チャンネル局は納得していない。彼らの考えでは「ニールセンの数字が、分散配信されている番組視聴を拾いきれて無いから数値が下がっている」、あるいは「新しいネット配信先も含めると、むしろプレミアム番組に関しては視聴者は増えているのではないか」というのが本音だ。
マルチスクリーン上でのオーディエンス・データならコムスコアやニールセン(でさえ)が、調査しているではないかと思うかもしれない。確かに「ネットに閉じた」数字は調査されているのだが、テレビ視聴の数字と足並みを揃える基準が登場していない。まさかネット上の単純インプレッション数とテレビ視聴者数は合算できないし、かと言って「1分あたりの平均視聴者」で合わせて良いのか等、技術上の難しさは想像できるだろう。さらに様々なネット上の視聴形態とテレビとの「重なり」も考慮しなければいけない。
いずれにしても基準となる土台は「これまでのテレビ視聴者数」にどう足し合わせるかであり、その意味で「新データ」はテレビ視聴データを持つニールセンが主役になる。日本ではビデオリサーチが主役になるデータであり、この背景が先の提携の意図する方向だろう。
ここで念押ししておきたい事は、現在米国で「待たれる新しい指標」というのは、「(動画)広告」の配信のカウントではなく、「テレビ番組の総露出」のカウントなのだ。上記のC3/C7の「C」はCommercialの「C」で、広告露出部分のカウントに力点を置いている。C3/C7は裏返せば番組コンテンツそのものをカウント・評価している数字ではない。プレミアム番組(コンテント)を持つチャンネル局は、自社の宝である番組そのものの価値の評価を待っているのだ。


■プレミアム番組で広告枠を減らすNBCUの場合
例えばNBCUであれば、人気番組「Saturday Night Live(SNL)」は若年層の支持が非常に厚い番組であるが、今年この番組に関しては(番組離れが起きないように)広告枠時間は30%削減させると発表している。アドレサブルにターゲティングできる「CM枠」を減らす傾向だ。その代わりNBCUの制作部がブランデッド(ネイティブ)コンテンツを特定の広告主に提供するモデルに収益をシフトさせる。
そしてNBCUは番組を自社の放映電波だけでなく、親会社のComcastのパイプ(ケーブル、ネット、OTT含む)で分散配信している。さらにNBCUは「ディストリビューション・パートナー」としてオンライン・プラットフォームであるAOL、BuzzFeed、Vox、Snapchat等とも提携関係にあり配信できる。この流通になれば「視聴者数がむしろ増えているのでは」と考えられるのは大いに理解できる。このようにNBCUの番組は、これらの分散配信露出の全ての価値を含んだ番組の「総視聴」の数字が必要になってくる。
さらにNBCUのセールスポイントは、広告主に対してプレミアム番組(前出SNL等)を「男性25-54才」のデモグラ・データを追うのではなく、「年収10万ドル以上のセダン所有者」に対して番組(コンテント)視聴数が積み上がったかどうかを検証でき、その数字に対してNBCUは「露出保障(ギャランティード)(補填)」するビジネスモデルを構築したいのだ。日本のテレビ局との事業ステージの差にも気付くだろう。


■いよいよ新C3/C7が今年稼働、しかしTotal Content Rating(TCR)はいかに。

ニールセンは前出C3/C7のネット露出を含めたクロスプラットフォームでの数値(Total Audience Measurement Platform内でのDigital in TV Ratings)に関しては米国の非営利協会のMedia Rating Council(MRC)からお墨付きがもらえ、今年から稼働予定だ。平たく言えばC3/C7の数字に「ネット数字を加算」した数字(つまりC3・C7の数字が大きくなる)が登場する。

Nielsen Receives Media Rating Council Accreditation for Its Digital TV Measurement
http://www.adweek.com/tv-video/nielsen-receives-media-rating-council-accreditation-for-its-digital-tv-ratings/

待たれるのは「番組露出」の計測(Total Content Rating:TCR)だ。TCRのネーミングのCは「コンテント=番組」のCだ。これも、今週、3月1日に「実験版(Limited)」が開始する事も決まったらしい。

Total Content Ratings Rollout, With ‘Limited’ Release on March 1
http://www.adweek.com/tv-video/nielsen-modifies-its-total-content-ratings-rollout-limited-release-march-1-175805/

「らしい」と断定していないのは、昨年12月~今年直近まで、各大手チャンネル局はこのTCRに対し「待った」をかけて騒ぎになっていたからだ。ニールセンの計測数字が「不十分」とし、良いことナシで混乱だけが生じると各チャンネル局が同じトーンの声明を出していた。


(大手チャンネル局NBCUはニールセンのTotal Content Ratings(TCR)をプライムタイム番組の評価に当てる事を書面で拒否した時の報道。Adage 2016 年12月15日)

そんな折、1月末の上記リンク記事は、「折衷案」という着地を見せたようだ。2年も延期に延期を重ねていたTCRがまたしても今年のアップフロントに間に合わないのか、というスレスレの時期での発表だ。今年のアップフロントでの大きな話題の一つは、TCRがLimited Editionということで、どのように試験運用されるのかが注目される。今年のアップフロントの状況は例えば、

・セールスの基準にTCRを採用している、と宣言するチャンネル局はないけれど、
・ニールセンはチャンネル局のTCR情報を、その局だけには公開提供する。
・同時にエージェンシーにも公開するので、エージェンシーが裏でつなげてしまえば、複数局を比較して実験利用ができるというイメージ。その中において大手エージェンシーグループのWPPやOmnicomのメディア・エージェンシーの役割は大きい。

整理したいのは、米国でのテレビ視聴に対する新指標TCRは、「クロスプラットフォームへの対応」、というよりも番組に溶け込む「ネイティブコンテンツ配信における、チャンネル局側の新事業モデルへの対応」、という側面に気づけるかどうかだ。

この動向に影響を受ける広告主は「プライムタイムに局といっしょにネイティブコンテンツを露出する大企業」という事になる(注:タイム枠の復活、ではない)。スポット買いの広告主は、引き続き広告のプログラマティック・バイイングの動向を見て行けば良いだろう。

企業メッセージを広告枠を選んで配信するのではなくてオーディエンスを選んで配信する、いわゆる「枠から人へ」の概念がある。この概念は、チャンネル局や新興パブリッシャー(Netflixを含む)が持つ「プレミアムの番組(コンテント)」に関しては、少し当てはまらない。プレミアム番組では、広告主が広告枠でコンテントを邪魔をするのではなく、あるいはそのコンテントの枠の中でターゲット別に広告メッセージを差し替える事を喜ぶものでもなく、いかに番組に溶け込むかという「枠から番組へ」の傾向が始まった。
先のスーパーボウルで言えば、レディー・ガガの「ハーフタイムショー」では300機のドローンが空を舞い、ペプシのロゴを夜空に描いたシーンを見た人も多いだろう(実際は録画合成)。インテルがあのドローンのシステム・スポンサーだ。両社は見事にハーフタイムショーのコンテンツの中に溶け込んでいる。プレミアム・コンテンツを開発するチャンネル局は、自社コンテンツの価値が広告枠の販売だけではなく、番組コンテンツそのものの中で昇華させる考えにシフトしてきているのだ。
 続報はDI. MAD MANレポートでお伝えする。

  「枠から人へ」というワードはずいぶんいろんなところで使っていただいたようだが、DSP/RTBを象徴する概念だったのは間違いなかった。ただ、プログラマティックの進化は一方で、掲載面の質を問うことを怠ってしまった。
クッキーやIDをターゲティングする配信なので、ターゲットの出現率を高めるために掲載面は基本どんなものでも良いという感覚で掲載面網羅が進んだ。結果、とりあえず検索からビューを獲得できるならと他人のコンテンツをコピペするキュレーションメディアなどというものも誕生させた。質が悪くても1ページビューは1ページビューという「広告」の本質論からは受け入れがたい方向に行ってしまったと思う。


さて、昨年問題になったいくつかの事象は、ネット広告における「掲載面」の再評価と良質な一次コンテンツをつくるパブリッシャーがマネタイズできないと結局損するのはユーザーであることを再認識させたと思う。

「べき論」だけで言っている訳ではない。「枠から人へ」は、新たな「枠」志向にシフトする。
手売り対象だった純広枠と、プログラマティックなオンライン入札対象枠は、さらに再編と再整備が進むだろう。あらゆる掲載面に繋げたRTBだけではなく、ホワイトリスト化やオートメイテッドギャランティードや本格的なPMPもその価値を追求されるだろう。また、過度なリタゲによるブランド毀損も考慮されるだろう。

広告主も今後「質」を問う。ビューアビリティやアドフラウドの課題も検証されることになるはずだ。

新たな「枠」の概念は、プログラマティクの優位を生かしつつも掲載面の質をいかに担保し再構成するかという考え方になる。
ターゲティングは、コンテンツによるターゲティング、オーディエンスデータによるターゲティング、タイミングのターゲティング、などブランド側からその効果的な配信設計が必要になる。広告主はしっかり勉強して、セルサイドからのターゲティング提案を受けるだけではだめだ。

2020年代にはデジタル広告がテレビ広告を超えるだろう。


デジタルと従来のマス広告との構造的な違いを理解し、買う側が次世代のデジタル広告「枠」はどうあるべきかを主張しないといけないし、それにセルサイドも真摯に対応しなければならない。

  「マーケティングダッシュボード」活用に関する本を上梓することになった。この本を書いていて、会議体のあり方を考察することになった。

  会議の資料をそれぞれの部署の現場の若手が徹夜でつくるようなことがよくあると思う。しかも会議では、資料のデータが指標としてオーソライズされていないので、データの信憑性についてうんぬんされ、指標をもとに経営判断を下す以前の話で終始する。
 日本企業の生産性が低いのは、こうした会議のための会議が蔓延っていることにもよるのではないか。会議にかかる時間もそうだし、会議のゴールが設定されないことなども問題視されてきたが、上層部の会議への資料作成も、生産性を損ねている原因のひとつと言える。

  残業を減らし「働き方改革」(労働時間を減らすだけでなくどう生産性を上げるか)をするなら、こういう紙の資料に頼るだけでなく、経営判断のできるリアルタイムダッシュボードを会議で見ながら判断したらどうだろう。


 まず、紙の資料ではデータの視点がひとつしかない。
データは、視点や角度を変えると違う見え方がする。時間軸もそうである。

データから意味を読み出す力を幹部が持たないといけない。資料を部下に作らせ、作業に時間を費やせることから開放すると同時に経営ダッシュボードから経営判断できる能力を経営幹部が養う必要がある。

 データドリブンなビジネス遂行には、関わる社員全員がデータを浴びていないといけない。プッシュされている状態だ。
 従来は、PCからそれぞれがデータをそれぞれの都合のいいようにプルして紙にする。
それでは部分最適から脱することはできない。経営幹部であればあるほど全体を俯瞰すること、様々な角度からデータを見ることで「データ」を「インテリジェンス」とすることができないといけない。無駄を作業を省くと同時に次元の高い仕事へのスキルを獲得することに「マーケティングダッシュボード」「事業ダッシュボード」「経営ダッシュボード」を活用するようになりたいものである。

④ トランスペアレンシーは広告主・エージェンシー相互関係の構築へ

2016年に起きた事象は、デジタル広告(特に細かいオペレーションを伴うもの)が従来の枠取引とは違う文化にあることを改めて再確認した。ベムは、「紙のレポートを1週間に1回代理店の営業が持ってきて広告主に向き合って報告するモデル」から、「広告主とエージェンシーのトレーダーが横に並んで同じ画面を見て状況を共有し、その後も方針を確認していくモデル」と定義している。

いずれにしても、「何でもお任せください」と言ってきた代理店側が爆裂してしまった訳で、広告主側も丸投げすることができないということを認識したことと思う。改めて広告主が勉強することが大事だし、広告を発注する側、請け負う側という立場だけなく、パートナーとして情報を共有する相互信頼関係の構築が必要である。
ANA(全米広告主協会)のメディアトランスペアレンシーガイドにも7つ目にこの「相互信頼関係の必要性」を謳っている。
 デジタル時代、広告のセルサイドとバイサイドという関係を超えて共同して価値をつくることを目指したいものだ。業界としても米国IABのモデルを参考にしたい。

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⑤ テレビCM素材のオンライン送稿開始の影響と、ブランドごとの発注の非効率さ露呈 ~バルク買い&ポジションごとの素材差し替え志向と、スポットから番組への流れ~

ずっとやるやると言ってきたテレビCMのオンライン送稿がやっと今年実現しそうだ。CMプロダクションの食い扶持がプリント代なので・・・という議論はひとまず置いておいて、ベムが広告主ならプリント代が節約できることよりも、改めてCMの機動的な差し替えやオーディットを求めるだろう。オーディットと言っても以前の間引き問題のような話ではなく、バルクで買って細かい素材ごとの1本1本のポジションごとに適切な素材を入れたいのだ。ポジションごとにオーディエンスや視聴質が違うのだから、そうする。
差し替えの問題とオンライン送稿は直接関係ないが、機動的な差し替えがどうして出来ないの?という議論と素材が何種類かに分かれていた場合、入れたいポジションに入れたい素材がしっかり入っていたかをオーディットしたいけど・・・という議論を誘発するだろう。

ベムは、特に都市部ではテレビからデジタルデバイスへ投下予算のシフトが起こると思うが、テレビ予算でいうと「スポットから番組へ」というシフトが起きると思う。

 人口が多い高齢層の視聴時間が極めて長く、人口の少ない若年層の視聴時間が短い今、まんべんなく投下するテレビスポットは結局ほとんど高齢層に当たる。コンドロイチンならそれでいいだろうが、ターゲットが50代までの男性ないし30代までの女性ならば番組というコンテンツでターゲティングする買い方を再評価すべきだ。まただからこそ局も広告主も番組を世帯視聴率ではなくターゲット視聴率で評価するようにならなければならない。そしてそこにはタイムシフト視聴もしっかり評価することも大事だ。そのためにはリアルタイム視聴でもタイムシフト視聴でもCMがどの程度見られたかを測定しないと意味がない。録画だからと言ってすべてCMがスキップされる訳ではない。スキップ率は番組によって全然違う。また録画再生だけがタイムシフト視聴ではないので、どこまで足し上げて評価するかが問われるだろう。
 
おそらく2020年代にはデジタル広告のシェアがテレビを超えるだろう。その際、従来とは全く違う2つの構造的な課題がある。
ひとつは配信先データのコストも広告主が払うのかどうか(自分で所有できる場合があるからだ)、そしてブランドごとの発注の非効率さだ。
後者を説明すると、既にリスティングやDSPといった入札運用型広告では、キーワードやクッキー、IDを「競っている」ので、社内で競合して値段を上げているのだが、それに気がついていない。複数の広告ブランドを展開する大きな広告主は、バルクで掲載面を購入し、オーディエンス、タイミング、コンテンツ、コンテキストに最も適したブランドの広告原稿を配信するモデルになる。それはまさにプログラマティックのなせる技で、当然ブランドごとの予算配分も行うことになる。AIが広告の最適化にも応用されるだろうが、まずはこうしたところが対象だろう。

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⑥ オペレーション人材不足の懸念と受注を断られる広告主、そして自動入札の試運転へ

広告のプログラマティック購買の流れは止まらない。オペレーションのマンパワーが足りないという問題を抱えつつもこのトレンドは進むだろう。プログラムと言っているのにどうしてこうも人手がかかるのか・・・。
これだけ人手がないと、あまりにディスカウント要請が強く、かつ細か過ぎる対応を要求する広告主は仕事を断られることがあるだろう。もちろん受け皿は他にもあるだろうが、そのクオリティは担保されない。
一部で「断られる」ということが今後のこのビジネスの変化をきたす。

広告主の一部は自社で解決しようとするだろうが、
インハウストレーディングデスク構築はこれだけ人材不足だと厳しいと言わざるを得ない。

またサービスのサプライヤー側も人材不足を解決するため自動入札システム構築に動き出すだろう。これにはいくつかのハードルがあるが、ハードルを乗り越えるプレイヤーも出てくるに違いない。実は汎用の自動入札システムをつくるのは難しいが特定の広告主に特化したものの方がつくりやすい。


一方、オペレーション人材を育てる研修などの仕組みへのニーズが高まる。
それは直接オペレーションする人材だけでなく、プログラマティックとは何かを関わるすべての人が知る必要に迫られるだろう。
特にマーケター側の研修やスキル獲得のための仕組みづくりが重要なテーマになる。


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⑦ 企業にCDO設置が本格化する年

企業における「デジタル変革」(デジタル・トランスフォーメーション)の概念や必要性の認識がようやく定着してきた。マーケティングのデジタル化もその一環である。
そう考えると、マーケティング領域だけがデジタル化するということでもなく、またマーケティングをデジタル化するには、営業マーケティング領域以外の部門との再編や連携が必要で、それを統括するCクラスにはマーケティング領域を超えた力が要る。
 そもそも日本にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)が根付かないのは、マーケティングが定義されていないからである。またマーケティング活動の目標として「ブランド資産」に対する意識・価値観が欧米と全く異なるからでもある。日本のマーケティング担当者にその活動の目的を聞くと「売上・利益を上げるため」と答えるだろうが、欧米のグローバル企業に同じ質問をすると「ブランド資産を維持拡大するため」と答えるだろう。ブランド力のある企業が何億もかけてキャンペーンを実施し、その効果を分析したとする。おそらくそのキャンペーンによって増えた売上はほんの一部でしかなく、ほとんどがキャンペーンをしなくても売れた分になるだろう。しかし、そのベースライン(プロモーションをしなくても売れた分)こそが大きな価値であり、このブランド力そのものをどう維持拡大するかにゴールがあるマーケティングと今年の売上利益を追求するマーケティングはかなり違う。社長がCMOに今年の売上目標を持たせず、ブランド資産の指標を目標とさせる日本企業はほとんどないだろう。まあ、いきなり欧米グローバル企業のマネをしても無理がある。
しかし、このデジタルトランフォーメーションの機会は、日本のマーケティングを変革する大チャンスでもある。
 そのためには、マーケティングという領域を超えた企業活動全体のデジタル化を推進するCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を設置し、そのなかでマーケティングのデジタル化を果たすという手法にこそ可能性がある。

 この際、チーフ・デジタル・オフィサーには外部からの登用が主力になるかもしれない。COO,CFOと並ぶCDOの設置と「デジタル変革」対応に期待が集まるだろう。CMOよりまずはCDO設置という企業が増えそうである。


今年でブログ「業界人間ベム」も10年目に入りました。
年初の業界動向予測も2010年からそれらしいことを書いてきたので、これが8回目になります。

 さて、2017年の広告マーケティング業界7つの予測である。
2016年は広告業界にとって衝撃的なことがいくつかあった。いろんな意味で変革期として後に「2016年がきっかけで変革が加速したよね」と言われるようになるだろう。

そうした変わり目の翌年は、総じてデジタルが専門分野から本丸に吸収される年と言ってもいいかもしれない。

7つは以下のとおり

① 「出島」から本丸のデジタル化へ~POEダッシュボード採用で加速するデジタル化~
② アナログ施策を最適化するDMP本格始動の年 ~DMP2.0の始動~
③ テレビCM枠のオンライン入札の試み始動 ~テレビの本当の効果(間接効果とブランディング蓄積)を見極めて初めて出来る入札とデジタル偏重への一石
④ トランスペアレンシーは広告主・エージェンシー相互関係の構築へ
⑤ テレビCM素材のオンライン送稿開始のもたらす影響~ブランドごと発注の非効率~
⑥ オペレーション人材不足の懸念と受注を断られる広告主、そして自動入札の試運転へ
⑦ 企業にCDO設置が本格化する年

まずひとつめは、

① 「出島」から本丸のデジタル化へ

~POEダッシュボード採用で加速するデジタル化~

  昨年、ベムは一部の企業の「デジタルマーケティング本部」(略してデジマ)を「出島」と呼んだ。まさに「デジタルというエイリアンとインターフェイスするところは特別なところ」ということである。デジタルマーケティングは専門性の高い特別なマーケティングという意識(ある意味のコンプレックス)が生んだデジタルマーケティングという特殊なマーケティングをする位置づけによる組織化は、本丸のデジタル化を返って阻害するという結果を生んだと思う。
 再三言っているように「デジタルマーケティング」という特殊なマーケティングがある訳ではない。マーケティングがデジタル化するのである。
 その意味で、広告マーケティングの本丸がデジタル化しないといけない。

 昨年、日本アドバタイザーズ協会にデジタルメディア委員会が新たに設置された。従来アド協の下部組織であるWeb広告研究会(Web研)が広告主側のネット領域に関する活動を担っていた。しかし、企業のWeb担当者という位置づけは既に変質していると思う。今起きていることは、MAを導入しても「営業」が自ら関わらないとうまく機能しないということだったり、マーケティング施策全般を実際に実施している部門、担当者がデジタルツールを主導的に使わないと成果が出ないということだ。
 それは広告領域もそうである。マス広告、リアルプロモーションというメインストリームをやっている人たちがデジタルを駆使することで初めて「デジタルマーケティングが実践される」のだ。

 さて、その広告マーケティングの本丸である宣伝部がデジタル化する一番大きなきっかけは、マーケティングダッシュボードの導入になると思う。
 それは、POEを1画面で把握するリアルタイムダッシュボードであり、「打ち手」を前提にしたものだ。「打ち手」のタイミングと強弱を最適化するためにリアルタイムで競合を含めたKPIを把握する。
 Pは当然一番影響力のあるテレビCMの到達実態とデジタル投下が主なものになる。そして、これがある意味でオーディット機能も持ち合わせる。デジタルは3PASをかませてデイリーで配信数とユーザーレスポンスを見る。テレビも指示した素材が適正なポジションで出稿されているかリアルタイム確認ができる。
 Oへの流入も宣伝部がしっかり把握すべきだ。またEも自社ブランド名をコメントするソーシャルアカウントの数をカウントするなどダッシュボードに入れるべきデータは多いが、前述したように「打ち手」ありきでデータ整備をすべきでデータまみれになればいい訳ではない。

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② アナログ施策を最適化するDMP本格始動の年 ~DMP2.0の始動~
 
 ベムは2010年代前半のDMPブームがある意味一過性で終わったと思っている。その理由には2つある。ひとつはDMP構築という大変な作業で最適化されるのがDSPによるディスプレイ広告くらいだったこと。もうひとつは、汎用拡張ロジックではまったく成果が上がらなかったことだ。

 まず、DSPの機能拡張版としてのDMPでは、ほとんどの企業のマーケティング施策の1%にも満たない入札型のディスプレイ広告だけが最適化されると言われても成果として評価できないのは当然だ。また拡張ロジックもテック屋さんの作った汎用ロジックなので、それぞれのブランドにとって「購買行動を起こした人を逆引きして見込み客をセグメントする」ということができていなかった。汎用ロジックはほとんど「同じようなURLを閲覧していたルックライク」であって、「化粧品やクルマのルックライク」ではない。欧米でDMPで成果を上げているプレイヤーに聞くとみな「ブランド独自の拡張ロジック」づくりが重要であると言っている。DMPは潜在層に新たなターゲットセグメントを個別につくることができる。そこが肝心なポイントである。

 さて、今年は「DMPがアナログ施策も最適化する」というDMP活用による「打ち手」の拡がりが起こる年だろう。これをベムは「DMP2.0」と呼ぶ。

 つまりは、DMP特に3rdパーティデータ(パブリックDMP)を活用して、ダイレクトメールやチラシや営業マンのアタックリスト改善など、従来のアナログ施策を最適化するようになる。

 デジタル施策しか「打ち手の最適化」ができなかったDMPがリアルプロモーション担当や営業活動領域に改善をもたらすことで、DMPは本当の市民権を得るだろう。


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③ テレビCM枠のオンライン入札の試み始動 
~テレビの本当の効果(間接効果とブランディング蓄積)を見極めて初めて出来る入札とデジタル偏重への一石

 ベムは、テレビ局も手売りの限界を早く認識して、オンライン入札による広告枠販売をすべきだとかねてから主張している。その方がテレビ局にとっていいのに・・・と思っている。視聴者が放送から離れていく今状況での従来からの取引だけでは売上はシュリンクする方向にしかない。外資系を中心に「TARPをアクチャルで握れ」とか、局にとっては在庫管理ができない売り方を求められるくらいなら、1本1本の価値を、価値を評価するバイヤーに入札応札で売った方がパーコストは高く売れるはずだ。
手売りでは1案件のGRP量が多い方がいい。同じ作業でも売上が違うし身入りも多い。でも案件単価が高いとパーコストは抑えられる。言っちゃ悪いが、スポットはAタイム1本に深夜早朝を抱き合わせ販売するわけで広告主にとってもホントにそれでいいの?と聞きたくなる。
 今の売り方を一気に変えることは全くないが、一部はオンライン入札(応札)で販売してみることをそろそろ始めないといけないだろう。テレビ局は航空会社が飛行機のチケットをどうやって販売しているか勉強してみるといいだろう。

 しかし、オンライン入札のためにはバイサイドがその1本の価値を評価するためのデータが必要だ。今はセルサイドのデータしかないが、バイサイドに有効なデータ供給がオンライン入札には絶対に必要となる。
 
 ベムはテレビ視聴データを含め「送り手の指標から受け手の指標へ」また「セルサイドのデータからバイサイドのデータへ」ということをマス広告宣伝部のデジタル化のひとつの課題として上げている。

 2019年には放送と同時配信が予定されているなか、特にローカル局などは「手売りの限界」に早く気づいて対処すべきだ。ローカル局などはどっちみち販売は電博におんぶに抱っこなんだから、ちゃんとバイヤーにデータ開示をして、九州のダイレクトマーケターに入札してもらえるような環境をつくるべきだろう。

 アメリカではディレクTVが放送と同一コンテンツの同時配信を始めた。ベムにはもう放送という形態は必要がなくなっているように思える。4K・8K対応ももう放送ではない。5G時代に4K・8Kが普及するとローカル放送局の画像は、MXテレビで観る昔の4:3のアニメのように感じるだろう。

 そうした時代環境を感じるまともなテレビ局は今年オンライン取引のへの布石を打つだろう。


 また今年はテレビCMの間接効果やブランディング効果に関する検証がされるだろう。ある意味デジタルへのリ・アロケーション要請が過度におきている感をベムは持っている。経営へのアカウンタビリティの問題である。
 それはデジタルで測定できる効果データがテレビでは出来ていないことで起きている。ただテレビの効果はデジタルのような即効性や刈り取り効果と同次元に比較してはいけない。タイムラグがあるし、ストックとしてのブランディング資産への寄与は測定しづらいものだ。よく、テレビを止めても売上が落ちないということがよく言われる。しかしそれはその年くらいで、翌年、翌々年にはボディブローのように効いて来る。テレビとテレビCMの価値を再検証する年になるだろう。
 さらに、テレビとデジタルの相乗効果検証が進むだろう。そのためにテレビの1インプレッションとデジタルの1インプレッションをどういう価値で見るかが注目されるだろう。デジタル広告のビューアビリティが検証されるのは当然のこと、その反動でテレビのビューアビリティデータも求められる結果となるだろう。

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 今日12/2はDACの設立記念日です。ベムはDACの起案設立者として創業に最初から関わったので、20周年ということに感慨深いものを覚えます。

 当時旭通信社会長の亡き稲垣正夫氏にインターネットがどう広告媒体になるかを説明した時に「横山さん、これはミニコミですね。」と言われたのをよく憶えています。
 また、当初5%出資された徳間書店さんに決算報告に当初毎年行っていて、徳間康快さんと会えたのもいい思い出です。

 設立してまもなく、最初のプロパー社員を迎えて、健康保険組合に入ろうと手続きすると組合から「インターネットが広告メディアであることを証明する資料をつくってくれ」と言われました。設立した96年は電通さんが「日本の広告費」で初めてインターネット広告をカウントした年で、16億円でした。それが今や1兆円になろうとしています。

 アメリカでバナー広告が出現したのが94年ですから、96年にネット広告のメディアレップを立ち上げたスピード感は今考えてもかなり早かったかもしれません。設立までの株主持ち回りの会議はそれなりに時間はかかりましたが、それにもいろんな思い出があります。当時のアサツーの担当役員だった高橋さんが「社名にマーケティングとつく会社が儲かったためしがない」という一言で、社名がデジタルマーケティングコンソーシアムではなく、デジタルアドバタイジングコンソーシアムになったこととか・・・。そういえば先日アビームさんと共催したセミナーの会場が神保町の元博報堂さんのビルで、最初の打ち合わせにあの古いビル言ったなあと思い出しました。

 しかしこの20年はあっという間だった気がします。
日本のネット広告の歴史に0時点から関わることができたのは本当に良かったと思います。いろんな方にお世話になりました。

 今、ネット広告(もうデジタル広告という方がしっくりきますかね)はひとつの転機を迎えていると思います。この転機が、広告主、代理店、ベンダーなど関わる様々なプレイヤーにとって「良い方向」になることを信じています。
 DACの次の10年、20年にも大きな期待を持ちつつ、ベムの20年を振り返る今日12/2です。

既に、2017年広告マーケティング業界7つの予測のひとつを明かしてしまうエントリーになっております。(笑)

 先日、ベムの会社でインターンをしていた学生の就職先がデジタルの運用型広告の会社に内定したので、思わず「ご両親はなんと言ってた?」と訊いてしまった。「やはり心配してます。」との答えに、今、「広告」とか「デジタル」とか言うとそういう印象を持たれてしまうんだと思うと同時に、本当に人材が集まらなくなる危惧を覚える。

 POEに企業のマーケティングメディアを再整理しましょう」という発信を「トリプルメディアマーケティング」でしたのは2009年。とにかく広告マーケティング領域で「やること」が劇的に増えた。ペイドだけとっても、デジタル広告領域での作業量はプログラマティックバイイングの登場もあって、尋常じゃないくらいに拡大したと言える。

 ベムはDAC時代におそらく日本で初めての海外デジタル媒体の買い付けを行った経験がある。その時の一番の印象は、とにかく向こうのメディアバイイングサービスが杜撰で、荒っぽいことだ。インプ保証なのに、キャンペーン期間内に達成していなくても平気で、「そのうち達成するよ」てな感じで焦る様子もない。「こんな大雑把な仕事としていてよくクライアントが文句言わないな」と思ったが、おそらく日本以外の多くの広告サービスは、レベルの問題はあれ、得てしてこんなものなのだ。逆に言うと、日本のサービスは過度に細すぎる。いわゆる重箱の隅をつつくそれで、それも部分最適にフォーカスされていることが多い。広告主とエージェンシーの関係も発注側と受注側でいうことで、徹底してサービスを提供しないと、替えられてしまうので必死で対応することになる。とにかく広告主の担当者の要求を満足させるべく、徹夜も辞さずということになる。


 エージェンシーが提供する価値を、コンサルテーション、プランニング、オペレーションと3つに分けるとすると、提供価値がオペレーションに限定されてしまうと、こうしたとにかく言われたとおりにサービスすること、ディスカウント要請にもできるだけ応えることになってしまう。

 でも、そうした環境は今回のことを契機に少し変わってくるかもしれない。
 つまり、なかなか人材を確保しづらくなってきたデジタル広告のしかもオペレーション領域で、発注者だからと今までのような要求をし放題ということが広告主もしづらくなるだろうということだ。要は仕事を断られる可能性があると思う。もちろん受け皿はどこかにあるだろう。しかし一定以上のクオリティを担保できる引き受け手かどうかは甚だ疑問だ。


 「いやいや、こっちは金出して発注しているんだから、業者をどこにするか、言うことちゃんと聞くところにするんだよ。」という反応もあるだろう。それはそれでそういう選択もあっていい。しかし、本当の意味でのパートナーとして協力会社を得ることはできないだろう。パートナーとは、本当に取引先企業のためを思って考え、行動してくる会社や担当者である。困った時に本当に親身になって助けてくれる相手である。

さて、
 広告主とエージェンシーの関係を考える機会として、ANA(全米広告主協会)のメディアトランスペアレンシーガイドラインを見てみよう。

1)Agent & Principal(エージェントなのか、プリンシパル(購入主体)なのか)
2)Contract Content(契約の範囲を確定させる)
3)Contract Audit Rights(監査権利を確認し、契約に組み込む)
4)Contract Governance (契約書作成だけにとどまらないコンプライアンスの実行)
5)Data and Technology(データとテクノロジーへの理解)
6)Advertiser Responsibility(広告主の責任の明確化)
7)Code of Conduct (行動規範の策定と相互理解)

  アメリカと日本では、取引きの考え方もずいぶん違うので、これらがすべて取り入れられる訳ではない。しかし、ベムは最後の7つめの「行動規範の策定と相互理解」というところに注目する、特に「相互理解」だ。トランスペアレンシーという面では、何もエージェンシー側が求められるだけでなく、広告主側がしっかりエージェンシーをパートナーとして情報を開示しているかという面もある。


  良質な広告オペレーションの受け皿をしっかり用意しなければいけない。

 そのためにも、ベムが以前からずっと言っていることがある。
  運用型広告をオペレーションしている人材に対して、そのスキルの付加価値向上とキャリアのステージを明示してあげるということを、運用型広告の会社を経営している者がちゃんとしていないのではないか?ということだ。

  若い人材の20代の4~5年やらせて、オペ疲れしたら、新しい人材に入れ替えていくという手法ではだめだ。

  業界は当然、広告主側も相互に人材が育つ環境を意識していかないといけない。

 そういう転機の年になった2016年になったと思う。

デジタルインテリジェンスNY 榮枝のレポートです。

ADWopening1.JPG ニューヨークのアドバタイジングウィークが26日月曜日から開催されているが、メディア取引の透明性議論について全米広告主協会(ANA)側が広告業協会(4A)と対抗する様相になってきた。

28日に行われたANA主催のセッションには、
・Bill Bruno CEO, North America, Ebiquity(ANAの透明性調査を受けた調査会社)
・Bill Duggan Group EVP, ANA(このセッションの主催)
・Ben Jankowski SVP, Global Media, MasterCard(広告主側ゲストパネラー:マスターカード)
・Tony Pace Founder, Cerebral Graffiti(広告主側ゲストパネラー:元サブウエイCMO、ANA Chairman)
・Julian J. Moore, Esq. Senior Managing Director, K2 Intelligence(透明性調査を受けた調査会社)

がパネルとして参加し「メディア取引の透明性」について議論が行われた。

 広告主と広告業界とがフェアーなディスカッションをするためには、このパネラーの中に広告業界側からも登壇する「バランス」が欲しいところだが、実現に至らなかった。実は4Aの代表(CEO)のナンシー・ヒルCEOは登壇を「予定」されていたが、直前にキャンセルを発表している。

キャンセルになった理由は、ANAの指摘している「個々の」エージェンシー&クライアントの契約ケースが多様で、4Aとしての「統一見解」としての公言難しからだ。

広告主側のANAの指摘は「あれも、これも、色々ある」という報告レポートなので、それを受けて4Aが協会として返事をするには「あれはこう、それはこう」という個別対応説明する難しさがある。この難しさを協会内で調整なしに代表公言するのを控えた形だ。本件の4Aの対応ミーティングは、すでにニューヨークでは第一回が開催されたが、サンフランシスコ、ダラス、、、と広告マーケット主要各都市で複数回開催する必要がある。

4Aナンシー・ヒルCEOは本件につき全てオープンに話すとしながらも、When it comes to legal and contract specifics, we feel these are best left between agency and client.(個々のケースの検証は、法的な事も関係するので、個々のエージェンシーと広告主との協議に委ねたい)としている。「協会対協会」のレベルで議論をしたり、和解するではなく、「個々の」広告主の行動とそれに伴ったエージェンシーの行動が頼りになる。

ANA側のトランスペアレンシー・ガイド(ANA transparency guidelines)に続き、4A立場もトランスペアレンシー行動ガイド(Transparency Guiding Principles of Conduct)を策定した。これは指南書ではなく「4Aメンバーの規定」のレベルの気合の入った書類だ。

4Aの立場は三面記事的に見れば「表に出てこない」立場に見えるが、今後しばらくの間、協会としてのコメントは控え、それよりも個々のケースを自主的に洗い直しする事を待つ事になる。4A協会の防御ラインとして、まずガイドラインは策定できた、という段階が上記だ。

28日のセッション登壇のマスターカードのグローバルメディア・バイスプレジデントは「広告主はベストのエージェンシーとして採用契約をし、エージェンシーもそのベストの結果を提供する立場だ。しかしエージェンシーのスタッフには、日々進化するデジタル環境に未熟な若手も存在する。玉ねぎの皮をむくように、管理職がひとつひとつ洗い直す義務もあるはず。」とした。

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 今年のアドバタイジングウィークに参加来場者にとって、先週9月23日に電通が発表た「不適切」取引の話題は、ホットであり今年の大きな話題の一つだ。ちなみに、刻々と英文の表現が微妙に変化している。10月23日には電通の取引が「Inappropriate Operations(不適切なオペレーション)」であったのが、「irregularities(不正行為、不正直行為)」にシフトしている。

10月23日 Inappropriate Operations'
http://adage.com/article/special-report-advertising-week/ana-media-transparency-issues-solved-individually/306068/

10月28日 irregularities"
http://adage.com/article/special-report-advertising-week/ana-media-transparency-issues-solved-individually/306068/

現在ANAと4Aとの協会同士の立場は平行線のままだ。しかし、明るい方向としてANAのチェアマンは「何もドラマのような展開や、エージェンシー企業を告訴しようとしているのではない。」と述べた。「現在は答えの見えない平行線でも、きっとより良い着地点がみつかるはずだ」。

このコメントの引き金は、先週の電通側の「能動的な社内調査」の中間報告が大きい。ANA側は「大いなる第一歩」として賞賛している。一方でJPモーガンチェース銀行、GE等の自主的なエージェンシー取引の「見直し検証」も始まったとWSJが述べている(先日のブログ・エントリーでも紹介済み)。

ANAはスモールサイズの企業においても他人事と言わず、ANAのレポートの一読を勧めている。英文での一読も1時間程かかる量だが「一読に値する」と啓蒙している。

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ANAのメディアトランスペアレンシー・レポート(英文)
https://www.ana.net/content/show/id/industry-initiative-recommendations-overview

WSJ出典:
http://www.wsj.com/articles/big-marketers-launch-audits-of-their-ad-buyers-1474567320

AD WEEK ニューヨークが開催されます。デジタルインテリジェンスNY代表榮枝からのレポートを速報で掲載します。

今年のOpening Galaは、何と、今年出来たばかりのワールドトレードセンター施設のOculusの「中」で行うと。

これはすごいです。JTB的には、観光ネタの目玉ですね。

写真ご覧ください。

IMG_5902.JPG オキュラスのグランドオープニングの時の イベントの模様です(榮枝撮影)。

おそらくこの自社オープニングにつづいての初の外部貸し切りじゃないかと想像します。

ちなみに、この「ドーム型」のこの施設、建設費ざっと4000億円です。
オリンピックの日本の国立競技場で、なにやらモメてた金額の倍(数倍)ですね。(これも税金使われてます)

そしてこの金額は新築された全米一番の建造物となった(541M)
ワンワールドの建築費と、ほぼ同額です。

それほど、すごーいドーム、という事で。
中に入っている店鋪は、有名ブランド精鋭ブランド総集めです。
アップルストアも当然あります。

続く

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